「うおおおお! 美味ぇぇぇ! マジで美味い!」
・・・お行儀の悪いヤツだな。この男は静かに食事はできないのか。
今日一日の修業を終えて、私たちは夕食を食べていた。
テーブルには貧乏人が驚くほどの豪勢な食事が並べられている。木場が採ってきた山菜のおひたし、肉料理はリアスが仕留めてきた猪・牡丹肉が使われている。
魚料理はシンプルに鮎の塩焼きにしてみた。単に焼いたほうが自然なままの味が活かせるしな。
ちなみに獲ってきたのも作ったのも私だ。山の川で釣りなどという退屈なことはしない。木の枝と石を使い、槍を作って鮎を捕らえたまでだ。
他にもいろいろあるが、説明するのも面倒なので省略することにする。
「あらあら。おかわりもあるからたくさん食べてくださいね」
そう言いながら兵藤のご飯を持っているのは姫島だ。今夜の料理はほとんどが彼女の作ったものである。
兵藤に持たせた大量の荷物の正体は調理器具だったのだ。私はてっきり兵藤を調教するための道具だと思ってたのにな・・・。
「朱乃さん、最高っス! 嫁に欲しいくらいです!」
「うふふ、困っちゃいます」
兵藤に煽てられて微笑む姫島。リアスという女がいながらデレデレするとはな。
「・・・私もスープ作ったんですよ」
「・・・あ」
兵藤の右隣でアーシアが哀しそうにしている。この莫迦が姫島の料理ばかり褒めるから、相当落ち込んでいる。
アーシアだって兵藤のためにオニオンスープを作っていた。ハードな修行で疲労困憊であろう兵藤を少しでも気遣うために。
「・・・オレだって鮎のマリネを作ったのにな」
「・・・ひぃ!?」
私だって兵藤のために料理を作っていたんだ。頑張っているから少しは労ってやろうと思ってな。
なのに、姫島の料理だけであんなに舞い上がって・・・・・・何だか不愉快だ。
この不愉快の意味がよくわからなかったが、とにかく不愉快だったのだ。
「サクラの作った鮎の塩焼き美味しいよ~」
「お前は何食ったって一緒だろ」
私の横でモコナが塩焼きをムシャムシャと食べながら言う。
お前の感想なんか聞いてない。それに食べ物を口に入れてしゃべるのはお行儀が悪いぞ。
「そんなことないよ~。モココも美味い不味いの区別は付くもん」
「どうだかな・・・」
モコナはえっへんと胸を張りながら言うが、私には全部美味しいと言っているようにしか見えないな。
仕舞いには酒が飲みたいと言い出しそうだ。確かに塩焼きはつまみだけど、この場は一応全員未成年だからな。
そうしている間に兵藤はアーシアの皿を取ってスープを飲み干すと、私のマリネの乗った皿を取って一口食べる。
「美味いぞ、アーシア! もう一杯くれ!」
「本当ですか! 良かったです・・・」
「ああ。サクラの料理も美味いぞ! もっと食べたいくらいだ!」
「・・・ふん」
どこか浮気性な態度が気に食わないが、私の料理を美味しいと言ってくれたし許してやるとしよう。
「これで私もイッセーさんの・・・」
「ん? 何か聞き取れなかったけど、なんだって?」
「い、いえ、なんでもないです!」
赤面しながら慌てて手を振るアーシア。まあ、考えてることなんかすぐに分かったが。
「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」
リアスがお茶を飲んだ後に聞いてくる。兵藤は一旦箸を置いて質問に答える。
「・・・俺が一番弱かったです」
「それは確実だな。実際やってみても散々な結果だったしな」
「そうそう~」
私はハッキリとストレートに言い放った。モココが便乗しているのがムカつくけど。
「朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験はなくても実践経験は豊富だから、感じを掴めば優位に戦えるでしょう。あなたとアーシアは実践経験が皆無に等しいわ。でも、アーシアの回復とあなたのブーステッド・ギアは無視できない。相手もそれは理解してるはず。最低でも相手から逃げるくらいの力は欲しいわ」
「逃げるって・・・。そんなに難しいんですか?」
私もお茶を啜った後、その質問に続くように答える。
「逃げるのだって戦術のうちだ。一旦退却して作戦を立て直して戦うのも立派な戦術のうち。でも、相手の力量もわきまえなければ逃げることだって難しい。逃げるには大抵が背を向けているわけだしな。そういうのは殺してくださいって言ってるようなものだから、確実に狙われるわけ。でも無事に逃げられれば、それだけ実力はあるということだぜ? 戦いの場にいる以上は兵藤とアーシアには退き時を身に着けていかなければならないぜ。オレと部長が徹底的に教えてやるから覚悟するんだな」
「お、おう・・・了解」
「は、はい・・・」
兵藤とアーシアが同時に返事をする。戦いはそんなに甘いものではないのだ。戦場に行く以上は生きる術も身に着けていかないと死しか待っていない。
特に兵藤には最低でもアーシアを守れるぐらいの力を身に着けて欲しい。私と兵藤は、そう約束したはずだしな。
さて、夕食を終えたところでやることは一つ。それは女にとって重要なこと。
「食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここ温泉だから素敵なのよ」
ふむ、温泉か。まあ、あそこよりは狭いだろうし問題は無いな。
温泉は旧家にいたとき以来だ。あそこの温泉はまるでゴルフ場のように広く、歩いて回るのが大変だったな。
まあそれはそれとして、先程から兵藤が嫌らしい顔をしているのだが・・・ってもう何も言うまい。
「僕は覗かないよ、イッセーくん」
「女の子の裸を覗くなんてエロいんだぁ~」
「バカ! お、お前らな!!」
・・・やっぱり、覗く気だったんだな。莫迦の考えてることは何でこんなにも分かりやすいんだろうな。
「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」
リアスの言葉に全員の視線が集中する。私も白い目で兵藤のことを見ている。
リアスはクスッと小さく笑った後に、とんでもないことを言い出す。
部長の言葉に衝撃を走らせた俺。くぅぅ! 部長は相変わらず素晴らしい日本語を使ってくださる! 毎回涙で溢れてきそうだ!
「朱乃はどう?」
「私は別に構いませんわ」
満面の笑みで朱乃さんが肯定する。うおぉぉぉぉぉぉ!! マジか!?
俺としては朱乃さんに背中を流してもらいたい!! だって男のロマンでしょ!!
どんだけ男に節操がないんだこの部活の女の子は! アリなのか? ホントにアリなのか!?
「アーシアはどう? 愛しのイッセーと一緒なら大丈夫よね?」
部長の問いかけにアーシアは顔をリンゴのように真っ赤にさせながらうつむいてしまったが、小さくコクリと頷いた。
マジかよ! この先に俺が思いもしない展開が待ち受けているのか!? ど、どうしよう! 俺、風呂場に前かがみで入られる自信があるぞ!
「小猫はどう?」
部長の問いかけに、小猫ちゃんはすぐさま両手でばってん印を作る。
「・・・いやです」
拒否られたぁ!? い、いや、間違っていない。思わず感覚が麻痺して舞い上がってしまったけれど、これが普通の女の子の反応だ。
「サクラ、あなたは?」
シキも問われると、俺を睨みながら口を開く。
「・・・ふざけるな」
シキも拒否反応を示す。ま、まあ、分かってたけど、目が怖いよ・・・?
「女の生まれたままの姿を拝もうだなんて10年早いんだよ。女にはあるが、男にそんな権利はない。そんなことをするスケベ丸出しのゴキブリ風情は地雷を踏んで地獄に堕ちればいいんだ」
俺のことをボロクソに言うサクラ。何気にエグいことも言っている・・・。
いや、俺じゃなくて部長が言ったことなんだけど・・・そこまで言うか!?
「まあ、明日の太陽を拝めなくなってもいいんだったら別にいいけどな」
サクラが明らかに小悪魔を通り越して、悪意のある笑みを浮かべながら言う。
それって「いいよ」っていうふうに見せかけて、俺の目を潰すっていう意味じゃないのか!?
嫌だ! 至高のおっぱいを拝めなくなるなんて、俺には耐えられない!
「じゃあ、なしね。残念、イッセー」
クスクスと笑いながら悪戯っぽく言う部長。
そんなぁ・・・上げられて上げられて一気に奈落へと落とされ、更に言葉攻めの追い打ちを食らった気分になった。
あまりのショックに目の前が暗くなる。でも、サクラに目を潰されなくてよかったとホッとする自分もいる。
どうやら夢のような出来事を簡単に実現するのは難しいようだ・・・。
・・・いや、そんなことでいいのか!? 俺!! このまま終わって、泣き寝入りでもするつもりか!?
違う!! サクラに目を潰されなくてよかっただなんて、そんなの俺じゃねぇ!!
クソォ・・・いいところまでいっていたのに・・・。でも、せめて覗く。覗くぐらいなら・・・。
そんなことを思いながら女性たちの後をついていこうとしたとき、小猫ちゃんが振り返ってこちらを睨んだ。
更にサクラが腰の短剣を引き抜いてこちらに構え、不機嫌そうな顔で睨んだ。
「・・・覗いたら、恨みます」
「ホントに拝めなくしてほしいのか?」
グハッ!! 小猫ちゃんとサクラに先制攻撃を喰らってしまった。クソ! ダメか!! ここまで来てダメなのか!?
小猫ちゃんとサクラが向きを戻して歩き始める。ちなみにサクラは短剣を持ったままだ。
呆然としている俺に木場が肩に手を置き、モココも反対側の俺の肩の上に乗って頬を触る。
「イッセーくん、僕と裸のお付き合いをしよう。背中流すよ」
「しょうがないなぁ~。このプリティーなモココが一緒にお風呂に入って、ア・ゲ・ル❤」
「うっせぇぇぇぇぇぇぇぇッ!! マジで殺すぞ、テメェらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
別荘に俺の怒りの慟哭が響き渡る。何が悲しくて男とケダモノと一緒に風呂に入らなくちゃいけないんだよ!?
今の俺の気分はもう、最悪だった・・・。
「うふふ、やっぱり温泉はいいですわね~」
「これでみんなの修業の疲れが少しでも癒されればいいのだけど」
「間違いなく、癒されますわ。うふふ」
温泉に浸かりながら、親しげに話している部長さんと朱乃さん。でも、私――アーシア・アルジェントが気になるのはそこではありませんでした。
シャワーのある椅子に座りながらお二人のことを眺めている私。そして自分の体を見ます。
・・・・・・・・・。
「はぁ・・・・・・」
溜息をつく私。そうですよね・・・部長さんには到底敵いませんよね・・・。
私が気にしているのはイッセーさんが大好きなおっぱいのことでした。イッセーさんはどうやらお風呂の付き合いは私ではなく、部長さんとならしたいようで・・・。
うぅぅ・・・でも、いいんです。私、分かってますから。イッセーさんが部長さんのほうを選ぶってことは・・・。
おっぱいの小さな私のことなんか、見向きもしてくれないに決まっています・・・しょぼん。
うんうん、いえいえ!! そんなネガティブな考えを持ってはいけません!!
私だってイッセーさんが好きなんですよ? あの日、堕天使から私を守ろうとしたときから。
イッセーさんの理想とは遠いとは思いますが、私だってやればできると思うんです!
いつかは、部長さんのような大きなおっぱいに・・・!
「・・・それは贅沢です」
「?」
私の隣で体をゴシゴシと洗っている小猫ちゃんがボソリとつぶやきます。
・・・え? もしかして、小猫ちゃんも自分のスタイルを気にしているんじゃ・・・?
しかし、小猫ちゃんに言われて見ると、改めてそう思った自分の顔が熱くなっていく気がしました。
「え、えーっと・・・」
私は小猫ちゃんに何も言うことができませんでした。だって私もそんなに小猫ちゃんとスタイルが大差ないです。
そう思うとますます自信を失くしてしまいます。これが諦めている人々の悔恨なのでしょうか?
「・・・胸が大きいことの何が良いと言うんだ?」
「・・・・・・!」
更に私の左隣で頭を洗っているサクラさんが言います。小猫ちゃんもシキさんの言葉にビクンとなります。
「胸が大きいなんて絶対に得なんかしない。大きいと重さで肩は凝るし、狭い所を通るのにつっかえるし、服は着にくくなるし、圧迫して苦しくなるし、敵に急所を晒しているようなものじゃないか。良いことなんか何一つも無い」
部長さんほどではないが、おっぱいはそれなりにあるサクラさんがダメ出しばかり言います。
「・・・先輩は大きいからそういうことが言えるんです」
「本気で邪魔だと思ってるから、そういうことを言うんだよ」
サクラさんがそう言うと、右隣の小猫ちゃんが自分のおっぱいを触りながら、落ち込んでいるようにも見えました。
確かに言われて見ればそのような気がしますが、でもやっぱり納得がいきません!
サクラさんはどうして、おっぱいが大きいのが嫌なんでしょうか・・・。
は! もしかして、サクラさんもおっぱいが小さいのを気にしているのでは・・・? だから、あんなにおっぱいが大きいことを僻んでいるんでしょう。
「おい、アーシア」
「ひゃい!! な、なんでしょうか・・・?」
いつの間にかサクラさんが私に顔を近づけていて、ジト目で見つめてきました。思わずびっくりしてしまった私。
「別にオレは胸が大きいことを僻んではいないぞ。胸が大きいといろいろと邪魔なだけだ。今のままで十分なんだよ。変な勘違いをするな」
「は、はい・・・」
そう言うとサクラさんは桶で頭を流し、私の後ろへと回ります。
「体、洗ってやるよ」
「えぇ!?」
サ、サクラさんが? わ、私の体を・・・?
私はその瞬間、今朝にシキさんに体を弄られたことが記憶として甦り、血の気が引きます。
ま、まさか、また体を弄られるのでは・・・?
「い、いいです・・・自分で洗いますから」
いけないことですが、私はサクラさんの気遣いを断って麻タオルを手に取ります。しかし、それはすぐに私の手から消えてしまいました。
サクラさんを見ると麻タオルは手にあって、顔はおぞましいほどに冷たい顔になっていました。
「ふーん・・・? このオレが特別に洗ってやると言っているのにそれを無下にしようってワケ?」
「ひ、ひぃっ・・・!?」
サクラさんの声、怖い・・・。風呂場にいるはずなのに、体が震えます。
怯える私を尻目にサクラさんはボディソープを持って私の座っている椅子に強引に座り、私の首に腕を回してもう一方の手の麻タオルにボディソープを付ける。
「遠慮はするな。オレは体を洗ってやるだけだ。別に手荒なことはしないぜ。お前が抵抗しなければな」
ボディソープの付いた麻タオルを泡立てながら、私の耳元で囁くシキさん。私は体を動かすことができません。
「そ、そ、そう言って、ま、また私のか、か、体を、弄る気なんでしょう・・・?」
て、抵抗したら、何をする気なんですか? もう怖くてしょうがありません・・・。
「手荒なことはしないと言ったはずだぞ。・・・面倒臭い女だな。いいから洗われろ」
「ひ・・・ひぃ・・・」
そう言うサクラさんの麻タオルが私の腹へと伸びます。それも何の躊躇も無く。
私は思わず、目をギュッと瞑りました。また、私は体を汚されてしまうのですか・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・あれ?
何とも、ない? 私、普通に体を洗われているだけ?
「サクラさん」
「・・・何?」
「今日は弄りまわさないのですか?」
「だから手荒なことはしないと言っただろ。何度も同じことを聞き返させるなよ」
苛立ったような声を上げつつも、私の背中をゴシゴシと擦るサクラさん。ああ・・・気持ちいいです。
いつもは私に意地悪なことをするサクラさんですが、今日は何だか優しい・・・?
「痒いところは無いか?」
「あ・・・いえ、特にないです」
「そうか?」
モミモミ・・・。
「ひゃあ!?」
「ほら、痒いところはあるじゃないか」
「そ、それはくすぐったいだけですぅ!」
「オレに揉まれて感じてるのか? この淫乱」
「ち、違います!」
安堵をした隙におっぱいを揉まれてしまいました。
やっぱりサクラさんは意地悪ですぅ! 私よりも悪魔らしいかもしれません。
・・・でも、優しいところもあるんですよね。怒りづらいです。
リリーさんも一緒に来られればよかったのに。でも、サクラさんが今はどこか遠いところにいると言っていました。一体、何をしているんでしょうか?
「頭も洗ってやる」
「は、はい。ひゃっ」
ご機嫌になっているシキさんがシャンプーを私の頭の上にかけると手を伸ばし、わしわしと泡立てながら頭を擦っていきます。
気持ちいいです。はあ・・・・・・・また、洗ってもらうのもいいかもしれません。
『そうだ! それが俺の力ァ! 俺の力だぁぁぁぁぁ!! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!』
すると壁越しから叫んでいるような声が聞こえます。これは、イッセーさんでしょうか?
『イッセー、そんなことしてたらサクラに怒られるよ~』
『それがどうした!? どんなに相手が怒ろうと、この先にある桃源郷が俺に覗かれようと待っているんだよ!!』
モココさんの声もします。イッセーさんが桃源郷だと言っていますが、何の話でしょうか?
そう思っていると私の頭に痛みが走りました。そういえばイッセーさんの声が聞こえてからゴシゴシと洗われているような感覚がしません。
目線だけ振り向いてサクラさんの顔を見るとご機嫌だったのが、不機嫌な顔になっていました。
右手にはいつの間にか直方体の大理石があり、サクラさんはそれを壁の上に向かって片手で捨てるように放り投げました。ちなみに体勢は変わっていません。
えーっと・・・確か向こう側には男子専用の浴場があったような・・・。
『ガハッ!!?』
イッセーさんの声が聞こえました。 一体、どうしたのでしょうか?
そう思っている間にサクラさんは、頭を洗っている小猫ちゃんのほうを向きました。
「おい、小猫」
「・・・・・・!」
「お前、兵藤に変なことを吹き込んだだろ」
「・・・何のことでしょうか?」
小猫ちゃんは多少、ビクつきながらもサクラさんの質問に答えました。
えっ、2人とも一体何の話をしているのですか?
「・・・ふん。まあいい」
「あの、サクラさん、一体何が・・・」
「お前が気にする必要はない」
サクラさんはそう言いながら私の顔を前に向かせると頭を先程の手付きで洗い始めました。うーん、気になりますけど・・・。
そういえばサクラさんを見ていて思ったのですが、どうしてサクラさんだけ体にタオルを巻いているのでしょうか? 他の皆さんは素肌を晒しているというのに・・・。
「あの、サクラさん・・・」
「・・・何?」
「サクラさんはタオルを取らないのですか?」
サクラさんは私の問いかけにしばらく沈黙した後、口を開きました。
「・・・どうでもいいだろ、そんなこと」
「で、でも・・・」
「・・・恥ずかしいから晒さないだけだよ。いいから黙って洗われてろ」
で、でも、そんな感じで巻いているようには見えないです・・・。
私はどうしても気になるのですが、これ以上追及すると怖いので聞くのを止めました。
どうしてでしょうか? 何か、隠していることでもあるのでは?
・・・でも、それはいつかサクラさんが話してくれると信じています。
私はサクラさんに泡を洗い流された後、先に温泉に入っていた小猫ちゃん、部長さんたちとゆっくりと温泉に浸かります。
はぁ~・・・・・・・いいお湯ですぅ・・・・・・。
・・・・・・おっと、いけません。気になるサクラさんの体を見なくては!
私は温泉に遣っているサクラさんの体を見ます。特に変わっているような様子はないようですが・・・。
すると視線が気になったのか、サクラさんが私のほうを見て口を開きます。
「? どうしたんだよ?」
「い、いえ、何でもないです」
私はサクラさんから慌てて目を逸らします。変に勘ぐりをしてサクラさんを不愉快にしては大変です。
「・・・・・・」
サクラさんは私をジト目で見ていましたが、すぐに視線を戻して目を瞑りました。
「・・・アーシア先輩」
怪訝に思ったのか、小猫ちゃんが私に話しかけてきました。
「は、はい、何でしょう?」
「・・・どうかしたんですか? 先程からサクラ先輩のことばかり気になっているようですが」
「い、いえ、何でもないんです。気にしないでください」
小猫ちゃんは首を傾げていましたが、これ以上は何も聞かずに私の隣に来ました。
「あら、アーシア。サクラのことが気になるの?」
「え?」
「あらあら、サクラさんとは同学年でいい体系をしていますから、嫉妬してしまいますわよね」
「ち、違います!」
もぉ、部長さんも朱乃さんも何言ってるんですか!?
二人の先輩に変な誤解をされてしまいました。私はただ、サクラさんが体に何かを隠しているのかが気になって―――
「何を探ってるのか知らないけど、お前がオレのことを知る必要なんかないからな」
サクラさんはそう言うと温泉から上がって、一人脱衣所へと戻っていきました。
一つ、気になったのは、戻っていくサクラさんのタオルが濡れたせいでかすかに透けて、背中に見えていた『黒い文字』。
何の文字かは明確に分かりませんが、あれは一体何なのでしょうか?
このときの私は何の文字、もしくは模様なのか気になって仕方ありませんでした。
「ア・・ガ・・・ガッ・・・」
「イッセーくん、大丈夫かい!?」
「・・・だから言ったのに~」
一方、男子の浴場では大理石を頭に受けて、大きなたんこぶを作りながらピクピクとしている一誠を木場が介抱している姿があった。
モココはその光景を見て程々、呆れかえっていたのであった。