屋上に出て、空を見上げると、何も変わらない0と1の空。
データの青が広がっている。
「さて、早速だけど、貴女が何処まで、何を知っているのか知りたいから、覚えている・知っている事を離してくれないかしら?」
それは良いけれど...余り期待はしないでほしい。
なんせ、此処までやって来れたのが、本当に奇跡だと思えてしまうから。
私は、遠坂にこれまでの経緯を一つ一つ思い出しながら話す。
「……貴女には散々驚かされっぱなしだけど、これは本当に驚くわ。貴女・・・一度死んで蘇ってるなんてね。」
あの審査の時だ。
マスターの候補者を見定めるために行われた、あの審査。
しかし、私は完全に自分が何者であるかなど思い出せずに、審査を受け、その結果が死だ。
だけど、気が付けば学校の保健室のベッドの上。
更に、私を蘇生させたと言う理解不能&意味不明な召喚士。
「本来なら、貴女のサーヴァントは
それは勿論。
きっと、セイバー、アーチャー、キャスターのどれかになってた...筈。
「何でそんな事分かるのよ?」
直感?
何て言うか、本当ならサモナーじゃないって、私の何かが語ってるの。
「ふうん...それを信じるのなら、本来貴女が召喚するはずのサーヴァントに、何かしらの妨害か危害を与えて、自分が成り替わったって所かしら。」
...それを考えると、サモナーの心臓を潰さなければならないな、本気で。
でも、これは私の勘だし、サモナーの最弱さは私が良く知っているから、その可能性は低いだろうね。
それに、一回戦の頃に、サモナーは地上からやって来た、って言っていたからね。
「………はあ?!あんたのサーヴァント、地上からやって来たの?!そう言う大事な事は、早く言いなさいよ!!!」
え?地上からやって来たサーヴァントって珍しいの?
てっきり、珍しくないと思ってたから...。
「サーヴァントは過去の英雄が、英霊の座へと付いて初めて召喚できる存在になるの。生きている英雄をどうやって召喚するのよ...。と言うか、如何して貴女出来たのよ。」
いや、それが私にも分からなくて...
私が死んだときにやって来たって言ってたし...
多分タイミングが悪かったんだと思う。
「ある意味良過ぎよ、それ。でもおかしいわね...私が地上に居た時、そんな人間いたかしら?...それに、地上からやって来たって事は、違法アクセスでやって来たんだろうし...人間じゃ到底為せないわ。」
そうだよね...
生きたまま英雄になって、月に侵入して、何故か月の聖杯の一部を勝ち取って、何故か私のサーヴァントとなった...チートだ...私のサーヴァントはチートで出来てる。
「そうね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聖杯?」
うん。
サモナー、私と出会う前に月に侵入して、何故かそこで一戦交えて、月の聖杯の一部を切り取って来たらしいんだ。
死んだ時、衣服や怪我の修復をするのに使っているんだ。
「…………岸波さん。ちょっと一発殴らせてくれないかしら?」
はい?
拳をちらつかせる遠坂。
青筋...いや、何か触れてはいけないオーラが出ている。
ちょっと待って欲しい。
私だって聞いた時はサモナーの心臓を潰しにかかったんだよ?!
信じられないのは分かる!
遠坂、落ち着いて!
「これが落ち着いてられるか!何してるのよ貴女のサーヴァント!優勝賞品の一部とはいえ、先に獲ってるのよ!聖杯の一部とはいえ、奇跡を具現化するなんて朝飯前だわ。そりゃチート行為し放題ね。」
でもサモナー、熱量と重量が他のサーヴァントと比べて以上なんだ。
召喚士であるがために、何かを召喚するにあたり、周りのデータを取り込み、変換する。
その際、取り込んだデータは溜まる一方で、分解でもしなきゃ消えないんだ。
それに、私と正式な契約を結んでないから、魔力の供給...パスも繋がってない。
召喚の規模にもよるけど、召喚に生じる魔力はサモナー自身の魔力で補ってるから、聖杯の力なんて使ってないと思う。
「へ?貴女達、パスも繋がってないまま二回戦を超えたの?!しかも、貴女の相手って一回戦はシンジで、二回戦はダン卿だったんでしょう。本当にここまで良く生き残れたわね...。」
いや何度もサモナーは死んだよ。
一回戦毎に必ず一回は死ぬ!絶対に死ぬ!何が何でも死ぬ!うっかりで死ぬ!
のどれかで死にます。
気が付けば、血塗れ、ってことになってる時があってさ...気絶するかと思った。
「何でそれで貴女が生きてるのよ?!サーヴァントとマスターは一蓮托生・・・って、そうか。正式な契約もしていないし、パスも繋がってないんじゃ……でもおかしいわね。」
何でも、サモナー曰く。
私と共に居る限り立ち上がり、サモナーを傍に置く限り私は死ぬ事は無いって。
実際にサモナーが何度も死んでも、すぐに立ち上がって傷塞ぐし。
私が死んでも………どうなるんだろう?
「ちょっと貴女のデータを覗かせて貰っていいかしら?別に記憶をいじったりなんてしないから。」
別に構わない。
それに、遠坂はそんな悪質な事はしないと信じてるから、そこは大丈夫。
「な、なによそれ...いい、貴女と私は敵同士。何も知らない貴女を殺しても、私の気分が悪くなるから、その為なんだからね!!!」
そ、そんなにムキに成らなくても良いと思うんだけど...
「う、煩い!そして、あんたは茶々を入れるな!」
どうやら遠坂のサーヴァントが面白がって何か言ったのだろう。
まあ、その気持ちは分からなくもない。
「あー、もう!じゃあ、良いわね。」
遠坂の手が、私の額に触れる。
これで、私の記憶が少しでも戻ればよいのだが……
「え………うそ、でしょ?」
だが、現実は思ったよりも酷く、私の気持ちを容易く裏切るのだった...