Fate/Rage   作:ぽk

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いま、ふたたび

 

 

 

 

 

 もう何度も見ている夢を見る。

 後悔と無念。許してくれと言う懺悔の叫び。

 少年が泣いている。消えゆく友をその瞳に移しながら。

 彼は、どうして泣いているのだろう。

 友達の為...いや、彼が泣いているのは友の為ではない。自分の為だ。

 

 美しき永遠とも続くかと思われた、あのありふれた日常。

 他愛ない話に友との語り。その全てが大切なモノで、愛おしいとさえ思われていた。

 

 だが、永遠は所詮は儚き時の中。

 彼らの運命は、別れ。

 

 大切な大切な日常。

 

 それをとても大事にし、愛しみ守り通していた。

 

 だが、それが駄目だったのだ。

 愛おしいものは崩れ、友は死に、日常は戦場へと変わった。

 愛さなければ良かったと後悔しても無駄に終わる。それは全てを奪うのだから。

 

 いや、全てはあるべき場所に還った。ただそれだけな事。

 それにアレは眩しいものを好み捕食し、胸の内に閉まっておくのがアレの趣向。

 

 最後には自信が滅ぼされると知りながら光を喰らい、汚し、閉じ込める。

 もともと自我など無かったにも関わらず、何故人に寄り添うのか。

 決まっている。

 

 輝く光よりも先に、アレは生まれていた。

 何もなかった無の宙に生まれた小さな光。其れはアレにとってとても眩しく輝き、とても美しく、飲み込んでやりたいとさえ思っただろう。光が生まれたのと同時に、アレは芽吹いた。

 

 光の輝きが陰るとアレは自らを差し出し光を存命させた。

 何のために?決まっている。アレは酷く光に弱く、同時に光を愛おしんでいる。

 

 虚無の宙に輝く光。

 なんと、なんと美しく見えたのだろう。

 

 やがて1つの光が分かたれ、小さな光は宙の彼方にまで散っていく。

 見届けたそれは、役目を終え何をすることもなく静かに眠った。

 

 だが、それは間違っていた。

 

 眠る事で光の成長を催促させることが出来ると踏んだのだろう。

 しかし光はアレが思っていたよりも脆く、不安定なものだった。

 自ら輝くことが出来ても影さえも塗りつぶしてしまう強烈にして凶悪な光。

 

 無垢な宙は一瞬にして何もかもを塗りつぶす光に侵された。

 光は、影があってこそ儚くも美しい現象を生み出すのだ。それをただ光のみ輝いても、それは美しさとは違う。残酷に過ぎない。

 

 じわじわと侵食して来る光に、アレは目覚めざるしかなかった。

 その時瞳があったのなら、何もかもが閃光によって塗りつぶされた眩い宙に違いない。

 

 泣きじゃくる赤子をあやす様に、ソレは優しく光を包み込んだ。

 この中でなら淡く輝き、温かな光で居られる。

 

 故に、共に眠ることにしたのだ。

 

 何もない宙に輝きを放つ光とそれを保護する()

 お互いが欠けてはならぬ存在であり、お互いが侵食する存在でもある。

 

 意志もなく自我もない。

 ただ何もない宙を照らす光に寄り添う闇。

 

 最初は其れだけだった。それで良かった。

 安心できる宙に漂う石は身を任せた。

 

 けれど、それも長くは続かなかった。

 

 始まりは小さな石の衝突から。それから大きな大きな石が生み出され、自ら輝く石も生まれた。

 そこから狂い始めたのは光から。光が一瞬の瞬きならば、自ら輝く石は永劫とも呼べた。それが幾つも生まれ、いくつも光と違い自ら輝いた。

 

 光から生まれたわけではなく、自ら光を生み出す石に光は狂った。狂ったからこそ、闇を侵食し、尽きた時に何もかもを破壊した。

 そんな光に最後まで闇は闇であり続けた。

 

 だがそれも、やはり時間の問題だった。

 

 石は大きくなり、その表面で種を芽吹かせ命を生み出した。

 そこからだろう。はっきりとした意思はなかったが、此処で光と闇は引き離された。

 狂い続ける光を包んでいた闇は無くなり、光は石に降りかかった。

 

 その結果、石は益々大きくなり命を生みだした。

 降り注ぐ光は命を育み、命の心かを促した。いや違う。進化などではない。ただ無情にして無慈悲に光は降り注いでいるだけに過ぎない。光が暖かさをくれるというのなら、その逆はどうなる?

 

 それが起きてしまったのは更に石の生命が進化し、人間が人と呼ばれる以前の時代。

 温かな光は人に安心を与えた。いや与え過ぎた。

 光が人を照らす時間がある。その時間を過ぎてしまえば、人は人と見えなくなる。

 そう、闇が残ってしまうのだ。

 闇の中で輝いていた光が去ってしまえば、後に残るのは何も見えぬ闇。

 見えない恐怖。

 それを人が知ってしまった。

 

 安心できる光から生まれた人は、光がなくなる恐怖に怯えた。

 闇に潜み、闇と共に生きる存在に人は怯え続けた。

 

 怯え続けた人の中には恐怖のあまり自ら死を選ぶ者もいた。

 だからこそ人は闇を恐れ、憎み、怒った。

 

 だからこそ、闇は悪性な存在として化した。

 

 光から生まれた火が人に渡れば、人は大いに喜んだ。

 そして火を祀った。闇を消し去る光として。

 

 光が神聖なるものならば、闇は邪悪なるもの。

 闇は恐怖を呼び、人を惑わし死に至らしめる悪として。それを消し去る光を敬った。

 

 人が人として呼ばれるようになれば、闇は光と完全に引き離される存在になった。

 お互いが必要とし、お互いが無ければならないというのに光は完全に闇を失った。

 それは闇も同様に傍に寄り添った光を失った。

 

 そして光を失った闇は、とうとう狂った。

 

 闇は畏怖するものであれ、闇は死を招くものであれ、闇は悪を生み出す邪悪であれ。

 

 人に悪とされ、光を失った闇は彷徨い、人に寄り添った。

 その後ろにそっと影を作り、人に寄り添った。

 

 しかし人は光では無い。光の元に生まれたものにすぎない。

 虚無の闇に自ら輝くことが出来ない人が耐えられるはずが無かった。

 

 幾ら光の加護が有ろうと、光が狂ってしまっているのだから意味はない。

 闇は人の心に入り込み、闇と言う名の悪が芽吹くのを待った。

 

 惡の華。闇が光の代わりに求めた美しいもの。

 それが人の悪意。いや、悪意に限らず人の負の感情を美しいとした。

 

 人が生まれる前に神がいたが、やはり闇を恐れた。

 中には闇を生まれた場所と親しんだ神もいたが、少数である。

 

 人にも神にも恐怖の対象として捉えられた闇。

 故に人と神に恐怖を振りまく。それを人が望み、それを神が望んだ。

 なにもおかしなことはない。闇はただ望まれた恐怖を振りまいただけなのだから。

 

 恐怖であれ、死であれ、奪うものであれ。

 

 闇は多くの人と神から恐れられた。なんせ敵がいなかったのだから致し方ない。

 

 敵対者がいない闇は人に悪の種を植え付け、神には死の恐怖を与え続けた。

 何もなかった宙は闇が全てを飲み込んでいった。

 

 けれど、そんな時に。いやそんな時だからこそ光は正常に戻った。

 寄り添い合ってきた闇が人と神に恐怖を与え、宙を何もなかった虚無に戻そうとしている事に気付いた時には手遅れだった。

 

 闇は深く深く人に寄り添い続け、もう光の元には戻れない状態にあった。

 闇は悪として、光は正義として戦い続ける運命にされた。

 

 それは宙も同じこと。

 闇が全てを飲み込むものなら、光は全てを創り出すもの。

 

 何も持たなかった闇が悪とされ、ただ輝いていた光が正義とされた。悲しいことだ。ああ、とても悲しい。

 寄り添い続け、人ならば友と呼んでも良い筈なのに戦い続ける定めとされ、解放される術もない。

 

 これを悲しまずになんという。苦しみそれとも憎しみか?

 いいや、いいや。

 これはきっと怒りに違いない。

 度し難いほどの憤怒。人と神によって形を成され、その在り方を悪とされ、断罪されてきたこの怒り。

 なら人に、いや神にも味わってもらおう。この怒りを。

 戦い続けるのが定めと言うのなら、お前たちにも狂気と戦ってもらおうじゃないか。

 なに、心配は要らない。光の祝福を受けたお前たちなら簡単だろう。

 なんせ、私を殺せばいいのだから。

 

「ねえ、白野」

 

 ......。

 

「霊子虚構世界は魂のみ存在することを許される世界。だから本当は夢とか見ない。魂が見るんじゃなくて精神が夢を見るからね。でも君は夢を見たという。サーヴァントと正式に契約したマスターであれば、パスを通してサーヴァントの過去を見ることが出来るけど、僕と君はそんな契約はしていない。分かるよね?」

 

 ......。

 

「君が見たのは夢なんかじゃない。僕が今現在味わっている感情の中に最も溢れているのが、怒り。君が見たのは彼が怒りで道を踏み外す瞬間を見たんだ。今頃彼は面白いことになってるんじゃないかな。」

 

 ............。

 

「此処が何処か分からないだろう。此処は光がなくなった闇の淵。つまりは深淵だよ。僕は此処にあの場にいた人やサーヴァントを皆引きずり落とした。団体戦は得意だからね。特に、魂だけなんて容易いものさ。」

 

 ....。

 

「此処には正真正銘、君と契約したサーヴァントがいる。まあ、何処にいるか分からないよね。だってここ深淵だし、魂が本来なら眠る場所だからね。」

 

 ......。

 

「白野、君はね。君は1度負けているんだ。この月の聖杯戦争にね。」

 

 ......。

 

「何回戦かは言わないけど、君は本戦において負けた。つまり死んだんだよ。魂は消去されるはずだった。其れなのに...」

 

 君の輝きは曇らなかった。

 眩く、愛おしく輝く魂の光。

 恋焦がれた。初恋のように甘く痺れた。

 

「だから...ね。もう1度君の輝きを見たい。その願いを成就させる為、僕は最初から(・・・・・・)聖杯戦争を繰り返した。聖杯なんて使ってないよ。時を反したに過ぎない。月の聖杯は...まあ、おまけなものだし、安心してよ。」

 

 目障りで仕方がなかったが、此方の月は存外光をため込むのが好きだったみたいだ。

 だからこそ、切り取ってバラバラにしてやった。1番美しく輝く部分だけ切り取って、あとは何処かにやった。

 太陽が無ければ輝くことも出来ないくせに、ウロチョロしてたから嫌だった。

 それに、表では光をため込んでいるのに、その裏じゃあ僕を抑え込んでいた。これは面白かった。

 地球を常に観測し続ける量子演算器。

 ただ観測するだけなら良かった。けれど、全てを観測すればするほど増えていく情報があった。

 それが、僕だろう。いや正しくは、人の悪性情報。

 不要とされた情報が、廃棄されてた。

 本当に面白かった。月でさえも、僕は厄介払いされてたとは。

 

「愛してる。本当に本当に愛しているよ、白野。」

 

 だから

 

「君を殺したくて仕方がないんだ。」

 

 

 ああ、魂だけの君もまた美しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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