極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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私はまだ小説を書く身としては素人です。原作の人物の口調がおかしくなる場合がありますが、その辺は気にしない方向でお願いします。

基本原作通りですが、時にはオリジナルの展開やストーリーを書く場合もあります。それらがダメな方は戻るを押してバックしてください。

では、続きです!



第1章 ファースト・コンタクト
第1話「妖魔を狩る女たち」


一軒家に住んでいる風花桜の朝は今日も早い。つい夜中まで仕事をしていたというのに、いつも早朝に起きなくてはならないのだ。

 

その理由は学校に登校するためだ。まあ、簡単なことである。でも大して寝ていない。

 

白い着物を着て仰向けに眠っている桜は朝の陽ざしを浴びて寝返りを打った後、動きたくない重い体を起こす。洗面を済ませ、朝食はクッキーで済ませる。

 

そして着物から学校の制服に着替え、1人で住むには広いだろうという家を飛び出していく。

 

桜が通っているのは私立駒王学園。現在は共学だが、元々女子校であったために女性のほうが男子よりも比率が高い。クラスが下がるごとに男子の比率は上がるものの、それでも平均的には女子のほうが多い。

 

「きゃあぁぁ、桜さんよ!」

 

「今日も素敵。クールぅぅ!」

 

「桜さあぁぁぁん、こっち見てぇぇ!」

 

駒王学園の門を桜が通れば、このような黄色い声がわんさか聞こえてくる。

 

桜はこの学園では優等生として有名、男とも女とも似つかない容姿も女生徒や一部の男子生徒からは多大な人気を誇っている。

 

部活には所属してはいないものの、特に朝昼はやることのない桜は部活の助っ人を頼まれることもしばしば。それでも、嫌々やっているが。

 

そんなものを何のそのとやり遂げてしまう桜は最早、学園中の憧れの的でもある。

 

しかし、本人にとってはいろんな意味でいい迷惑なこともある。帰ろうとすれば下駄箱にどこの馬の骨とも知れない女生徒たちからの大量の手紙がドッサリ入っていたり、いつの間にか自分の小道具を盗まれていたりと別の意味で苦労も絶えない。

 

その都度手紙はこっそり処分したり、物を買い直すという面倒なことをしなくてはならないのである。

 

桜は周囲の声を華麗にスルーしながら一直線に教室に入り、机に突っ伏した。女生徒が自分を見ているような気もしたが、そんなことはどうでもいいことだ。そんなことを思いながら眠りに落ちたのであった。

 

 

◆◆◆

 

 

そして昼休み。桜は芝生の上で寝そべっていたが、そこに桜にとっては不愉快な言葉が聞こえてきた。

 

「あぁ、おっぱい揉みてぇ」

 

「兵藤に一票」

 

「言うな…空しくなる…」

 

ため息をつく三人の男たち、顔はいいがスケベな発言をする、一応これでも桜の友人である少年・兵藤一誠、眼鏡を掛けたどこかキザっぽい元浜、坊主頭の松田である。

 

この三人はいつも学校に来れば、エロいDVDを持って来たり問題発言ばかりをしていて、そのたびに女生徒が小さな悲鳴を上げたり「最低~」「エロガキ死ね」といった非難の言葉すら飛び出る。

 

そんなはた迷惑な行為から生徒たちには『変態三人組』と呼ばれており、悪い意味で人気である。

 

「なあお前ら…俺たちはどうしてこの学校に入学した?」

 

「女生徒たちとのハーレム!」

 

「その通り!おっぱい溢れる充実ライフ!」

 

「…の筈がついに彼女が出来ないまま二年目の春を迎えちまったわけだ…」

 

再び溜息をつく三人組。すると運動場のほうから女生徒の黄色い声が聞こえてくる。

 

「木場く~ん。この後、どうするの?」

 

「一緒にお茶しに行かない?ねえいいでしょう?」

 

「ウィルくん、ウィルくん。一緒にカラオケでも行かない?」

 

モブなのにどこかと可愛らしい女生徒が金髪のイケメン・木場祐斗、銀髪の一見クールな青年・ウィルヘルム・ロックハートに話しかける。

 

「ごめん。今日部活があるんだ」

 

「俺もちょっと用事があってな」

 

「え~残念」

 

「せっかく誘ってくれたのにごめんね」

 

「悪りぃな。でもまた誘ってくれよ。いとしのハニー達♪」

 

「はあ~格好いい~」

 

「あのクールさと爽やかさのギャップが良いわよね~」

 

というようにたったこれだけの会話でも女生徒を落としてしまう。ウィルヘルムに至ってはウインクまでしている。それほど木場とウィルヘルムは三人組と比べものにならないほど、否、比べる必要のないくらいのイケメンなのである。

 

「2年C組木場祐斗…3年D組ウィルヘルム・ロックハート……先輩。女性徒の憧れの対象にして…」

 

「我々全男子生徒の敵ッ…!」

 

元浜の言葉に松田が繋げるように言う。まあ正確に言えば一人を除いてだが。

 

桜は別にイケメンが好きなわけではないし、嫌いなわけでもない。憧れや恋愛対象のカテゴリーに入っていないだけである。

 

いや、そもそもクールでとことん無関心の桜に憧れたり恋愛したりすることがあるのだろうかと思えるくらい興味が無いのである。

 

桜はウィルを見ていたが、それもすぐにどうでもいいと言ったかのように目を瞑った。

 

「チクショー! ちょっと顔が良くて頭も良くて性格が良いくらいで入れ食いしやがってー!! しかも何だよ銀髪のあのイケメン野郎ッ! ウィンクなんかしてカッコつけやがって!」

 

「…一応、あれでも俺たちの先輩なんだがな」

 

「先輩だろうが後輩だろうがイケメン面見てるとムカついてくんの!」

 

「まあそれはそれとして…人はああいうのを完璧と言うんだがな」

 

「言うな…虚しくなる…」

 

元浜が悲しそうに眼鏡を直す。三人は再び溜息をつく。

 

「あ~。世の中不公平だよなあ~」

 

と一誠がうなだれていると。

 

「お!そろそろ時間だな♪」

 

「? どこにいくんだよ?松田」

 

芝生を離れようとする松田に一誠が問いかけると、松田はエロビデオを見ているかのような嫌らしい笑みを浮かべた。

 

◆◆◆

 

場所が変わって体育館の裏。

 

「村山の胸、ちょーでけぇ~!」

 

「80 70 81」

 

松田が何やら興奮しながら言い、元浜は眼鏡で女生徒を分析していた。何ともいやらしい限りである。

 

「片瀬、いい足してんな~」

 

「78 65 79」

 

「体育の授業の時に、偶然見つけちまってさ~」

 

ご察しの通り、この男二人は体育館に通じる女子更衣室に穴が空いているのを発見。

 

女生徒が着替える時間を見計らって覗きをしていたのだ。周囲からはどう見ても不審者にしか見えない何ともシュールな光景である。

 

「コラ! 俺たちにも見せろよ!」

 

松田のみっともなく突き出た尻を引っ張り出そうとする一誠。すると…。

 

「よぉ、お前ら。随分と楽しそうなことしてるじゃないか」

 

背後から聞こえてきた声に三人は硬直する。振り返ってみると、そこには不敵な笑みを浮かべ、腕を組んで仁王立ちをしている桜の姿があった。

 

「お、お前は!」

 

「この学園で女生徒ではお姉さまに並んで人気が高く、度々我々の活動の邪魔をする2年の風花桜ッ…!」

 

「サ、サクラ……」

 

「またやってんのか、お前ら。何度注意されても懲りねえ奴らだな、オイ。いい加減にしろ」

 

「桃源郷を覗くことの何が悪いというのだッ! お前のようなイケメンに我らの気持ちが分かるものかぁ!」

 

「そうだ、そうだ! 覗いてはいけないなどと誰が言ったかッ!」

 

やや怒気を含ませた桜の言葉に猛抗議をする2人。そういう救いようのない発言ばかりをしている2人に桜もイラ立ちが募っていく。特に便乗して一緒に覗こうとした一誠には。

 

「じゃあ、お前らがそういうことをする度に粛清しなければならないオレの気持ちなんかこれっぽちも分かんねーよなぁ?」

 

何だかんだで変態三人組の行為を阻止している桜。これは桜が彼らの行動を面白半分で悲惨な目に遭わせた結果、生徒会長から称賛され、これからも彼らの問題行動を止めて欲しいと頼まれたからである。

 

桜にはそんなつもりは更々なかったが、やらなかったらやらなかったで騒がしく面倒なことになりそうだったので、仕方なくやっていることなのである。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!サクラ! 俺はまだ覗いてねーぞ!」

 

金属バットを構え始めた桜に、未だ一ミリも女生徒の裸を覗いていない一誠が弁解しようとするのだが…。

 

「まだ? じゃあこれから覗こうとしてたってことか?」

 

「うっ…そ、それは……」

 

桜の指摘に言葉を詰まらせる一誠。確かに松田の尻をどかして自分も見ようとはしていた。その矢先に式が現れたのだ。

 

「図星だな。じゃあお仕置き決定だな。王国の法律では、止めない奴も罪になるというらしい」

 

「そんなぁ…! っていうか、何だよその法律!? 聞いたことねぇよ! しかもここ王国じゃないし!」

 

「似たようなもんだろ…? つーか、五月蠅い。黙ってオレに殺されろ」

 

突っ込みを呆気なく突っぱねた桜にツッコミを入れる一誠。それすらも一蹴にした桜がフラフラと歩きながら三人に向かって歩き出す。

 

「あ、あの、桜さん? ここは一つ話し合いをすることはできないでございましょうか…?」

 

「そ、そうだ! 見境のない暴力は悲しみしか生まないのだぞッ!?」

 

「俺のエロ本をやるッ! それで許せッ…!」

 

一部、火に油を注ぐバカなことを言ってはいるものの、とはいえ迫りくる桜に恐怖してそのような言葉を吐くしかない三人。それは猫に部屋の隅に追い詰められた鼠のよう。

 

「問答無用!」

 

そして桜は金属バットを打ち下ろした。

 

ゴーン! ゴーン! ゴーン! ゴーン! ゴーン!

 

「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」」」

 

穏やかな昼休みの空に三人組の情けない悲鳴、もとい断末魔の叫びが響き渡るのだった。

 

 

◆◆◆

 

放課後、もうすぐで暗くなりそうな夕日が照らす中。桜は帰り道を一人歩いている。欠伸をしながら怠そうに、いやもしくは退屈で仕方ないかのようでもある。

 

すると制服のスカート腰から振動しているのを感じる。ブーブーと音が鳴り体の内部にまで振動が伝わってくる。

 

ポケットを弄って取り出してみるとそれは自分のスマートフォン。画面を見てみると『紫藤エレン』と表示されている。

 

桜は一呼吸置いた後、画面の『応答』をスライドして耳に当てる。

 

「何だ?」

 

桜は平淡とした声で言う。

 

「仕事? 飼い猫探しのような仕事ならお断りだ」

 

そもそも動物を探すなんて面倒だ。というか面倒なことばっかりでいいことなんて何一つない。ただ来ている服が汚れるばかりか、疲れるだけだ。

 

何が悲しくて他人のケダモノなど探さなくてはならないのか。退屈で体が破裂しそうになるし、死んでもゴメンだ。

 

桜はそのような仕事してからはこのような観念を抱いている。確かにと言えるのか間違っているのかは分からないが、単に面倒だということだけは分かる。

 

「違う? じゃあ、何?」

 

どうやら自分が思っている退屈な仕事ではないようだ。どのような仕事かを聞き返す。

 

電話越しの声を聞いていると桜の口元に笑みが浮かんだ。

 

「ふ~ん…そうか。分かった」

 

桜はスマホの通信を切ると暗くなった空を見上げる。

 

「全く。今日は面倒で、面白くなりそうだな」

 

そうこぼした桜はまず自宅へと帰宅していく。

 

◆◆◆

 

俺――イッセーこと兵藤一誠は学校の帰り。本当はサクラも一緒に帰ろうと誘ったのだが、睨んだ上に素気ない態度をとって帰ってしまったのだ。

 

まあ、怒っている理由は分かってるんだけどね。あの後俺は昼休みに一人サクラに追い回され、金属バットでボコボコにされた。しばらく顔の腫れがひかなかったことやサクラの顔が不敵に怖い笑みを浮かべていたことが今も鮮明な記憶に残っている。

 

それにしても松田と元浜のヤツ、途中で転んだ俺を置いて逃げるとは何て奴らだ! これでおっぱいの一つも見られればまだマシだと言えるようになるものを!

 

とまあ、そういう話はさておき、俺は松田、元浜と別れて今は歩道橋にいる。

 

「はぁ~、暗い青春だ……このまま俺の学園生活は花も実もなく、おっぱいに触れることなく終わるのかぁ……」

 

「そんなことばかり言っていても、幸せなんか訪れませんよ」

 

ふと俺からではない誰かの声が聞こえた。ハッとして声の主を探すと、左隣に本を開いている少女がいた。

 

誰だ…この人? 修道服を着ていて首からロザリオをかけているし、どこかのシスターか? たしかこの街には教会があったような…。

 

それにしても……綺麗な人だなぁ。紫色の髪をすらりとおろして、眼鏡とぴったりとマッチしている。メガネ萌えっていうのかな…? こういうの。胸はまあ、ちょうどいい感じ?

 

「…何ですか? 人のことをいつまでもジロジロと見て。嫌らしいですよ。」

 

目の前の美女を眺めていると彼女はジト目でこちらを見てきた。嫌らしかったか…俺?

 

「あっ、ごめんなさい!! 君があまりにも綺麗だったから!」

 

「初対面の相手に向かって何をほざいてるのですか…。全く…まあいいでしょう」

 

本を閉じるとこちらに向き直った。正面から見ると、改めて美人だな。

 

「あなたは運命というものを信じますか?」

 

「えっ?」

 

美女は突然、意味深なことを聞いてきた。

 

「運命というのは数奇なものです。この先の自分の未来が幸福であったり、不幸であったり、はたまた残酷なものかもしれない。そんなものをあなたは信じていますか?」

 

う~ん、そんなこと言われてもなぁ~。いきなり難しい話をされても分からないし、何ていうかシスターだからこういう純白な話ができるのかな・・・?

 

「……はっきり言って、そういうのはよく分かんないです」

 

「そうですか」

 

すると美女は俺に近づいてきて、俺の顎に手を当てる。思わず顔がにやけそうになったが、そうした欲求を抑えて美女の顔を見る。

 

「でも、それはまだあなたが気付いていないだけのことです。この言葉の意味をあなたはいずれ知ることになるでしょう」

 

またしても意味深な発言をしていたが、その思考は美女が次にしたことで吹き飛んでしまった。

 

美女は俺の顔に――正確には俺の頬に唇を触れさせたのだ。

 

ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

 

ま、まさか!! 今のってキス!?

 

この人、何で俺なんかにキスを捧げちゃってるの!? まあ、嬉しいには嬉しいんだけどさ…。

 

「ごきげんよう」

 

突然の行動に俺が動揺していると、美女は微笑みながら挨拶をしそのまま俺の横を通り過ぎていく。

 

俺はただ、茫然と立っているだけだった。

 

◆◆◆

 

一誠と別れた紫ヘアーの修道女は、彼に見せたことのない無表情な顔で帰路に着いている。

 

その最中には、口をハンカチで拭っている。口づけを交わしていないとはいえ、先程の相手のことを確かめるために自分からしたキスが余程嫌だったのだろう。

 

「噂通りの下品な男だ。邪念が籠っているのがヒシヒシと感じたぞ」

 

修道女は口をある程度拭った後、ハンカチをポケットにしまう。

 

「しかし、信じられない。まさか、あのようなパッとしない男に眠っているとは…」

 

意味深な発言をする修道女。どうみても普通の一般人にしか見えない男に一体何か眠っているというのだろうか。

 

そう思っている修道女は立ち止まり、掛けている黒縁の眼鏡を外した。

 

ギャオォォォォォォォ

 

すると左斜めと右斜め前方から妖魔が飛び出してきた。

 

「でもまあ、それでも私たちの脅威になるのであれば――」

 

そして、左右の手から系統の違った銃を一丁ずつ出現させると、彼女の体中から紫色の電気が迸る。

 

バチバチバチッ

 

ドゥン!!

 

二丁の銃から紫の電気の玉が放たれ、二体の妖魔にそれぞれ命中。すると同時に電気と光の爆発が包み、消えた後には何も残らなかった。

 

「消し飛ばすだけだ」

 

 

◆◆◆

 

その夜。白い着物の上に赤色の革ジャンを着て、足には編上げのブーツを履いている桜が街へと繰り出す。武器は二丁の銃と腰に提げている短剣しか携帯をしていない。

 

腕を組み周囲を見渡しながら、繁華街、市街地、公園と通り過ぎていく。そして森に差し掛かったところで、桜は立ち止まる。そこには日常生活とは全く違う異様な空気が漂う。

 

「ざっと二十体ぐらいか…。まあ、楽勝だな」

 

サクラは冷静に分析する。殺気が明らかにダダ漏れしているので、魔力の探査を普段しない桜にでも分かる。

 

ケタケタケタケタケタケタ

 

すると人間は発しないであろう不気味な笑い声が聞こえてきた。

 

「隠れてないで出てこいよ。それともオレが怖いのか?」

 

キィシャアアァァァァァァ

 

桜の挑発に反応して怒ったのか単に本能のままなのか、不気味な奇声と共に周囲の草むらから妖魔たちが一斉に襲い掛かってきた。体系は人とは変わらない頭と四肢を持っているが、全身の肌は茶色で口は大きく裂けて歯は鋭く尖り、瞳は金色で瞳孔は縦に割れている異様な姿である。

 

「バカ正直に出てきたな。だったら…」

 

桜は口元にニタリと笑みを浮かべ、右手を上に挙げる。するとどこからともなく魔剣が飛んできてそれをキャッチ。そして一言。

 

「全員殺さないとなァ!!」

 

飛び退いて攻撃を避けると同時に左手の銃で1体の妖魔に発砲した。

 

ダァンッ、ダァンッ!

 

ギャアァァァァァァァッ!

 

ゴッ、ゴッ! ダァンッ、ダァンッ! ゴッゴッ! ザシュッ!

 

更に背後から襲い来る2体の妖魔を蹴り飛ばし、後ろを向いたまま銃弾を食らわせ、直後に前から襲ってきた1体の妖魔の顎を左・右と蹴りを食らわせて打ち上げ、そこに下に潜り込んできた妖魔を上から魔剣で両断。

 

ダァンッ、ダァンッ! ビュン! ザシュッ! ザシュッ! ズサッ! ダァンッ、ダァンッ!

 

蹴り上げた妖魔に銃弾を撃った後、背後から襲ってきた2体の妖魔を走りながら魔剣でそれぞれ斬り捨て、ジャンプして前方から向かってくる妖魔の頭に魔剣を突き刺す。魔剣を突き刺したまま背後から襲ってくる2体の妖魔に銃弾を発砲。

 

動かなくなった妖魔から魔剣を抜いた後、桜を囲むように3体の妖魔が飛びかかってくる。桜は銃を捨てた後、両手で魔剣を持ち炎を纏わせる。

 

「フッ!」

 

そしてジャンプすると

 

「やぁッ!」

 

左手を構えそこから炎を放ち、3体の妖魔を一掃。

 

キシャアァァァァァッ!

 

更に左手に炎を纏わせて真っ赤にすると、下で式を待ち構えた5体の妖魔に向かって拳を叩きつける。その衝撃で妖魔は吹き飛び、拳が直撃した妖魔はバラバラになった。

 

そして、背後から襲い来る3体の妖魔に振り向く。

 

「はあぁぁッ!」

 

魔剣を振り下ろし、発せられた赤いオーラの波で妖魔を一掃した。

 

妖魔を全て斬滅した後には、おびただしい血の量、未だに炎の残る地面、そして切り裂かれた何体もの妖魔の死体が転がっていた。

 

桜は魔剣をブンブンと縦に振り回した後に背中に背負い、落ちていた銃を消滅させた。

 

「…もしかして、あれが関係しているのか? オレたちが今、探している奴らが」

 

桜は顎に手を当てて妖魔がこんなにも蔓延っている理由を考えてみる。

 

戦い好きの桜にはうれしい限りではあるが、普段なら5体か6体ぐらいしか出現しない妖魔がその倍近く現れるということは何かがおかしい。この日本にこんなに出るとはどうも異常なのだ。

 

「まあいい。考えるよりも叩けばいいだけだしな」

 

そんなことはどうでもいい、戦えれば。まるでそんなことを言ったかのように桜は考えるのを止めた。

 

「モココ!」

 

桜が呼ぶとどこからともなく小さな光の球体が飛んできて、ポンという音と共に生物が現れた。

 

モココと呼ばれた生物はウサギのような耳とフサフサの尻尾、大福のような丸々とした白い体型をしており、額には赤い宝玉が付いている。

 

「ぷっう~ん♪ 今を行くトキメキアイドル! モココちゃ~んだぞ❤」

 

現れるなりテンション高く、ノリの良い声で自己紹介をするモココ。そして地面へと降りると桜の方へとピョコピョコと駆けより、木を登るかのように脚から背中、そして肩へと乗っかってきた。

 

体型は明らかに白い大福にそっくりである。

 

「相も今日も変わらず元気だな」

 

「モココはいつでも元気だよ♪ たとえ火の中、水の中、血だまりの中~!」

 

「ハハハ。やっぱ面白いな、お前」

 

「えへへ/// それほどでもぉ~」

 

楽しそうに会話をする珍獣に、ご機嫌な桜は笑みを浮かべながら頭を撫でる。モココは頬を染め、手を当てながらイヤンイヤンとする。

 

これが男と女だったら惚れていると誤解されがちなシチュエーションだが、女と珍獣なのでそんなことはない。ただ撫でられて嬉しそうにしているだけなのだ。

 

「まあ無駄話はこれぐらいにして、いつものヤツ頼んだぞ」

 

「ハ~イ♪ お安い御用だよ!」

 

モココは元気に挨拶すると桜の肩から腕を滑って、掌へと飛び移る。モココの大きさは桜の掌に収まるぐらいの大きさである。

 

そして今まで細かった目をカッと見開き、口を開けて吸い込み始めた。思わず周囲に風が起きてしまうほどの吸引力で妖魔の死体や血の跡などを口の中へと吸引していく。

 

数秒立ったころには戦いの跡が何もなかったかのように、残骸が綺麗さっぱり無くなった。モココの目も元に戻っている。

 

「ギプッ。ごちそうさまでした♪」

 

「お粗末様」

 

モココは吸引が終わった後、桜の腕をよじ登って肩へと移った。桜はモココを見て微笑む。

 

そして反対側の森の方向へと目を向けた後、視線をすぐに元に戻す。

 

「さて向こうも終わったみたいだし、帰るか。今日の夕飯は鮭のムニエルにするかな。モココも食べるか?」

 

「食べるぅ~♪」

 

「そうか。よし今日は奮発してクレープも作ってやる」

 

「わーい! ご飯、ご飯~♪」

 

桜は嬉しそうにはしゃぐモココと一緒に自宅へと歩いていく。

 

 

◆◆◆

 

「ふん、ふんふふ~ん♪」

 

桜とほぼ同時刻。別の場所では少女のご機嫌な鼻歌が聞こえている。白と金の入った高級そうな椅子に座り、白いクロスに包まれた高級そうなテーブルで紅茶を楽しんでいる美少女。

 

金髪で縦ロールのツインテールで頭には水色のヘアバンド、両耳には透き通った水色のイヤリングを付け、ピンク色のフリフリのドレスを着ている。月の明かりが彼女の美しさをより一層漂わせているようだった。

 

それとは逆に周囲には氷漬けになった大量の妖魔や胴体から血を噴き出して事切れている妖魔の遺体がある。前者においては妖魔のうちの一体に薙刀が突き刺さっている。

 

前者は氷は月明かりで光っている分、まだマシとは言えるかもしれない。だが後者においてはそのような場所でお茶をしようなどとは何とも似つかわしくない限りである。それが朝や昼間だったら周囲の人はドン引きして見ていることだろう。人気の無いので平然とやっているわけではあるのだが…。

 

『こんな汚らしいところでよく紅茶なんか飲めるわね、リリアンヌ?』

 

「何ですの、サファイア? 私の優雅なティータイムを邪魔しないでくださる?」

 

イヤリングから声が発せられ、美少女はそれに返答する。

 

『別に邪魔するつもりはないわよ。死体だらけの野原の中心でティータイムなんて、頭おかしいんじゃないのって思ってるだけよ』

 

「あらあら、私たちはそういうもの( ・・・・・・)だってことはアンタも知ってるでしょう?」

 

『昔は打ち震えるくらい怖がってたくせに』

 

「うるさいわね。昔は昔、今は今よ」

 

『どうだか……。前なんか黒光りの虫なんかに怖がってなかったけ?』

 

「あの忌まわしき生物と一緒にするなっての」

 

するとサファイアは友人をからかう同級生のように面白半分に語り始めた。

 

『あれは面白かったわ~。その生物が飛び出してきたときに、アンタは物凄い顔をして叩きに行ってたもんね。あれは今、思い出しても笑みが込み上げてくるわ~』

 

「…………」

 

リリアンヌと呼ばれた美少女は思い出された恐怖なのか、それとも執拗にからかってくるサファイアへの怒りなのか、体をプルプルと震わせ始めた。

 

『それにこの前なんか、大掃除のワックス掛けをしてすっ転んだのよね。あれはもう腹が割れそうに――』

 

ダァンッ!!

 

自分の黒歴史をバカ話のように語るサファイアの言葉に我慢の限界のリリアンヌは、話を遮るようにティーカップを持った手をテーブルに叩きつける。

 

「ああもう、イライラするわね!! 不愉快だわ。せっかくのティータイムが台無し!! もう帰るわよ!!」

 

『内臓と血だらけの戦場跡と不気味な顔の妖魔の氷の彫刻を鑑賞するほうが不愉快な気分になるっての』

 

一通り紅茶を飲みほしたリリアンヌはテーブルとイスを片した後、氷漬けの妖魔から槍を抜き取った。

 

『Broken!』

 

どこからともなく発せられた電子音と共に、妖魔は氷ごとバラバラに崩れ去った。美少女はそのまま薙刀を肩に担いで歩き出す。

 

「それにしても……月が綺麗ですわね」

 

『まあ、この悲惨な風景の中では一番マシな背景ね』

 

月明かりが照らす夜の中、彼女はその場を後にした。

 

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