極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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今回の話はあまり自信がありません! 読んでて面白くないと思いました。


第19話「学園生活」

「嫌だ、嫌だぁぁぁぁ! 私は行かないぃぃぃ!!」

 

今現在、金髪の少女が泣き喚きながらコアラのように私に抱き着いている。

 

うざっ・・・。っていうか、何でこんなことになっているんだ?

 

「わがまま言うんじゃありません! 高校生がいい年して子供みたいな駄々をこねて!」

 

「いい加減にしろ! このブルジョワ小娘!! 面倒臭ぇことさせてんじゃねえよ!!」

 

「嫌っ!! 絶対に嫌ぁぁぁ!! アタシはサクラと一緒にいるのぉぉ!! 2人で行って来ればいいじゃない!! 何で3人も行く必要があるのよ!?」

 

エレンとウィルが2人掛かりでリリーの襟を両手で掴んで私から引き剥がそうとするが、木にしがみつくナマケモノのように微動だにしない。

 

私が教会に着いたのは、今さっきのこと。来たくもない教会の扉を開けようとした瞬間に、1人の弾丸が私に激突してきたのだ。とはいっても別に急所に当たって呻いていたわけじゃない。単にコイツがしがみついてきただけだ。

 

実を言うとエレンの元に組織から長期間が必要となる指令が言い渡されたらしい。滞在期間は約2週間。結構な時間が掛かるということは重要な任務だ。なので4人で行こうと提案したのだが、エレンが私たちが離れている間にこの地区に何かがあってはいろいろと不味いとのことで1人は留守番させるべきだと主張。

 

そして教会にいなかった私を除いた3人で行くことしたのだが、ここでリリーが私やアーシアと離れることを抗議。しかし、エレンの副リーダー権限で3人で行くことが確定したという。

 

そこにちょうど私が来て、現在に至るというわけである。まあ、私とリリーを引き離そうとすれば、こういうことが起こるのは分かっていたけどな。

 

「あなたはただでさえ仕事をサボってばかりいるんですから、たまにはあの方のために働きなさい!!」

 

「してるじゃない!! アーシアの周りに付き纏う蛆虫を追い払ったりとか――――」

 

「組織と関係ねえじゃねえか!! お前の私利私欲なんかどうでもいいわ!!」

 

「とにかく嫌なものは嫌ーなーのー! 2週間もサクラやアーシアと会えないなんて耐えられないわよぉ!」

 

「たかが2週間離れるぐらいどうってことないでしょ! どうせここに帰ってくるんですから!」

 

「イヤァァァァァァァ!!」

 

・・・水掛け論だ。これは終わらないな。早く何とかしないと・・・。

 

今日のリリーは本気でうるさい。過剰な百合娘なのは分かっているけれども、ここまで酷いものはないだろうな。私もはっきり言って、困っている。

 

「あなたも立ち尽くしてないで引き剥がしたらどうなんです!?」

 

「口よりも手を動かしたらどうなんだ? そんなんじゃコイツは引き剥がせないぞ」

 

「動かしとるわ!! てめぇも引き剥がそうとは思わないのか!?」

 

「嫌だよ、面倒臭い・・・」

 

エレンとウィルが私に抗議の言葉を投げかけてくるも、私は一蹴にする。だって面倒臭いし・・・。

 

それにあの莫迦王子の指令なんか知ったことか。興味もないし、本当にどうでもいい。つまらないことで私を巻き込まないでほしい。

 

「いーやーだぁー! 絶対行かないもんねー!! 行くくらいなら地獄に堕ちたほうがマシよ!!」

 

「私らまでその地獄に堕とされるのですよ! あなたのせいでとばっちりを食らうのはゴメンなんです!!」

 

「そうだぜ! そうなったらお前のせいにしてやるからなァ!!」

 

・・・アイツのお仕置きなんか大したことはない。むしろ甘いくらいだと思う。コイツらが大袈裟なだけだ。

 

「アタシはサクラやアーシアと夫婦生活を送るのよぉ! アンタらのくだらない情事に邪魔されてたまるもんですかぁ!!」

 

「夫婦ではないでしょう! しかも重婚になってますし!!」

 

「女同士の恋なんかカウントされないからいいのよ!!」

 

「あーあ、あんまりにも都合良すぎて気持ち悪りぃな!!」

 

「気持ち悪いって言ったわね!? このフラ男で腐った目の分際で!!」

 

「んだとゴラァ!! もういっぺん言ってみろ!!」

 

本当に聞くに堪えない、三人の醜い言い争い、いつもの喧嘩。私、こういうの大嫌いだ。もうただの雑音でしかない。

 

あーあ、イヤホンとプレーヤーを持って来れば良かったな。そうすれば、こんなうるさい言い争いを聞くことも無いわけだし。

 

というか、私は何故こんなところに来ているのか自分でも理解できない。

 

「全くこれだから聞き分けのない子供は嫌いなんですよ!」

 

「アタシだって堅物なおばさんは嫌いよ!!」

 

「なっ!? お、おばさん・・・!?」

 

「ったく嫌だね。子供のヒステリーは」

 

「暴力的な白髪のじじいも嫌いよ!」

 

「・・・おい。これでもお前やエレンと同じ17なんだけど?」

 

「さっきから獣みたいな臭いがしてるんだけど、本当は50のエロオヤジなんじゃないの~?」

 

「・・・そうかそうか、この前の続きをやろうってか? あぁ?」

 

「上等よ! やってやろうじゃないの!! アタシの野望を邪魔するヤツは八つ裂きにしてやるんだから!!」

 

おい、また喧嘩を始めるのか? もうお前らのクソみたいな喧嘩なんかウザいだけなんだけど。

 

でもそろそろ止めないと厄介だな。これじゃあ私も帰って寝れないし、いい迷惑を受けてるとしか思えない。

 

状況的に考えてリリーをどうにかすればいいわけだろ? だって今回の喧嘩の原因だってコイツなわけだし。

 

「・・・おい。いい加減離れろよ」

 

「イヤ! 絶対離さないもん!」

 

本当に離れろよ、この百合ビッチめ。お前の体重のせいで私の着物が着崩れるだろうが。

 

ああ、うざっ。正直言ってコイツを引き剥がすために手を動かすの嫌なんだけど。着物ごと持って行かれそうだ。

 

・・・本当にどうしようか? 正直言うと考えるのも面倒だ。

 

コイツは確か、私とアーシアが大好きな百合娘の変態だったな。まあ、昔から知ってるけど。

 

・・・・・・そうだ。私やアーシアに関連する約束を取り付けてしまえ。

 

そうしておけば、コイツは素直に言うことを聞いて仕事に行ってくれるはずだ。

 

「・・・なあ、リリー」

 

「何よ、サクラ!? アタシは何をやっても行かないわよ!!」

 

私は目をギュッと瞑りながら体を掴んでいるリリーの顎に手をやって、顔を合わせさせる。

 

「えっ?」

 

「リリー、お前が任務から帰ってきたら、オレの手作りのケーキを食べさせてやるよ」

 

「サクラの・・・ケーキ・・・?」

 

私はきょとんとしたような顔で見るリリーの頭を撫でてやる。今、一番可愛い声になってるかもな。

 

「そうだ。お前が任務を無事にやり遂げて帰ってきたら食べさせてやる。だからワガママ言わないで行ってこい」

 

私は十分がんばったほうだと思う。だってリリーに無理な作り笑顔をしながら台詞を言ったのだから。

 

それを聞いたリリーが顔をぱあっと明るくさせて、私からやっと離れると教会からも離れてスキップしていく。

 

ガラリと変えた彼女の態度にエレンとウィルは唖然としている。

 

「ほら、エレン、ウィル、何してるの!? 早く行くわよ!」

 

当然だが、エレンとウィルを連れて行くこともアイツは忘れていない。本当に現金なヤツだな。

 

「ああ、おい待てッ!」

 

一足先に行ってしまうリリーをウィルが追いかける。エレンはその様子を見て、眼鏡を直しながら呆れたように見ている。

 

「・・・全く。可愛げのない小娘ですね」

 

ああ、疲れた。私は着崩れた着物を直しながらそう思った。

 

「じゃあ、後は頼みますよ。サクラ」

 

そう言うとエレンも2人の後を追いかけていった。大丈夫なのか? アイツら。別にどうでもいいけど。

 

これでうるさいヤツらがいなくなったな。ということは、私は自分の一時を邪魔されずに済むということ。要するに面倒なことが起きることもないということだ。

 

・・・これでしばらくは解放されるな。ゆっくりとのんびりと怠惰な時間を過ごすとしようか。

 

今日はもう寝よう。はっきり言って動きたくないし。

 

私は3人の姿が消えるのを確認もせずに、教会から早々と立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「ふわあぁ~」

 

・・・眠い。怠い。学校に行きたくない。でも行かないと秋山がうるさい。だから静かな場所を求めて学校ヘ行く。

 

翌日の早朝、私はそんなことを思いながら重い足を動かす。

 

特に周囲のことを気にせずに歩いていると、見知った金髪の少女と隣にいかにも貧相な顔の男と対面した。

 

「おはようございます、サクラさん」

 

「よっ、サクラ!」

 

「・・・・・・ん」

 

挨拶を交わしてきたので適当に済ましておく。アーシアは笑顔を見せていたが、兵藤はどこか嬉しそうな卑しい感じがした。

 

まあそれはそうと3人で並んで学校へと歩く。前から見て私、アーシア、兵藤の順だ。金髪の少女と一緒に歩いているとか、シュールな光景だな。目立ってるんじゃないのか?

 

アーシアは楽しそうに通学路を歩いている。何が楽しいのかが分からないが、とにかく楽しそうだった。

 

「いいお天気ですね。イッセーさん、サクラさん。今日は体育でソフトボールをやるんですよ。私、初めてなので今から楽しみです」

 

手を腰の後ろに回しながら、私たちのほうを向く笑顔のアーシア。こんな美少女がいただろうかと思うほどの可憐さだ。

 

私は・・・・・・まあ、どうでもいいか。

 

そろそろ学校に着くだろうと思うところで同じ学校に通う生徒たちの凄まじい視線が射された。主に兵藤に対して・・・。

 

「どうして、アルジェントさんと兵藤が同じ方向から・・・」

 

「え・・・ええぇぇ!?」

 

「バカな・・・どういうことだ・・・!?」

 

「そんな、嘘よ・・・サクラ様やリアスお姉さまだけでなく、アーシアさんまで毒牙に・・・」

 

「サクラ様と一緒に歩いているなんて許せない!」

 

「むしろサクラ様とアーシアさんだけのほうがまだ許せるのにぃ! キーッ!!」

 

所々で飛び交う野次馬と疑惑の声。観衆の悲鳴にも似た叫び。ハンカチを噛みながら悔しそうに見ている女たちの妬みの視線・・・・・・。

 

兵藤の悪評を余すところなくぶちまけている生徒たち。私から思えばただの雑音と嫌らしい視線だ。鬱陶しい。

 

しかも、観衆の中には私の昼寝を妨害したファンなんとかと名乗った奴らも一緒にいるぞ。ああ、余計にムカついてくる。

 

コイツと一緒に歩いているだけでこんなに感情が募るなら、今度からは離れて登校しようか。

 

アーシアとは違うクラスだったが、彼女が登校したことは初日から話題騒然となっていたらしい。何だかガヤガヤ騒いでいたみたいだし、あちらこちらでうるさくてしょうがなかったな。

 

しかも彼女は兵藤と一緒に毎日登校と下校をしているというから、他者から見れば信じがたい現象らしい。まあ、こんなヤツを好きになるほうがおかしい。足りない頭にはお似合いなんだろうと思うけど。

 

それで兵藤が大丈夫なら自分でもという輩がアーシアに告白をしたらしいが、呆気無く撃沈。それ以来、兵藤は多くの男子生徒たちに逆恨みをされている。私が察するに憎悪の視線を向けているものもいるな。

 

・・・まあ、これは風の噂で確証なんかないけど。でも、コイツならあり得そうな話だからそういうことにしておこう。

 

ところで、兵藤の顔が卑しいものになっているが、どうかしたのだろうか?

 

「何か面白いことでもありました?」

 

代わりに言ってくれたアーシアの顔はどこか怪訝そうだった。

 

「い、いや、なんでもないよ・・・」

 

「また顔が卑しくなっていたぞ。変なことでも考えていたんじゃないのか」

 

「いや、考えてないぞ!? こんな美少女2人と一緒に登校できて嬉しいな~だなんて微塵も考えてないぞ!?」

 

・・・考えてたんじゃないか。褒めても拳か蹴りしかでないぞ。

 

「・・・・・・まあいい」

 

後でじっくりとお灸を据えてやるとしよう。本当ならここでコブラツイストでも食らわせてやりたいのだが、今は怠いからあまりそういうことはしたくない。

 

「ところでアーシア、何か困っていることはないか? その、女子とも仲良くやっているか?」

 

オカルト研究部の女子とは仲の良いアーシアだが、クラスの連中と来ればそれはまた話が別だ。彼としては慣れない環境に戸惑って、苛められていないか心配なのだろう。何度も言ったと思うが、莫迦の考えていることなんか容易に分かる。

 

それは置いておいて、ただでさえ普通とは浮世離れした生活を送っていた元・シスターだ。分からないことが一つや二つ、あってもおかしくはない。まあ、私の生活も普通とは程遠いと思うがな。

 

そんなアーシアは兵藤の予想に反して、屈託のない笑顔を見せた。

 

「皆さん、とってもよくしてくれますよ。私が早く日本語に慣れるようにいろんなことを教えてくれます。お友達もできました」

 

そうか・・・それにしても、何だかんだでどいつもこいつもお人好しばっかりだな。甘いとはまた違うかもしれないが。

 

それを聞いて安堵の声を漏らす兵藤。彼の心配事が一つ消えたようだ。

 

「・・・兵藤」

 

「何だよ、サクラ」

 

「明日も修行だからな。みっちりしごいてやる」

 

兵藤はそれを聞くと若干引き攣ったような表情をする。コイツの顔はいつ見ても飽きないな。

 

「・・・この前みたいなスパルタは勘弁してくれよ」

 

「何を言っている。鉄棒で逆上がりもできなかったヒョロ夫のくせに」

 

「うっ・・・」

 

そう、この前なんか逆上がりもできないほどのスペックの持ち主だったのだ。まあ、今では大車輪ができるぐらいにみっちりと鍛えられている。

 

「何度も言ったと思うが、オレの友人が弱いなんてあり得ないからな」

 

「・・・はい」

 

返事だけは達者なヤツだな。実力は伴わないくせに。

 

「アーシア、お前ソフトボールするんだってな」

 

「は、はい。そうですけど」

 

「あまり無理はするなよ。お前はただでさえドン臭いんだから」

 

「そ、そんなことはありません! 私だってやるときはやりますぅ!」

 

「・・・どうだかな」

 

「ひゃっ!? う、うぅぅぅ・・・お、お尻を触らないでくださいぃ・・・」

 

尻を撫で回したぐらいで何を真っ赤になっているんだか、この女は。

 

もしかして感じてるのか? なんとも嫌らしい女だ。

 

「公衆の面前で何をやっているんだよ、お前は!?」

 

「尻を触ってるだけだけど、それが何?」

 

「知ってるよ! 何で恥ずかしい真似を堂々としているんだって聞いてんの!!」

 

兵藤の顔も若干赤くなっている。いいよいいよ、その反応が面白い。

 

「何だよ? お前もやってほしいのかぁ?」

 

「い、いや、いいって! 恥ずかしいだろこんな人前で!」

 

「へぇー、お前にも羞恥心があったのか。意外」

 

「俺にだって羞恥心ぐらいあるわ!! エロい妄想だって場をわきまえて――――」

 

「うるさい」

 

「ガハッ!? 痛ェェェェ!!」

 

あまりにも騒々しいので兵藤の尻を蹴った。こうやって苛めるのも楽しい。

 

それにしても、兵藤もムキになることもあるんだな。意外意外。

 

「兵藤め・・・イチャイチャしやがって・・・!」

 

「サクラ様もそんな変態を相手にしないでくださぁーい!」

 

「羨ましい、いや恨めしいなぁぁ!!」

 

先程よりも兵藤への視線が鋭くなったような気がするが、私は気にしない。そんなことどうだっていい。

 

「な、なんか有らぬ誤解をされてる気がするんだけど・・・」

 

「勝手にさせとけばいいだろ」

 

「何の話ですか?」

 

「・・・知らん」

 

他愛のない会話を交わしているうちに私たちは学校へと到着した。私は兵藤とアーシアとは別のクラスなのでここで2人と別れる。

 

「で、ではまた後で、サクラさん」

 

「また後でな、サクラ!」

 

「・・・・・・」

 

私は後ろを振り向かずに手を振るという、精一杯の愛想表現を見せながら自分の教室へと向かう。

 

・・・教室を通り過ぎたところで何だか、兵藤たちのクラスが騒がしくなったように聞こえるのだが、まあどうでもいいか。

 

私は自分のクラスの教室の扉を開けると、真っ先に自分の席に向かう。

 

「おっはよ~。サクラちゃん!」

 

背後から元気な声がしたかと思えば、自分の右肩を触られた気がした。なので私は反射的に・・・。

 

バキッ!!!

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ・・・」

 

背後から聞こえる奇妙な音と悲鳴。振り向くとすぐ目の前におかっぱの頭をした少女がいた。

 

「・・・ハルカか」

 

その少女は涙目になりながら、あり得ない方向に曲がった右手を抑えている。

 

「もぉー、酷いよサクラちゃんったら! 毎朝なんだから覚えてよぅ!」

 

「知るか。お前こそ毎朝なんだから学習しろよ」

 

訴える女の言い分を無視して、私は自分の机のサイドフックに鞄を掛ける。

 

この鬱陶しい女は赤崎春香。2年生に進級した際に同じクラスになり、やけに馴れ馴れしく話しかけてくる女だ。取るに足らないくだらないことをして私のイライラを上げさせてくる。

 

正直言ってウザくてしょうがない。まあ、私としては軽い欲求不満の解消物になっているのだがな。

 

「最初の授業は何?」

 

「えっと、確か英語だった気がするけど」

 

「・・・あっそ」

 

英語・・・・・・外国暮らしが長かった私には授業を受ける意味が感じられない。おっさんも私の話す言語を理解できていないようだし、大丈夫かこの学校・・・。

 

そんな低能な教師の授業を受けるなんてちゃんちゃらおかしい。だから私は寝る。そもそも私は静かな場所を求めて学校に来たわけだから、こんな生徒共と一緒にいるなんてあり得ない話だ。

 

私は再び教室の扉へと向かう。そんな私をハルカが怪訝そうな顔で見ている。

 

「えっ、サクラちゃん? どこに行く気なの? もうすぐホームルーム始まるよ」

 

「・・・知ってる。だからサボる」

 

「そうなんだ・・・・・・って、ええぇぇぇ!?」

 

私の発言に絶句するハルカ。まるで生き馬が目を抜かれたかのようだ。

 

っていうか、今までだってこういうことあっただろう。いい加減学習しろよ、この莫迦は。

 

「ダメだよ、ホームルームサボるなんて!」

 

「・・・何でだ?」

 

「朝のホームルームを向かえてこそ、新しい1日が始まるんだよ~」

 

「・・・知るか」

 

そもそも起きた時点で1日は始まっている。莫迦なのか、コイツは。

 

「参加しようーよー! きっと楽しいって!」

 

「楽しくない。何で中年ボケ野郎の戯言なんか聞かなくちゃいけないんだ?」

 

「えーっと、それは・・・・・・面白いから?」

 

「・・・くだらない。やる価値も聞く価値もないだろ、そんなの」

 

疑問形が付くあたり、絶対に思いつきでいったよなこの莫迦は。莫迦の星に生まれて来たんじゃないのか?

 

「・・・オレは寝る」

 

ハルカの意見を一蹴にして、私は教室の扉へと向かう。その中年教師のことは知ってる。

 

禿げ頭でグルグル眼鏡を掛けた、いかにもひ弱な感じの男だ。英語教師だというのに正しく発音できていなかったし、この前なんかろれつが回っていなかったぞ。この学校もよく、そ

 

んな教師を採用できたなと思う。

 

何故だか知らんが、そんな教師の授業なんか受けたってイライラするだけだ。1人で眠っていたほうがずっといい。

 

「あれ? 背中に何か付いてるよ」

 

ハルカは出て行こうとする私の背中を性懲りも無く触ろうとしたので、即座に背後へと回り込み・・・。

 

ガシッ!!

 

「うっ・・・が・・・ぐ・・・」

 

両腕でチョークスリーパーを掛けた。ハルカは私から逃れようと腕を叩いたり外そうとしていたが・・・。

 

ゴキッ!!

 

首から妙な音が聞こえたと思うと、ハルカから力が抜けて顔ががっくりとうなだれた。

 

・・・うっかり、殺してしまったか?

 

私はハルカの手首の脈を測ってみる。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・いや、死んではいないな。絞め落とされて気絶しただけだろう。

 

どうせコイツのことだから、最初の授業が始めるころには復活しているだろう。まあ、私には関係のない話だ。

 

とはいえこのまま放置すると面倒なことになりそうなので、私はハルカを担いで彼女の席に座らせた。椅子に寄りかかるように座らせると倒れてしまうと思ったので、机に突っ伏して寝るような状態にした。

 

私はハルカが席からずれ落ちないことを確認すると彼女に背を向けて、教室の扉のほうに歩き出す。そして教室から廊下へと出た。

 

アイツがどう言おうが最初の授業には出ない。私にとっては出る意味もない。

 

私は先程の廊下を引き返して、兵藤とアーシアの教室の前を通り過ぎる。すると聞き覚えのある男のうるさい声が耳に入った。

 

「お前本当はいろんな可愛い子と知り合っているんだろう!? リアス先輩! 姫島先輩! この学園の二大お姉さまだぞ!? 更にこの学園の小さなアイドル小猫ちゃん! プリンスとも似つかない美しい容姿の式! プリンセスのリリーちゃん! そして今度は金髪美少女転校生のアーシアちゃんだ! おかしいだろ!? 理不尽で俺が壊れそうだよ!!」

 

この声は確か・・・まあ名前なんかどうでもいいか。兵藤の悪友だということは大体分かる。そんな男の怨の籠った叫び、どこか泣いているようにも聞こえる叫びが響く。

 

男の言い分も分かりたくはないが、確かに兵藤はここ最近数名の女子と仲良くしている。例えばアーシアとは登下校をしているし、部活動ではリアスや姫島と可愛がってもらっている

 

光景すら見ている。

 

何故、急に何の変哲もない男が、女子たちの嫌われ者がバラ色の学園生活を送っているのか。そういうところが疑問なのだろう。

 

どこの男から見ても兵藤は勝ち組に見えるが、勘違いしないでほしいのはまだ一部というよりもほとんどの女子からはまだ嫌われているということ。それに仲良くしているその女子た

 

ちも本性は悪魔と人外だしな。普通の女の子ではないわけだ。

 

「イッセー、1人ぐらい紹介しても罰は当たらないと思うぞ。というか、誰かを紹介してくれ! 頼む。お願いします!」

 

この声はエロ眼鏡だったけな。もう、名前も忘れたな。つーか、どうでもいいわ。その懇願するかのような声が聞こえる。

 

そもそも兵藤に紹介できる女がいるわけがない。オカルト研究部の女子以外で。

 

あっ、でもそういう相手が1人はいたような・・・。

 

「ああ、いた! サクラちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

と私が思考していると間抜けそうな声で叫ぶ少女が廊下に現れた。

 

・・・ハルカのヤツ、もう復活したのか。普通の少女のくせに、体だけは無駄に頑丈なヤツだ。

 

ハルカが真っ直ぐ突っ込んできたので、私は足払いを掛けて転倒させた。

 

「げぶぅぅぅぅぅ!?」

 

頭から思いっきり激突したハルカはそのまま2メートルも床を滑った。

 

私はそのまま彼女が転倒した方向と逆向きの方向に向かって早歩きで逃亡した。

 

ハルカと一緒に過ごすなんて冗談じゃない。私は静かな場所で寝たいんだ。元々そういうつもりだったし。

 

「あぁん、待ってよサクラちゃん! 授業は出なきゃダメなんだよ!!」

 

・・・知るか。そんな退屈でふざけた授業になることは目に見えている。出る気はさらさらないな。

 

こうして私はハルカの追跡を意とも簡単に振り切り、ホームルームと最初の授業をさぼったのであった。

 

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