翌日の昼休み。雲一つない青空で太陽が降り注ぐ中、桜はいつものように校舎の外の芝生で寝そべっている。
上半身は木の天辺の陰に隠れていて、下半身は太陽が照らしている。気持ちの良いそよ風が式の髪をゆらす。
なお、近くには今では使われていない旧校舎があり、その建物は校舎の上から見て真ん中に時計塔が突き刺さっているかのような構造で、校舎の周りにはツタが絡まっている。外観では古びた校舎ではあるが、窓ガラス一つ割れておらず、割れている部分があっても一目では分かりにくい。
そんな七不思議も噂されている不気味な佇まいの周辺では他の生徒がスポーツなどをして賑わっているが、桜にとっては昼寝の妨げになることはなくむしろ静かに思えるほどである。
寝そべっているように見える桜だが、今朝の出来事について思考していた。いつものように登校していると一誠が自分も知らない黒髪の女の人と登校してきたのだ。彼は自慢げに彼女のことを紹介、名前は天野夕麻と言った。桜の第一印象は大人しめで気弱な少女、美貌に関してはどこからどう見ても非の打ちどころがなかった。
桜はどうしたのかと彼に聞くと悪友2人と別れた帰り道、歩道橋で項垂れていると彼女が話しかけてきて付き合ってくれと告白されたのだという。しかも、いきなり今度の日曜日にはデートの約束まで取り付けてある。カップルになったばかりなのに、何とも気が早い限りである。
しかし桜が疑問符を付けたのはそういうところではない。今まで変態な発言ばかりをして女に嫌われ続けている一誠。そんな残念な男にどうして突然彼女が出来たのか。桜はそれが違和感でたまらなかった。
もしかして、夕麻は騙そうとしているのか? もしくは天野夕麻という美人に誰かが化けて一誠に近づいてきているのか? はたまた妖魔がこの件に絡んでいるのか?
桜の頭の中には様々な憶測が散りばめられた。まあ、あれこれ考えても根拠の無いことだ。後でエレンやモココに調べさせるとしようか。
「サ~ク~ラ♪」
そんな目を瞑っている彼女の思考を停止させたのは、頭に響く高い声だった。
「・・・何だリリーか。」
反応して目を開くと、目の前に縦ロールの金髪少女が立っていた。
「何だとは何よ、失礼ですわね。せっかくこの私が来てあげたっていうのに」
「頼んでない。お前が来ようが来まいがオレには関係のないことだ」
「むぅ~・・・」
適当にあしらう桜に不満を抱きつつも、寝そべっている彼女の横に座る金髪少女――リリアンヌ・ダルク。知り合いからは「リリー」という愛称で呼ばれていたりする。桜と同じハンターで幼馴染。駒王学園2年生で一部の男性には『プリンセス』と呼ばれているお嬢様で、ファンサイトも存在するとかしないとか。
「桜はこの学校の生活って楽しい?」
「・・・少なくとも退屈はしない」
「そうですわね。ここには
「・・・おかしなだけに?」
「・・・それうまいんですの?」
「ウケを狙ったつもりはない」
「あらそう」
何だかんだいって他愛の無い会話をする2人。会話の通り学園生活を謳歌している2人。とはいってもほとんどは夜の場合ではあるが・・・。
「何か分かったの?」
「何かって、何が?」
「言わなくても分かってるでしょ。この駒王学園の周辺に妖魔が急増していることよ」
「話、飛びすぎだろ。主語を入れろ」
「うっさいですわね。何だかんだ言って言いたいこと分かってるんでしょ」
「ふん」
突然切り替わった話にさりげなく突っ込みを入れる桜に対して、少々逆ギレ気味のリリー。
「エレンが調べてる。何とも大きな魔力が集まっているのが原因じゃないかって言ってた。今、どこの仕業か調査中ってハナシ」
「ふ~ん。順調なの?」
「知るか」
これ以降、そのことに関する話は続かなくなった。もはや興味があるのかすら分からない。するとここでリリーは風呂敷で四つ結びにされた四角い箱のようなものを出した。ドレスからなのだが、どの部分なのかはあえて言わない。
「そういえばこんなものを作ってきましたの。どうせお昼まだでしょ。一緒に食べる?」
「何だそれは?」
「弁当に決まってるじゃない。今朝張り切って作ったのよ。」
リリーが風呂敷の四つ結びを解くとそれは重箱であった。しかも三段重ねにしてあって、とても一人で食いきれる量ではないことは明白である。
「張り切りすぎだろ。重箱三段ってどんだけの量の弁当を作って来たんだ。そもそも重箱って普通は誰かと食べるためのものじゃないのか?」
「だから桜と一緒に食べようかなと思って作って持ってきたのよ」
「二人でも多いだろ」
「別にいいじゃない。いつもは寂しくケーキやクッキーばっかりの質素なものしかつまんでないんだから」
「うるさいな。オレが何食おうが、オレの勝手だ。」
「そんなこと言わないで。一緒に食べましょう」
「・・・いらない。ご飯はさっき食べたから」
「どうせ足りないでしょ。昼は出来るだけ食べないと体が鈍ってしまいますわよ」
「日々の鍛錬は欠かしていないから鈍ってなんかいない」
「うぅ・・・た、食べましょうよ! 一口ぐらい食べてくれても――」
「うるさい。つーか、昼寝の邪魔をするな」
「・・うぅぅ」
素気ない言葉を残して、リリアンヌに背中を向ける桜。しかし数秒も立たないうちに、背後からしゃくりあげたような声が聞こえてくる。
気になって後ろを向くと、リリアンヌが肩を震わして涙をポロポロと零していたのだ。顔には出てないが桜は心に余裕が無くなったような感じがした。
「・・ひっく・・ぐす・・食べようよぉ・・桜ぁぁ・・何で・・食べてくれないの・・? 別に・・多くたって・・困ることなんて・・ないでしょぉ・・」
リリアンヌは泣いていた。まるで見捨てられた子供のような言葉を発しながら。桜はそんなリリアンヌの顔を見て、溜息をつくと上半身を起こした。
「・・・どんなものを作ってきたんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、パアッと顔が明るくなるリリアンヌ。まるで今さっきの泣き顔が嘘のよう。
「フフフ。えっとね、一段目にはおにぎり、二段目には唐揚げとか玉子焼きとか、三段目には――」
リリーは桜に中身を聞かれて笑顔を浮かべながら重箱を一段一段開けて、中身を見せていく。
コイツ、また嘘泣きしたな・・・。でもあの顔を見るとな・・・。まあせっかく作ったんだし、食べてやるか。
断る大した理由もないので、リリアンヌの弁当を食べることにした。
しかしその際に、おかしなことに気付いた。
「おい」
「何ですの?」
「箸が一つしかないぞ」
そう。何故が箸が一つしかないのだ。一緒に食べると言っておいて、何でもう一つ無いんだ。普通だったらもう一つ用意してあるだろうに。
「うん。だから、一緒にこれを使うのよ」
「・・・は?」
訳が分からない桜。そんな彼女の疑問も知れず、リリアンヌは箸入れから箸を取り出す。そしてそれで料理を摘み、箸を持っていないほうの手を添える。
「はい、桜。あーん」
料理を自分のほうに差し出したところで、桜はようやく理解した。彼女は自分に料理を食べさせようとしているのだ。最初からこんなことをしたくて、わざと箸をもう一つ持ってこなかったのだ。
全く・・。こんなことして、何の意味があるんだ。料理を摘んだんだから、自分が食べればいいじゃないか。食べさせ合いっこなんて、やるだけ無駄なことをする必要はないはずだ。
「・・自分で食える」
桜の口に運ぼうとするが、彼女はそれを拒否。手でおかずを摘もうとするが・・・。
「・・・ぐすん」
「ああもう、分かった。好きにしろ」
また涙目になるリリアンヌを見て、結局彼女の摘んでいる料理を口へと入れた。
「・・・おいしい」
「よかったぁ!! もっとあるから食べて、食べて!!」
嬉しそうな声を上げるリリアンヌ。とても幸せそうだ。
泣き顔を見せられて、断ると面倒になるとイライラする桜。そういえば幼いころもこうだったなぁ~と過去の自分を思い出している。
「ねえ・・あれ見て」
「リリアンヌさんと桜さんがあんなことを・・!」
「食べさせ合ってるよ!!」
「クソォォォォォッ!!・・いいなぁ!!」
「俺も『プリンセス』か桜さんに、あんなことされてみたいィィィッ!!」
こんなカップルのようにイチャイチャしている光景に周囲では女生徒の黄色い声が上がったり、男子生徒が血の涙を流して羨ましがったりしている。
できるだけ目立ちたくない桜ではあるが、また変に拒否してリリアンヌを嘘泣きとはいえ、泣かせたら大騒ぎにすらなりかねない。大人しくした従ったほうが、これ以上厄介なことになることもないだろう。否、すでになってはいるが。
万事休す、もはや溜息をつくしかない。
(厄日だな・・今日は)
結局、リリーの弁当の半分を食べることとなり、自主的に食したものと合わせて腹八分どころか、一杯になってしまった。
その後食べ過ぎで寝苦しくなることになったのは、また別の話である。
◆◆◆
「あの二人・・・」
「はい?」
「あの木陰にいる黒髪と金髪の少女よ」
私――リアス・グレモリーは姫島朱乃と一緒にお昼を食べようと場所を探していたところ、男とも女とも似つかない子と金髪の縦ロールの少女が目に付いた。
2人は木の下で一緒に弁当を食べている。その周辺には男子生徒や女生徒が集まって、人だかりが出来ている。
弁当の食べさせ合いっこなどをして仲が良いのは何よりだが、私には気になることがあった。
「確か…2年の風花とダルクとかいう子だったかと…彼女たちが何か?」
「あの二人…何だか…嫌な感じがするの」
「嫌な感じ…ですか?」
そう、あの二人には私たちとは違う何かを感じたのだ。昨日、部室の外で見た茶髪の少年・兵藤一誠もそうだったけど、あれは私の気のせいだったのかもしれない。
しかし、昨日のそれとは訳が違う。昨日の勘違いでは済まないようなこの感じ。表面から見ても普通の少女たちとは変わらない。でも、何なの? あの娘たちから感じる、黒いモヤモヤしたようなものは・・・。
「!!?」
私は思わず驚いてしまった。先程まで金髪の子に目を向けていた黒髪の子がこちらを見て不敵に微笑んでいたのだから。
目をこすってもう一度見てみると黒髪の子の視線は金髪の少女のほうに戻っていた。
気のせい…だったのかしら…? 先程まであの子がこちらを見ていたような…。
「部長…どうしました?」
「…いえ、何でもないわ」
うん。きっと気のせいね! 多分、眼が疲れていたんだわ。
「それよりも、あの娘たちのことを調べてみましょう。」
「…どうしてですか?」
「もしかしたら、あの子たちは私たちにとって脅威になるかもしれないじゃない。」
「わかりました。手配はしておきますわ。」
厄介なことになるとも限った話ではないが、もしそうなったらのために何とかしなくては。私たちは彼女たちのことを調べることにした。
◆◆◆
「全く、あの2人は呑気なものだ。ここにはお遊戯をしにきたわけではないというのに」
旧校舎の屋根の上では紫ヘアーで修道女服の少女が弁当のカレーを食べながら、桜とリリアンヌの様子を傍観している。ちなみにカレーは先程、購買部で購入した安物である。
そこに瞬間移動をして銀髪の青年が現れた。手にはビニール袋を提げており、その中には大量の菓子パンが入っている。
「おやおや。エレン、こんなところで寂しく昼食か?」
「黙りなさい、ウィルヘルム。蛇足的なことは言わなくていいんですよ。ああ、でもあなたは存在自体が蛇足でしたね。」
馬鹿にしたような口調で話すウィルヘルムに淡々と返すエレンと呼ばれた少女。
「俺が蛇足とは言ってくれるねぇ。無駄な技術や必要かも分からないものを自分のものにしたりする堅物な元・修道女のお嬢さんが」
菓子パンをかじりながら言い返すウィルヘルム。
「余計なことは言わなくていいんですよ、この怪力馬鹿」
「そうイライラ棒みたいにカリカリなさんなって、無駄だと思えたとしても俺たちにもこういうことぐらい必要だろ?」
エレンはその言葉に俯いて黙っていたが、すぐに視線を戻して口を開いた。
「学校が終わったら仕事をさせましょうか」
「スルーとは釣れないねぇ。そんな鬼教師みたいなことしてると嫌われるぞ?」
「黙ってください。まだ私には調べなくてはならないことがあるんですよ」
「ほう、それは失敬」
ウィルヘルムはまた菓子パンを一つ取り出してかじった。
エレンは視線をストロベリーブロンドの少女と黒髪ポニーテールの少女の方へと向ける。
「リアス・グレモリーと姫島朱乃……。あの2人はすでに気付いているでしょうね。あの2人の内なる力を」
「そうだな。この周辺では強そうなオーラが2つあるが、特にリアスっていうあの女が一番強そうだな」
目を細めるエレン。ウィルは嬉々とした表情で2人を眺めている。
「あの2人に私たちの任務は邪魔させない。それでも邪魔をするというのであれば――」
「俺たちの掟に従って――」
カレーを全て平らげ、プラスチックの器を宙へと放る。それをウィルヘルムが拳で砕く。
「潰しちまえばいいんだろ?」
「そうですよ。邪魔をすればの話ですけど」
「分かってるっての。俺もそこまで粗野じゃねぇし」
ニタリと口元を三日月状にしながら、笑みを交わし合う2人。これから楽しくなりそうだという喜びの感情のようにも見える。
「ところでさぁ」
「何ですか?」
「カレーパン食べるか? 購買部という戦場で適当に拾い上げたら、こんなもの買ってきちまった。」
「……いただきましょう。」
こんなものとは何ですか! こんなものとは! カレーっていうのはどんなものでも萌えるオールマイティーグルメですよ!
エレンはムスッとした顔をしながら、カレーパンを受け取った。
食したその味は普通のカレーライスよりずっとおいしかったという。
◆◆◆
祐斗と小猫はリアスの指示でとある人物の尾行をしている。
その調査対象となっているのは、風花桜とリリアンヌ・ダルク。リアスが昼休みに何だか違和感があるということで2人に調べてもらうように指示をしたのだ。
街中、2人は一緒に歩いている。2人はその後を追っていく。
「確かに僕たちとは違うオーラを感じるけど、部長が言っていた違和感っていうのは一体何なんだろう?」
リアスに言われたことの疑問が口から出てくる祐斗。
一見普通の人間だが、オーラの質からして明らかに普通ではないことが分かる。しかし、その違和感というものがいまいち分からない。一体どういうことなのか? まだ何かがあるとでも言うのだろうか?
それが今、祐斗が思っていることである。
「…それを調べるのが私たちです」
祐斗の疑問に小猫が言った。実際調べてみないことには分からないのだ。
桜とリリアンヌの尾行を続ける2人。
後を追っていくとたどり着いた先は今は使われていない廃墟だった。
「…こんなところに一体何の用なのだろう?」
「!…何か話してます。」
祐斗は2人が廃墟に来ることに疑問を感じていたが、小猫が2人の話し声が聞こえたと言うので、とりあえず思考を止め耳を傾けてみる。
「こんな汚らしい場所の妖魔の掃除を手伝わせるなんて、あのメガネは本当に嫌な女ですわね」
「綺麗だろうが汚かろうが、仕事は仕事だ。オレは、誰かを殺せればそれでいい」
「それはそうだけど、何であの女は手伝わないのかってことよ!」
「そういえば調べたいことがあるってどこかへ行ったな。」
「そんなこと言って、仕事おしつけてるだけのくせに…」
会話からしてあの二人は妖魔を討伐に来ただけらしい。しかし、リリアンヌのほうは不愉快そうな顔で隠そうともしない愚痴をこぼしている。
祐斗も小猫も妖魔の話は聞いたことがある。古から存在している、不気味な形相と色合いをしている異形の怪物である。基本二足歩行で移動し、人間を見つけると襲い掛かり捕食する。
ところが最近では人間だけでなく、悪魔、堕天使や天使すら狙われる件も幾度か発生しており、妖魔が現れたらすぐに討伐するというのがどの勢力のルールでもある。
「嫌なら帰れ。戦わない奴が一緒にいたって邪魔なだけだ」
「嫌なんて言ってないでしょう。嫌な奴だとは言ったけど…」
「同じだろ」
「あっ、ちょっと待ってよ!」
桜はリリアンヌを置いて先に行こうとしたので、彼女は慌てて後を付いていく。
祐斗と小猫も後を尾行しようとしたが、踏み出そうとして留まった。
「きゃっ! いたた…ちょっと、どうしたの?」
「シーッ 静かにしろ」
桜は十歩程歩いたところ、もとい入り口に近づこうとして歩みを止めた。リリアンヌは駆け寄って桜にぶつかり、尻餅を付いてしまった。
「どうしたの、小猫ちゃん?」
「…何か出てきます」
後を付けている側の小猫は何かの気配を感じたのか、祐斗の問いに顔をしかめながら言った。
すると廃墟から青年が5人ほど姿を現してきた。
「あんたら、こんなところで何をしているんだい?」
「この廃墟の中には入らないほうがいいよ。化け物が出るって話なんだ」
「こんなところにいないで、帰った方がいい」
彼女たちを思っての忠告なのか、男たちは口々に物を言う。しかし桜は何秒か無言を貫いた後、口を開いた。
「お前らってもう少し利口だと思ってたけど、ここまでバカだったとはな」
そういうと背中に収めている魔剣を握り。
ピュンッ!
男たちを斬り払った。
ブシャアァァァァ!
「グワァァァッ!」
「グオォォォッ!」
「ウゥゥ…」
男たちの内、3人の妖魔の胴体が真っ二つになり、断末魔の声を上げながら鮮血を吹いて崩れ落ちた。
この行動に祐斗は目を見開いていた。
「あの人…何を…!?」
「落ち着いてください…祐斗先輩」
思わず飛び出していこうとした祐斗だったが、小猫がそれを制した。
「き、貴様ら…何故俺らの正体が!?」
「『
桜は瞳を水色に光らせながら言った。実は廃墟に来る前から発動させていたのだ。
「それに周辺に人っ子一人いない廃墟に人が溜まってる時点で普通におかしいと思いますわよ?」
「ッ…! クソッ!」
残る男2人は体を茶色く、爪と鋭い歯を剥き出すや否や2人のほうへダッシュして襲いかかって来た。桜とリリアンヌはジャンプして飛び上がった。
「ヘッ、掛かった!」
不敵な笑みを浮かべる妖魔たち。桜は背後を見ると羽根の生えた2体の妖魔がこちらに迫っていた。
「足元と胴体を攻撃しようとすると避けるために飛び上がるのが人間っていうものなんだよ」
「キィアァァァァァァァァァッ!」
嘲笑する2人。奇声を上げながら迫り来る羽根の生えた2体の妖魔。
桜は動揺することなく、むしろな口元をニタリと三日月状の笑みを浮かべながら、妖魔に向かって魔剣を振るった。
ザンザンザンザンッ!
ブシャアァァァァァァァァァ!
「ブワハァッ!」
「グボァッ!」
「なっ…!?」
羽根の生えた2体の妖魔は青紫色の血を吹きながら、細切れになっていった。
地面へと着地する桜。直後に妖魔の肉の破片がボトリ、ボトリと落ちてくる。
「おのれ…ッ!」
『Freeze!』
「グオハァッ!」
忌々しげに吐く妖魔に対して、もう一体の妖魔は断末魔の声を上げて氷漬けになり、氷ごと砕け散った。
桜に気を取られている隙を狙ってリリアンヌが電子音と共に妖魔の背後から槍を突き刺したのだ。
「何ッ…!?」
『Freeze!』
リリアンヌからさらに電子音が聞こえたと同時に、彼女は自分の周囲に氷柱を出現させる。
「…フッ!」
槍を妖魔へと向けて振るとそこを目掛けて氷柱が飛んでいく。
ドス ドス ドス ドス ドスッ!
「ガアァァァァァッ!」
全ての氷柱は妖魔の顔、胸、腹に突き刺さり、妖魔は氷漬けになった後、バラバラになった。
桜は魔剣を背中に収め、廃墟の方を見る。
「この廃墟に親玉がいることは間違いないな。行くぞ」
「あっ、ちょっと。置いてかないでよ!」
リリアンヌも槍を肩に担いで、慌てて桜の後を追った。
あの男たちはどう見ても人間だったはずなのに…? 祐斗は小猫に疑問を訪ねてみた。
「小猫ちゃん、どうしてあの男たちが人間じゃないって気付いたんだい?」
「…入り口から出てきた時に、あの男たちからは血の匂いを感じました。いくら人間の姿になろうとも血の匂いを消せてはいませんでした」
「そうだったんだね。2人の後を追うよ、小猫ちゃん」
「…はい」
2人が廃墟へと入っていくのを見た祐斗と小猫も2人の後を追うべく廃墟へと足を踏み入れる。
しかしその直後、2人の後ろに2つの黒い影が現れる。
「「!!?」」
祐斗と小猫は気付きはしたものの、祐斗は背後から首に短剣を突き付けられ。小猫は背中に槍を突き立てられる。
「…何者だ、お前ら。さっきからこそこそと」