それに意思がなければ意志もない。
ただ立ちふさがる敵を完膚なきまでに潰すこと。
彼に正気はなく、ただ動かされるままの人形だ。
人形は糸で吊るされている訳でも無ければ、手で操っている訳でもない。
彼を動かしているのは、そんなものではない。
ただの、心だ。
衝動に駆られたその心、求める者はただ一つ。
壊れ果てるまで、戦うのみ。
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ルール違反者には、鉄槌を。
立ち上がれぬほどの痛みと絶望を。
そして、死を。
3回戦目が、開始される6日前。
私が遂に、裁かれる時が来た。
月の聖杯戦争では使われる事の無い、体育館。
そこにいるマスターは、私だけではない。
これまで、行われた死闘に勝ち続けたマスター達。
その殆どが、この体育館に集まっている。
「いやはや。最初は128人もいた人間たちも、今はその半数以下とは...やっぱり人間は減っていくことに関しては、素晴らしいものを持っているよ」
私の隣にいるサーヴァント、サモナー。
何がしたいのかよく分からない、何を行っているのかも不明、そして、未だにその真名が明らかになっていない、得体のしれないサーヴァントだ。
全く、どうしてサモナーは、私と一緒に居るのか分からない。
「だけど、楽しくなってくるじゃないか。僕は好きだよ、完膚なきまでに殺しにかかる、その姿勢。セラフも、いいNPCを選んだことだ。ワクワクするよ」
この状況を見て、ワクワクするなんて...やっぱりこいつはおかしい。絶対に可笑しい。
人間止めてるどころじゃない、神性生物を見て「かっこいい」、と言っているようなものだ。
「お気に召してらえて何よりだ。何故、この様な場が用いられたのか理解しているな?」
「勿論。と言いたいけれど、分からないから教えて欲しいな」
言峰の問いに対して、白々しいにも程があるよ、サモナー。
お前がやらかしてきた事なんて、最初から今までを言うと、泣きたく成るどころの話じゃないから。
一発殴らせてほしい。寧ろお前の髪の毛、全部引っこ抜きたい。
「
「はっはっは。褒めてもいいよ。寧ろ褒めるべき場所だね。僕が如何に凄いか、此処に居るマスター達に知れ渡るんだ。遠慮はいらない、メガホンあるよ。使う?」
「いや結構だ」
呑気に会話をしている場合ではないというのに、何でこんなに生き生きとしてるんだろう。
体育館の二階の手摺には、生き残ったマスター達。その中には、凛やラニ。そして、レオの姿もある。
「では、時間がもったいないので始めるとしよう」
言峰の、その手には、1枚の赤いカードがある。
「諸君らには、メールと共に付属させておいた、1枚の赤いカードが有る筈だ。それを使い、今からゲームを行ってもらう」
ゲーム?
集められたマスター達も、説明されなかったのか、驚いている。
「ルールは勿論簡単だ。君達の手元にある赤いカードを、特異中の特異サーヴァントである。サモナーに触れさせてしまえば、君たちの勝ちだ。勿論、誰かひとりでも触れさせたら、それも君たちの勝利だ」
「そんな簡単なルールでいいのかしら?それと、私たちが勝利したとして、なにかメリットがあるとでも?」
口を出したのは、凛だ。
此方を見つめる瞳には、敵意は感じられない。けれど、此処に居るという事は、私を倒すために来たという事なのだろう。
「そうだな...。私もこれまで行われた聖杯戦争でも、これほど特異な事例は無かった。なので、もしも君たちが勝利したのならば、3回戦目の戦いの相手を、自由に選びたまえ。それが、勝利者への褒美だ」
会場が騒めく。
当り前だ。セラフが選ぶのではなく、個人で相手を決める事の難解さ。褒美と言う割に、とても無理がある。
「なによそれ!褒美なんてものじゃないでしょう!ただの嫌がらせじゃない!!!」
うん、そうだね。全く持ってその通りです。
「そうかな?僕が知ってるところなんて、目と目が合ったら即戦闘だったから、まだ選べるだけましだと思うけどな」
お前は一体、どこの英霊なんだよ。
そんな危険な時代にいたのか、サモナー。
「いや危険というよりも、王様決定戦みたいな…んー、なんだろうな。お祭りかな?」
私に聞かれても困る。
それに、なにその王様決定戦って。
「ゲームの王様を決める戦いだよ。誰が一番優れたゲームの王か決めてたかな?まあ、上位に行けば行くほど命を落とす、危険性があったね」
何それ。こわ。
そんな時代に生きてたのか…。
「正確には、今も生きてる。だって僕の名前は ▬▬▬ 」
…ナンデスッテ?良く聞こえなかったんだけど?
サモナーは確かに、己を指し示す名…真名を言った。だが、なぜだろう。私には聞こえないのだ。聞こえている筈なのに、分からない。音として、データとして、理解が出来ない。
本当に、
「良いんだ…だって君は、まだ僕を知らないから。知らないから分からないんだ。君と僕は、未だ出会ってすらいない。君が君で居る限り、僕が君と出会う事は決してなかった。けれど、あの選択を、あの最後の瞬間にだけ、君は僕と繋がった。まあ、それも一方的なものなんだけどね。君が僕の名を知る時が来れば、君は全てを知る。そう...全てを、ね」
サモナーの武器である、カードが流れる星の如く体育館に降り注ぐ。
淡く光ったり、強く点灯したり、まるで生き物のように点滅して降り注いでいる。
「さあ、ゲームを始めよう。いかに簡単なゲームとて、本気にならなければ泣くことも出来ずに終わってしまうよ。それが嫌なら本気で来るが良い。君達が倒そうとしている相手が、一体何者なのか…その全てを以って教えよう。かかって来い、光の子らよ!」