Fate/Rage   作:ぽk

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近づく足音

 

 

それは小さな悲鳴だった。

 

悲鳴を上げた少女は、時が衰退したかのようにゆっくりと床に倒れる。

 

何があった?

一体何が起こった?

 

何も見えなかった。

それに、彼女が一体何をしたと言うのだ。

 

まだ幼く、私の手を取った...ありすに・・・

 

 

「ありす?!一体どうしたの、ありす?!ねえ、起きて頂戴!」

 

 

白いありすが倒れて、黒いアリスは急いでありすを抱き起す。

必死にありすを起こそうと、身体を揺らすアリスだが、ありすは覚めない。

 

白いありすが倒れたのが満足なのか、目の前のサモナーは笑顔だ。

だが、目の前のサモナーは...やはり違う。

 

幾ら姿かたちが一緒でも、この目の前のサモナーは全くの別人だ。

そう...例えば、姿だけを似せた、中身のない縫い包みだ。

 

 

あなたは誰?、と言う。

 

僕は君のサーヴァントだよ、と返される。

 

違う。あなたはサモナーじゃない、と言う。

 

何を言うんだい。僕は、君のサーヴァントだよ、と返される。

 

 

私の横で、必死にありすを起こそうとしているアリス。

その瞳には、零れてしまいそうな涙が溜まっている。

 

 

私のサーヴァントは、こんな事はしない。と言う。

 

何を言うんだい。僕は、マスターの命令に従っただけだよ。と返される。

 

 

目の前のサモナーが、黒いアリスに指をさす。

すると...後方に居る、異形の姿をしているサモナーが、獲物を見つけたかのように、サモナーの瞳孔が大きく開かれた。

 

それは、私では見えない。

それは、私では捉えることが出来ない。

それは、私では捕まえることが出来ない。

 

一瞬の内だった。

 

ほんの一瞬…いや、何が起こったのか分からないが、異形の姿をしたサモナーの口に銜えられている小さな手を見れば、直ぐに分かった。

 

 

「えっ……?」

 

 

それは、アリスにも分からなかった。

何故ならば、ありすを抱きかかえていた腕の一本が、根元から食い千切られていたから。

 

食いちぎられた腕は、骨を掻き砕く音と共に消えた。

 

 

「あ...ああ、あぁあ...駄目よ、駄目なの。」

 

 

アリスは必死に首を振る。

それはまるで、何かを抑えようと。

 

 

あたし(アリス)が、アリス(あたし)で無くなってしまう...。いや、いやよ!止めて、あたし(・・・)を破かないで!!!」

 

 

すると、アリスの千切れた腕の痕から、本のページが大量に溢れて飛び出してきた。

ありすとアリスを中心に、それは頁の嵐を生む。

 

私はその衝撃で、保健室の扉に身体を打ち付けた。

 

気絶はしなかったが、私に危害を加えたと思ったのだろう。

最早、人の姿をしてはいないサモナーが、前足に力を込めて、前進する。

 

頁の嵐は、それを防ぐかのように激しさを増す。

一枚一枚が、鋭い刃物の様な切れ味に変化した。

 

仕返しとばかりに、前足の一本が切り裂かれる。

 

だが、切り裂かれた前足は、歪に再生し、変化する。

自己改造…自己変化…いいや、どれも違う。

 

あれは変化や改造なんかでは無く、進化や成長に似た何かだ。

 

そうだ。あのサモナーはデータを今の取り込んでいるのだ。

人か呼吸をする様に、サモナーはデータを食べている。

 

データに対象など無く、壁や床、窓ガラスや天井、無差別にデータを取り込んでいる。

 

データを取り込めば取り込む程、サモナーは進化し続けている。

獣一歩寸前の姿だが、これ以上無差別にデータを取り込めば、最悪の事態が待っている。

 

それをきっと分かって、サモナーはデータを取り込んで(食べて)いる。

 

 

「これ以上、あたし(ありす)アリス(あたし)に近づかないで!!!お姉ちゃん返すから、あたし(ありす)に近づかないで!!!」

 

 

魔力の刃が、サモナーの身体に深々を突き刺さる。

だが、どうだろう。

 

サモナーの身体は、その魔力をも取り込み、自らの進化を催促させる。

もうあれは人では無い。

 

 

様々なデータが無理矢理繋がり、ギリギリ形として留めているだけ。

ソレに名は無く、あるとすれば…そう。

 

 

「いやっ…来ないで!来ないで!!!い…いやぁあーーーーーー!!!」

 

 

 

無慈悲な暴力だ。

 

 

 

命を奪う事に特化した爪が、全てを屠る。

ありすを...傍に居たアリスさえも...

 

爪痕は大きく残った。

・・・もうその場には、何も無かった。

 

何も...何も。何一つとさえ、残ってはいない。

 

 

ハラリと私に降って来たのは、一枚の頁だった。

 

 

籠の中の鳥

鳥は自分の姿を知らない

籠から逃げたい鳥に

自由を上げようとしたら、あら大変!

籠が鳥に絡みつく

籠の棘で、鳥の翼は血塗れだ  

鳥の自由は籠の中

 

 

痛みに暴れる哀れな鳥

途中で気づけばまだ間に合う

けれど、籠が全てを覆う

鳥を護る籠だけど

棘があるのは、なぜだろう?

 

 

見たことも無い詩だ。

他の頁は、全て消えたと言うのに、どうしてこれだけが...

 

この詩を見た時、ざわざわと胸が騒ぐ。

どうしてだろう...

 

 

目の前のサモナーよりも、異形の姿のサモナーよりも…

 

 

私は何故か、この詩が怖かった。

 

 

 

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