極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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第9話「狂った悪魔祓い」

「あのぅ・・・」

 

はぐれ悪魔退治から翌日の夜のこと。アーシアが私に話しかけてきた。

 

私は今日もリリーと妖魔を駆除するために教会の外へと繰り出す準備をしていたところだ。

 

エレンは怪しい教会を見つけたらしく、そこの調査を行っているのでここにはいない。

 

ウィルは・・・・・・知らん。どこかほっつき歩いているんだろう。

 

というわけで、私とリリーとアーシアの3人しかない。

 

「・・・何だ?」

 

「どうかしたの?」

 

「私にも・・・その・・・サクラさんたちのお手伝いがしたいんです」

 

「・・・は?」

 

・・・今、コイツ何て? 私は一瞬、何を言ったのか理解できなかった。

 

「ですから、私もサクラさんたちのお手伝いがしたいんです!」

 

・・・そういうことか。つまりは妖魔狩りのお手伝いがしたいと・・・。

 

いや、無理だろ・・・。彼女は武器なんか持ってるわけでもないし、何よりも危険すぎる。

 

「あのね、アーシア。アタシたちは信者を増やしに行くんじゃないのよ。これから妖魔を退治に出かけるの」

 

「妖魔? 妖魔って、あの古の本に載っているっていう・・・」

 

・・・リリーめ。バラすことないだろ。せっかくアーシアが平和になりそうなのに・・・。

 

私はアーシアがそれに関わらないように、ここで釘を刺す。というよりも諦めてもらうようにする。

 

「・・・そうだ。それにお前は戦力外だ。ここで大人しく神とやらに祈っていればいい」

 

「た、確かに戦力にはならないかもしれませんが・・・で、でも、それでも私はサクラさんたちが心配なんです!」

 

目を細めて言う私に、引くどころか押してくるアーシア。諦めが悪いな・・・。

 

勇敢なのは認めるが、戦力外のコイツは私たちにとっては足手まといにしかならないだろう。

 

「それに誰かが困っているのに待っているなんて、私にはできません!」

 

・・・いや、別に困ってないよ。むしろお前が着いてくることが困る。

 

何というお人好し、いや慈悲深いシスターなのだろうか。本当に誰かに似ているな。

 

「わがまま言わないの。それにこれからアタシたちに同行することがどういうことか分かってる? 殺すか殺されるかの死線なのよ。アンタは武器が使えないんだから、妖魔に襲われたら一溜りも無いわよ」

 

「う・・・で、でもぉ・・・」

 

リリーに正論を言われても、諦めの悪いアーシア。何かムキになってるな・・・。

 

でも、ここまで来るとさすがに可哀そうに思えてくるな。この教会、私たちがいなくなったらアーシア一人になっちゃうし。

 

私は腕を組んだまま目を瞑る。・・・守ってやれるけど正直ダルい。面倒だ。

 

でもまあ、別にいいか。1人ぐらいは・・・。

 

私は閉じていた目を開ける。

 

「わかった。好きにしろ」

 

「いいんですか!?」

 

「サクラ!?」

 

アーシアが感嘆の表情を浮かべる。私とそんなに行きたかったのか? 物好きなヤツだ。

 

一方、リリーのほうは驚きに目を見開いていた。・・・私、変なこといったか?

 

私はリリーに顔を近づけて、ヒソヒソ声で話しかける。

 

「彼女は神器持ちだ。もしもの時には役に立つだろう」

 

「でも、戦えないんじゃ完全に足手まといじゃない! 危険すぎるわ!」

 

「そのときはオレたちがアーシアをサポートしてやればいい。それでいいだろう」

 

「他人のことまで構ってられないわ! やっぱり危険よ!」

 

私はリリーから顔を離すと元の声に戻し、目を細めて言い放った。

 

「・・・前にも言ったと思うが、嫌なら来るな。オレとアーシアだけで行くから」

 

「ちょっ、何よそれ!」

 

私はリリーから離れると長椅子に掛けてある革ジャンを羽織り、教会の扉へと向かう。

 

・・・もういい。五月蠅いヤツは放っておくに限る。

 

「いくぞ」

 

「あっ、はい!」

 

アーシアが私の元へと駆けより、横に並んで歩く形になった。

 

「サクラさん、いつもと服装が違いますね」

 

「これは有事のときの衣装で、私の、お気に入りだ」

 

今日は青色の着物に革ジャンを羽織った格好だ。

 

着物や振袖は全てが特注品で激しい運動で動きやすいように作られている。

 

革ジャンは遠距離恋愛しているお人好しの莫迦な彼氏に貰ったものだ。

 

「あ、ちょっと待ってよ! 私も行く!」

 

・・・素直に連れて行くって言えばいいのに。

 

色々と面倒臭いリリーも一緒に着いて行くことになり、これでパーティーは3人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、本当にここなの?」

 

リリーが私に疑問をぶつけるが、私も同じことを思っている。

 

いつもだったら廃墟や森が妖魔の討伐場所になるので疑問などないはずなのだ。

 

妖魔が遂に自宅へと入り込んで襲ってきたのか? それともここがアイツらの巣窟なのか?

 

私たちが着いた場所、それは単なる一軒家だったからだ。この周辺には一軒家がたくさんある家のその一つだ。

 

「この汚い地図が正確なら、ここのはず」

 

エレンから貰った落書き同然の地図を見ながら私は言った。

 

手書きにするんだったらもうちょっと綺麗に書けないのか、アイツは。

 

「ここって普通の家ですよね・・・」

 

「そうみたい。ここに妖魔がいるとは思えないけどね」

 

「妖魔さんは人を食べちゃうと聞いたことがあります・・・。でも、その討伐の場所がここだけなんですよね・・・」

 

「ここだけってのも怪しいわね。ここを襲ったのなら、他の住宅だって襲われてるはずだもの。何か裏を感じるわ・・・」

 

リリーと、さすがのアーシアもこの場所を怪しんでいる。

 

まあ、ここで屯っていても仕方ないな。どんなに地図を見てもここだって言っているし、捜索するとするか。

 

・・・この下手糞な地図に正確性があるとは分からんがな。

 

「外から見たってわかんないだろ。中へ入って調べるぞ」

 

「うん」

 

「はいぃ・・・」

 

私たちは家の中へと入ろうとするが、おかしいな。わずかだが、玄関口が開かれている。

 

私は後を着いて来ている2人を手で制する。

 

「玄関が開いてるわね・・・」

 

リリーが見たことをつぶやく。こんな夜に鍵を掛けないなんて不用心だ。

 

私は1人、玄関の扉に背を預けて、背中の短剣を握る。

 

中を覗き込む。灯りはついていない。廊下には2階へと繋がる階段がある。

 

奥に灯りが付いているのを確認できるが、照らしているとは言いにくい淡い光だ。

 

・・・人気が感じられない。寝ているのか?

 

いや、よく見ると壁に血の跡が付いている。普通の生活をしていてこんな跡が付くのはおかしい。

 

・・・何かあったな、この家。やはり妖魔に襲われたのか? でも妖魔の気配が感じられない。

 

それどころか殺意にも似たような異様な気配を感じる。誰かいるな、絶対に。

 

「サクラ、中はどう?・・・・・・あまり気持ちの良い感じとは言えないわね・・・」

 

「な、何か変な気配を感じますよぅ・・・」

 

私の下からリリー、アーシアと玄関から中を覗く。2人も異様な気配を感じたようだ。

 

リリーは不機嫌そうに顔を顰め、アーシアは体を小刻みに震わせている。

 

アーシアが感じてるのは、リリーの気配ではないな。黒いオーラを発してないし。

 

「きゃっ!?」

 

「はわう!?」

 

私が玄関口を押して開くと、何故かアーシアとリリーから小さな悲鳴があがった。

 

下を見るとアーシアの上にリリーが倒れている状態になった。

 

「急に開けないでよ~!」

 

「う・・・うぅぅ・・・」

 

「お前らが寄りかかりすぎるのが悪い」

 

私はリリーの抗議を軽くあしらうと中へ入って先に進む。

 

「お・・・重いですぅぅ・・・」

 

「失礼しちゃうわ――」

 

リリーから大きな怒りの声が上がりそうだったので、背後に瞬間移動して頭を叩く。

 

「・・痛ッ、何す――」

 

私は金髪ロールの口を塞ぐと人差し指に口を当てて「シー」と言う。

 

・・・お前の甲高い声のせいでバレたらどうするんだ。

 

リリーは察したのか、御免なさいと言わんばかりに頷く。

 

私は前に瞬間移動して戻り、先へと進む。

 

「危ない危ない、大きな声出しちゃうところだった・・・」

 

「リ、リリーさぁん・・・早く降りてくださいぃぃ・・・」

 

「あっ」

 

リリーがアーシアの上から降りて、ドレスの土煙を払う。

 

「アンタがアタシの下にいるから悪いのよ」

 

「そ、そんなぁ・・・あれはサクラさんが・・・」

 

「元はと言えばアンタのせいよ! アンタがボーっとしてるから、アタシがつまづいて転んだのよ!」

 

「ひ、酷いですぅ!! リリーさんだって――」

 

ゴンッ ゴンッ

 

私は無言で2人に拳骨を喰らわせた。その後、元の位置に戻った。

 

・・・今は仕事中だぞ。そういうことは余所でやってほしい。

 

2人は頭を抱えてうずくまっている。

 

「な、何でアタシまで・・・」

 

先に進まないな・・・この調子じゃ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは廊下を通り、リビングの部屋の近くへと来る。

 

・・・血の臭いがするな。妖魔が死体を貪っているのか?

 

ここに非戦闘者が入るのはマズイ気がする。しかも彼女は血なんて見たことないと思う。

 

私はアーシアのほうを振り返る。

 

「アーシア、ここにいろ」

 

「え、でも・・・」

 

「いいからここにいなさい。外に誰か来るかもしれないでしょ。アンタはここを見張ってればいいの」

 

私とリリーはアーシアを説得する。アーシアは若干戸惑いながらも口を開いた。

 

「・・・分かりました。無茶はしないでくださいね」

 

とりあえず、アーシアをこの部屋に入れないようにした。

 

酷い惨状だったらアーシアも耐えられないだろう。壊れてもらっても困る。

 

無茶をするなとか言っているが、無茶をしているのはお前のほうだ。

 

私はこの扉、リビングへ入る扉をゆっくりと開いて中を覗いてみる。

 

・・・・・・これは、酷いな。

 

中は何かの死体が散乱しており、革が切れたソファーや壊れたテーブルと床に大量の血が付着している。

 

私は扉を開けて中に入っていく。リリーも私の後から入ってくる。

 

死体に近づいてよく見てみると、これは・・・妖魔?

 

誰かが妖魔を退治したのか? でもこの辺にはグレモリー眷属以外でいるわけがない。

 

だからといって、グレモリー眷属がこんなことまでするとは考えにくい。

 

「ひっ」

 

後ろにいたリリーが私と違う方向を見て小さな悲鳴を上げる。

 

「サクラ・・・あれ見て・・・」

 

リリーが指をさした方向を見てみると、そこは壁。でも異様なものが目に写っている。

 

それは、壁に、人間が磔になっているからだ。それも腹から内臓を飛び出させた状態で。

 

妖魔がやったのか? でも腹の傷口は明らかに妖魔に付けられたものではない。

 

おまけに手は釘で打ちつけられていて、まるで逆十字に貼り付けられているかのようだ。

 

「一体、誰がこんなことを・・・」

 

「『悪い子にはおしおきよ』という神の御言葉を借りたのさ。グフォ!?」

 

ドォォォォン!!

 

・・・ん。今、何かでかい音が背後で聞こえたな・・・?

 

確かに突如、私の背後から私たちではない男の声が聞こえた。

 

反射的に拳を後ろに振ってしまったが、何か手ごたえがあった。

 

「ねぇ・・・サクラ、今誰か吹き飛ばさなかった?」

 

「・・・ん?」

 

私は後ろを振り返るとソファーが倒れて、埃が舞っているのが見えた。

 

そしてそこからソファーを上に突き飛ばして人影が現れた。

 

「痛ってぇじゃねぇか、このクソアマ!! よくもオレ様の美形に拳なんか打ち込みやがったなぁ!!」

 

「お前が後ろに立ってるのが悪い。オレは背後に立たれると反射的に殴ってしまう性質なんだ」

 

白髪の美少年が激昂し、私がそれを一蹴にする。

 

そうだ。コイツが後ろに立つのが悪いんだ。私は悪くない。

 

それにしても耳障りな声だな。聖歌もさぞかしヘタクソなのだろうが。

 

「一応聞くまでもないけど、コイツ殺ったのも、人の獲物を横取りしたのもお前か?」

 

私は妖魔の死体、貼付けの死体を見ながら問う。すると美少年はニンマリと笑って答える。

 

「ソーソー、俺が殺っちゃいました♪ 妖魔さんをチョッパーして至福の快感を味わってたのよぉ。そしたらコイツが、悪魔を呼び出す常習犯だって分かったもんだしぃ~。もうこれは、殺すしかないっしょ」

 

・・・明らかに異常だな。まあ、私も人のことは言えんが。

 

教会にいた私には分かるが、教徒は悪魔を崇拝しているとソイツは魔女や異教徒として扱われ、拷問され処刑されるという掟がある。

 

しかし家を見るからに信仰の臭いすら感じられないこの人物を殺したとなると、これはもうただの殺人な訳だ。

 

何とも羨ま・・・いや、何と酷いヤツだ。まあ、私も人のことは言えんが。

 

「っていうかさぁ、おまえよーく見たら桜さんではあーりませんかぁ」

 

「・・・・・・リリー」

 

「え、なに?」

 

私はここで思ったことを言ってみる。それも周囲に聞こえるようにハッキリと言った。

 

「・・・コイツ、誰?」

 

後ろにいたリリーがずっこけた。私、何かおかしなこと言ったか?

 

「サクラ、覚えてないの?」

 

「んー、おまえ、俺のこと覚えてナイン?」

 

「・・・白髪の知り合いはウィルだけだぞ」

 

美少年が何故か呆然と私を見ている。本当に私には分からないぞ。

 

とそこにリリーが私の肩の上に手を置いて言ってきた。

 

「アイツよ、アイツ。教徒にも手を掛けて異端者扱いされたっていうアイツ」

 

更に続けて白髪の男が怒り気味に言う。

 

「忘れたとかなんとか言わせないぜ? 俺のセクスィーな顔を殴りまくって、ロープで逆さづりにして、全身の骨を折りまくって、辱めて、クズ置き場に放り捨てやがった既成事実をさぁ!!」

 

いろいろとカオスなことをされてきたのだろうか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・ああ、もしかして。

 

「・・・お前、ブリーフか?」

 

「違っげぇぇぇぇぇ!! 人の名前ミスるとかマジ舐め腐ってんのか、このクソアマがァァァァ!!」

 

少年が怒りの絶叫を上げる。うるさい・・・ウザイ・・・。

 

リリーが溜息をつきながら、私にアイツの本当の名前を教えてくれた。

 

「フリードよ、サクラ。フリード・セルゼン。ヴァチカンの悪魔祓いだった下衆男」

 

「ん? ああ、そんな名前だったな」

 

私がようやく名前を思い出すとフリードが何故かパチパチと拍手をし始めた。

 

「ご名産ご名産~♪ そっちの金髪コロネちゃんのほうがよくよく分かってるねぇ~」

 

「誰が金髪コロネよ! リリアンヌよ、リリアンヌ!」

 

「別にそんなことどうでもいいざんすよ。金髪コロネのクソの名前なんか、俺の脳の容量に記録したくねぇって言ってるから、やめてちょ」

 

「ぐぬぬぬぬぬ」

 

ちゃんとフリードに名前を呼んでもらえていないリリーが憤るも、彼は楽しそうに挑発する。

 

すると今度はリリーが腰に両手を当てて、勝ち誇ったような笑みを浮かべて言う。

 

「ふん、それじゃあアンタの名前はこれから下衆男ね」

 

「ああぁぁぁ!?」

 

「下衆男って言ったのよ、下衆男。お口が下品なアンタにはピッタリのニックネームじゃない。下・衆・男」

 

「ええーどうもどうも、炎が迸る素敵なお名前クソありがとうございましたねぇぇぇぇッ!!」

 

「別段、怒ることないじゃない。フリードなんていい名前じゃないんだから。アタシの体がそんな名前を呼んだら、キリンの肌みたいに腐っちゃうっていってるしぃ~」

 

もしかしてリリーはFreed(奴隷)のことを言っているのか。

 

たかが名前ごときで醜い言い争いを続ける2人。ギャーギャーうるさいし、面倒臭いな・・・。

 

「つーか、お前ら俺的にムカつくから殺していい? 殺していいざますよね? 了解了解♪ いまからこの素晴らしい光の刃でサクラたんの腕を切断して、腹を切り刻んで解体して、このカッコいい銃でお前のハートをズギュンとぶち抜いて差し上げますよぉぉ!!」

 

フリードが光の刃と銃を手に持って、私の方へ向かって走ってくる。

 

言動はともかく、私と殺ろうというのか? 面白い・・・!

 

思わずニタリと笑みを浮かべる私。右手を天にかざすとフリードの背後の窓を突き破って、リべリオンが飛んでくる。

 

「のわぁ!? 何ィッ!?」

 

フリードは腹をかすめるもリべリオンを交わして、磔死体のほうへと飛び退く。

 

私は剣先をこちらに向けて飛んでくるリべリオンを手に取る。そして剣先をフリードのほうへと向ける。

 

「何を驚いているんだ? オレとダンスを踊りたいんだろ? 相手役になってやるよ。手荒になるとは思うけどな。こんな風に」

 

私はそう言って死体とは反対側の壁にリべリオンの剣先を軽く小突く。すると壁に大きな亀裂が入った。

 

突き刺そうともしてもいないのに、この破壊力。やはり私にしか扱えない危険な魔剣だな。

 

フリードはその様子を見てニタリと口元を歪め、再び剣を構える。

 

「その魔剣、あの有名なリベリオンっすねぇ!! いい味をかましているでありますねぇ!! 俺っちの溢れ出す子煩悩が闘争心を溢れ出せてござりますよぉ!! でもあっしの剣のほうが最強でありますよ!! つーことで、アンタと死と細切れのダンスでも踊って気を落ち着かせるとしますかね!!!」

 

一方通行的な言動をベラベラと喋った後、再び私に飛び掛かってくる狂人。

 

・・・面倒臭いけど・・・。

 

「上等だァ!!」

 

楽しみが増えたことに変わりは無い!!

 

私もリベリオンを構えて、向かってくるフリードへと飛び出す。

 

ガキンッ!!

 

私のリベリオンとフリードの光の剣がぶつかり合い、金属音を奏でる。

 

「いいねぇいいねぇ!! その目、結構タイプよぉ!!」

 

「大分お前よりはいい育ちをしているからなぁ!!」

 

「しゃらくせぇぇぇぇ!!」

 

鍔迫り合いの末に押し返し、お互いに飛び退く。

 

その瞬間、私はその場から姿を消してヤツの懐に入り込む。

 

「なっ!?」

 

そのまま体勢を低くしながら、フリードの横っ腹に回し蹴りを食らわせる。

 

「ふん!」

 

「ぐおぁっ!?」

 

フリードはもはやごちゃごちゃになっている家具のほうへと吹き飛ぶ。

 

「だあぁぁぁぁぁ!! てめぇ、よくも俺を二度もファールボールかましてくれたなぁぁ!! これもう死ぬしかなくね? そうだよねぇ? もうバッターアウトでしょ!! 人としてアウトっしょ!!」

 

家具の中から起き上がったフリードが怒りの雄叫びを上げる。雑音・・・雑音・・・。

 

デスメタは聞いてみたことがあるけど酷い。それと同じくらいの悲惨な声だな。

 

「いい様してるわねぇ~。白髪くぅん♪」

 

「ああぁぁぁん?」

 

いつの間にか背後へと移動していたリリーが、声を聞いて振り返ったフリードの顔面に膝蹴りをかます。

 

またしても吹き飛んだフリードが磔の死体の近くへと飛ばされる。リリーはフリードのほうを見もせずにドレスの誇りを払っている。

 

「いい加減、喚くのやめてくんない? アタシの耳が腐っちゃうわ」

 

「このアマァァッ!! 俺の超絶カッコいいフェイスまで、許さねぇ。ゼッテー許さねぇぞ、てめぇらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「『喚くな』つってんのよ、このケダモノ。アタシの自慢の武器で調教するしかないようね」

 

激昂するフリードに対して、顔を顰めて苛立ったようにつぶやくリリーは右手を横にかざして、刃先が銛のような形状を持った槍を出現させる。

 

「アタシの神器の副装備『太陽神の竜槍(エル・ソル・ゲイボルグ)』の錆、いや氷結にしてやろうかしらねぇ」

 

悪魔のような笑みを浮かべながら、槍をフリードへと向ける。

 

ゲイボルグは伝承によれば、ケルト神話のクー・フーリンが使っていたとされる槍。投げれば無数の槍となって敵に降り注ぎ、刺せば無数の棘となって敵を貫く。そういった噂のある槍だ。

 

「ちぃっ!!」

 

フリードも剣を構えて戦闘態勢に入る。今まさにリリーとフリードが激突しかねない状況になった。

 

するとリビングの扉が開いて、金髪のシスターが入ってきた。

 

「サクラさん。イッセーさんがここに―――!!」

 

私のほうよりも、そして磔になっている死体のほうに目がいってしまう。

 

「い、いやあぁぁぁぁぁっ!」

 

アーシアは悲鳴を上げて、尻餅を付く。そしてその体はガクガクと震えていた。

 

「かわいい悲鳴ありがとうございまーす! んー、よく見たらキミ、シスターのアーシアちゃんだよねぇ? オレっちの同志がこんなところでご対面なんて流石ですなぁ~」

 

「・・・こ、これは、何ですか・・・?」

 

「そっかー、アーちゃんはこの手の死体は初めてなのね。そうなのね。ならならよく御覧なさいな。これが悪魔に魅入られたダメ人間の末路ですよ」

 

「・・・そ、そんな・・・」

 

アーシアはただ見開いた目で死体を見つめていた。体を震わせながら。

 

「アーシア! どうしたんだよ!?」

 

廊下の扉の奥から。声からして男で、やけに活気のある声。

 

そして中に入ってきたのは変態が取り柄の私の友人だった。

 

「な、なんだよこれ!?」

 

兵藤は死体に目を向けるなり、驚きの声を上げた。

 

人間として当然の反応だ。でも兵藤はもう悪魔だけど。

 

「兵藤?」

 

「アンタ、こんなところで何してんのよ?」

 

「えっ、サクラ?リリーちゃん? 何でここに?」

 

私とリリーの声に兵藤がこちらに顔を向ける。するとフリードが興味深そうな顔をした。

 

「おんやー、サクラたんと金髪コロネたんとそこのクソ悪魔君は知り合い? ひゅうぅ、これは驚き大革命。もしかして悪魔祓いと悪魔君の感動のご対面ってヤツ? 許されざる関係? えっ、マジで?」

 

「金髪コロネ言うな!!」

 

フリードは兵藤が悪魔だとすでに見抜いている様子。これは、ヤバいな。

 

「え、今、神父さん・・・悪魔君って・・・?」

 

「あんれー、もしかしなくても、知らないでキミたち一緒にいたわけ? ハハハハハハ!! 何それ、超ウケるんですけどぉ~? 賞でも取れるんじゃないの? そのコント」

 

アーシアを嘲笑うかのように言葉を吐くフリード。

 

「知らないなら教えてあげましょう、アーシアちゃん。そこにいるキミの言う愛しのイッセーくんはクソの悪魔くんなのですよ。アハハ! 悪魔とシスターは相容れないのです! 何せ悪魔と教会関係者でしょ? 天敵同士なのでございますよ!」

 

「教会関係者のくせに、何でお前が人間を殺してんだよ!? そこで死んでる人間は同じ人間じゃないのかよ!? お前が殺すのは悪魔のはずだろ!?」

 

「ハハハハハハハ!! ウケる~悪魔の分際で何、俺に説教してるんですかね!!」

 

兵藤の詰問を一蹴にしたフリードが彼に銃をぶっ放す。ピカピカに光った弾を、銃声も立てずに兵藤の太ももに撃ちこんだ。

 

「ぐあぁぁぁ」

 

「イッセーさん!! きゃあ!!」

 

銃を撃ちこまれた兵藤が痛みに呻き、アーシアが叫ぶ。そしてそのアーシアをフリードが銃を持っている腕で横に突き飛ばす。

 

酷いヤツだな。見るに堪えない。

 

それよりも光は悪魔にとって猛毒であると聞いた。そして何も感じず、何も見えないまま消えていくと。

 

しかし、足に撃たれたのが奇跡だろう。急所に撃ちこまれてたら本気で消滅していたかもしれない。

 

「俺的にお前、ムカつくから殺していいですか? つーか、クズ男とそこにいるビッチ共殺さないと俺の仕事が完了しないんすよ。というわけで仕事的にも俺の悦楽の為にも、HEAVENしちゃってちょうだいィ!!」

 

ケタケタと笑いながら光の剣を振り上げるフリード。

 

私がリベリオン、リリーが槍を構えてフリードに突っ込もうとした、その時・・・。

 

「やめてください!!」

 

アーシアの高い声がそこに響く。兵藤の前に立ち、庇うようにして両手を広げる。

 

途端に狂人神父の顔が険しくなった。

 

「・・・・おいおい、マジですか~。アーシアちゃん、お前、自分が何してるか分かってるんでしょうかぁ?」

 

「・・・はい。私はもう、人が傷つくところなんて見たくないんです。神父、この人を許してください。見逃してください」

 

・・・シスターが悪魔を庇うなんておかしなことだな。

 

本当にこの女はお人好しだ。自分のことよりも、相手のことしか考えていないのだから。

 

「人? 違う違う。ソイツは悪魔なんですよ、クソなんですよぉ? 自分の欲望のことしか考えていない哀れなクソ種族なのですよ。何を勘違いしてらっしゃるんですか? バカなんですかぁ?」

 

フリードはアーシアの言葉を踏みつぶして、汚い言葉を吐きまくる。しかし、アーシアは怯まずに反論を続ける。

 

「イッセーさんは、そんなことはしません!! 悪魔に魅入られたからって人を殺したり、無差別に悪魔を狩ろうなんて、そんなの間違ってます!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁあああああ!? バカいってんじゃねぇよ、このクソアマ!! 頭に蛆虫でも湧いてんじゃんねえのか!! 悪魔はクソだって、教会に習ってるはずだろうがぁ!!」

 

まさに自分のことをアーシアに否定された形となったフリードが激昂する。

 

プライドが高いのはいいが、面倒臭いヤツめ。

 

「悪魔にもいい人はいます!!」

 

「いるわけねぇだろッ、バァァァァカ!!」

 

「イッセーさんはいい人です! 悪魔だってそれは変わりません! 無差別に人を殺そうなんて、主がお許しになるはずがありません!!」

 

死体を見てショックを受けていたこの女が、モラルが崩壊している狂人神父相手に物言いをしている。

 

精神は強いほうだな。優しさの中に強い心を持つのはいいことだと思う。

 

バキッ!!

 

「キャアァ! はうっ!!」

 

フリードが銃を持った手で再び、アーシアを横なぎに殴りつける。

 

アーシアは吹き飛んで壁に叩きつけられ、そのまま気を失ってしまった。

 

「アーシア!」

 

兵藤が叫ぶ。その目の前にいるフリードは憤怒の形相でアーシアを見ている。

 

「そこのクソシスターのイカれた発言のせいで、俺はムカつきマックスなんざんすよ。悪魔にお優しいこのシスターは殺すってことでいいでしょうかねぇ? そうでもしないと俺の傷心が癒えそうにないざんすよ。その前にこっちの汚物丸君を片付けるといたしましょうかねぇ!!」

 

フリードが再び兵藤に攻撃の矛先を向ける。・・・そろそろ出ていくか。

 

私はフリードと兵藤の間に瞬間移動して、前者に向かって膝蹴りを繰り出す。

 

「二度も同じ手に引っかかるかっての!!」

 

フリードは飛び退いて交わし、私に光の刃を打ち下ろす。

 

私はクルリと一回転してリベリオンを左手で構え、光の刃を防ぐ。

 

「本当にそう思うか?」

 

「あぁん?」

 

私は左手のリベリオンで光の刃を防ぎつつ、右手の人差し指をフリードの腹にロックオンする。

 

そしてそのまま赤いオーラを指先に集め、放射する。

 

「『閃光(ライオ)』」

 

ズバアァァァァァァァァァン!!

 

「なっ!? グ・・・グオォォォォォ!!」

 

チュドォォォォォォォォン!!

 

フリードはとっさに右手の銃で防ぐも、そのまま押されて天井に吹き飛ばされた。

 

天井が壊れて上からベッドやタンスなどが、フリードが落ちた場所へと落ちてくる。

 

どうやら突き破った上の階は寝室だったようだ。

 

「・・・サクラ、リリーちゃん」

 

「しっかりしなさいよ、ったく」

 

兵藤が私とリリーの名前をつぶやいたが、私は目も暮れずにフリードの落ちた場所へ目を向ける。

 

大きな音を立ててベッドが吹き飛び、中からフリードの姿が現れる。

 

「てめぇら、マジで許さねぇぞ。こんな不快な気分マックスになったのはママの体内からこの世に出て初めてざんすよ。もう嫌だ!! もう限界!! 手加減なんて言葉をオレっちの脳が許してくれそうにない!! そろそろ俺様の本気の姿をてめぇらクソ共にビューしてフェスティバルしてやるとしましょうかね!!」

 

憤怒の声を上げて、それでも未だに狂人のようなセリフを吐くこの男。

 

「つーか、お前らも悪魔の味方すんの? クソ認定していいわけ?」

 

「お前、何勝手なことしようとしてんだ。コイツはオレの獲物だぜ。横取りなんて意地汚いと思わないのか」

 

「おい!! 何か聞き捨てならない言葉を聞いたんだけど!?」

 

「そうよ。アタシたちは好き勝手にコイツと関わってるんだから。アンタの価値観なんか押し付けないでくれる? うざったいから」

 

「・・・リリーちゃん」

 

「それにコイツはアタシの人形だしね」

 

「リリーちゃん、それ俺に奴隷になれって言ってんの? ねえ、聞いたみなさん。この子、俺の自由を奪おうとしてるよ?」

 

兵藤が私とリリーの発言にツッコミを入れるも、私たちはそれを気にも止めない。

 

「でもまあ、庇ってくれた女の子がいるっていうのに俺が戦わないわけにもいかねえよな。よし、こい!」

 

兵藤が立ち上がって、戦う構えを取る。

 

それを見て狂人神父が嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「え? え? 何々? そこのビッチ2人はともかく、クソ丸君、キミまで俺とやろうっての? 死んじゃうよ? 苦しいよ? 俺には楽に殺そうなんて言う選択肢はないからね? さてさて、実験体が3人もいるしやり直せることだし、どこまで肉を細切れにできるのか世界記録に挑戦しましょうかね!!」

 

「ハッ、やってみろよ。その前にオレがお前のことを断罪して、解体して、挽き肉にして、ハンバーグ、腸のソーセージ、もろもろ付けて肉だらけのフルコースを作ってやるよ」

 

いろいろと物騒なことを呟く神父。もはや神に仕える者としてあるまじき行為だな。まあ私も人のことは言えないが。

 

せめて私の手で地獄へと送ってやるか。そう思い、私はリベリオンを構える。

 

先に神父が飛び出して向かってきたその時、私たちの横を黒いモヤモヤが出現しゲートを作り出す。

 

神父が突然の出来事に急ブレーキを掛ける。

 

「何事さ?」

 

疑問を抱く神父。するとゲートから猛スピードで誰かが飛出し、神父へと突撃する。

 

神父はとっさに剣を構えるも、物体の勢いは強く後方へと吹き飛ばされる。

 

物体のその姿はフリードと同じ神父服を着た銀髪の青年。

 

「よっ、楽しそうなことしてるじゃねえか。俺も混ぜろよ」

 

そしてこの飄々とした喋り方。私たちの同志である。

 

「ウィル、アンタどこいってたのよ?」

 

「たまたまこの辺をうろついていたら、どこか懐かしい悪い気を感じたんでな。探ってみたらこの家で、入ってみたらお前らがいたってワケ」

 

「そうじゃなくて、どこをほっつき遊んでたのかって聞いてんの!!」

 

「どこだっていいじゃねえか。くだらないこと質問すんなっての」

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

ウィルの相変わらずの軽い発言に、リリーが悔しそうに歯を食いしばる。

 

「そんなことよりも――」

 

そこにフリードが飛びかかってくるも、ウィルが両手に銀の手袋のようなものを出現させ、フリードの剣を受け止める。

 

「これはこれは、俺の中でチョンパにしたい人物ナンバーワンのウィルくんではありませんか」

 

「久しぶりだな、フリード。戦士養成機関以来か? 相変わらず、神だのなんだの言って好き勝手暴れてやがるのか?」

 

「ここであったが100年、1000年、10000年!! 相もヘチマも変わらない、そのムカつく口ぶりを俺の愛刀でタラコにしてやりましょうかね!!」

 

「上等だぜ!! じゃあ俺はこの『戦神の手袋(ヤーン・グレイブル)』でお前の汚い顔を整形して、フグみたいな不細工顔に挑戦してやろうかぁ!!」

 

互いに武器を押し返したと思えば、武器と武器がぶつかり合う。というか、手袋は武器じゃないな。

 

銀のグローブだと思えばいいのか。そうすれば大概は納得できる。

 

そうこう戦いを繰り広げていると足元に青い光が現れ、徐々に形を作っていく。

 

これは魔法陣だ。しかもこの魔法陣を私は知っている。

 

この紋章はグレモリーのものだ。もしかして・・・。

 

カッと魔法陣が光だし、そこから金髪のイケメンが姿を現す。

 

「兵藤くん。助けに来たよ。風花さん。随分と派手にやらかしたみたいだね」

 

そう、木場だ。イケメンスマイルでお馴染みの。こちらにスマイルを向けてくる。

 

「あらあら、これは大変ですわね」

 

「・・・神父」

 

さらに黒髪ポニーテールの姫島と小柄な小猫が次々と現れる。

 

どうやら兵藤のピンチに駆けつけてくれた模様。

 

「ひゃっほう! 悪魔の団体さんに一撃目!」

 

先程までウィルと戦っていたフリードが構わず、木場のほうへと斬りこんでくる。

 

ガキン!!

 

木場が剣でそれを受け止め、金属音が部屋に鳴り響く。

 

「悪いね。彼らは僕らの仲間でね。こんなところでやられるわけにもいかないんだ!」

 

「おーおー、悪魔のくせに仲間意識バリバリですかぁ? 悪魔の秘密結社が集結ですかぁ? いいねぇ、熱いねぇ、萌えちゃうねぇ! 何か? キミが攻めで彼が受けとか、そういう関係なワケ?」

 

鍔迫り合いにも神父はベロンと舌を出して、頭と一緒にゆらりと揺らしていた。

 

完全に馬鹿にしているときの顔だな、あれは。・・・意地汚い。

 

木場がそんなフリードに対して、嫌悪の表情を浮かべていた。

 

「下品な口調だ。とても神父の発する言葉には見えない。・・・ああ、それだからキミは『はぐれ悪魔祓い』をやっているわけか・・・」

 

「あいあい! 下品でございますよ! サーセンね! だって俺、追い出されちゃったんだもん! はぐれちゃったんだもん! っていうかヴァチカンなんてクソくらえって話だぜ! 俺的には自分の悦楽を満たせばそれで充分、満足大満足なワケよ! これが!」

 

「一番厄介なタイプだね。自分の欲を満たすためだけに悪魔狩りを楽しんでいる・・・僕たちにとって一番の有害だよ」

 

「はあぁぁぁああ!? 悪魔さんに言われたかねえざんすよ! 俺だって精一杯今を生きてるの! てめえらみたいな糞虫の連中にどうこう言われる筋合いはねえざんすよ!」

 

「悪魔だって、ルールはあります」

 

微笑みながら言う姫島だが、その視線は鋭い。明らかに敵意をフリードへと向けている。

 

「いいねえ、その熱い視線! お姉さん、最高! 俺を殺したいという意思がビンビン伝わってくるよ! 最高! 最高! オレっち、殺意を向けるのも向けられるのもたまらないわ~!」

 

「なら、消し飛ぶといいわ」

 

スッと兵藤の横に現れる紅の髪の少女。リアス・グレモリーだ。

 

「イッセー、ごめんなさいね。依頼者の元に『はぐれ悪魔祓い』がいるなんて想定外だったの」

 

謝るリアスは兵藤の太ももの傷を見るなり、目を細めた。

 

「イッセー、怪我したの?」

 

「あ、すいません・・・ちょっと、撃たれちゃって・・・」

 

半笑いで誤魔化す兵藤。全然、誤魔化しきれていないな。

 

次にリアスは私とリリーのほうへと視線を向ける。

 

「サクラ、リリー、ウィル、あなたたちもいたのね」

 

「ああ。妖魔退治へと赴いたら、コイツにバタりと会ってしまったってワケ」

 

「リアス先輩~。あのエセ神父がアタシを苛めますぅ~」

 

「俺、お楽しみの最中だったんだけどな」

 

そして冷淡な表情を神父へと向ける。あの顔は私の衝動にゾクリと来るな。

 

「私のかわいい下僕と後輩を可愛がってくれたみたいね?」

 

「あいあい。可愛がってやりましたよぉ。それが何か? 本当は全身くまなくザクザクに切り刻んでやるつもりだったけど、邪魔が入って夢幻となってしまったでございますよぉ!」

 

リアスの低く怖い声。それに臆することもなく、ベラベラと喋る神父。

 

ボンッ!

 

神父の後方にある家具の一部が一瞬で消し飛んだ。これはリアスの滅びの魔力だ。

 

「私は、私の下僕を傷つけるものを絶対に許さないことにしてるの。特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられることは本当に我慢ならないわ」

 

空気が凍えてしまいそうな迫力のある雰囲気。私の、衝動を掻き乱してくれる。

 

今まさに一触即発の空気になりかけたとき、私はやや大きな魔力がこちらに近づいてくるのを感じた。

 

・・・この気配は、堕天使か・・・?

 

姫島もそれに気付いたのか、顔を顰めながら口を開く。

 

「部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいて来てますわ。このままでは私たちが不利になります」

 

「俺も感じるぜ。ここは一旦、引いたほうがいいかもしんないぜ?」

 

「そうね」

 

リアスは神父を一睨みした後、更に言葉を続ける。

 

「朱乃、イッセーを回収次第、本拠地に戻るわ。ジャンプの用意を」

 

「はい」

 

姫島はリアスに促されると呪文を唱え始めた。

 

「ちっ! オレたちも一旦、退却するぞ」

 

「うん! 分かった」

 

本当はもっと戦っていたいけど、多すぎても扱いづらいしな。戻って潰す体勢を整えないとな。

 

私は手をかざして黒いゲートを出現させる。

 

「部長! アーシアとウィル先輩も一緒に!」

 

「ウィル、何してるの!? 早く来なさいよ!」

 

私とリリーがゲートへと入ろうとしているのに対して、ウィルはそのまま戦闘態勢に入っている。

 

「無理よ。魔法陣を移動できるのは悪魔だけ。しかも、この魔法陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

 

「そ、そんな!」

 

兵藤の顔が絶望に包まれたとき、ウィルが兵藤のほうを振り返って笑みを浮かべた。

 

「大丈夫だぜ、イッセー。アーシアたんは俺が連れて帰ってやるからよ。サクラ、リリー、お前ら先に帰ってろ」

 

「何言ってるのよ、アンタは! 複数の堕天使が向かってくるのよ! それを1人で相手にするなんて無茶よ!」

 

リリーがウィルを引き戻そうとするも、私が制する。

 

「お前は俺を馬鹿にしてるのか? 俺だってこう見えても、機関の数字持ちだぜ」

 

ウィルの自信のあるその言葉を聞いて私は目を瞑ったまま、口を開いた。

 

「分かった」

 

「絶対、連れて帰ろよな! 死なせたら承知しないからな!!」

 

兵藤はアーシアをウィルに託して、リアスたちと一緒に魔法陣に乗ってワープしていった。

 

「え、ちょっと待って! ウィルぅ!!」

 

私はウィルの意志を尊重して、リリーを右腕で押し込むようにゲートへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

とある教会の中。そこに紫の髪の少女とぽっちゃりとした体系の中年の神父が話をしていた。

 

「では妖魔は最近、大量に現れるようになったと?」

 

「はい、ここ最近ずっと妖魔たちが大量に増え続けているんです。中にはこの教会を訪れた者が、帰り際に妖魔に襲われたとか。そのせいでこの教会にも謂れもないレッテルを貼られてしまっているのですよ。この教会に入ったものは帰ってこなくなるという根も葉もない噂を」

 

「・・・ふむ。なるほど。それはこの町に妖魔が現れ始めてからですか?」

 

エレンは顎に手を当てて考え始める。

 

「そうなんです。あのような化け物が現れてから私らは困って困って・・・」

 

神父がエレンの手を握って喋りはじめる。

 

「エレンさん、どうかこの教会を救ってくださいませんか? 同じ主に仕える者同士ではないですか。エレンさんは噂に聞く妖魔を退治してくれる者たちの仲間と聞きます。どうかお願いいたします」

 

エレンは少しの間があった後、神父の手を握り返す。天使のような微笑みを浮かべながら言う。

 

「大丈夫です。妖魔を退治するのは私たちの習わしですから。神父さん、あなたをこの紫藤エレンが救いの手を差し伸べて差し上げます」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

神父は喜びの声を上げる。エレンはそれに内心苦々しく思いながらも、満面の笑みを浮かべていた。

 

(何かおかしい・・・)

 

エレンは神父と会話を終え、教会の外へと出る。帰路に向かう途中で、エレンは思考する。

 

(この教会の周辺には、禍々しい空気が漂っている。私でも分かるような細かな殺気が)

 

そう、あの教会。何かがおかしいのだ。

 

エレンは朝と昼と夜にも見に行ったが、殺気が中々静まり返った日が無いのだ。

 

むしろ常に垂れ流されているというか、最初から何かが待ち構えているというか。

 

まるでネズミ捕りのように罠が仕掛けられていて、入ってきたものに臭いを付けてエサとして認識させているのか。

 

「!!!」

 

という思考にいった直後、草陰からウサギ型の妖魔が4体ぐらい飛び出してきた。しかも自分を囲むように。

 

エレンは妖魔のギラリと輝かせた爪での攻撃を避けて、四方の囲いから脱出。

 

すぐさま白塗で黒の線を施した銃を左手、黒塗で十字架の装飾を施し、青色の線が入ったリボルバー型の銃を右手に出現させると妖魔に向ける。

 

「邪魔だ、どけ」

 

冷たい表情と冷淡な口調を発するエレン。すると一体の妖魔がエレンに走って向かってくる。

 

エレンは爪攻撃を飛んで交わすと空中で妖魔に銃を向け、両手の銃を連射する。

 

ダァン ダァン ダァン ダァン

 

ギャアオォォォォォォォォォォ!!

 

左手の銃からは電気を纏った光弾を3発、右手の銃からは青い光の銃弾を1発発射。

 

妖魔は光弾で貫かれた上、青い光の光弾を直撃されて跡形も無くなった。

 

そして宙を舞っていたエレンは別の妖魔に近くになったところで、錐揉み回転。妖魔に跳び蹴りを食らわせて、踏み台にして跳んだ後に宙で1回転。左右両サイドにいた妖魔を両手の銃でぶっ放した。

 

ダァン ダァン ズダァンッ!!

 

キシャアアァァァァァァッ!!

 

左の銃でぶっ放された妖魔は顔の半分と胴体の半分が消え去り、横に崩れ落ちた。右の銃でぶっ放された妖魔は青い光に包まれた後、跡形もなく消えた。

 

回転しつつエレンは地面へと着地する。そこに蹴り飛ばされた妖魔が怒りと共に襲い掛かる。

 

ギャアオアァァァァァアァァァァァッ!!

 

不気味な奇声を上げながら、向かってくる妖魔。

 

ジャキッ

 

そんな妖魔にエレンは臆することもなく、右手の銃を向け・・・

 

ズダァンッ!!

 

妖魔の頭を貫いた。その直後、妖魔の顔がふくれあがり破裂した。脳の残骸と頭の欠片が飛び散り、エレンの修道服と顔を血で濡らした。

 

「ふぅ・・・」

 

エレンは一息ついた後、銃を消滅させる。そしてハンカチを取り出して返り血を拭う。

 

「たかが妖魔如きに無駄な労力を使い過ぎたか・・・でも、こんなんじゃ足りない・・・」

 

エレンはつまらなそうに呟く。こんなんじゃ、物足りない・・・。

 

(やはり怪しいな・・・まさか、アイツらか?)

 

先程の教会なのか、それとも前もって待ち構えたかのような手際の良さなのか。

 

もしくは、私たちに関係しているアイツの陰謀なのか・・・。

 

どれかを怪しんでいるという表情を隠しつつ、エレンはその場を後にした。

 

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