極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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第15話「友との誓い」

 

倒れる俺の肩を抱く何か。見ればそれは木場だった。

 

「イッセーくん」

 

「遅ぇよ、色男」

 

笑顔で俺の肩を持って、体を支えてくれている。よく見ればボロボロじゃねぇか。

 

「イッセー、よくやったわね」

 

声のするほうを振り向けば、紅の髪を揺らした部長がこちらに向かって歩いてくる。

 

「部長、どこから?」

 

「地下よ。私の可愛い下僕がピンチだと察して魔法陣でジャンプしてきたの。教会にジャンプするのは気が引けたけれども、下僕のことを思うと言ってもいられなかったわ」

 

部長はそう言いながら息をつく。ということは下の妖魔は全員倒したってことになるよな。

 

それにしてもあのシスターは一体何者だったんだ? あの外道神父と何か関係があるみたいだったけど・・・。俺の頭の中の記憶の片隅にあるあの女性のことが気になった。

 

・・・・・・そうだ。そんなことよりも・・・。

 

「早く、アーシアを助けに行かないと・・・ぐ、っ!!」

 

俺は木場から体を離して劇場に行こうとしたが、体のダメージに膝をついてしまう。

 

「イッセーくん、無理しちゃダメだよ!」

 

木場が俺の元に駆け寄る。優しすぎるぜ、チクショー!

 

でも・・・・。

 

「そんなわけにはいくか!! このままじゃアーシアが妖魔に―――」

 

「その心配はありませんよ」

 

教会に響く澄んだ声。声の方向を見るとズルズルと何かを引きずる小猫ちゃん。そしてエレンさん、ウィル、リリーちゃんがこちらに歩いてきた。

 

小猫ちゃんは何ともなかったが、後者の三人は所々に血が付着していた。

 

たぶん敵の返り血だろうけれども、それは顔や服の所々に付着していた。

 

どう戦えばあんなに血が付くんだ? 俺はあまり笑えなかった。

 

リリーちゃんに至ってはドレスと金髪だから逆に妖艶に見える。何か複雑だ。よくわかんねぇ。

 

「アーシアなら先程、桜が奪還したとの連絡をしてきました。待っていればここに来ることでしょう」

 

・・・えっ? サクラが・・・?

 

あんなに俺が救出しにいくことに反対していたのに? アーシアを助けに行ったのか・・・?

 

・・・そうか。何だかんだいって、アイツも俺のことを気遣ってくれていたんだな。

 

俺は安堵したのか、体から力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

 

「あなたたち、大丈夫だったのね」

 

「ちょっと大変でしたけどね。何とか勝ちましたよ」

 

「あぁん、ドレスにいっぱい血が付いちゃったぁ~」

 

エレンが部長の問いかけに答え、リリーちゃんは子供のような不満声を漏らしながら顔の血を拭っている。

 

「何だよイッセー。カラスを吹っ飛ばしたぐらいで、もうバててんのか? 相変わらず、だらしねぇ体をしてやるがよなぁ」

 

うるせぇな! こっちだってこっちなりに大変だったんだよ!!

 

俺は突っかかってくるようなウィルの言葉にムッとした。

 

「?・・・何考えてのか知らねぇけど、どうせ俺でくだらないこと考えてたんだろ? お前の思ってることはすぐに顔に出るからなぁ~」

 

おい。今のは下手したら誤解を生むレベルの発言だよな!?

 

何言っちゃってんの、コイツ!? 俺は男の貞操には興味ねぇし、何よりイケメンは大嫌いなんだっての!!

 

「何で俺がお前で妄想しなくちゃいけねぇんだよ!? 気持ち悪りぃこというな!!」

 

「・・・ハッ、冗談も通じねぇとはお前も末だな」

 

こ、この野郎ッ・・・!! クソッ!! やっぱりイケメンなんかゾウに踏まれて死んでしまえッ!!

 

肩を竦めながら呆れたような口調で言うウィルに俺は猛烈に殴りたい気分になった。むしろコイツには死んでほしいことを願いたい。

 

「部長。持ってきました」

 

ズルズルと小猫ちゃんが引きずっていたのは堕天使――――レイナーレ。

 

俺が殴り飛ばして気絶したままのレイナーレを引きずってきたのか。

 

「とりあえずはサクラとアーシアが来るまでに、この堕天使の尋問でもしましょうか?」

 

エレンさんはハンカチで血を拭うと、部長に動かぬレイナーレを指さしながら問いかける。

 

「そうね。でも吐かせることなんてないと思うけど」

 

「・・・まあ、そうなんですけどね」

 

部長も笑みを浮かべながら答える。エレンさんも軽く肩を竦めながら言う。案外気が合うかもな、この2人。

 

「ほら起きなさい、よっ!」

 

「ガハッ!!」

 

リリーちゃんが突っ伏しているレイナーレに歩み寄り、腹を蹴った。その痛みでレイナーレが覚醒し、咳き込む。

 

見かけによらず、エグいことをするな・・・リリーちゃんは。

 

レイナーレがゆっくりと目を開け、それを部長が見下ろす。

 

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

 

「・・・グレモリー一族の娘か・・・」

 

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、以後お見知りおきを」

 

笑顔で言い渡す部長だが、逆にレイナーレは部長を睨みつけている。するとレイナーレが嘲笑うような顔になる。

 

「・・・してやったりと思っているんでしょうけど、今回の計画は上には内緒で私に同調して協力してくれる堕天使がいるわ。私が危うくなったときには彼らは私を――――」

 

「彼らは助けに来ないわ」

 

レイナーレの言葉を遮って、部長がハッキリと言い渡す。

 

「堕天使カラワーナ、堕天使ミッテルト、堕天使ドーナシークは彼らが倒したから」

 

そう言って部長はエレンさん、リリーちゃん、ウィルの3人のほうに目を向ける。

 

「嘘よ! そんな、下等な人間ごときに彼らが!」

 

レイナーレが上半身だけを起こして、部長の言葉を否定する。

 

するとリリーちゃんが堕天使の翼をレイナーレの前に放る。次にウィルがボロボロになった帽子と布切れ、そして堕天使の羽をレイナーレの前に落とす。

 

そしてリリーちゃんとウィルがエレンのほうに視線を向ける。エレンは肩を竦めてから、レイナーレに向けて口を開いた。

 

「カラワーナは犬のエサにしました。私の可愛いペットが残さずに食べてくれましたから。ホントにつまらなかったですね」

 

エレンが首を折りながら笑顔で言う。それは優しそうなのにどことなく怖かった。

 

犬のエサになったって・・・エレンさんも意外と酷いことするな・・・武者震いしそうだぜ。

 

「アンタの仲間がどうなったか、理解した?」

 

リリーちゃんが腰に手を当てて、レイナーレを見下ろしながら言う。

 

レイナーレの表情が曇る。本当にこの3人が堕天使を倒したわけだ。

 

「私は以前からイッセーとサクラを襲った堕天使ドーナシークに出会ってから、この町に複数の堕天使が何かをしようとしていたのは察していたわ。それとエレンと連絡も取り合ってからこの町に複数の妖魔が暗躍していたのもね。私は堕天使の計画は堕天使全体の計画だと思って無視をしていた。いくら私たちでも堕天使全体を敵に回すなんて愚は冒さないわ。でも妖魔のことはさすがに見逃せなかったから、その原因の足取りを追っていたの。その過程で堕天使がこそこそと嗅ぎ回っていておかしいと思って調べてみたら判明したの。これは堕天使の独自の計画だって」

 

部長の言葉に、エレンさんが続ける。

 

「裏でこそこそとくだらない計画を立てる者ほど、どうしようもないコソ泥みたいなヤツだって言いますから。あなたのお仲間は余程自信家だったんでしょうけど、私たちが人間だからって甘く見ていましたし、正直言って殺す価値もないくらいの低能でしたしね。・・・・・・ホント、つまらない」

 

「っていうかさあ、アンタら妖魔のせいで失態を犯したらしいじゃん? 馬鹿正直にアンタのお仲間が晒してくれたわよ」

 

「ハッ、ダッセェ。散々周囲見下しといて末路がこのザマってわけか? ホント、お前らの言う下等な生物に一杯食わされているお前らは何なんだよって話だよなぁ?」

 

リリーちゃんとウィルが嘲笑する。レイナーレが悔しそうに歯噛みをする。

 

今の部長の会話で察したが、「用事がある」って言っていたのはそれだったのか。

 

裏で他の堕天使と妖魔を始末しようとしていた。部長は考えてくれていたんだ・・・俺のために・・・。

 

やべぇ。感動で涙が出てきそうだ。

 

「それにしてもリアス先輩の力、結構カッコいいですわね。一撃食らったものを手品のように消し去ってしまうその力。サクラと同じ赤い炎、私の好きなリンゴと同じ赤色で素敵!」

 

「そ、そう?」

 

リリーちゃんが目をキラキラさせながら、部長のほうを見る。

 

「部長はね、滅亡の力を宿した公爵家のご令嬢。若い悪魔たちの中でも天才と呼ばれるほどの実力者の持ち主なんだよ」

 

「別名『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』と呼ばれるほどの方なのですよ?」

 

木場と朱乃さんが説明してくれる。

 

滅殺姫・・・俺、そんな方の眷属になったのか・・・お、恐ろしい・・・。

 

部長とエレンさんが俺の左腕の籠手に視線を向ける。

 

「・・・赤い龍。この間までにこんな紋章はなかったはず・・・そう、そういうことなのね」

 

「ええ、ハッキリ言って信じられませんけどね」

 

部長の目元が驚いているようにも見えた。一方のエレンさんは眼鏡を直しながら言った。

 

「へぇー、これが噂のアレかぁ。結構カッコいいじゃねぇか。顔は不細工だけど」

 

「・・・目覚めたんだ。私と同じ、ドラゴン・・・」

 

ウィルが興味深そうに俺の左腕を見る。一言余計だけどな!

 

リリーちゃんは複雑そうな顔を浮かべていた。どうしたんだろう・・・?

 

「堕天使レイナーレ。この子の、兵藤一誠の神器(セイクリッド・ギア)はただの神器(セイクリッド・ギア)じゃないわ。言い伝えの通りなら、10秒ごとに持ち主の力を倍加していき、一時的に神すらも超えるほどの力を得られるという神器の中でもレア中のレア。神滅具の1つ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』」

 

部長の言葉を聞いて、レイナーレが驚愕の表情を浮かべる。

 

「あ、あの忌まわしき神器がこんなガキに・・・!?」

 

「それにこの神器は最初は1でも徐々に倍加していけば、上級悪魔や堕天使の幹部でも太刀打ちできるような力を手に入れることができるらしいですね。極めれば神さえも越えられるほどに」

 

マ、マジですか!? 部長にエレンさん!! 俺、神でも倒せるの!?

 

でも、それが俺の神器の力か。

 

籠手には赤い龍のような紋章が刻まれているな。それにブーストブーストと言っていたのはその都度、俺の力が倍加されていたってことか。それでレイナーレが俺を見てビビッていたのも分かる気がする。

 

「じゃあ、最後のお勤めをしようかしらね。消えてもらうわよ、堕天使さん」

 

途端に部長の目が鋭くなり冷酷さを帯びる。冷たい口調になり、殺気が籠る。

 

とそこにリリーちゃんが歩み寄って声を掛ける。

 

『Freeze!』

 

「ねぇ、リアス先輩」

 

「何? リリー」

 

「ここはアタシがやってもよろしくって? だってコイツはアタシの友人に手を出した下賤な輩ですもの。始末しないとアタシの怒りが治まりそうにありませんわ」

 

『Freeze!』

 

部長はリリーちゃんを少し見つめた後、口を開いた。

 

「・・・分かったわ」

 

部長はそう言うと後ろへと下がった。入れ替わりにリリーちゃんがレイナーレの前へと歩み寄る。

 

『Freeze!』

 

・・・何かさっきからリリーちゃんから電子音が鳴ってるけど、何なんだ?

 

その電子音はあまり間隔を置かずに鳴っている。正確かどうかは分からないが、5秒ごとに鳴ってるっていったほうが正しいかもしれない。

 

・・・まるで、俺の神器みたいだ・・・。

 

「アタシが苦しまずに逝かせてあげる・・・ちょっと待っててね」

 

『Freeze!』

 

「ひっ」

 

不敵な笑みを浮かべるリリーちゃんから鳴る電子音に、レイナーレが小さな悲鳴をあげる。

 

「さ、さっきみたいな、音・・・ま、まさかあなたも・・・ロ、ロ」

 

「これから死ぬアンタが知る必要はないでしょ?」

 

『Freeze!』

 

また鳴る電子音。それに反応するようにビクンさせ、ガクガクと震えるレイナーレ。

 

そのレイナーレの視線が俺に移る。媚びたような目になった。

 

「イッセーくん! 私を助けて!」

 

その声は俺の彼女だった夕麻ちゃんそのものだった。

 

「この金髪の子が私を殺そうとしているの! 私、あなたを殺したけどあれは自分のことのために仕方なかったの! 本当はあなたのことは大好きよ! 愛してる! だから私を助けて、イッセーくん!」

 

レイナーレは『夕麻ちゃん』として、涙目で俺に懇願してくる。

 

するとリリーちゃんが俺のほうを振り向いて、問いかける。ただ一言。

 

「・・・どうすんの?」

 

『Freeze!』

 

こんな子を少しでも可愛いと思った俺がアホだったかもしれない。クソ堕天使。お前のおかげで俺は学習させられたよ。

 

答えは当然、決まってる・・・。

 

「グッバイ、俺の初恋・・・リリーちゃん、後は頼むよ」

 

「・・・・・・そう言うと思ったわ」

 

『Freeze!』

 

リリーちゃんがふうと息を漏らすとレイナーレに向き直る。

 

「アーシアをたぶらかした罰は重い。私の友人に言い寄るな。永遠の眠りにつけ」

 

『Freeze! Freeze! Freeze! Freeze! Freeze! Freeze! Freeze! Freeze!』

 

「ひぃっ!?」

 

『Blizard dragofrost!』

 

氷のような冷たい声でリリーちゃんが死の宣告をする。その直後に耳飾りがチカチカと光って、電子音が鳴る。

 

そして2つの耳飾りが一際輝くと、リリーちゃんにドラゴンのような形をした白い何かが纏い始める。

 

これは俺の肌でもよく分かった。あれは、冷気だ。

 

そしてリリーちゃんが右手を前にかざすと、ドラゴンの冷気がレイナーレに襲い掛かり、足元から周囲を螺旋状に周る。

 

バキバキバキバキ!!

 

「冷たい!! な、何!? こ、これ、は、な――――」

 

バキバキバキバキ!!

 

凍るような耳障りな音が聞こえてレイナーレの足元から氷が張っていき、彼女は引き攣っていた言葉を途切れさせた。

 

そう。彼女は数分も経たないうちに氷漬けになったのだ。

 

「ふん」

 

リリーちゃんは鼻を鳴らすと右手に青い槍を出現させると、そのまま氷漬けのレイナーレに突き刺した。

 

『Broken!』

 

電子音が鳴ったと思うと氷漬けのレイナーレにヒビが入り、バラバラに砕けて露散した。

 

俺の元カノは跡形も無く消えてしまった。そして残ったのは何ともいえない感情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリアンヌがリアスたちのほうへと戻ると、リアスがリリアンヌに問いかけた。

 

「ねえリリー、思ったのだけれども、あなたのその力も神器なの?」

 

リリアンヌは少し間を置いた後、口を開いた。

 

「・・・『氷龍女王の耳飾(ブリザードクイーン・イヤリング)』」

 

リアスはその言葉を聞いて目を見開いた。

 

ブリザードクイーン・・・もしかして、あの・・・!?

 

「・・・邪悪龍」

 

その言葉を聞いて眷属たちも目を見開いた。

 

「部長・・・邪悪龍って何なんですか?」

 

一誠はリアスに問いかけるが、それを代弁するかのようにエレンが答えた。

 

「邪悪龍は大昔に天界を荒らしまわった凶悪ドラゴンたちのことです。全部で七体いて、二天龍や龍王とも互角に争ったと言われています」

 

ポカンとしている一誠。それを見てエレンがはぁーっと溜息をつく。

 

「馬鹿にこの話をしたって理解できませんよね。終わりにしましょう」

 

「なっ!?」

 

するとリリアンヌが一誠に歩み寄って冷たい目で見る。

 

「・・・アンタ、アタシが堕天使を消す時に嫌らしいこと考えてたでしょ?」

 

「はぁ!? 別に考えてなガハッ!!」

 

一誠の解答も待たずにリリアンヌがゲシゲシと蹴りはじめる。

 

「見え透いた言い訳はいらないのよ!! バァカ、バァカ、バァァァカッ!!」

 

「ちょっ、何す、痛てッ! リリーちゃ、痛てッ! そこ傷、痛てッ!」

 

更にどこからかハリセンを取り出して、ビシバシと一誠のことを叩く。

 

「アンタのために堕天使を倒したわけじゃないんだから、勘違いしないでよね、バァァァァァカ!!」

 

「痛い、痛い、痛いッ、痛いって!! ちょっ、ハリセンで叩くなって!!」

 

「五月蠅い五月蠅いッ!!」

 

2人が背後で妙な喧嘩、というよりも理不尽に一方的に痛めつけられている光景がある。

 

どう見てもリリアンヌが一誠に苛立ちをぶつけているようにしか見えない。

 

エレンが溜息をついて、手をパンパンと叩く。

 

「はいはい、あなたたちいい加減にしなさい! まだ終わってないんですからね」

 

エレンの言葉にリリアンヌが叩く手を止める。

 

「リアス・グレモリー、もうあなたも気づいているんでしょう?」

 

「ええ、そうね」

 

エレンの笑みに、リアスも目を閉じながら口元に笑みを浮かべる。

 

そして2人揃って祭壇のほうを見る。

 

「隠れてないで出てきたらどうです?」

 

エレンが祭壇に呼びかけると少し間を置いて、そこから以前エレンが対面したぽっちゃりとした中年の神父が現れた。

 

「いやあーエレンさん、妖魔たちを退治してくださってありがとうございます。おかげで私もここでの信仰を安心して行えますよ」

 

「・・・・・・」

 

優しそうな笑みを浮かべて感謝の言葉を口にする神父。その言葉に目を細めるエレン。

 

すると椅子の1つが赤い魔力に包まれて消滅する。リアスの滅びの力だ。

 

「猿芝居もそのぐらいにしてもらえないかしら? この教会は元々捨てられたものだったはずなの。こんな場所にいきなり神父が現れるなんておかしな話ね。それにあなたが現れたことで私たちの町に妖魔が急増しているのよ。ねえ神父さん、いや妖魔の親玉さん」

 

リアスは笑みを浮かべているが、その目はどこか冷酷だった。

 

「はて、何のことですかな? 私はただ妖魔に食われないように避難していただけのことですが・・・」

 

そこにウィルが神父の言葉を遮って言う。

 

「じゃあアンタから、何で人間の血の臭いがするんだ? しかも、口の中からさあ?」

 

すると神父は顔を伏せて、含み笑いを漏らし始める。

 

「クッククククク、ハッハッハッハッハッハ!!」

 

「正体を現したようね」

 

神父は笑い声を上げ、リアスがほうっといったように呟く。

 

「バレてしまっては仕方ありませんねぇ。そうですよ、私が子分の妖魔共を動かしていたんですよぉ?」

 

「一体、何が狙いなの?」

 

リアスが問いかけると神父は気味の悪い笑みを浮かべながら答える。

 

「魔界のあるお方のご命令でねぇ。この場所の統治を任されたのだよ。この人間界を妖魔の楽園にしてやろうというお方の計画でねぇ」

 

「妖魔の楽園?」

 

リアスの疑問に神父が言葉を続ける。

 

「そうだ。人間たちが妖魔によって絶滅し、妖魔だけの安定な世界を作り出すためにねぇ。まあそれも、あのお方が金髪シスターの神器を奪おうなどと計画を変更したから、その計画も狂ってしまったが」

 

妖魔はあるお方に就くと同時に、ひそかに妖魔の世界を作り上げようと考えていたのだ。

 

一誠は怒りが湧いてきた。そんなくだらない計画のためにアーシアが巻き込まれたりしたというのか・・・!?

 

「ふざけんな!! 何でお前らの、お前の言うお方の勝手な都合でこの世界を、俺たちの住む町を荒らされなきゃいけねえんだよ!!」

 

神父の身勝手な発言に一誠が怒声を張り上げる。

 

「荒らすとは失敬な。私は安定な暮らしを望んでいるだけだぞ? 人間などという醜い存在に汚された世界よりも妖魔のような可愛い存在のほうがよかろう」

 

その言葉に一誠は思った。イカれてやがる、と。

 

リアスが冷淡な表情を浮かべて、右手に魔力を纏わせる。エレンも神父を睨みながら、両手に銃を構えた。

 

「下賤な輩の考えそうなことね。でも、そんなことさせない・・・どちらにしても、私の縄張りで好き勝手なことをした罪は重いわ」

 

「あなたを今から掃除してあげますから、覚悟なさい」

 

そして他の眷属やウィルとリリアンヌも戦闘体勢に入る。

 

「フン。覚悟するのはお前たちの方だ。何故なら、キサマラハコノワタシニヨッテクワレルンダカラナァァ!!」

 

神父の体がボコボコと泡立つように膨れ、体を突き破ったかと思うと茶色の化け物へと姿を変えた。言葉も途中で蛙のような濁った声へと変わる。

 

身の丈3メートルぐらいの巨体をしており、頭部は牛の角が生えたようなドラゴンの顔、手は所々に刃が突起しており、腹筋が2つに割れていた。

 

「オマエタチハ、ワタシノエサダァァァァァァ!!」

 

不気味な咆哮を上げながら、グレモリー眷属と機関たちに襲い掛かろうとする巨大妖魔。

 

その刹那・・・・

 

ズダァンッ、ズダァンッ!!

 

グオォォォォォォ・・・オォ・・・

 

腹部を撃ち抜かれ血を噴く体、ビクンビクンとさせながら呻き声を上げ妖魔が倒れ伏す。

 

「よう。お前ら」

 

全員が声のする方向を見ると入り口に背中を付けて銃を構えていた桜と彼女の肩に抱えられているアーシアがいた。

 

「サクラ!! アーシア!!」

 

声を上げたのはリリアンヌだった。

 

「何だか騒がしいと思ったら、面白い状況に陥ってるじゃないか」

 

そしてアーシアの姿に気付いた一誠も声を上げる。

 

「アーシア!!」

 

「イッセーさん!!」

 

一誠が走って駆け寄る。アーシアも桜に下ろされて駆け寄り、お互いに体を抱き合う。

 

「アーシア、無事でよかった・・・」

 

「イッセーさん、会いたかった・・・」

 

互いに涙を流す一誠とアーシア。その光景を見ていた式が笑みを浮かべる。

 

「ちょっとぉ! アーシアから離れなさいよぉぉぉ!!」

 

リリアンヌが一誠とアーシアの姿を見て、怒ったような声を上げる。

 

2人に駆け寄ろうとしていたので桜はリリアンヌのドレスの後ろ襟を掴んで引きずり、リアスたちのほうへと歩み寄ってくる。

 

「サクラ、無事だったのね」

 

「・・・随分と遅かったですね」

 

「・・・ああ。劇場からここに来るまで大分距離があったからな。それにアーシアの体力が持たなかったから所々、休憩を挟んでいたのさ」

 

リアスに言った後、倒れ伏している妖魔のほうに目が入る。

 

「やっぱりこの神父は妖魔だったんだな。優しい顔をしてるけど、内面は妖魔みたいな邪な感情を抱いていた。そこら辺にいる獣の妖魔よりも恐ろしいぜ」

 

桜が更に言葉を続ける。

 

「それにしてもここに来るまで退屈だったんだ。妖魔が一体も現れなかったから。お前ら、何でオレの分を残さなかった・・・?」

 

桜がエレン、リリアンヌ、ウィルをそれぞれ不機嫌そうな顔をして見る。

 

いやいや、残す方がおかしいだろう・・・!?

 

3人が心の中で一斉に桜にツッコミを入れた。

 

桜は溜息を付いた後、リリアンヌの後ろ襟を離すともう一度妖魔の方へと向き直る。

 

「まあいい、コイツがいることだし、コイツで我慢するか。このままじゃオレの気が済まない。不公平な気もするが、ここはきっちり4等分するか。気晴らしだ」

 

桜が後ろに背負っているリベリオンを握る。すると同時に倒れ伏していた妖魔がむくりと起き上がる。

 

「お前ら。ここは一つド派手なライブをかまして、パーティーにしてやろうぜ!!」

 

桜が右手を上げて、飛んできたリベリオンを手にしたかと思うと、妖魔の腹を切り裂く。

 

ギャアオォォォォォォォォォ!!

 

妖魔が咆哮を上げ、切り裂かれた場所から鮮血が飛び散る。

 

「・・・!!?」

 

リアスたちも豹変に気づいていた。このときサクラの言葉を聞いた3人の空気は変わっていたことに。表情は伺えないが、ただ口元にニタリと笑みを浮かべていたのは分かる。

 

ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ!

 

妖魔の腹筋に銛のような形状の槍が4本突き刺さる。リリアンヌが槍を投げたのだ。腹筋の空いた穴の隙間から血が噴き出る。

 

その直後ウィルがダッシュしたかと思うと姿を消し、妖魔の眼前に迫る。

 

妖魔は左手を突き立てようとするも、ウィルは交わして妖魔の脇の下を潜るとそのまま振り向きざまに、大剣で左腕を斬り飛ばした。

 

更にサクラが右腕の隣に瞬間移動して、妖魔の右腕をリベリオンで斬り飛ばす。

 

「きゃっ!?」

 

大きな左腕はグレモリー眷属のすぐ側にボトリと落ち、女性陣が小さな悲鳴を上げる。

 

その直後にエレンが懐に瞬間移動して、妖魔の巨体を蹴り上げるとそのまま右手の銃を撃ち上がった妖魔に目掛けて連射する。

 

ズダダダダダダダダダダダダダ

 

ギャアァァァァァオォォォォォォォォォォォォォ!!

 

妖魔が壮絶な呻き声を上げて、撃たれたところから血を噴き出させ撃ち上がっていく。

 

エレンが連射を止めるとその隣に桜が瞬間移動して、リベリオンを下から思いっきり突き上げるようにして、そのまま落下してくる妖魔の胸に目掛けて突き刺した。

 

ドゴオォォォォォォン!!

 

リベリオンが妖魔を突き刺し、教会の屋根が吹き飛んでも可笑しくないくらいの一撃を食らわす。

 

ブシャアァァァァァァァァァァァァ!!

 

キィヤアァァァァァァァァァァ・・・・

 

妖魔の胸から大量の鮮血が噴き出し、断末魔のような奇声を上げる。ビクンビクンと体を痙攣させながら全身にヒビが入っていき、妖魔は全く動かなくなった。

 

桜がリベリオンを抜き去ると妖魔は何分割もバラバラになり、地面に落ちて露散した。

 

そしてリベリオンを縦に振り、横に振り払って付いた血を掃う。横に振ったときに大量の血が祭壇の壊れている十字架に降りかかった。

 

今のサクラたちの姿は華麗で、クールそのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜はリベリオンを背中に収めるとアーシアと一緒にいる一誠の元へと歩み寄る。

 

「なあ・・・サクラ、俺・・・」

 

一誠はアーシアから体を離して式のほうを向く。桜はしばらく一誠を見つめたまま、無表情で口も開かないし動かない。

 

しばらくすると桜が溜息を付き、口を開く。

 

「・・・罪滅ぼしのつもりか?」

 

「は?」

 

「オレは来るなってあれほど促したのに、お前は結局来たんだもんな」

 

「あ、当たり前だろ。友人を見捨てるなんて俺には出来ない」

 

一誠が答えると桜は目を瞑って、背を向ける。

 

「・・・エレンから聞いたよ。堕天使に勝ったって」

 

「ああ。アーシアを助けたいって気持ちと、お前のことを考えていたら、力が溢れてきて堕天使を打ち負かしたんだ」

 

「・・・オレのことを、考える?」

 

桜が疑問を覚えて振り向く。一誠が言葉を続ける。

 

「・・・俺さ、お前を裏切って酷いことしちまった。そのことに対する自分に怒りが湧き上がってきてさ。友人の約束を守りたいって、絶対に守りたいって、そう考えたんだ」

 

「・・・・・・」

 

「俺、もっと強くなるよ。お前を守れるほどに、アーシアを守れるほどにさ。絶対に・・・」

 

その一誠の目には決意の二文字が似合っていたかもしれない。桜はそう感じていた。

 

「・・・絶対って何?」

 

あのとき、桜が一誠に問うた質問。その言葉に一誠が拳を突き出して口を開く。

 

「どんなことがあっても果たすってことだ!」

 

「・・・・・・」

 

桜はしばらくその言葉に沈黙していたが、やがて笑みがこぼれた。

 

「何だよ、それ? 無茶苦茶だな」

 

「かもな。へへ」

 

2人はしばらく笑みを交わし合っていた。そして再び桜が前を向く。

 

「まあ、精々頑張れば? 友人」

 

桜は入り口に向けて歩き出す。他のエレン、ウィル、リリアンヌの3人も入り口に向けて歩き出す。

 

もちろんアーシアを連れ戻すのも忘れないように声を掛ける。

 

「行くぞ、アーシア」

 

「ま、待ってください」

 

アーシアの言葉に桜が足を止める。

 

「・・・どうした?」

 

「あの・・・私、イッセーさんと一緒にいたいです」

 

アーシアの告白に桜が目を開く。桜だけでなく、エレンとウィルとリリアンヌも驚いていた。

 

「・・・理由を聞こうか?」

 

「わ、私、イッセーさんがあの堕天使から私を庇ってくれた時、とても嬉しかったんです。友人になってくれると言ってくれたときは嬉しくて涙も出ました。私、気付いたんです。イッセーさんが好きなんだって・・・」

 

桜はアーシアの言葉にしばらくの間、沈黙していた。

 

コイツは確かに頼りない。これからもアーシアを守ってやれるとは限らない。

 

でもコイツは、兵藤と一緒にいたほうが楽しそうに見える。怪物である自分たちと一緒にいるよりも、この莫迦と一緒にいたほうが幸せだろう。

 

桜はエレンのほうに視線を向ける。

 

「・・・エレン、いいか?」

 

エレンもしばらく沈黙の間、諦めが付いたように溜息を吐くと口を開いた。

 

「好きになさい。上には適当に言い包めておきますから」

 

「・・・うん。そうかもね」

 

エレンも何だかんだいって優しいよな。桜はそう思った。

 

リリアンヌはそれを聞いて残念そうな顔をしていた。いくらアーシアが好きでも、自分も普通ではないと分かっているからこその反応なのだろう。

 

「おい」

 

そして桜はもう一度、一誠に問いかける。

 

「今度はちゃんと、手放さないな?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

説得力があるとは分からないが、一誠の決意ある言葉を聞いて桜が笑みを浮かべた。

 

そして桜は再び入り口に向かって歩き出す。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

再び掛けられる声。振り向くとそれはリアスだった。

 

「サクラ、あなたはイッセーとアーシア、2人の友人でしょ? これからも2人に何かあったらよろしく頼むわね」

 

「・・・フッ」

 

リアスが悪戯っぽい笑みを浮かべながら言う。桜はリアスの言葉に不敵な笑みを浮かべる。

 

前を向いて歩きながら、後ろの相手に手を振った。他の3人もリアスたちに笑みを浮かべている。

 

そして4人は闇の回廊を使って、その場から姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

教会から、正確には祭壇側の窓から一羽のカラスが上空に向かって飛んでいく。

 

そして上空にいる、とある女性の手の甲の上に停まる。

 

その女性は綺麗なウェーブのかかった銀色のショートヘアをしている。そして黒いポンチョを羽織っていて、何故か駒王学園の制服を着ている。

 

カラスは耳打ちをすると女性は笑みを浮かべた。

 

「・・・そう。ご苦労だったわね。もう戻っていいわよ」

 

女性が問いかけるとカラスは姿を消した。

 

「・・・何だか、嬉しそうですね」

 

銀髪の少女の背後にいた真っ直ぐな黒髪で黒衣を着て、何らかの本を手に持っている女性が話しかける。空中でどうやって座っているのかは分からないが、それでも座っていた。

 

「そりゃそうよ。魔王の妹に、顔は貧相だけどあの赤い龍を身に宿した子がいるのよ。これらがいたことでもいい収穫だとは思わない? 私の玩具がまた増えたんだから」

 

「フフ、それは・・・楽しみ、ですね」

 

言っている通り、玩具でも見つけたような笑みを浮かべながら銀髪の少女が語る。それを聞いて黒衣の女性も微笑む。

 

すると黒衣の女性の隣に、黒いモヤモヤが突起し中から姿を現したのはシスター服を着ている白髪の少女だった。

 

「ご苦労だったわね、シフォン。アンタは最高の仕事をしてくれたわ」

 

「ありがとうございます。でも、あのクソ悪魔たちを殺し損ねたのが名残惜しいところです・・・」

 

「別にいいじゃない。アイツらなんか殺そうと思えば、アタシたちの手で殺せるんだから。つまらなくなった玩具を壊すみたいにね。それに比べて・・・」

 

銀髪の少女がシフォンに言う。そして途端に不機嫌そうな顔をして、色黒で仮面を被っているくノ一に縄でグルグル巻きされて拘束されている中年の男に目を向ける。

 

「ラルド。アタシの作戦を無視して逃げるなんて、いい度胸ね」

 

「も、もうしわけございやせん。でも、あの女の、あの目、あのたぐいまれなる殺気、あの厳かなるプレッシャーを感じると、どうにもですなぁ・・・」

 

「アンタ、普通の雑魚妖魔と変わらないじゃない。折角、知能があるように改造してあげたっていうのに、やっぱりクズはどんなにしたってクズってこと?」

 

ラルドと呼ばれた男に向かって不満そうな口調で嘲る銀髪の少女。

 

「も、もうしわけございません・・・」

 

「・・・もういいわ。アンタは帰ったらお仕置きよ。そして、あんなことも二度とできないようにしてあげる・・・」

 

ラルドに近づいて、額を指でグリグリと回すように押しながら言う銀髪の少女。その不敵な笑みにシドは表情を引き攣らせていた。

 

「あーあ、フリードもどっかに行っちゃったし、退屈ね~」

 

「見つけたらお仕置きをしておくので、大丈夫ですよ」

 

「あっそ。好きにしたら?」

 

シフォンがそう言うも、銀髪の少女は不満を漏らすだけ。すると仮面少女が仮面を外して話しかけてきた。

 

「オイ、あの神父に言っていた妖魔の楽園ってのは本当なのかよ? いかにも胡散臭ぇ内容だったけどよ」

 

乱暴な男口調で話す緑髪の左側を結わえている女性に銀髪の少女が答える。

 

「興味ないわよ、そんなもの。あんなの従わせるための口実にに決まってるじゃない。本当はあの金髪少女の神器を手に入れるためにやったこと。あの巨体妖魔はただの囮と隠蔽が役目。最初から願いを叶える気なんかないわ。まあそれも、この弱虫妖魔のせいで結局は捨て駒になっちゃったけどね」

 

銀髪の少女に指をさされ、ラルドがうっと声を詰まらせる。

 

「ああそうかよ。くだらねぇこと聞いちまった」

 

女性は頭を掻きながら答える。

 

「ねぇねぇ、あの猫の子って可愛いよねぇ~。私、あの子と一緒にお茶を飲みたいなぁ~。リーシャちゃん、紅茶飲む?」

 

このメンバーではあまりにも不相応な明るい声で話しかけるのは、緑色の燕尾服でシルクハットを被っている、まだ幼さのある少女。

 

少女は椅子に座ってテーブルの上の紅茶を啜って、クッキーやビスケットといったお菓子を食べている。

 

どういう原理で浮いているのかはわからないが、とにかく少女はティーパーティーを楽しんでいた。

 

「いらねぇよ」

 

「何でぇ~!? せっかく美味しそうな紅茶とお菓子も用意してるのにぃ~!」

 

「アタシは甘いものが大嫌いなんだよ!! 大体何でこんな場所でお茶なんかしてんだよ、頭湧いてんのか!?」

 

「ぶぅー! アリスが何をしようとアリスの勝手でしょ~!?」

 

「ンだよテメェ。やるってのか、このチビ!!」

 

リーシャと呼ばれた女性に怒鳴られた少女がムスッとした顔でプンプンと子供っぽく怒る。

 

今にも喧嘩が始まりそうな空気になったとき・・・

 

「じゃあ、アタシがもらおうかしら」

 

銀髪の少女がそう言うと燕尾服の少女は嬉しそうな顔をする。カラフルなティーポットでティーカップに紅茶を注ぐと差し出す。

 

それを見たリーシャは「ケッ」という苛立ったような声を上げて背を向ける。

 

「リーシャはもう少し頭を冷やしたほうがいいのではなくて? いつまでもそんな感じだと頭が沸騰して思考回路が可笑しくなるわよ?」

 

「うるせぇ。テメェもブッ殺すぞ」

 

シフォンが若干小馬鹿にしたような感じで不敵に笑うと、リーシャから拗ねたような声が聞こえた。それを見ていた黒衣の女性はクスクスと笑った。

 

一方の銀髪の少女は紅茶の入ったティーカップを受け取り、教会を眺めながら紅茶をズズ・・と啜る。

 

「・・・甘いわね。でもアタシのゲームはそんなに甘くないわ」

 

悪戯っぽい不敵な笑みを浮かべながら、銀髪の少女が更に口を開く。

 

「まだゲームは始まったばかりよ? サクラ(マナ)

 

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