あの後、私は気を失った。
理由は言わなくても分かる。
サモナーだ。
オーバーヒート寸前のくせに、保健室周辺のデータを問答無用で食べまくったからだ。
熱量が凄まじい事になり、電撃にも似た痛みが、私に降りかかったのだ。
幾らデータであると言えど、過度な量は身を滅ぼす。
サーバーがキャパオーバーしているようなものだ。
いや本当に勘弁して欲しい。
そろそろ私、死ぬぞ。冗談ではなく、自身の
「白野さん白野さん。そろそろ起きてくれないと、色々と大変だよ。具体的に言えば、僕ら絶体絶命だよ」
起きたくない起きたくない。
目覚めて、最初に見るのがサモナーなんて、嫌だ。
そもそも絶体絶命な状況なんて変わらないさ。
暖かい布団の中に、私は引きこもる。
籠城だ、籠城。
「いや君がそうしたいのなら、布団の中だろうとデータの中だろうと籠城すればいい。僕は止めない。でも今は少し起きてくれないと困る状況下なんだ」
困るのは私の方だ。
何が悲しくて、こんなサーヴァントと一緒に居るのか、未だに理解できない。
ああ、何故私はこんなサーヴァントを持ってしまったんだ?
「まあまあ、でも起きないと大変なのは、本当だよ。僕たち、粛清対象になっちゃたから」
がばっ、と布団から飛び起きる。
何だって?サモナー、今、なんて言ったの?
「粛清だよ。セラフが遂に怒っちゃったんだ。まあ、思ったよりは遅かったけどね」
ハハハ、とはにかむサモナー。
ちょっと待て。待ってくれ。
粛清対象って何ですか?ちょっと怖いんですけど。
「ほら、僕ってさ色々とルール範囲外の事ばかりやって来ただろ。それが、あの鬼ごっこでバレちゃったんだ。まあ、よくある事でしょ」
よくある事ではありません。
……もしかして、粛清って私達消される?
「んー。違うよ。粛清ってのはね…」
今生き残っているマスター達に、滅多殺しにされるんだよ。
静かに。
水の音が聞こえない静かな声で、サモナーは言った。
今生き残っているマスター達に殺される。
どう考えても生き残る事なんて出来ない。
それに、それだけのルール違反をしてきたのは確かな事だ。
不安な筈なのに、何処か安堵感を、私は覚える。
ようやく、これで解放される…などと、何故思うのかは、分からなかった。
「まあ、大丈夫大丈夫。今生き残っているマスター達は、大体30人だから...まあ、いけるね」
コートのポケットからカードを取り出し、枚数を数えるサモナー。
いやいや、いけませんいけません。
どう考えても死ぬからね。
遂に終わりがやって来たんだよ。
だけど、サモナーは笑う。
「大丈夫だよ。それに、もしも100以上のマスター達と戦っても、僕は死なない」
私の眼を見て、サーヴァントとは笑う。
それは、確信よりも、真実に近い眼差しで。
そうだ。私は、この眼差しを、この目を、私は知っている。
だって、このサーヴァントは…
「あ、そうだ。君が粛清対象に成った事で、僕のステータスが皆にバレてるんだっけ。いやー有名人って困るね」
……………………は?
「ハンデだよ、ハ・ン・デ。僕ってば君といる限り死なないからね。どんな攻略をするのか、楽しみだね、マスター」
楽しみじゃないです。
これってもう負けていいよね?!いや、負けよう!全力で負けよう!!!
「何言ってるんだよマスター!?これは、起死回生のチャンスでもある!ここで、マスター達を半数位倒せば、楽に聖杯に進めるんだよ!心配しないで、僕は君と共に在る限り、僕に死は訪れない」
ムーンセ――――ル!!!?
今すぐ消去に来てください!!!
このサーヴァントやばい!
色んな意味で、いや本当に危ない!!!
マスターの皆さん、超逃げて!!!
…って、待てよ。
私が粛清対象に成った事を、凛やラニは知っているって事だよね。
「まあ、そうだね。如何するマスター。もしも、彼女たちが襲ってきたら、君はどちらを選ぶ?」
何言ってんだお前?
「そう冷たくしないでよ。で、君なら遠坂凛かラニ=Ⅷ…どちらを救う?」
そう言って、サモナーは私にカードを2枚渡す。
碧いカードには凛が。
紅いカードにはラニが描かれている。
遠回しに、きっとサモナーはこう言っている。
「どちらの友の手を払い、どちらの友の手を取る?」
此奴は私に選ばせようとしている。
サモナーを見れば、まるで何事も無いように微笑んでいる。
…最近、この微笑みに多少イラッと来ることがある。
そんな訳で。
2人とも救います。
いや、もうこれ以上…あなたにマスターを
「…………………」
サモナーに、カードを押し付けるかのように返せば、目を見開いて驚いている。
「...君は」
ん?
「君は、僕の■■によく似ているよ。全く...これだから、楽しいんだよ」
はい?
僕の何だって?
「気にしないで。まあ、マスターである君の意見を尊重して、余り殺さないようにするよ」
余りじゃなくて、殺さないで下さいよ。
ホント、これ以上戦えば、サモナー…爆発するよ?
「大丈夫。データを馬鹿食いするクラスを、僕は知ってるから。さ、マスター行こう」
手を差し出され、本当は嫌で嫌で仕方がないのだが…被害が大きくならない様、私はこのサーヴァントの手綱を掴んでおく必要がある。
この手を取れば、私は更に目覚める事は無いと分かっても、私はサモナーの手を取るのだった。
退院したよ