Fate/Rage   作:ぽk

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第一回戦(中)

 

 

月の聖杯、ムーンセル・オートマトン。

それは地球を監視し、記録する電子の頭脳。

 

神が残した創造物(アーティファクト)

 

古より魂のみとなった魔術師達を招き入れてきた熾天の檻。

時代が進み、新たなる魔術師達はこう呼ぶ。

 

ありとあらゆる人類、人間の願いを叶える万能の観測機。

この世の全てを解明する、最後の奇跡・・・

 

——————七天の聖杯(セブンスヘブン・アートグラフ)と。

 

人類が誕生する以前から、地球の全ての生命、生体、歴史、思想、魂、その全てを観測し続けている設計図。

 

七つの階層を持ち、それ故に奇跡の聖杯、聖杯戦争の勝者のみが辿り着ける七天の聖杯・・・・・・。

 

「と、月の聖杯は願望機じゃなくて只演算処理能力が最上なだけ。だから勝利者の願いを叶える、じゃなくてその願いに未来を変える、と言った方が正しいかな」

 

マイルームにて聖杯の事をもっと知っておきたいと思い、サモナーに聞いてみたら驚いた。

 

しかし先程も言っていたが私の力とは一体何なのだろう?

サモナーに聞いてもはぐらかされて教えてくれない...。

 

「ところでマイルームって意外と面白いんだね。物は浮いてるし魚は泳いでるしで、一種の亜空間だねここは。」

 

そう。マイルームへ転移?したのは良かった・・・いや良くは無いが問題は部屋が滅茶苦茶だという事だ。

机や椅子はフワフワと部屋中に漂ってるし、なんか色とりどりの魚なんかも泳いでるしで一種のサーカス状態だ。

 

サモナーさんサモナーさん。これは本当に如何したことなんでしょうね?

 

「え~?マスターが何言ってるのか僕分かんな~い」

 

てへ、と頭を小突く仕草は・・・・・・全く持って可愛くないよ。

と言うかやっぱりお前が原因か!!!

さっさと自然体に戻して!それとあの魚たちは逃がそう!!!

 

「いいじゃないか。こんな体験人生に一度有るか無いかの貴重な体験なんだよ?楽しまなきゃ損だよマスター」

 

殺し合いにそんな体験は求めてません。

ああ...なんだか目が回ってきそう。私の足はちゃんと地面に付いてる?

 

「いや浮いてる浮いてる。」

 

ホントだっ!?なんか気づかぬ間に浮いてるし!サモナーもちゃっかり・・・楽しんでるだろ?

 

「だから楽しまなきゃ損だって言ってるでしょ?無重力体験も中々癖になるんじゃない」

 

ならない。寧ろもう二度と体験したくないよ。

私は早くアリーナに行きたいのだ、早急にこの空間を元に戻す事を提案する。

 

「はぁ・・・分かったよ。重力操作は解除するけど魚ぐらいは良いだろう?何もない部屋程虚しい部屋は無い。記憶が無い君にとっては初めての自室かもしれないんだ。これくらいの装飾は許して欲しい」

 

うっ・・・!そう言われると強く出れないのが悔しい!

ま、まあ魚くらいは別に良いよ。

 

「ありがとうマスター!その内海竜も呼ぶから賑やかになるよ」

 

すいませんそれだけは勘弁して下さい。

 

「え~・・・!大丈夫だよ君は僕のマスターなんだから襲い掛かったりしないって」

 

そう言う問題ではござらんわ!

部屋にそんな幻想種が住み着いたら胃に穴が開くわ!

もういいからアリーナに行くよ!?

 

「分かったよ。じゃあ魚類コンプリートを目指してちょっとずつ部屋を増築して・・・」

 

恐ろしい事を後ろで言っているサーヴァントはもう放って置こう。

アリーナってどこから行けるんだっけな?

 

「一回の用具室よ、岸波さん」

 

ふぁお!?

な、ななななな?!?!?!

 

何でタイg、じゃなくて藤村先生が此処に?!

 

親切に場所を教えてくれたのはまさかまさかの藤村先生。

先生もこの聖杯戦争のNPCだったとは・・・

 

「ん?私そんなに聖杯戦争の事良く知らないわよ?」

 

期待を裏切らない先生で本当に助かってます。

でもどうして先生が此処に?

 

「それが私の愛用の竹刀がアリーナの何処かに流されちゃったみたいなの。岸波さん今からアリーナに行くのなら取って来てもらえる?」

 

そんな暇はない・・・と言いたいところだが、先生にはお世話に成ったので良いですよ。

 

「ありがとう!流石私の生徒!取って来てくれたらお礼するからね!」

 

はーい。

 

あの・・・・・・勝手に頼み事引き受けても良かったサモナー?

魔術など生まれたての小鹿のように貧弱な自分が勝手な事をしてサーヴァントは困ってはいないのだろうか?

 

「全然。この聖杯戦争は君の聖杯戦争だ。君の好きに行動すると良い」

 

それは如何も・・・じゃあアリーナに行こうか。

 

階段を下り職員室とは真逆に進み、用具室を目指す。

...何故かその道中他のマスター達に驚かれたような顔をされたが・・・またサモナーが何か仕出かしたのだろうか?

 

「流石に傷つくなぁ・・・まあ他のマスター達の気持ちも分からなくはないんだけどね・・・」

 

やや呆れているような諦めているような顔でため息をつくサモナー。

おいこら理由を話しなさい理由を。

 

「あー・・・なんか凄く存在感が薄いマスターが居たんだな・・・って驚かれてるよ」

 

グサァッ!!!

 

し、心臓になんか槍が刺さった!!!

痛い、ものっ凄く痛い!

 

「いや僕の中では君の個性の強さに関しては今まで出会った人間の中でもトップクラスに位置してるんだけど・・・いかんせん君ではなく岸波白野と言う存在そのものが希薄で曖昧なんだ。だから度々NPCと間違えられるんだよ」

 

それってどういうことだ?

言って見ろ、さあ言って見ろ。私のアイテムには言峰がサービスでくれた『激辛麻婆豆腐』があるんだが・・・一杯逝っとく?

 

「さあいざ行かん!アリーナへ!」

 

激辛麻婆豆腐を見るなりサモナーは走り去った。

流石俊敏B+早いですね。

 

あれ・・・なんか私忘れてる?重要で私の命にもかかわるような何かを忘れているようないないような・・・気のせいならいいんだけど、何だったっけ?

 

まあいいか。

 

———————このまあいいか、が私の命取りになるのは直ぐだった・・・。

 

———————————————————

 

さて、用具室前まで来てみたら言峰が扉の前で待ち構えていた。

 

「アリーナに行くのかね?」

 

当然であろう。そこを退くのだ言峰。

 

「ふっ。ならば止めはしない、だが注意は怠らない事だ。アリーナには君の対戦者が君を待ち構えている」

 

私の対戦者・・・・・・シンジがアリーナに居るという事か?

何故シンジがアリーナに?

 

「アリーナには対戦者も入れるのだよ。ただし、その時の対戦者のみだがね」

 

それじゃあ・・・戦闘になる可能性もあるんだ。

 

「ああ。十分その可能性は高い。聖杯戦争は情報戦が命、少しでも相手サーヴァントの情報が手に入るのなら戦闘の一つや二つ軽いものだ」

 

だけどアリーナでは死闘や戦闘は禁止では無かったっけ?

 

「最初だけならセラフ(分身)が忠告に入って、其れでも止めなかったら両者共にステータスダウンのペナルティを負うんだ」

 

そんな大事な事もっと早めに言えよサモナーさんよ。

本当に麻婆食わせるよ?

 

「しょ、しょうがないだろ?!君に記憶が無いから僕だって忘れっぽくなる!不可抗力と言いたいね!」

 

ほほう、私に責任転嫁するのか?

よっぽどこの麻婆豆腐が食べたいらしいな・・・よいぞ、至高の一品を味わうが良い!

 

「やばい、マスターがどこぞの慢心王みたいな口調になってる。悪いけど其処を通してもらうよ言峰綺麗。この状況を楽しむのは後にしてくれ」

 

そう言ってサモナーは用具室の扉を開けた。

 

すると扉の中から光が溢れ、一帯を包み込む。

当然目なんか開けてはいられない。

咄嗟に目を閉じると、言峰が何か言った。

 

「最弱なマスターよ、珍しい事に君にメッセージが届いている」

 

———————光あれ、と。

 

それと同時に私は光に飲み込まれた。

 

———————————————————

 

「・・・ター、マスター。起きないと風邪ひくよ?」

 

声が聞こえる。

とても身近に聞く声で、私を願いへと辿り着かせると言った声が。

 

そうだ。ここで寝ては風邪を・・・じゃないだろ。

 

「何言ってるんだよ?君だったら幾ら電子の世界であろうと風邪くらい引きそうだよ?」

 

言い返そうと目を開けた。

 

アリーナは・・・私が想像していたよりもずっと神秘で満ち溢れていた。

 

周りは電子の海。

途方もなく続く情報の青。

サモナーの結界とはまた違う・・・ここはもうムーンセルの中なのだ。

 

「緊張なんてしなくていいよ白野。アリーナじゃなくて大きな水族館とでも思えば楽しめるだろう?雑魚(エネミー)は軽く蹴散らして、ゆっくりこのアリーナを見物しようじゃないか」

 

なんら変わらぬ声で話しかけるサモナー。

きっと彼なりに気を使ったのだろう。

お陰で少し気が楽になった。

 

「それは良かった。まあ敵も居るみたいだけど行けるところまで行こうじゃないか」

 

うん。トリガーが無理ならせめて藤村先生の竹刀を見つけたいな。

 

「お?何だマスター、藤村大河のお礼が気になってたの?」

 

そりゃあ・・・あの藤村先生のお礼がどんなものか見てみたいし...

 

「いいね!流石白野、トリガーよりもそっちを優先させる当たり素晴らしい!こうなったら始めっから飛ばしていくよ!」

 

黒いコートのポケットからカードらしき物を頭上へばら撒くサモナー。

一体何事かと驚いたが何と、ばら撒いたカードがサモナーを中心として回っている。

それこそ太陽を中心として周る惑星の様だ。

 

「いつでも行けるよマスター。む、これはある意味デートか?!」

 

良し行こうか。

道が二手に分かれてるな・・・サモナーどっち?

 

「...真っ直ぐ」

 

ガラスの様な床を一歩一歩歩いて行く。

途中エネミーらしきプログラムが襲い掛かって来たがサモナーがカードをナイフを投げるように飛ばす。

あれ?サモナー(召喚士)ってイメージしてたのとなんか違う。

 

もっとこう・・・何かを召喚して戦うのかと思ったらカード飛ばしただけだよ。

エネミーにカードが刺さって倒したのは良いけど・・・イメージが。

 

サモナー何故にカードを飛ばす?

 

「何か一気につまんなくなった」

 

子供かっ!?

あれかデートっぽくすればいいのか!?

 

「・・・隣を歩かせてくれたら君のイメージ通りに戦うよ」

 

あれ?隣を歩くだけでいいの?

なんかサモナーの事だからもっと要求されるかと思った。

 

隣くらい別に構わないよ。

と言うか大体隣に居なかったっけ?

 

「アリーナに入るとマスターの後ろに歩く事を強制される。まあ君が許可してくれたから、僕はもう関係がなくなった。さあ行こう白野!・・・・・・・・・・・・、と思ったけど無粋な奴らだな」

 

再び機嫌が悪くなったサモナー。

サモナーが見つめる先には・・・シンジとそのサーヴァントが待ち伏せていた。

 

「遅かったね岸波?僕はもうとっくにトリガーを見つけた所だよ。暇になったから鈍間なお前を待ってやったのさ!」

 

シンジ・・・。

 

「僕のマスターを鈍間呼ばわりとは・・・死にたがり屋なのかな」

 

「はっ。弱そうなサーヴァントが何言ってんだよ!どうせお前は僕のサーヴァントに傷一つ付けられないさ!」

 

「やってみないと分からないさ。そんなに自信があるならかかって来いよ小僧」

 

そう言ってシンジを挑発するサモナー。

 

シンジも弱そうなサモナーに小僧呼ばわりされたのが気に障ったのか、今にもサーヴァントを仕掛けてきそうだ。

 

「いいかいマスター。よく見ておくと良い、僕と、相手のサーヴァントを」

 

見る?指示はいいの?

 

「サーヴァント同士の戦いを見るのは初めてだろう?今は見ているだけで良い」

 

・・・分かった。でも出来る限りのサポートはするよ。

 

「それで十分だよ。さあ、セラフに止められる前に大きな火花を咲かせようじゃないか!」

 

「舐めやがって・・・いけ、サーヴァント!!!」

 

するとシンジの隣に居る顔に走った大きな傷が特徴の女性のサーヴァントが笑う。

 

「いいねえ。初戦があんたみたいな相手だなんて嬉しいね」

 

「僕も、またこうして君と戦うなんてね。ライダー(・・・・)

 

————————!?

 

「お、お前!?」

 

又だ・・・サモナーはあの時と同じように言った。

シンジの表情を見ると青ざめており、どうやらクラス名を当てたようだ。

 

しかし...何故だ?まだ戦っても居ないのにどうしてサモナーは言い当てたのだろう?

 

「へえ・・・あんたもしかして、生前のアタシを知っているのかい?」

 

「そりゃあね。何度も出会っているよ」

 

まじか!?

 

「はあっ!?お前一体何者だよ!?」

 

私もシンジに一票!

サモナーの正体が益々分かりません!

 

「マスターはこの戦争で分かるよ」

 

「くそっ...!もういいライダー!片付けろ!」

 

「はいよ。勿体ないけどくたばりな!」

 

ライダーは腰に装着していた二挺拳銃を持ち、サモナーに向かって発砲する。

サモナーは周りのカードで全て弾丸を両断している。

 

私はその光景を唖然と捉えるしか無かった。

 

金属音を立てて弾丸を弾くサモナーに、ライダーの弾丸の硝煙が漂う。

人間にしか見えないサモナーも、また人ならざるサーヴァントなのだ。

 

しかし・・・たった一発。

ライダーが撃った一発の弾丸が、サモナーを貫いた。

 

「っ・・・!!!」

 

そう・・・たった一発の弾丸でサモナーは両膝を付いて倒れた。

じわじわと赤い血がサモナーを中心に広がる。

 

「は...あっはっはっはっは!!!何だよ死んだのか!やっぱり僕のライダーに叶う筈無かったんだ!」

 

「・・・・・・。」

 

死んだ?サモナーが?

 

サモナーの傍に駆け寄ると、ライダーの弾丸が心臓を貫いていた。

そんな・・・!!!

 

余りにも早く、余りにもあっけない。

岸波白野のサーヴァントはこんな所で終わるのか?

 

————————————・・・。

 

「サーヴァントが死んだんだ。じゃあな岸波、恨むんなら弱いサーヴァントを恨むんだな」

 

カチャリ、とライダーの銃口が私の頭に向けられている。

此処で目を閉じたらきっと私は終わる。

 

けれど———————————、まだ、諦めたくない。

 

まだ...まだなんだ!

岸波白野と言う私の戦いは—————————まだ、始まっても居ないのだか!!!

 

 

 

 

「そうだよ。其れこそが君の本質。君の有り方。君の存在理由。だからこそ白野は選ばれた」

 

 

 

 

黒いコートが真紅に染まる。

心の臓を貫かれてもマスターたる彼女の叫びに召喚士は立ち上がる。

その瞳で真実を。

その心で死を。

 

彼女は乗り越えるサーヴァントと共に在り。

 

 

「出血大サービスだ、ライダー。幻想の嵐(ワイルドハント)を見せてやる」

 

呼ぶは幻想(混沌)

奏でるは終の魔笛




ごめんね白野。
キッチリ幸せを届けるから頑張れ。

そして鯖が一回死んだね。
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