小さな生き物たちの足音を、聞いたことがあるだろうか?
小さき者たちにとっては当たりまえだが、大きな者たちは、その足音を聞いた事が無い。
それもそうだ。
己よりも小さき者の足音など、聞こえはしない。
だが、もしも、その音が聞こえるようになったら…君は、どうなるのだろうか。
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「お姉ちゃん、こっち!」
「早く早く!」
ありす達に手を引かれ、私は廊下を駆け抜ける。
いや、今現在疾走中だ。
原因は...勿論、私達を追いかけて来る、アレだ。
後ろに振り向けば、迫って来る底が知れない黒いバグの様な蜘蛛や、四肢が柔らかい不気味な人型をした何か。
まるで、アリーナに出て来る敵性プログラムのようだが、それらとは、全く違う部分が一つある。
それは……
「お姉ちゃん、危ないっ!」
「白兎さん、お姉ちゃんを助けて!」
黒いアリスのお陰で、迫って来る意味不明な軍団に捕まらずに済んだ。
ありがとう、と礼を言う。
しかし、これは一体何でこうなったの?
「そんなもの、アイツの所為に決まってるわ」
「そうよ。お姉ちゃんに酷い事ばかりする、アイツの所為よ」
アイツ...、って言えば、サモナーしか出てこない。
前にもこんな事件があったしね...キャンドル大量発生事件が懐かしいね。
傍から見れば、呑気に話しているようにも見えるが、実際にはかなりギリギリだ。
アリーナに入れば楽になるかもしれないが、何故がアリーナに移動できないし、言峰にも連絡を取ったけど、「何やら、おかしなバグがムーンセルに入り込んだお陰で、処理が間に合いそうにない。もうじき収まると思うが、それまでは頑張りたまえ。」、とか言われた。
あの神父……端末越しでも分かるくらい喜んでたよ。
「ねえ、
「駄目よ、
「でも、このままだと、お姉ちゃんが獲られちゃう」
「折角お姉ちゃんを助けることが出来たのに」
「これじゃあ、意味が無い」
助けた...?
私を?
私は別に、囚われのお姫様とか、そう言うものではないけれど。
「違うの。違うの。お姉ちゃんを見つけた時には、もう遅かった」
「あんな奴に魅入られてしまった、可哀想なお姉ちゃん」
「だから、
「あいつの瞼が閉じる時を」
瞼を...一体どういう事だろう?
今現在走っていなければ、じっくり聞きたいところだ。
カサカサなどと言う可愛い足音では無く、カツンカツンと、金属を叩いている音がする。
それに、足音もそうだが...何より敵性プログラムと違うのは...
『ハクノはくの白野をカエせ』
『返してかえせ帰しなさい』
『アアアアァァァァアアァァァア』
等と言う、聞きなれた声と、意味不明な泣き声。
これはもう...サモナーだろ。
だって、アリーナの敵性プログラムは問答無用で襲い掛かって来るし、鳴き声とか上げないもの。
それに、私の名前呼ばないから。
一体どうなっているのかは知らないが、サモナーは辛うじて姿は保ててはいるが、その原型は崩れかけている。
片足が骨となり、蔦に絡まれ、尻尾…みたいなのも生えてるし。
サモナーの周りが、何故か一種の結界みたいに歪んでいる。
驚くべきことに、サモナーの異形化は今現在…進んでいる。
こうして、私とありす達が逃げている間にも、サモナーは着々と異形のものへと変貌し続けている。
学校のデータを取り込んでいるのだろう。
まあ、幸いな事に、凛やラニと言ったマスター達や、NPCは取り込まれてはいないが...恐らくそれも時間の問題だ。
最悪のパターンは2つ。
1つは、このまま逃げ続けていれば、聖杯戦争参加者を取り込んで終うかもしれないという事。
1つは……
橙子さんが言っていた、最悪の場合。
サモナーに取り込まれた様々なデータが一つに固まり、凝縮、凝固、圧縮、圧迫、等を繰り返し…最後には、爆発する。
爆発は、取り込んだデータの量と熱量によって、爆発の規模が変わるらしいが...
サモナーが今まで取り込んだデータなど、検討も知れない。
何かを呼び出すには、捉え・命令・解析・復元して、ようやく召喚できるらしい。
だが、橙子さん曰く、過去の英雄にそんなことが出来る英雄はいない。
ソロモン王も、そんな事は出来ない。
そんなもの、別の世界を知っていなければ不可能だ、と。
『Vaaaaaaa!!!!!』
これ以上ない怒涛に満ちた声。
それはまさに
同時に……
「なによ...あれ?」
「うそ…うそようそようそよ!!!だって...アレは...」
橙子さんや青子さんが居る教会までもうすぐだと言うのに、白いありすと黒いアリスは立ち止まる。
何故ならば、目の前にサモナーが出会った時の笑顔で、行く手を防いでいた。
立ち止まったのは...まだ良いとしよう。
だが、ありす達の様子がおかしい。
「あなた、もしかしたらと思ってたけど...やっぱり■■■■なのね」
アリスがありすを庇うように前に出る。
サモナーは...先ほどと変わらず微笑んでいる。
後ろは、お前もうバーサーカーで良かったんじゃないか?と疑問を抱くような姿をしているサモナー(多分)。
前には、不気味さなど感じられない微笑みで、立ちふさがっているサモナー(多分)。
どちらが本物…?
いや、本物などあるのか?
『
二つの
これは...どちらもサモナーのものだ。
サモナー。私は大丈夫だから、部屋に帰ろう。
三回戦目のマスターが発表される頃合いだろうしさ、ね?
その瞬間、小さな悲鳴が上がった。
まだ寒い