極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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番外編2「学園七不思議の謎 後篇」

 

皆さん、こんにちは。兵藤一誠です。

 

突然ですが、前回までのあらすじです。

 

リアス部長の命令で学園の七不思議を調査することになった俺とアーシアちゃん、サクラ、リリーちゃん。だけど、七不思議は俺たちの想像していた以上だった。サクラは平然としていたけど、まあそれは置いておくとして・・・。

 

女子トイレに響く男の呻き声、一人でに鳴り出す音楽室のピアノ、そして、豊満なおっぱい!!

 

いや、違った・・・白装束を着た黒髪の女幽霊。次々と襲い来る怪現象に命からがら音楽室から逃げだした俺たちの運命はいかに?!

 

あれ? サクラとリリーちゃんは、何かに気付いていたみたいだけど・・・でも、今は聞けるような状況じゃないな。後で聞いてみよう。

 

というわけで、ここからは本編に入るぞ。

 

俺たちは音楽室から抜け出して夜の校舎の先を進んでいた。まあ、あり得ないことでもないので一応は背後を警戒しながら歩いていたんだけどな。

 

「どうやら、さっきの女幽霊は追ってこないみたいだな」

 

「あの女のゴーストさんはイッセーさんに覆いかぶさるようにしていました。きっと、呪いをかけようとしていたんです・・・!」

 

頭を抱えながら言うアーシア。

 

いや・・・呪いというか、萌えというか・・・。そんな感じはしたけど・・・。

 

「・・・あの幽霊にそこまで邪悪なものは感じなかったぞ。邪な心はあったけどな」

 

「その割にはそこのエロ猿は喜んでた気がするんだけど?」

 

「い、いや!? べ、別にっ!?」

 

「何、そんなに慌ててんのよ?」

 

リリーちゃんに指摘されてギクリとなる俺。妙なところで鋭いんだよね・・・。

 

言えない・・・あの女幽霊のおっぱいの感触が良くってもっと味わっていたかったなんて言えるかぁ!!

 

「いや、俺ビビッててそれどころじゃなかったし!」

 

俺は弁明をしようとするのだが、その言葉をサクラが切り捨てる。

 

「どうせ嫌らしいことでも考えてたんだろ?」

 

「何ですって!? アンタってゴリラは・・・!!」

 

リリーちゃんがあからさまな敵意を俺に剥き出しにする。ああ、これはマズイ・・・。

 

「ち、違うっての!! 間違っても、おっぱいが良かったなんて一言も思ってないよ!!」

 

「・・・思ってるじゃないか」

 

「思ってんじゃないのッ!!」

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

つい本音が漏れてしまった。一斉に2人にツッコまれる俺。

 

「あの・・・3人で何の話をしているんですか?」

 

「な、何でもないよ!! アーシアちゃん!! あの女幽霊のおっぱいがぷりんぷりんだったとか、太股がむちむちだったとか、これぽっちも話をしてないよ!!」

 

ああ、また墓穴を掘った・・・。そう思った瞬間、右腕に感触が走った同時に俺の視界は反転して背中に衝撃が走った。

 

「がはっ!?」

 

「自重しろ、エロ猿」

 

どうやら俺は吹っ飛ばされたようだ。体を起こして背後を見るとこちらを睨むリリーちゃんの姿があった。

 

リリーちゃん、仕方ないんだよ。悪魔だから夜だと何かと元気になってしまうというか、何ていうか。ああぁ、欲望が抑えきれない!

 

「・・・なんでもないよ、アーシア。早く次の七不思議に行こう」

 

「で、でも・・・分かりました・・・」

 

サクラは淡々とそう言うと前を進み出す。アーシアも腑に落ちない感じだったが、足を動かし始めた。

 

俺も痛む背中を抑えながら歩こうとすると・・・。

 

「!?・・・皆さん・・・!」

 

アーシアは突然、掠れたような声を漏らす。その表情は目を見開かれていて、恐怖の表情だった。

 

「どうした、アーシア? トイレにでも行きたくなったのか?」

 

「ち、違います。皆さん・・・足音が変じゃないですか・・・?」

 

足音が変・・・? どういうことだ?

 

「別に足音はいつも通りじゃない。途中で音が変わるわけでもあるまいし」

 

確かに俺たちの足音におかしなところは存在しない。これは人間から悪魔になっても同じだよな。

 

「えっと・・・そうじゃなくて・・・だから、その、足音が多いというか・・・」

 

足音が多い? うーん、七不思議すら起こっているこの校舎だからな。もう不思議が起こってもおかしくはないとは思うな。

 

「よし、3人とも立ち止まってみよう」

 

「えっ、何する気よ?」

 

「いいから、お前も従え」

 

俺の言葉にリリーちゃんは疑問の声を上げたが、理解していたサクラが諌めたので頬を膨らませながら渋々従ってくれた。

 

リリーちゃんのそういう怒った顔は可愛いんだけどな・・・。

 

俺たちは、4人一斉に足を止めてみた。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・タン。

 

・・・・・・・タン。

 

・・・・タ・・タン。

 

・・タ・・タ・タン。

 

・・・確かに音が聞こえる。何だよ、この音は・・・?

 

「ひぅ! ほっ、ほら、やっぱりですぅ・・・!!」

 

「えっ? な、何よ、何の音なの!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

得体の知れない足音が聞こえてきて、アーシアとリリーちゃんが怯えはじめる。

 

サクラは背後を振り返って見ている。まあ、サクラが幽霊を怖がるはずもないしな。

 

俺も思わず振り返って声を上げてみた。まさかとは思うが・・・。

 

「だ、誰だ!? さっきの女幽霊か・・・!?」

 

「・・・いや、違うな。別の何かだな」

 

別の何かって何だよ!? もしかして、本当にここの悪霊が追いかけてきてるとか!?

 

ガタン。ガタン。ガタン。ガタン。

 

そう思っている間に足音はだんだんと大きくなっていき、その足音の主が正体を明らかにしていった。

 

・・・それは、小学校の理科室でもよくあるものだった。

 

「いやぁぁっ!」

 

「ああぁぁっ!」

 

「・・・・っ」

 

「人体模型だ!! 何でこんなところに!? まさか・・・!?」

 

各々反応を見せる中、サクラだけは人体模型を睨みつけながら腰の剣を構えていた。

 

俺は部長から貰った七不思議の紙を取り出そうとするが、それを待つ間もなく人体模型がこちらに向かって・・・!?

 

ガタン、ガタン、ガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタン!!!!!

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 走ってきたぁぁぁぁぁ!?

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

俺とアーシアとリリーちゃんの叫びの通り、人体模型が全速力で突っ込んできたのだ。

 

や、やばい!! 早く逃げないと!

 

「逃げるぞ、アーシア!」

 

「は、はいぃぃぃぃぃ!!」

 

俺はアーシアの手を取りながら廊下を駆け出した。

 

「サクラも逃げるわよ!!」

 

「なっ、お、おい!!」

 

サクラは臨戦態勢を取っていたようだが、そんな気も更々ないリリーちゃんによって袖を掴まれて無理矢理走らされることになった。

 

廊下をどこまでもどこまでも駆けていく俺たち。しかし、人体模型の姿が遠ざかっていく様子がない。

 

―――・・・追いついたら臓物、貰いますから。

 

―――・・・レバーをおくれ

 

―――・・・レバーをおくれ

 

―――・・・レバーをおくれ

 

おまけに、不気味なことを言いながら追いかけてきやがる!! ってかあの人体模型、超速ぇ!!

 

「そんなに慌てて逃げることかよ? たかが、人体模型ごときに」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!! 捕まったら肝臓食われちゃうのよ!?」

 

「・・・するわけないだろ、あの人体模型が」

 

お前ら、何不毛な喧嘩を展開してるんだよ!? 俺たちがピンチだっていうのに!!

 

っていうか、サクラ落ち着き過ぎだろ!! しかも、走ろうともしてねぇ!

 

「イッセーさん、どこまで逃げるのですか!?」

 

確かにこのまま逃げても結局は追いつかれてしまうのが、目に見えている。振り切れるかは分からないけど、とりあえずは・・・。

 

「とにかく真っ直ぐ!! プールの方へ逃げるぞ!!」

 

俺はそう言いながら、レバーをおくれと連呼しながら走っている不気味な人体模型からプールのある方へと走っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

何でアンタがここにいる、パート2と言いたくなる、風花桜だ。

 

私たちはあの人体模型から走って逃げてきて、現在は屋上にあるプールの側にいる。

 

兵藤とアーシアはハァハァと息を切らせている。全速力で駆け抜き、階段を利用するなどして、ようやく人体模型を振り切ったが、2人とも基礎体力が無いので簡単にこうなってしまうのだ。

 

「ハァ、ハァ、何とかプールまで逃げてきたな。ハァ、ハァ、ちょ、ちょっと休憩しよう」

 

「ハァ、は、ハァ、はいぃぃ」

 

2人の体力もあれだったので、私たちは座って休憩を取ることにした。

 

「アーシア、飲むか?」

 

「あ、ありがとうございますぅ・・・」

 

私はアーシアにペットボトルの水を差し出す。

 

「サクラ、アタシにも―――」

 

ゴチンッ!!

 

私は先程のリリーの行動にあまりにも苛ついたので、頭を拳骨で殴ってやった。

 

「いったぁーい! 何するのよぉ、サクラぁ・・・?」

 

「黙れ。お前はオレの何気取りなんだよ?」

 

私は着物の崩れを直しながら、淡々と言葉を返す。

 

「せっかく助けてあげたのに、何よその態度ぉ・・・?」

 

「頼んでない。勝手にお前がオレの袖を掴んだだけだろ。骸骨の腕でも掴んでればよかったのに」

 

「酷いっ!! 昔は助けてあげたら、ありがとうって言ってくれたのにっ!」

 

涙目でリリーは私を睨むが、無視。私は盛装を直すのに忙しいのだ。

 

「お、お二人とも喧嘩は―――」

 

ザッパーン!

 

・・・? プールのほうで音が聞こえたな。

 

「い、今の音・・・」

 

兵藤が掠れたような声を漏らす。

 

「プールの中に、だ、誰かいらっしゃるのでしょうかぁ・・・?」

 

アーシアが涙目になりながら、プルプルと震えながら言う。

 

「今度は何よ!? もういい加減にして!!」

 

リリーが苛立ちと恐怖が混ざったような言葉を叫ぶ。

 

頭痛は起こっていないようだから、そこまで邪なものでもないということだな。でも、この気配はどこかで感じたことのあるものだ。先程の人体模型と同様。

 

プールの中を覗いてみると、何やら黒い物体がプールの中をバシャバシャと音を立てながら泳ぎ回っているのが分かる。

 

「ほ、ホントだ。何かが泳ぐような音がプールから聞こえてくる! 本当に何かが泳いでやがる!」

 

兵藤がそう叫ぶ。すると黒い物体がこちらに向かって泳いできた。

 

「こっちに近づいてくるわよ!」

 

「っ! 七不思議には『プールに浮かび上がる無数の手』っていうのがあるんだが・・・!」

 

そう言う兵藤の背後にアーシアが隠れる。

 

「イッセーさん、サクラさん、やっぱり・・・プールの、ゴーストさんでしょうか・・・?」

 

「分からないけど、アーシアは俺が守る!」

 

兵藤はキリッとしたような表情になると、左腕を顔の前に構える。

 

「『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!!」

 

その名前を叫ぶと兵藤の左手に赤い籠手のようなものが装着される。そして臨戦態勢になる。

 

「来いよ! 幽霊野郎め!!」

 

・・・なるほどな。いざというときには仲間を守る覚悟はあるということか。たとえ幽霊であっても。

 

私は右手を引き寄せるように下に引くと、夜空から魔剣リベリオンが物凄い勢いでこちらへ向かってくる。私は右手を天にかざすとその魔剣をキャッチすると戦闘態勢に入る。

 

「オレもあの幽霊がどういうものか見てみたかったんだ。斬り殺して解体してみるか」

 

・・・本当はあの幽霊の正体も大方、見当は付いてるんだけどな。

 

「猿が一匹カッコつけてんじゃないわよ。アタシだってアーシアを守れるんだからね」

 

兵藤の横から槍を構えたリリーが戦闘態勢に入る。

 

「イッセーさん、皆さん、私のために・・・分かりました! 私も『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の癒しの力で皆さんをフォローします!」

 

アーシアもやる気になったところで、私たちはプールの中の物体に目を向ける。

 

距離的には3m・・・2m・・・。

 

1m50cm・・・1m40cm・・・1m30cm・・・。

 

1m・・・30cm・・・。

 

「来るぞ!!」

 

ザッパァーン!!!

 

「プールの中から出てきた!!」

 

「ああぁぁ!」

 

黒い物体がプールの中から水面を突き破って外へと飛び出してきた。

 

プールから上がったその黒い物体の正体は・・・・・・やっぱりな・・・。

 

「ってお前は!?」

 

その姿は今は水着を着ていて、金髪の髪をしている爽やかなイケメンスマイル。といえば、この学園には1人し

 

かいない。

 

「やあ、イッセーくん、アーシアさん、サクラさん、リリーちゃん。深夜の学校にようこそ」

 

「木場じゃねえか!! お前、水着着てここで何してるんだよ!?」

 

そう、木場祐斗だ。オカルト研究部の部員でリアスの下僕、そしてこの兵藤の天敵でもある男だ。まあ、単純に兵藤が木場に敵意を剥き出しにしているだけなのだが。

 

「深夜のプールでトレーニングさ。悪魔の仕事をした後にひと泳ぎすると朝までよく眠れるからね。イッセーくんも一緒に泳がないかい?」

 

「泳がんわぁっ!!」

 

即答だった。兵藤的には何が悲しくて男2人で水泳をしなければならないのかといったところだろう。

 

「そうかい? サクラさんやリリーちゃんはどう?」

 

「えっと、水着持ってないから遠慮しておくわ」

 

「泳がない。泳ぐのなんて面倒臭いし」

 

私は魔剣を背中に収めながらそう言った。

 

水の中に入るのが気持ちいいのは認めるが、そこを動くのが面倒臭い。体が重くなるしな。

 

「面倒臭いんじゃなくて、サクラは単にカナ―――」

 

ゴチンッ!!

 

リリーがとんでもないことを言おうとしたので、頭部に拳骨を喰らわせた。

 

「あれ、リリーちゃん何か言おうと―――」

 

「何でもない。気にするな」

 

木場の声を遮るように私は声を発した。男が細かいことを気にするものではないぞ、木場。

 

もう一度言う。私は泳げないんじゃなくて、泳ぐのが面倒なだけだ。だから、泳がない。

 

「・・・ったく、驚かせやがって」

 

木場に悪態をつく兵藤。まあ、私だってやられればあんな反応をするかな。

 

「驚いてくれたなら僕もやりがいがあったかも」

 

木場の口から意味深な言葉が漏れ、その言葉に即座に兵藤とリリーちゃんが反応した。

 

「えっ、やりがい? やりがいって何よ?」

 

「どういうことだ!?」

 

「おっと。僕のことはともかく、まだ周っていない七不思議はあるのかな?」

 

木場はしまったとでも言いたげな反応をした後、誤魔化すように七不思議のことを訪ねた。

 

「あるけど、校舎には帰りたくない」

 

イッセーは不満そうな口調で言う。まあ、あんな目に遭ってるのだから当然の反応だろうな。

 

「アタシたちの内臓を狙う変な人体模型が校舎を走り回ってるんだもん!! ねえ、アーシア」

 

「レバーはあげられません!」

 

リリーが顔を青くしながら叫び、アーシアも首を振りながら答えた。

 

たかが人体模型であそこまで怖がるものなのか? 普通に考えて、模型如きに臓物を奪うことなんてできるわけがないと思うが。

 

「人体模型とは出会ったんだね。じゃあ、音楽室には?」

 

「行った! エロいお姉さんの幽霊がいたなぁ・・・グフフ、今度は個人的に深夜の学校に行ってみようかなぁ」

 

いや、そうじゃないだろ。他にも重要な所はあったと思うけどな。

 

兵藤の表情を見て、リリーが睨みつける。さすがのアーシアも不愉快だったのか、ジト目をしながら言った。

 

「・・・イッセーさん、エッチな顔になってますぅ!」

 

「本当にこのエロ猿は・・・。他にもあったでしょっ! 魔王を弾くピアノとか、ベートーベンの目が光ったりとかっ!!」

 

「あぁ、そうだったな。ハハハ、いかんいかん」

 

兵藤が頭に手を当てながら言う。私は何故こんなヤツの友人をやっているのだろうか。

 

「あっ。ほら! 早速来たみたいだよ」

 

木場が意味の分からないことを言ってプールの入口を指さす。私はその方向を振り向いてみると、!!

 

「何だよ木場―――って、さっきの人体模型じゃねえか!!」

 

兵藤も入口の方を向くと驚いたような顔をする。振り切ったはずの人体模型がプールへと入ってきたのだ。

 

人体模型は私たちの前まで歩いてくるとゾンビのように手を出しながら言葉を発した。

 

―――・・・見つけましたよぉー。レバーをよーこーせぇー。

 

・・・まあ、私はもう正体が分かってるんだけどな。口調といい喋り方といい、『真実の魔眼(トゥルース・シーイング)』を使うまでもない。

 

でも、敢えて私は何も言わない。だって、コイツらが狼狽えている状況はとてもそそるから。

 

「人体模型が追ってきたみたいだね」

 

木場が変わらぬ表情で言う。人体模型のことを何か知ってるかのような態度だな。

 

その間にも、人体模型はレバーをおくれと連呼しながら、私たちのほうへと少しずつ歩いてくる。

 

「イッセーさん! サクラさん! リリーさん! このままだとレバーを取られちゃいますよ!!」

 

だから取らねえっての。人体模型にそんなことができるわけがない。すでに肝臓はあるんだから。

 

「そうはさせるか! このブーステッド・ギアで一気にぶっ壊してやるぜ!!」

 

「そんなことされたらアタシ、お百合にいけなくなっちゃう! こうなったら凍らせて粉々にしてやるわ!」

 

兵藤とリリーが臨戦態勢へと入る。リリー、お前はやめておけ。下手したら中の人まで再起不能になってしまうぞ。

 

リリーも何で気付かないんだ? お前の好きなアイツだっていうのに。

 

ヒュ~~~ドロドロドロドロ。

 

―――あらあら。物騒ですわね。うら~~めし~~や~~。

 

するともう一つの気配が兵藤の背後へと迫る。それはさっき音楽室にいた女幽霊だった。

 

「さっきの女性ゴーストさんまでぇ!?」

 

アーシアも驚いたような顔をして、声も叫びを通り越して悲鳴もしくはツッコミに近いような感じになっていた。

 

―――うふふ。私とイケないお化けごっこしましょ。ほ~ら。緊張してないでお姉さんに身を任せて。あなたはおっぱいとお尻とふ・と・も・も、どれが好きなのかしら~?

 

そう言って女幽霊は兵藤を背後から抱き着いて胸を押し付けはじめた。それはもう兵藤を虜にしようとしているかの如く。

 

・・・あれ、何だろう。何でこんなに不愉快なんだ?

 

「あ・・・全部大好きです!! あぁぁ、幽霊さんに捕まって動きたくな―――いやいや、動けないぞ♪ これが心霊現象というヤツか♪ なんて恐ろしいんだぁ♪」

 

「ちょっとエロゴリラっ!! さっきまでの闘志はどこに言ったのよっ!? アンタって悪魔は、ホントにどうしようもないヤツなんだからっ!!」

 

「イッセーさんっ!! 言ってることと表情が合っていませんっ!! とてもエッチな顔で喜んでますぅっ!!」

 

リリーとアーシアが怒りにも近い非難の言葉を叫ぶ。私も何かを吐きだしたい気分だな、あのゴキブリ野郎に・・・!!

 

―――・・・スケベはレバーを取って、死んだほうがいいかもしれません。

 

人体模型も兵藤の表情が癪に障ったのか、物凄い勢いで兵藤のほうへと突っ走っていく。もう隠す必要が無いくらいに、口調が戻ってるぞ。

 

「ヤバい! 人体模型にレバーを取られる! 木場、助けてくれ!!」

 

兵藤は人体模型から逃げ回りながら、木場に助けを求める。だから、レバーは――――ああ、もういいよ。

 

「えーっと、あっはは・・・これは困ったな・・・」

 

木場は困惑したように苦笑する。・・・・・・ああ、もう。

 

私は天を仰ぎながらある人物の名前を呼んだ。

 

「・・・この悪ふざけはいつまで続くんだよ? リアス」

 

「助けろ、木場ァ!! って、リアス? えっ、部長!?」

 

あーあ、ネタばらししちゃったな。まあ、私には分かってたし、どうでもいいことだけど。

 

景気のいい靴の音が聞こえると更衣室がある小屋の陰からリアスが現れた。

 

「うふふふ、そうね。そろそろ終わりにしましょうか」

 

・・・何をクスクス笑ってやがる。こっちは全然面白くない。

 

「部長! い、いらっしゃったんですか?」

 

「少し前からあなたたちのことを陰から見守っていたの。朱乃、小猫、もういいわよ」

 

リアスにそう言われると女幽霊と人体模型は馬脚を現し始めた。

 

「あらあら、残念。ここからイッセーさんをもっとエッチに攻めようと思ってましたのに」

 

女幽霊は無駄に長い髪を取るといつものニコニコな笑顔を振りまく見知った顔になった。

 

「か、鬘!? 女幽霊が朱乃さん!? 顔は髪で隠れていたし、髪もウェイブが掛かっていたから分からなかったです!」

 

「うふふふ。このためにセットしたんですわ」

 

私は口調と普段の趣向から見破ったけどな。

 

「・・・人体模型の佐々木君を動かしていたりしました」

 

人体模型はそのまま前のめりに倒れていくと白髪のクールな後輩になった。

 

「人体模型の後ろから小猫ちゃんが! 持って歩いてたの!? 小猫ちゃんがちっこいから分からなかったよ!!」

 

「フンッ」

 

バキッ!!

 

「がはっ!!」

 

そのデリカシーの無い一言を言った瞬間に、小猫の右ストレートが兵藤の顔面にぶち当たった。

 

「何で殴るの、小猫ちゃん?」

 

「・・・ちっこいって言ったからです」

 

鼻を抑えながら言う兵藤に、小猫が低い声で淡々と言った。女性にそんなことを言うのは嫌われるぞ。

 

ってそんなことはどうでもいい。私はリアスを問い詰める。

 

「で、これはどういうことなのか説明してくれるんだよな?」

 

「みんなして私たちをからかってただけっていうんじゃありませんわよね?」

 

返答次第によってはこのオカルト研究部に2度と来たくないと思わせる質問だ。当然だろ。何でリアスの下僕が幽霊に成り済ます必要があるんだよ。下手をしたら新手の苛めなんじゃないかと誤解されかねないぞ。

 

しかし、リアスは首を振ると真相を語り始めた。

 

「うふっ、そうじゃないわ。今年の新入部員であるイッセーとアーシア、サクラ、リリーにオカルト研究部の活動を堪能して欲しいと思って仕込んでおいたのよ。朱乃、小猫、祐斗に協力してもらったの」

 

ふーん、道理でこの3人がいたわけだ。まあ、本当に怪奇現象を調べるなら私らだけで行かせるわけないもんな。

 

「じゃ、じゃあ部長。ピアノが勝手に鳴ったり、ベートーベンの目が光っていたりしたのは?」

 

「悪魔の力―――魔力よ。または私たちが使役してる使い魔を使ったりして怪奇現象を演出していたの」

 

魔力でそんなことができるのか。なーんだ、本物の幽霊じゃなかったのか。つまんない。いっそのことゴースト屋敷になっていれば、少しは面白味があると思ったのにな。

 

でも、私もやろうと思えば、アーシアを脅かすぐらいのことはできるかもしれないな。

 

「どう? 怖かった? それとも楽しかった?」

 

リアスが私たちに感想を求めてくる。答えたほうがいいのか?

 

「怖かったというか、驚きの連続だったというか、結果的に楽しかったともいうのかな?」

 

「こ、怖かったですけど、イッセーさんやサクラさん、リリーさんとの深夜の校内探検は楽しかったですぅ」

 

「・・・一言で言うなら疲れた。コイツらがギャーギャー喚くから諌めるのも大変だった。まあ、面倒なことが起きなかったからそれでいいかな」

 

「私はアーシアと一緒にいられるだけで幸せだったですわ。それにしても、小猫ちゃんに人体模型の演出ができるのは驚きでしたわ」

 

それぞれが各々の感想を言う。私のは我ながら酷いな。

 

するとイッセーがこんな話をし出す。

 

「ところで3階の女子トイレで聖水被ったの誰ですか? ダメージとか大丈夫なんすか?」

 

「・・・えっ? 誰かその仕掛けしたかしら? 祐斗、知ってる?」

 

兵藤がリアスに訪ねるも、リアスが手に顎を当てて考え始め、祐斗に振ってみる。まあ、分からないのも無理は無いな。

 

「おかしいですね・・・。イッセーくんが音楽室かプールに来るまでは、何も起こらないはずですが・・・。小猫ちゃん、分かる?」

 

険しい顔をした祐斗も分からないようで、小猫ちゃんに振る。だって、あのトイレの中にいたのは・・・。

 

「・・・いいえ。イッセー先輩、何かいたんですか?」

 

小猫も分からないので、兵藤へと戻る。

 

「え”っ・・・」

 

「じゃ、じゃあ、赤い紙青い紙と言われていたのは・・・」

 

引き攣ったような声を出す兵藤とアーシア。そして2人は顔を見合わせながら言った。

 

「「本物のお化け!?」」

 

「みたいだな。まあ、オレとリリーは気付いてたけどな」

 

「女子トイレで頭痛が酷くてね。アタシ、倒れそうになったわ」

 

そういえば、リリーは幼いころから霊感が激しくて頭痛の度合いによっては善良な霊と悪霊の見分けが着くんだったな。よく泣いていたのを私が塩を持ってくるなどして、慰めたりしたこともあったんだっけな。

 

「あらあら、本物のお化けを聖水で倒してしまったということでしょうか」

 

「やるわね、アーシア。どこから入ってきたか分からないけれど、悪いお化けを倒したようね。さすが、私の眷属だわ」

 

リアスがアーシアのことを称賛するが、アーシアは道具を持ってきただけで倒したわけじゃないんだよな。

 

「い、いえ、ゴーストさんを倒したのは私ではなく―――」

 

「私ですわ。女子トイレに男の霊が憑りついてるもんだから、腹が立って勢いで聖水投げちゃったんですわ」

 

「ああ、そうなの?」

 

するとリリーがアーシアのことをジト目で見る。

 

「っていうか、何でアンタは悪霊だって気付かないのよ? 同じ元・悪魔祓い(エクソシスト)なのに・・・」

 

「そ、それは・・・あまり怖くてそういうことを考えることができなかったというか・・・」

 

アーシアは苦笑しながら言う。私も元・悪魔祓いとして気になるとこではあるな。

 

「深夜の悪魔祓い・・・2人とも、さすがは元・シスターです」

 

「・・・・・・・・・」

 

「あっ・・・えっと、よく分かりませんけど、今日楽しかったのは本当です」

 

アーシアは照れたように頬を染めるが、リリーはそれを聞いて顔を伏せ目の色が見えないようにしている。

 

分かってるさ。私だってそういう肩書は捨てたいくらいなんだ。

 

アーシアはまだ何も知らないんだ。だから、あんなに明るく振る舞えるのさ。

 

「そうだな。七不思議巡りっていうのも悪くないかも」

 

兵藤が口元に笑みを浮かべて言った。最後の表情が嫌らしいかったのが気になるけどな。

 

リリーはいまだに黙ったままだ。さっきの小猫の言葉が気になるのだろうか。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・リリーさん?」

 

「そ、そうですわよね! 楽しいのが一番ですわよね! うんうん、アーシア♪」

 

「あっ、きゃっ。リ、リリーさん・・・」

 

無理して振る舞ってるようにも見える。声を聞けば分かる。明らかに振る舞ってる人の声だ。

 

アーシアに抱き着いて誤魔化そうとしてるのも見え見えだ。機関の奴らから見ればみんな分かる。

 

だが、私は敢えて首を突っ込まないようにする。だってそれが触れられたくない過去だから。私だって自分の過去に触って欲しくなんかない。

 

「疲れるのはごめんなんだけど。でもまあ、友人と探検巡りなら悪くはないかな」

 

この言葉が嘘かどうかは他者の判断にお任せするとする。もう、言うのも面倒臭い。

 

「じゃあ、せっかくプールにいることだし、最後にみんなでひと泳ぎして帰りましょうか」

 

この時間では警備員に見つかると怒られるだろうな。そうなるといろいろ面倒だし。

 

何度も言ったが、私は泳がないよ。泳ぐより寝てた方がずっといい。

 

「イッセー。私の水着、みたい? 結構大胆なのよ」

 

「どひゃあ!! もちろんです!!」

 

「もうイッセーさんっ!! 今日はエッチな顔ばかりですよっ!!」

 

「全く、これだから男は・・・」

 

後日、兵藤は小猫に制裁を喰らったとか・・・? まあ、コイツのやることは自業自得だからあれだけどな。

 

私はただ単にみんながじゃれ合っているのを見ているだけだ。本当に面白味もないな。

 

・・・まあ、こういうのを見ているのも悪くは無いのかな。

 

もう少し無垢だったあの頃に戻れたらな。もっと楽しく笑っていられるんだろうけど。

 

こうして、深夜の駒王七不思議は終わりを告げた。

 

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