痛い。
そう感じるのがやっとだ。手や腹にどてっぱらを開けられて、痛いだけなのは幸いだ。それしか感じられないという事は、それだけしかないという事だ。
正式な契約なんて、、、端から結べるものじゃない。僕と言う存在は、余りにも大きすぎた。
彼女と僕をより深く繋ぎとめておくにはアレしかないと思ったからだ。
強引だろう?だが、それで僕と言う。
彼女にとって僕はきっと許されない。それが、僕なのだから。
いつだって、僕は光には勝てたためしがない。
でも、それでも、僕は光が恋しい。
愛おしく、愛しみ、愛情、親愛、敬愛、一つにまとめてもまとめられない。
僕にとって、光は彼女。
彼女は光。
深海に差し込む光そのもの。
眩く、守り、憧れ、手を伸ばし最後には
それまでは、僕は獣となり、闇となり、敵となり、最後には君の傍に居るのだろう。
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you are my master ... no you are my hunter
so...you kill me at any time
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「ほう、まだ立ち上がるのか」
眼前には血に染まった獣ではなく、身体に幾つもの穴があいている獣が一匹。
その後ろには外傷こそ見られないが、疲労しているルール違反者が一人。
獣は初めから獣だった。
外装を脱ぎ捨てたものの毛皮の下には骨だけ。
いや他にもあった。
存外大事にしていた月の蒼い光が、呼吸をしているかのように点滅している。
幾らその身の特権をはがしても、その身ごと脱ぎ捨ててしまうため埒が明かない。
「これほど奪ってもまだ立ち上がるのは興味深い。一体君のサーヴァントは何処の出身なんだ?」
言峰...そんなものは私が聞きたい。
一種の戦場と化しているこの場で、何食わぬ顔で話しかけてくる。
もともとこういう人だったのかもしれない。
ムーンセルに記録された元の人物はさぞ、良い趣味を持っていたに違いない。
視線をサモナーだったであろうサーヴァントに向ける。
皮膚は剥がれ、その中心には蔦に守られている碧い月の結晶。
人だった面影は全く残っていない。
顔も潰れており、何処で呼吸をしているのかもわからない。
それはあの時見た獣と同じ姿をしている。
「先ほどムーンセルに君のサーヴァントの真名を送って来るよう申し込んだのだが、よほど嫌われているのだろう、その名はバグで染まっていた。いやはや、面白みがあるサーヴァントはやはり良い」
ソウデスカ。其れは良かったですね。
お陰でこっちは赤いびーむだの落とし穴だの鉄の雨だの避けるので疲労困憊だ。
「それは恐らく君を狙ったわけではないだろうが、君も十分に諦めが悪いようだ。良い加減ここで諦めてしまってはどうかね」
諦める?
この状況で、私は諦める?
確かに、この状況なら諦める方が早いし、狭い体育館内で逃げる必要もない。
サモナーだった黒い獣を見る。
飛んでくる赤い星を払いながら必死に抗っている。
その身体のいたる個所からは、ドロドロとした赤い血が流れているにもかからわずだ。
手を撃ち抜かれても、足を砕かれても、獣は倒れない。
...言峰。
諦めるのは簡単なんだ。
もう進めなくていい、もう立ち上がらなくても良い。
それは分かっているけれど、私は諦めたいとは思っていない。
だって、諦めることをしないことが、私にできるただ一つの事だから..!!!
「ガァ”ァァ”ァァァ”ァァ”ァァァ————————!!!!」
え?
サモナーが咆えた。
顔ないよね、顔ない筈なのに何処からそんな地獄から出て来たような声が出るのさ?!
「何でだあ゛!何で手に入らないんだよ!!!君に肩入れするのは僕だけかと思ったのにどうしてあんな奴らにモテてモテてモテまくってるのさ!?あ゛あ゛あ゛ァ”...何処に行っても邪魔は入るし、ちょっと近づいただけなのに刺されるわ撃ち抜かれるわ呪われるわで殺されるしで酷いよ゛。取り敢えず今のところはまだ気づかれていないのが幸いだ。ウグァァァ”アァァァアアアア—―—————!!!!」
ちょっと何言ってるのかさっぱりわからないんだけど、サモナー!
頼むから黙ってくれないかな!?いや今すぐに黙って欲しいな!
ついでに話せるんなら、もとの姿に戻って欲しいな!
顔のない獣は意味不明な事を叫びながら走り回っている。
一体奴に何があったというんだ...。
取り敢えず元気そうなので元に戻って欲しいです。
「えー...こんなに僕が身体を張って逃げ回ってるのに酷いなあ。見てよ、この醜い姿を。こんなに醜い獣の姿になっているのに、誰一人始末してないんだよ?そこだけは褒めて欲しいなあ...姿は醜いけど」
いやいやさっきのよりはマシだよ。
さっきまで顔なかったし、そっちの方が怖かったよ。
今は...なんか山羊か牛の頭蓋骨を足して角をはやした感じの骨になってるからまだマシかな。
「そこは素直に顔と言ってくれないのね...」
いやだって骨に変わりは無いから。
今の姿の方が十分獣らしいからそのままでお願いします。
「えーーーー、そこは元の人の姿に戻って欲しいって言う所じゃないの?!人の姿の方がかっこいいでしょ?!いや眼鏡かけたら君の好みの顔になってるでしょ!?」
何を言っているのかさっぱりわからないが、きっとサモナーが眼鏡をかけてもそんなにかっこいいと思わないんじゃないかな。
正直、人の姿でいるよりそっちの姿で居てくれた方がまだ安心する。
「オウフゥ...なんてこった。こんな切羽詰まった状況で言葉の剣が刺さった。うん、間違いなく刺さったな、心臓にぐっさりと刺さったね」
それは良かった。
其れよりもサモナー。今この状況を如何にか生き延びたいのだけれど...って、体育館の隅で縮こまってる場合じゃない。
サモナーの力を借りたいんだ。
力を貸して欲しい。
「......こんな時に言うのもアレなんですけどね、白野さん」
ん?
「この戦いが終わったら、僕と結婚してくれない?」
.........新手の詐欺か?
それとも、新種の悪だくみか?
そう言って、また事件に引き摺り込むんだろう?
いやいや、流石に2度目は引っかからないよ。
契約書にサインとかしないから。絶対にしないから。
「いや僕が言っている結婚は其れとはちょっと違うんだけど......まあ、君が手に入るのならそれもいいか!!!」
よくないぞ。全く持ってよくない。
其れよりも、サモナーが言ってる結婚って何さ?!
先ほどよりもまして赤いびーみが飛んでくる。
なんか威力上がってない?!
絶対に私狙ってる誰かの仕業だよね?!
「なーに、僕の言う結婚はね...」
サモナーの身体が黒い霧に包まれる。
靄がサモナーを隠していく。
「光を、闇より深い深淵に引きずり落とすことだから...ね。落としてあげるよ、マスター」