極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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今回の番外編は初めてオリジナルです。自身が無いので、正直言って面白くありません!

それでも付き合ってくださるのであれば、下へスクロールしてご覧ください!



番外編3「夢見るサクラ」

舞台は何故か、南国の島。そこに2人の少女がお互いに顔を合わせている。

 

1人は風花桜。しかしいつものような着物姿ではなく、葉っぱで作った水着を身につけている。ブラの部分は胸にフィットしていて、しっかりと似合っている。

 

「リリーよ! 今のお前では『南国ブラジャー』に勝つことはできないぞ!」

 

竹刀を突き付けてもう1人の少女に、現実で訳の分からないことを言うサクラ。

 

もう一人のリリアンヌ・ダルク、彼女もいつものようなドレス姿ではなく、彼女もまた水着姿。だがこちらは何故か青色のスクール水着を着込んでいる。

 

「そうだね、サクラ」

 

いつもの甘えるような声で言うリリアンヌ。それを聞いて桜は眉を寄せて、目をパチクリさせながら拗ねたような声で言う。

 

「・・・リリー、お前はダメだな」

 

「ええぇぇ!?」

 

「今のオレはサクラではない。熱血コーチと呼べ!」

 

驚きの声を上げるリリーに、肩にかけた竹刀をパンパンさせながら式が言う。

 

「あ、うん・・・熱血、コーチ・・・」

 

曖昧な声を漏らしつつもリリアンヌが桜の言われたとおりに呼ぶ。それを確認して頷くと桜は何故か配置されてある玉座を指さす。

 

しかも看板には『南国へようこそ!』と書かれた文字の上に、『南国キング』と張り紙がされてある。

 

「リリーよ! 南国キングになりたいか!?」

 

「ああ、えっと・・・特には・・・だって胡散臭いし・・・」

 

またも曖昧な声を漏らすリリー。その言葉を聞いた桜が表情を険しくさせる。

 

「・・・リリー、本気で見捨てるぞ・・・?」

 

「えっ!? そ、そんな! な、なな、なりたい! アタシ、南国キングになりたいよぉぉぉ!!」

 

怒ってるような掠れた声で告げるサクラにリリーが狼狽する。そして本心ではなかったが、見捨てられたくないと言わんばかりに懸命に体を動かしながらわざとらしく言う。

 

それを確認するとサクラが竹刀を持っていないほうの拳を突き出す。

 

「ならば、特訓だ!!」

 

そう言った後、サクラは芝生の上で正座をするとその上にリリアンヌの頭に乗せて寝そべらせる。まさに膝枕状態になったわけだ。

 

「コーチ、これは?」

 

「これは、何が起きてもじっと耐える訓練だ」

 

リリアンヌが問いかけると、式が解答に応じる。

 

「・・・動くなよ」

 

掠れたような小さな声で告げるとサクラは細長い何かを取り出す。尻の部分が綿になっていて、先端部分が丸くなっている物。耳かき棒だ。

 

手にしたそれをゆっくりとリリアンヌの耳の穴の中へと挿入し、小刻みに動かす。

 

こしょこしょ・・こしょこしょ・・・。

 

「ん・・ぅぅあ・・・あぁ・・ぁん・・・」

 

耳の穴の中を搔きまわされ、リリアンヌが呻きにも似た嬌声を上げる。それにも構わず、サクラは耳かきを動かす。

 

こしょこしょ・・こしょこしょ・・・。

 

「ぁ・・・ぁん、くすぐったいよぉ・・・」

 

「!! か、可愛い・・・!」

 

喘ぎにも似た声でくすぐったさを呟くリリーに、サクラがときめいてしまう。そんな彼女の胸の前を白い何かが通り過ぎ、身につけていたはずのブラが消える。いつものようにさらしを巻いていないので、サクラの普通よりも少し大きい胸が露わになる。

 

「あ、はっ・・・?」

 

思わずという声を漏らして視線を向けるとそこにはブラの水着を持ったモココの姿があった。

 

「はっ・・・あ、ああ・・・」

 

恥ずかしさなのか、何かを言いたげそうに口をパクパクとさせるサクラ。いつもの無表情ではない、狼狽した様子だ。

 

「どうしたの、コーチ?」

 

「!? ああ、な、なんでもない!」

 

顔を起こして問いかけてくるリリアンヌに焦るサクラ。バレないようにリリアンヌの頭を寝かせて、奪われた様子が見えないようにする。

 

「・・・つ、続けるぞ」

 

調子が狂わされたようにサクラが言うと、リリアンヌの耳の穴の中に耳かき棒を入れて中を搔きまわす。

 

こしょこしょ・・こしょこしょ・・・。

 

「ぅん・・・んぁ・・・あぁ・・ぁん・・んぅ・・」

 

耳の穴の中を搔きまわされて、リリアンヌは嬌声を上げ続けた。

 

数分後、ブラの上をマット代わりにしているモコナが見守る中、サクラはまだリリアンヌの耳を搔きまわしている。

 

あれほど聞こえていた嬌声も、今では聞こえなくなっている。

 

「・・・つ、次は反対側だ」

 

サクラがそう告げるも、リリアンヌの返事がない。

 

「・・・リリー?」

 

怪訝に思ったがリリアンヌの顔を覗くと、リリアンヌはすっかり眠っていた。

 

ドクンッ

 

「!! 眠っているのにも関わらず、何という、可愛さ・・・! リリー、かなりいいぞ!」

 

サクラがリリアンヌの可愛い寝顔に悶えながら、胸を揺らしながら眠っている彼女に告げる。

 

「うん・・・美味しそうな果物・・・」

 

夢を見ているのか寝言を漏らすリリアンヌ。更に彼女の舌が舐めるようにペロペロと動き出す。

 

「ああ・・・あああ・・・」

 

リリアンヌの顔に悶えるサクラ。その顔には目を開きつつも、汗が滲んでいた。

 

ふとリリアンヌが仰向けになり、サクラの少し大きな胸を鷲掴みにする。

 

「ひっ!? だ、ダメだリリー。それ以上は・・・あぁ!」

 

果物だと勘違いするリリアンヌに触られたサクラが喘ぎに似た声を上げる。

 

「にゃはは・・・いただきまぁす・・・」

 

リリアンヌは目を瞑ったままの笑顔で漏らすとサクラのおっぱいを口に咥えてしゃぶりはじめる。

 

「!! ああ・・・はっ・・・」

 

舌でおっぱいを舐めまわされる感覚に思わずサクラが嬌声を漏らす。

 

チュパ・・チュパ・・チュパ・・チュパ

 

「ひ・・うぁ・・・ぁぁ・・ふぅ・・くぅ・・・うぁ、ぁあ・・・」

 

おっぱいを前後に動かしてしゃぶられる感覚にサクラが身悶える。くすぐったいのかどうかは分からないが、サクラが首を左・右・上へと動かす。顔を歪めつつもどこか甘い表情にも見える顔、その頬もすっかり桃色に染まっている。

 

「はぁ・・・ふぁぅ・・・んぁっ・・・ふっ、ぁ・・・ひゃあぁ!?」

 

喘ぎ声に近い声を漏らしていたサクラの口から悲鳴が上がる。先程までしゃぶっている状態だったリリアンヌが突然、おっぱいを吸ったのだ。

 

チュウ、チュウ、チュウ、チュウゥ!

 

「あっ! はっ! うっ、あ、ああぁぁぁぁ!! あっ、はぁぁっ! く、あぁ・・・」

 

やや顔を逸らしながらサクラが目を見開き、口をパクパクさせながら身悶える。おぞましいような気持ちいいような感覚がサクラを襲う。

 

「あ・・・ぁ・・・ぅ、ぁ・・ぁ・・・」

 

やがて喘ぎ声も小さくなり、空に視線に映っているサクラの瞳は輝きを失うと同時に仰向けへと倒れ、意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

「!!? ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

・・・こ、ここは・・・?

 

私は・・・確か、リリーに胸を吸われて・・・。変な気分になって・・・。

 

息を整えながら首だけを横に動かすと視線に満月が映る。あれは・・・窓だ・・・。

 

首を動かして視線を上に戻すとそこは・・・天井・・・。

 

・・・もしかして、ここは・・・私の自室か・・・?

 

首を右に倒すとそこには私が革ジャンを放っていたポールスタンドが見える。

 

それだけ見ればもう十分だった。息が大分整ってくると私は状況を理解する。

 

・・・そうか。さっきのは夢か・・・。

 

酷いものだった・・・。まさかリリアンヌに胸を吸われるなんて、現実で考えただけでも虫唾が走る。

 

それにあの夢はどこかおかしすぎる。まず一つ、南国ブラジャーって何だよ? 私はそんなものには興味は無いし、勝負するつもりもない。南国キングという名称も意味不明だ。それ以前に何故私は着物を羽織っていない?

 

それに自分のことを熱血コーチだと言っている・・・。恥ずかしい・・・。

 

おまけに何ということだ。リリーを見て興奮するとか、しゃぶられた程度で喘ぐとか、あんなの私じゃない。気持ち悪い・・・。

 

壁に掛けてある電波時計を見ると・・・まだ0時半か・・・。今日は珍しく仕事も無くて早く眠れたのに、あんなふざけた夢を見せられたせいで気分が台無しだ。

 

ああ・・・着物も汗でびっしょりで気持ち悪い。取り替えないとな。

 

でも、とりあえずはのどが渇いた・・・。私は台所に行ってペットボトルの水を取りに行こうと体を起こそうとする。

 

・・・ん? 何だ・・・?

 

今更気付いたが、胸のあたりに圧迫感を感じる。それに、何だか苦しい・・・。

 

首だけを起こしてみるとそこには私の上に乗っかって、両胸を揉んでいる金髪の少女。

 

「むにゃむにゃ・・・この果物は私が食べるのぉ・・・」

 

・・・・・・・・・。

 

ゴチンッ!!

 

「いったぁーい!! きゃあっ!?」

 

幼馴染――――リリーの頭に拳骨を食らわせ、痛みに呻いているところを両手で逆にベッドへと押し倒す。これでリリーが下、私が上ということで立場が逆転したわけだが。

 

「ここで何をしている・・・?」

 

私はリリーと顔の距離10cmぐらいの距離で問う。というか、何でコイツがここに・・・?

 

「あ・・そ、そんな・・・アタシはまだサクラとはそんな関係には・・・」

 

・・・まだ寝ぼけているのか、コイツは。面倒臭・・・。

 

私はリリーの頬を摘んで引っ張った。

 

「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!!」

 

痛みを訴えるリリー。私は引っ張っていた頬を離してやる。

 

「・・・少しは莫迦な頭も冴えたか?」

 

「・・・はいぃ」

 

自分でもよく知っている低い声で私は呼びかける。リリーは涙目で頬をさすりながら答えた。

 

最近、コイツが何をやっているのか自分でもよく分からない。それ以前に興味は無いけど。

 

「それで、お前はどうしてここにいるんだ? というか、どうやって入ってきた?」

 

「・・・・・・だって」

 

・・・ん? 何だかリリーの表情に陰りが出てきたような・・・。

 

「だって羨ましかったんだもん! サクラとアーシアが一緒にお泊まりをしているなんて!」

 

リリーが涙を流しながら叫ぶ。・・・うるさい。

 

ああ、そうだ・・・確か昨日からアーシアも一時的に泊まっていたんだっけ・・・。不快なものたちのせいで忘れてた。

 

よく分からないな・・・。何で私とアーシアが一緒にいることが羨ましいのか。

 

「・・・寝床を貸してやってるだけだ。それ以上の何の意味がある?」

 

「あるわよぉ! 2人で仲良く愛を育んでたんでしょう!? お菓子食べてお話をして、××××もしていたんでしょう! アタシを差し置いて!」

 

確かにお菓子を食べたりはしたけど、愛を育んではいない。というか、何故そういう風に捉えられる? それに××××って何?

 

お話といっても話すことなんか何もないし、普通にダラダラ過ごしていただけだ。無言の空間だったけど、気まずくはなかったな。

 

「お前には関係ないだろう。さっさと家から出ていけ」

 

「ええぇぇ、酷い!! 追い出そうとするなんて! サクラはアタシのこと嫌いなの!?」

 

「嫌いとかそういう問題じゃない。お前がいると暑苦しいし、うるさいんだよ」

 

本当にコイツは、どうしてこんな幼馴染になってしまったんだろうか・・・。親の顔が見てみたいよ。まあ、知ってるけど・・・。

 

「うぅ、やっぱり酷い・・・。もういいもん! 拗ねてやるぅ!!」

 

リリーが声を上げると私の部屋の扉へと駆け出す。本当に面倒臭いな、コイツは。

 

「あ、あれ・・・開かない?」

 

ドアノブを回して扉を開けようとするが、開かない。そのことに疑問の声を漏らすリリー。

 

・・・部屋に鍵がかかっているな。多分、コイツがかけたのだろう。自分で部屋の鍵をかけたことも忘れているのか。

 

私はこの莫迦さ加減に、笑いが込み上げてきそうになる。

 

そんなことを感じていると、リリーが「はっ!」という声を漏らす。

 

「そう・・・そういうことだったのね」

 

ブツブツと声を漏らすリリー。いい加減自分が莫迦なことを言っていることに気付いたのか?

 

「サクラはアタシと監禁プレイがしたかったのね!」

 

・・・・・・は?

 

「私が眠っている間に鍵を掛けて、そしてわざとアタシが覆いかぶさるように細工をしていたのね。サクラったらもお~」

 

何を言っているんだ、コイツは・・・。寝不足で頭でも湧いたのか?

 

するとリリーが明るい表情で私のほうを見る。

 

「しょうがないわね~。じゃあ、アタシの愛のチュウを~」

 

・・・待て、何故そうなる?

 

・・・そういえば、あんなふざけた悪夢を見せられたのはコイツのせいだよな。夢の中で私の胸に吸い付いてきやがって・・・。

 

そう思うと私の中に怒りが込み上げてきた。

 

私は無言でリリーの頭を片手で鷲掴みにして、玄関のほうへと移動すると扉を開けて彼女を尻を蹴って外へと出した。

 

「きゃうん!?」

 

リリーはコンクリート作りの道路へと落ちる。ちなみにめり込んではいない。

 

「やるなら壁や地面に好きなだけやってろ」

 

そう吐き捨てると私は玄関の扉を閉めて施錠をした。もう、これで誰も入ってこないはず。

 

私は台所へ行くと冷蔵庫を開けてペットボトルの水を取り出し、口の中へと注ぐ。喉が潤う・・・。

 

時間は・・・まだ0時45分か・・・。学校が始まるには早すぎるな・・・寝ていよう。

 

私は自室へと戻るとペットボトルを板の床の上に置くと、ベッドへと横になる。

 

今度は・・・眠れるといいな・・・。あんなエッチで不愉快な夢はもうごめんだ。

 

そんなことを思いながら、私は意識を闇へと落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

「和菓子」と書かれていた江戸時代のような和風めいた店の外の席で、サクラは皿にのせてあるある菓子を楊枝で刺して口に運んでいる。

 

食べているのは黄粉餅だ。小さな長方形に餅が切り分けられていて、そこに甘い金色の粉を塗してある。

 

口に和菓子を含んでいるサクラの顔は無表情だが、心の中では嬉しいような感情が混じっている。誰にも邪魔されず、静かな空間で彼女は至福の時を過ごしている。

 

「綺麗なお嬢さん」

 

「ん?」

 

店の入り口から和服姿のお婆さんが顔を覗かせて声を掛ける。菓子を口に含みながら、それでも皿は空にしたサクラが振り向く。

 

「お待たせしたよ、クリームあんみつね」

 

「・・・どうも」

 

お婆さんが赤い布が敷かれた席の上に器と木でできた匙を置くと、サクラはコクリと返事を返す。

 

サクラはすぐさま置かれた器を手に取ると、匙ですくってそれを口に運ぶ。器の中の白い寒天、アイスクリーム、缶詰のみかん、白玉、餡子と口の中に入れてよーく味わう。

 

この店では甘味のフルコースを行っており、サクラは今それを味わっている最中なのである。

 

数分経って器を空にすると、お婆さんが次のメニューを持ってくる。

 

「これは、ごま団子だよ」

 

「・・・ふむ」

 

席の上に置かれたごま団子の皿をサクラが手に取って見る。二種類のごま団子が乗せられており、薄緑色の団子と薄いオレンジ色の団子だ。

 

サクラはある程度見つめた後、薄緑色の団子を口の中に放る。胡麻のサクサク感が口の中で感じ、抹茶と南瓜の味が口に広がる。

 

次に薄いオレンジ色の団子を口の中に放る。こちらは全体的に栗の甘さが伝わってきた。サクラは2つの団子を味わって、うんうんと首を縦に振った。

 

ああ・・・幸せだ・・・。こうして誰にも邪魔されない一時が私にとっては天国みたいなものだ。

 

頬を桃色に染めながら至福の時を感じていると、お婆さんが絶妙なタイミングで次のメニューを持ってくる。サクラも彼女が来たことに気付くと空の皿を置いて見遣る。

 

「これはいちご大福だよ」

 

「・・・苺」

 

お婆さんが3つのいちご大福が乗った皿を席の上に置くとサクラはそれを興味深そうに見る。苺なら自分の好物の上によく乗っかっているもの。それが中身として入っているものに関してはどのような味がするのか気になるのだ。

 

皿を手に取るとそのうちの1つを齧り付く。口の中で苺のすっぱさと餡子の甘さが混ざり合って、口の中に広がる。

 

(これはおいしいな・・・)

 

そう思って一つ目を平らげると、すぐに2つ目に手が伸びる。サクラは顔にこそ現れていないが、どこか満足そうだった。

 

そして3つ目に手を伸ばそうとしたとき、サクラの手が止まる。動かないはずの大福が一瞬ピクリと動いたのだ。

 

(・・・は?)

 

サクラが疑問を感じていると大福がピクピクと徐々に激しく動き、臨界点に突破した途端に真上へと飛び上がった。

 

高いところへと飛び上がったかと思えば、大福は落下してきてボールのように弾み始める。思わず立ち上がったサクラが大福のところに駆け寄るも、離れたと思えばサクラの周囲を飛び始める。

 

サクラは腰の短剣を抜いて構えるも、大福が飛び跳ねるせいで狙いが定まらない。

 

その刹那・・・

 

「プゥーン!!」

 

「むぐっ・・!」

 

数回バウンドした後に、地面から明るい声を上げながら式の顔に目掛けて大福が飛び上がってきた。すっかり不意を突かれた式は大福の動きに対応できなかった。

 

式の顔に張り付いたように激突し、バランスを崩した彼女は後ろへと倒れた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

「!!?・・・!?」

 

「うわぁ~!」

 

飛び上がりそうな勢いで目を開けた私は視界が何かに覆われているのを感じ、それを片手で掴んで左へと放り投げる。

 

視界が開けると天井の作りが少しおかしいことに気付く。というよりも、顔を上げてみると何故か視界に足が見えていて、ベッドの上に乗っかっている。

 

それに背中がふかふかしておらず、ゴツゴツとした固いものを感じる。どこかぶつけたのか、背中と後頭部が痛い。

 

・・・そうか。私、ベッドから転げ落ちたのか。しかも上半身だけ。

 

ああ、もう最悪。何で今日だけで夢ごときに2度も苦しめられなければならないのだろう。静かに寝かせてほしい・・・。

 

私の存在も普通じゃないが、大福が襲ってくるなんてとんでもない夢だ。さっきまで見ていたいい気分が台無しだよ。

 

私はとりあえず、足をベッドから下ろして上半身を起こす。頭を搔きながら左を見ると、そこには小さく小刻みに震わせているモココがいた。

 

・・・なるほど。モココが邪魔をしたのか。どうりであんな訳の分からない夢を見るわけだ。

 

というかモココが何で私の部屋に? いつもは外で眠っているくせに。

 

私は眠気に頭を痛めながら立ち上がり、その白い物体の元に歩み寄って鷲掴みにすると私の顔へと近づける。

 

「ひゃあ!? な、何でサクラがここにいるの?」

 

「こっちの台詞だ。何でオレの部屋にいる・・・?」

 

「え? あれ? ここってモコナ専用の寝床じゃ・・・?」

 

・・・どうやらこの生物は寝ぼけて私の部屋に入ってきてしまったらしい。何とも面倒な話だ。

 

私はモコナの手を離すと睨んだまま言う。

 

「お前の頭は脳味噌の代わりに餡子でも詰まってるんじゃないのか? ここはオレの部屋だ。分かったらさっさと自分の寝床に戻れ」

 

「うん、ごめんねサクラ。今、部屋に戻、る・・・」

 

宙に浮いていたモココが私の顔に張り付いて、寝息を立てる。視界がまた塞がれる形になったわけだが。

 

コイツ、わざとやってるんじゃないのか・・・?

 

怒りを覚えた私はモココを鷲掴みにするとそのまま窓へと思いっきり放り投げた。

 

ガシャンッ!!!

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ~!」

 

窓を突き破ってモココが悲鳴を上げながら、夜空の星と化した。要するにどこかへ飛んで行ったってこと。

 

あ~あ、窓が割れちゃったな。まあいいか、明日秋山に修理させればいいだけの話だし。

 

時刻は・・・1時24分か・・・ホントに今日は厄日なんじゃないのか。

 

私はそのことにイライラしたまま、ベッドに後ろから飛び込む。んん、でもやっぱりベッドは落ち着くな・・・。

 

体を横に倒しながら思うが、さっきから私は安眠を妨害されているんじゃないのか。そうだ、そうに決まってる。

 

次に私の安眠を邪魔するヤツがいたら、ソイツの頭にタンコブの山を築いて、体中をボロ雑巾にして、尻を4つに割ってやる・・・。

 

私はそんなことを思いながら、本日3度目の眠りへとついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

そこは教会の中、花束を持ったサクラが1人の少年と一緒に教壇の方へとゆっくりと歩いている。

 

サクラの格好は案の定、いつもの着物姿ではなくベールを被った白いドレス姿だ。少年のほうは黒いタキシードのようなものを着ている。

 

そう、今日は結婚式なのだ。教会の長椅子には男女問わない人々が2人を祝福しようと座っている。

 

(・・・これは、いい夢なのかな・・・)

 

サクラが考える。この夢を見る限りでは、とても幸せそうな夢だ。現実では到底かなわなそうな夢。できなくてもせめて夢なら、こんなことを味わってもいいのかもしれない。

 

(私が・・・こんな夢を見てもいいのだろうか・・・)

 

でもそんな自分を否定する自分がいる。そんな彼女の思惑に関わらず、事は進んでいくのだ。

 

恋人繋ぎをしながら赤いカーペットの上を歩く2人。教壇の上で革の本を持って待っている神父の元へと向かっていく。

 

教壇の前についたところで2人は足を止める。神父もそれを確認すると革の本を持って読み始める。

 

「お集まりの皆さん、この結婚に正当な理由で異議のある方は申し上げてください。異議がなければ今後一切、何も言ってはいけません」

 

長椅子の人々に申すと神父は少年のほうに視線を向ける。

 

「――さん、あなたはこの女性を健やかなときも病に侵されたときも、裕福なときも貧乏なときも良いときも悪いときも愛し合い、なぐさめ助け愛し合うことを誓いますか?」

 

「・・・はい、誓います」

 

神父の言葉に少年が応答すると、神父はうんうんと首を縦に振った後にサクラのほうに視線を向ける。

 

「風花さん、あなたはこの男性を健やかなときも病に侵されたときも、裕福なときも貧乏なときも良いときも悪いときも愛し合い、なぐさめ助け愛し合うことを誓いますか?」

 

神父の言葉にサクラは俯く。自分は、本当に彼を幸せにしてやれるのだろうか。そんな不安を抱えている。

 

「私は・・・」

 

「風花さん?」

 

俯いて声を漏らすサクラに神父が呼びかける。少し沈黙をするとサクラは顔を上げて神父の顔を見る。

 

「・・・はい、誓います」

 

神父も不安げだったが、式の言葉に安堵してうんうんと首を縦に振る。そして前を向く。

 

「ではベールを上げて、誓いのキスを・・・」

 

神父がそう言うと2人は互いに見合わせる。ここから永遠に約束する誓いのキスがはじまるのだ。

 

ちなみに言うがサクラは少年の顔を知らない。しかし彼女は身なりや体格が自分と遠距離恋愛をしている彼氏と似ていたので、多分彼だろうと断定したのだ。

 

そして今、ベールが左右に開けられ、サクラの視界に新婦の顔が明らかになる。

 

その顔を見たサクラは・・・・・・

 

「なっ!?」

 

・・・酷く狼狽した。

 

眼前に迫ってくる口づけ状態になっている彼の顔。そして突然、その体が抱かれた瞬間に近づいた彼の顔が大量の蛆虫に変化した・・・。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「くひぃっ!?・・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・」

 

な、なな、何だ今の夢は・・・!?

 

私は思わずかっと目を見開いて悲鳴を上げてしまう。先程のリリーの変な夢から目覚めたときよりもその息は荒く、冷や汗も凄かった。

 

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」

 

私は荒くなった息を整えながら、目線を右に動かす。体は横になっているのでここで言う上とは右のことだ。

 

まだ・・・夜中、か・・・。

 

それにしても、先ほどの2つよりも酷い夢だった。乙女的にはいい雰囲気だったのに・・・いや、それ以前に私はあの男に触っていたのか・・・?

 

まさか新婦の顔がアイツではなく、兵藤とは・・・正直がっかりだった。しかもいきなり兵藤の顔が、あ、あんなおぞましいものに変わるなんて冗談でも笑えない。

 

この私が、あんなものに恐怖を感じてしまうなんて、やっぱり私にもまだそういうものに未練があるということなのだろうか?

 

・・・今更、考えても仕方ないか。とりあえずは喉が渇いた・・・。

 

私は体を起こそうとしたが、体が起き上がらない。それどころか、腹の辺りを引っ張られているのを感じる。

 

・・・まさか、またリリーか? 懲りないヤツめ・・・。

 

私はとりあえず顔を確認しようとしたが、振り向かずとも誰かは分かった。顔ではなくて声で。

 

「ぅん・・・部長・・・胸を、触ってもいいですか・・・」

 

・・・・・・・・・!!

 

私はその声を聞いた途端、体を硬直させた。何で、コイツが、ここに・・・?

 

まさか・・・私の部屋に入って、寝込みを襲おうとしていたのか・・・?

 

そうかそうか・・・。これって偶然とか芝居とか、そういうレベルの問題じゃないよな・・・?

 

っていうか、乙女の部屋に入るようなヤツはたとえそうだとしても許せないし。

 

ハハハハハハ ・・・・・・この変態がァ!!

 

ドカッ!! バキッ!! ゴキュッ!! ゲシッ!! グシャッ!! ボカッ!!

 

「ぐふっ! ゲヘッ! ガハッ! グギャァッ! ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

私は金属バットと体を使って私の体に抱き着いている汚物を完膚なきまでにボコボコにしてやる。

 

そして宣言通り、ボロ雑巾のようにしてやった汚物を窓の外へと放り投げた。

 

・・・あっ、庭には人食い植物や獰猛な番犬を飼っていたんだっけ・・・。

 

な、なんだよこれは!? ウギャアァァァァァァァァァァ・・・・・・。

 

どこからかの断末魔の絶叫が風に乗って2階の私の部屋に聞こえてくる。これは完全ヤバい感じだな・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

まあいいか、あの汚物は簡単には死なないだろうし。気にする必要はないな。

 

私は板の床に置いてあるペットボトルの水を飲む。一息ついてから、時計を確認する。

 

・・・2時30か。もう安眠を妨害するのは勘弁してほしい・・・。

 

でもこのまま眠っても、また誰かに妨害されるのが目に見えている。どうしようか・・・。

 

・・・そうだ。誰もこの部屋に入れないようにしてしまえばいい。

 

そう思い立った私は手始めに部屋のドアの鍵を施錠して、合鍵を使われたときのために不審者撃退用の魔術を掛けておく。これでドアはOKだ。

 

次にモココを投げ飛ばしたときに割れてしまった窓の跡を覆うぐらいの紙を張り付け、その上に魔術をかけて割れた部分を修復。さらに同じように不審者撃退用の魔術もかけておく。

 

よし、これでばっちりだ。ネズミの穴はどこにもないし、侵入されることもない。これでこの部屋は誰も入れなくなった。

 

私はベッドへと横になる。安心しきったせいか、体が緩んで睡魔が襲う。

 

アアァァァ・・・・・・

 

・・・あの莫迦、まだ襲われているのか。自分の神器を使えば楽勝じゃないか・・・。

 

そんなことを思っているうちに徐々に睡魔が私を蝕み、目蓋を下ろしていく。

 

ああ・・・これで、やっと・・・静かに・・・眠れ、る・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ここは、どこだ・・・?

 

気が付くとそこは見渡す限り真っ暗。遠く見渡そうにも、まるで視覚を遮断されているかのように何も見えない。それどころか聴覚が無くなったかのように何の音も聞こえてこない。

 

でも自分の姿は見えている。着ているものも、体もそのままだ。まるで意識が全てこちらに飛んでいったかのように。

 

とりあえず歩いてみる。コツコツという私の足音は立つが、それ以外の音は何も聞こえない。歩いていても、一筋の光さえも見えない。

 

・・・そうか。これが夢。何もないのが、夢。

 

この空虚で寂しく、退屈な空間こそが夢の正体。まるで私の心のようだ。

 

・・・まあどうでもいいか。そんなものに興味は無い。

 

それにしても、夢と分かっているはずなのに案外目覚めないものなんだな、夢は。

 

自覚しているということは、何か面白いことが起こるかもしれないな・・・。

 

夢のつまらない興じに乗ってやるのもまた1つの楽しみかもしれない。

 

というわけで何か面白いことでも起こらないかな・・・。

 

「・・・・・・!!」

 

そう思った瞬間、全身から一気に力が抜けた。私は思わず膝をついてしまう。

 

どうして・・・・?

 

額から冷や汗が吹き出し、体の震えが止まらなくなる。頭でも分かっていても、止まらない。

 

どうして、どうして・・・?

 

呼吸が荒くなり、床に手を付いて立っているのがやっとだった。まるで鉛でも背負わされているかのように、体が苦しい・・・。

 

どうして、どうして、どうして・・・?

 

どうして、こんなにも苦しくて不安になるの? どうしてこんなにも、この闇が怖くなるの?

 

・・・まさか・・・これは・・・死へと落ちていく感覚・・・?

 

あの日感じた、何かを失なっていく、あの感覚・・・?

 

・・・そうだ。これは夢なんだろ。現実ではないんだろ。ただの妄想空間なんだろ。

 

夢なら覚めてしまえばいいんだ。それで全てから解放される。

 

覚めて・・・覚めて・・・覚めてよ・・・覚めてよ・・・覚めてくれ・・・。

 

覚めろ! 覚めろ! 覚めろ! 覚めろ! 覚めろ! 覚めろ! 覚めろォッ!!

 

・・・そう心の中で叫んでいても、夢は覚めてくれない。

 

体がすでに限界を超え、私の体はうつぶせに倒れてしまう。体を起こそうとしても、立ち上がれない。

 

苦しい・・・辛い・・・怖い・・・。

 

・・・これは、私の・・・私への、罰なのか・・・。

 

誰か・・・この苦しみから、解放してよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

―――――サクラ

 

ふと声がした。それは優しい声。大分昔に聞いたことのある温かい声。

 

そのとき私を縛っていた全ての苦しみが消えた気がした。

 

顔を上げて目を開いてみるが、誰もいない。でも確かに声が聞こえた。

 

「・・・アリア、姉さん?」

 

私を呼んだ人物の名前を呼んでみる。返事は無い。

 

でも、頭に響いたあの声は確かに・・・!

 

「姉さん、どこにいるの・・・?」

 

私は立ち上がってその声の主を探す。でもどこにもいない。辺りは真っ暗。

 

走って探してみても、どこにもいない。あの温かい声はどこ?

 

どこ?・・・どこにいるの? アリア姉さん・・・。

 

私の大切な、たった1人の家族だった姉さん。幼い私にいろんなことを教えてくれた姉さん。

 

誰よりも優しくて、正義感のあった姉さん。

 

ずっと前に私1人を置いて、どこか遠いところへと行ってしまった姉さん。

 

私はあの日、大切なものを失った。それが私の絶望だった。

 

「姉さん!! どこにいるの!? いるなら答えてよ!!」

 

寂しさが高まって思わず大声で叫ぶ。瞳からぼろぼろと涙がこぼれる。

 

もうどこにいけばいいのか、分からない・・・。

 

「ひっく・・・ぐすっ・・・姉さぁん・・・」

 

体を震わせて啜り泣く私。涙がポタポタと暗闇に落ちる。もうどうしたらいいのか、分からない・・・。

 

―――――サクラ

 

また声がした。今度は後ろから。

 

私は振り向いてみるが、そこには誰もいない。

 

すると後ろから何か透けているものに体を抱きしめられた。

 

この温かさは、私も知ってる。それを知って安心した。

 

後ろは振り向かず、左の肩に手を乗せる。これも知っている、温かい手。

 

「―――――」

 

私の耳に、何かが囁かれた。内容はよく分からなかった。

 

でも、思ったことが一つあった。

 

「・・・うん。私、頑張るよ。姉さんの思いを繋げるために・・・」

 

そう呟いた私の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

もっと見ていたい・・・この夢は・・・。

 

でも永遠なんてない。始まりがあれば終わりもある。

 

私の意識が闇へと溶けていく。

 

ああ、そう。もう、この夢は終わりなのね・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ピンポーン

 

ドアのインターフォンが鳴る。

 

私はその音に目を開く。多分アイツだな・・・。

 

私と一緒に学校に行きたいとか、本当に暇なヤツめ。

 

でも、イライラはしなかった。何故か妙に目覚めの良い朝だ。あんなに遅くまで安眠を妨害されていたというのに。

 

「サクラさーん、早く起きないと遅刻しちゃいますよ!」

 

下からアーシアの声が聞こえる。時計を見ると・・・7時45分。ああ、もうこんな時間なのか。

 

そういえばアーシアは泊まっていたままだったな。このまま学校に行くのか?

 

「おーい、サクラ! 早く学校に行こうぜ!」

 

・・・分かってるよ。全く、アイツは本当に女心の分からないヤツだ。

 

正直言って、一緒に行ってやる義理なんかないけど、たまにはアイツと一緒に行くのも悪くは無い。

 

その前に顔を洗って制服に着替えてこないとな。汗がべっとりしてて気持ち悪いし・・・。

 

私はリビングへと降りてくるとアーシアが挨拶してくる。

 

「おはようございます、サクラさん」

 

コイツもコイツで優しすぎるな・・・たまには怒ってくれてもいいのに。

 

「昨夜はよく眠れたか?」

 

「はい、おかげさまで。でも1人部屋は寂しかったです・・・」

 

特に意味の無い会話を交わす私たち。

 

「シスターはいつも独り身だろ?」

 

「そ、そういうことを言っているんじゃありません!」

 

でもそれでも、楽しいと思ってしまう。

 

「行くぞアーシア、あの莫迦を待たせるとうるさいからな」

 

「は、はい!」

 

さあ、今日も日常を怠惰に謳歌しよう。

 

私はそんな思いを抱きながら、家の扉を開いた。

 

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