極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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番外編3「恐怖の合コン」

兵藤一誠です。それは、ある日の休み時間のことだった。

 

突然、俺の悪友の松田と元浜が俺の席に来やがったんだ。それはもう妙に諂うような感じで。

 

「兵藤殿! 一つ、ご相談があるのですが」

 

「っ、何だよ、松田、元浜」

 

「今日は俺と松田で兵藤氏に頼みごとがあって馳せ参じたのだ」

 

ああ・・・嫌な予感しかしねぇな・・・。

 

また、楓子ちゃんに会いに来たいとか、エロエロなグッズを買いに行くのが恥ずかしいから一緒に来てくれとか、そういうんじゃないだろうな。

 

そんなことを思いつつも、俺はこいつらの話に耳を傾けてやることにする。

 

「で、何だよ? 相談で頼みごとってさ」

 

すると松田が顔の前で手を合わせながら言った。所謂、お願いのポーズだな。

 

「イッセー、一生のお願いだ! 合コンをセッティングしてくれ!!」

 

「ご、合コン!? ・・・何だよ、急に。何で俺に?」

 

こいつらはいっつも唐突に俺に頼みやがる。前だってこんな風に言われて、せっかく女を紹介してやったのに、猛烈に怒りやがったんだもんなぁ。

 

そう返すと元浜が険しい顔をし始めた。

 

「何故? と問われますか、兵藤氏!!」

 

「そうだぞ、イッセー! お前、オカルト研究部に入部したんだよな? だったら、あの美少女軍団と仲良くなったはずだ!! 家じゃ、アーシアちゃんともイチャイチャしてんだろっ!?」

 

いや、イチャイチャしているわけじゃねぇけど・・・。まあ、それに近いものはあるからか否定はできないな。

 

「まあ、部長や朱乃さんとは仲良くしてもらってるよ。サクラとは友達付き合いしてるし、アーシアとも同居してるし、リリーちゃんとは・・・うーん。部活外ではたまにエレンさんとも会話はしてるしな」

 

リリーちゃんは一方的に俺のことは嫌ってるから仲良くしてるとは言い難いし、エレンさんとも会話はするけど何か距離があるように感じるんだよな。

 

まあ、こんなことを話したところでなあ・・・。

 

「それがどうして合コンに繋がるんだ?」

 

「BA☆KA☆YA☆ROッ!!!」

 

バシッ!!

 

「がぁっ!? いってぇーな! 何しやがる!?」

 

松田が突然、俺の頭に張り手を食らわせてきやがった。何なんだよ!?

 

すると突然、松田は涙を流しながら俺に訴え始めた。泣いたって気持ち悪さは変わんねえな、コイツ。

 

「そんな子に育てた覚えはないッ!! お前ばっかり美少女と戯れるなんて!! 絶対に間違ってるッ!!」

 

「お前に育てられた覚えもねえよ!! ・・・要するに俺が羨ましいから、部員との出会いを用意しろってことか?」

 

明らかに嫉妬心が丸出しの松田に、俺は正解を言ってみた。

 

「呑み込みが早くて助かるぞ、我が友よ。そういうことだ。俺たちはお前の美少女フラグポイントの恩恵に、少しでも預かろうと思ったのだぁ!!」

 

「そんなわけで頼むよ、イッセー!! マジでマジで!! オカルト研究部のみんなと少しカラオケをするだけでもいいからさあ!!」

 

そして松田は教室の地面に頭を擦りつけながら、情けなく俺に懇願してきた。

 

「お願いします、イッセー様!! 『紳士の円盤』も新しいのが出たらソッコー貸すからさあッ!!」

 

それに便乗するかのように、元浜も土下座をし始めた。

 

「俺からも頼む、イッセー!! このままでは俺は、黒魔術を死ぬ気で覚えて!! 終生、お前を呪い続けなければいけなくなるんだぞぉッ!!」

 

「っ、無茶苦茶だな、お前ら・・・」

 

俺は嫌そうな、いや呆れたような顔をしてこの2人を見る。ああ、面倒臭ぇな・・・。

 

でもここまで必死に懇願しているんだし、まあ腐っても俺の友達だしな。断る理由は無いと思うな。

 

まあ・・・断ったらそれはそれで面倒臭ぇことになりかねないしな・・・。元浜は黒魔術を本気でやりそうだし、ここは素直に了承しておくか。それに俺も・・・。

 

「・・・分かったよ。とりあえず、みんなに声だけはかけてみる。俺も合コンに興味はあるからな」

 

「マジかよ!? イッセー!! うひょひょひょひょ!! さすが、兵藤先生だぜ!!」

 

「先生の心の広さには、驚かされるばかりだぁ!! ああ、肩は凝っておられませんかぁ?」

 

「お飲み物も買ってきますぞぉ! 何でも命じてくだされ!!」

 

・・・ったく、調子のいい奴らだな。取って付けたようなことも言いやがって。

 

まあ、こうは言ったものの、俺も合コンは一度ぐらいはしてみたいと思っていた。グフフ、王様ゲームとかしてみたいんだよなぁ。

 

へへへ、きっとさぁ、こういうことが・・・。

 

『・・・私が王様です。3番の人が5番の人とポッキーゲームです』

 

『あら。私、3番だわ』

 

『俺、5番です! 部長!』

 

俺と部長は番号に、選ばれポッキーゲームを命令される。

 

『分かったわ。さあイッセー、ポッキーを、銜えて頂戴。私と・・・』

 

お互いにポッキーを銜え、食べ合いながら、顔が近づいていき、そして・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

そう考えているだけで、俺の胸の鼓動が高鳴っていく。

 

・・・部長とポッキーゲーム、部長とポッキーゲーム部長とポッキーゲームッ!!!!

 

部長とそのままキスなんてことも、あり得るよなぁ・・・!! あってもアリな雰囲気のはずだよなぁ・・・フフフフフ!!

 

俺は決意した。合コンをやろう!!

 

「よっしゃぁー!! 合コンしようぜ!!」

 

「「おおー!!」」

 

ワクワクドキドキの興奮を残したまま、こうして休み時間の会はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

風花桜だ。今は放課後。私はオカルト研究部の部室にいて、ソファの上で昼寝をしていた。

 

私以外には、小猫がいたかな。まあ、誰がいようと邪魔されなければどうでもいいけど。

 

アーシアは片瀬と村山ら女子生徒と一緒に連れられてどこかへと出かけていったし、副部長の姫島は部活動の書類を提出してくるといって生徒会へと行っていて部室にはいない。

 

リリーはエレンに連れて行かれて、今は上層部の連中と会っているところだろう。そのときの泣きそうな表情がある意味、滑稽にも見えた。

 

木場は剣道部の助っ人を頼まれていて、別の場所へと向かっている。剣技に関しては戦闘でも有能だからな、アイツは。

 

なので今回、この部室にいるのは3人だけなのだ。以上、捕捉終わり。

 

私は静かに誰にも邪魔されないような時を過ごしている。向かいのソファに座って黙々と私の手作りのお菓子を食べている小猫も、基本的には無口だから私ともほとんど会話は交わさない。だからといって、別に気まずいという感じはしないけど。

 

「・・・サクラ先輩」

 

「・・・ん?」

 

「・・・今日のケーキはおいしいです」

 

「・・・そうか。ソイツはよかったな」

 

・・・こんな感じ。必要最低限の会話しか交わすことは無い。話すことなんか何もないしな。

 

こうしてこの空間は正常に保たれているのだ。ここに誰かが介入するものなら、この空間は崩壊せざるを得ない。

 

と、部室の扉が開けられ、胸フェチの騒がしい友人が中へと入ってきた。

 

「ちーっす。・・・あれ? 小猫ちゃんとサクラだけ?」

 

「・・・アーシア先輩と朱乃先輩は別の用事があるのでここにいませんよ」

 

「だぁーっ! マジかよ、小猫ちゃん!!」

 

頭を抱えながら唸る兵藤。女性が少ないからって嘆くこともないだろうに。木場も今日は来てないんだから、むしろラッキーだと思うんだけどな。

 

すると、兵藤が私たちに背を向けて何やらブツブツと言っているのが聞こえる。

 

「俺とバカ2人だから、最低でも女子を3人集めないといけないんだよなぁ・・・」

 

何をブツブツ言ってるんだ、コイツは? 女子が3人って何だよ?

 

興味は無いけどモヤモヤしたので、立ち上がって兵藤に訊ねてみることにした。

 

「・・・何かオレらに用事でもあったのか?」

 

「ああ、そうなんだ。えっと・・・・・・」

 

『小猫ちゃんとサクラを誘っても、来てくれるのだろうか?』

 

兵藤はまたこそこそとし始めた。イライラするな・・・。

 

その言葉を代弁するかのように、小猫が怪訝そうな顔で兵藤に訊ねた。

 

「・・・何をブツブツと言ってるんですか?」

 

ギクリとなった兵藤が意を決したのか、こちらを振り向いてこう言ってきた。

 

「・・・ねえ、小猫ちゃん、サクラ。合コンとか、興味ある?」

 

「ありません」

 

「あるわけないだろ」

 

「即否定!! さすがです、小猫様、サクラ様!」

 

・・・珍しく小猫とハモったな。今日は雪でも降るんじゃないのか?

 

合コンだと? 何でそんな頭痛のするような会をしなくてはいけないんだ? 開くヤツはトチ狂ってるにも程がある。

 

『参ったな・・・。夕方の6時に駅前のカラオケボックスに合流予定なんだぞ・・・』

 

またブツブツ言ってるし。イライラするからやめてくんないかな? ハッキリと物を言わないヤツは嫌いだ。

 

とそこに、ストロベリーブロンドの先輩が話に入ってきた。

 

「あら、イッセー。どうかしたの?」

 

「部長!? いらしたんですか? アーシアと朱乃さんと一緒に用事があると思ってました」

 

「私は暇よ」

 

さっきから、私たちのほうに背を向けて机の方に座ってたんだけどな。兵藤は鈍いな。

 

「それで、合コン、っていうのは何かしら?」

 

・・・箱入り娘は合コンなんかしたことはないか。それもそうだ。お嬢様が普通の生活なんか経験するわけがないしな。

 

私も参加したことはあったけど、嫌らしい男共に嫌気が差して途中で帰ってしまったことがあったな。

 

「えっと、合コンというのは男女が仲良くワイワイやるような、そんな感じです・・・」

 

兵藤が説明をするけど、ざっくりし過ぎてるな。まあ、大方間違ってはいないけど。

 

「聞いた感じだと、楽しそうね」

 

「あの・・・部長も、合コン来ますか?」

 

リアスは何だか興味を示しているようだけど、兵藤がダメ元でお願いしてみる。すると・・・。

 

「いいわよ。ちょうど退屈していたところだったし」

 

「本当ですか!? ありがとうございます、部長!!」

 

兵藤がリアスに頭を下げると、小猫が口を開いた。

 

「・・・部長が行くなら私も行きます。ご飯を食べるだけならいいですし、何よりイッセー先輩が部長にスケベなことをしないか心配なので」

 

「うっ・・・何か引っ掛かるようなこと言ってるけど、ありがとう小猫ちゃん」

 

小猫は妙に鋭いな。私も同じことを考えていたところだ。今日は槍が降りそうだな。

 

・・・でも、私の解答とは一致しなかった。

 

「オレは行かないぞ」

 

「えっ!?」

 

「何で静かにできないところに行かないといけないんだ? 騒がしいのは嫌いだ」

 

きっぱりと言ってやった。そして、ソファへと座り込んで腕を組む。

 

そんな私の前に兵藤がしゃがみ込んで、顔の前で手を合わせる。

 

「なあ、頼むよ、サクラ! あと1人、あと1人さえいれば十分なんだよ! 別に無理と話してくれなくてもいいから、人数合わせで合コンに参加してくれ!」

 

「・・・嫌だ」

 

合コンに前科のある私にとっては、どんなにお願いされても死んでも嫌だった。行ったってメリットなんかないだろ。

 

そっぽを向いた私に兵藤が土下座をしてくる。

 

「友人として一生のお願いだ、サクラ!! 今度、カラオケボックスのきつねうどんでもショートケーキでも頼めば、奢ってやるからさ!! 今度、うどんやスイーツ食べ放題の店に行ってもいい! だから、頼む、サクラ様!! サクラ大先生様!!」

 

・・・煽てられてるのはともかく。きつねうどん、ショートケーキ、食べ放題か・・・。まあ、それなら・・・私にもメリットはあるな。

 

それにカラオケもあるみたいだし、飽きたら歌っていればいいだけの話だな。・・・疲れるけど。

 

「・・・分かった。ただし、金はお前に請求するからな。高くても文句言うなよ」

 

「!! ありがとうございます、サクラ様!! それと・・・」

 

「・・・何だよ?」

 

「せっかくだから、サクラの周りの人でも頼める人がいたら合コンに参加させてやってくれないかな?」

 

・・・頼む。この私が? そんなことしたら、余計に騒がしくなって私が不愉快になりそうな気がするんだけどな。

 

まあ、コイツが奢ってくれるんだし、断る理由もないしな。

 

私はスマートフォンを取り出して、知り合いの何人かに電話を掛けてみた。

 

こうして、兵藤が幹事を務める合コンが始まるわけで、私も無理矢理参加させられることになったのだが・・・。

 

合コンというものが、面子次第であんなに面白いものになろうとは、兵藤も思ってもみなかったんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

『カンパーイ!!!』

 

夕方6時○分頃、駅前のカラオケボックス内にて。その広い一室のどこかで、今まさに合コンが始まろうとしていた。

 

「じゃあ、早速自己紹介を」

 

イッセーの一言で、参加者が自分のことを紹介し始める。参加者は正確には全部で12いる。まず、紹介するのは・・・。

 

「ごきげんよう、皆さん。リアス・グレモリーです。今日は合コンを楽しみましょう。カラオケは初めてだから楽しみだわ。こちらは後輩の小猫です」

 

赤い髪の女性であるリアス・グレモリーが社交辞令で軽く自己紹介をした後、隣にいる後輩の塔城小猫を紹介する。

 

「・・・どうも。今日はご飯だけを食べに来ました」

 

(部長が参加してくれただけでもありがてぇ! 小猫ちゃんもご飯を食べるだけならばと、カラオケボックスに来てくれた!)

 

イッセーは心の中で感謝の声を表した。

 

次に隣にいた着物姿の女性が自己紹介をする。

 

「・・・風花桜だ。どこかの莫迦な友人に誘われて今回はやってきた。まあ、丁重にことが進めるように頼むよ。こっちは私のお莫迦なクラスメイトの赤崎春香だ」

 

サクラは面倒臭そうに自己紹介をすると、隣にいる相手に指を差す。

 

「ちょっとサクラちゃん!! あの赤い髪のお姉さんとの待遇に違いがあるんだけど!? ・・・えっと、どうもグーテンモルゲン! 赤崎春香です! ハルカって呼んでね!」

 

(サクラも女の子の友人を連れてきてくれたしな。これはこれで合コンとしては頼もしいぜ!)

 

またも心の中で感謝の言葉を紡いだ後、松田の肩をポンポンと叩く。

 

「ほら。松田、元浜、約束通り部員と女性陣を連れて来たぜ。ありがたく思えよな!」

 

そう言うイッセーではあったが、松田と元浜の顔はどこか浮かない様子だった。

 

「・・・いや・・・リアス先輩と小猫ちゃん、サクラ、ハルカちゃんはいいんだけどよ・・・そ、そそそ、そちらの方々は?」

 

松田は部員と美少女がいるのはまだいい。でも、その先にいる奇抜な参加者が気になって仕方がないようだ。

 

次に巷で大人気の魔法少女のコスプレをしている『美少女』の番である。

 

「はーい♪ ミ~ルたんにょ! お久しぶりだにょ! また松田氏と元浜氏と合コンができて、うれしいにょ! 今日も魔法世界セラピーニョについて語れたら、さ~いわ~いにょ♪」

 

ミルたんと呼ぶ『美少女』はむちむちの体をボディビルディングしながら自己紹介をした。

 

このお久しぶりというのは、松田と元浜は以前イッセーに紹介されたときに謎のコスプレの会に行ったことがある。たくさんの『美少女』たちに囲まれて、それはもう死んでもよかったと言っていた。マイナス的な意味で。

 

「またこの剛力無双っぽいッ! 世紀末覇者じゃないですかッ、イッセーくんッ!?」

 

元浜がイッセーの胸ぐらを掴んで首を絞め上げようとする。

 

「お、落ち着け、元浜! 彼は、いや彼女は男子枠じゃない! 女子枠なんだ!」

 

「余計問題だわッ! バカかッ!? あれのどこか女子に見えるんだよッ!? お前の目は、俺たちと別次元の風景が見えてんのか!? 心なしから、この前会ったときよりも二の腕の筋肉が一回り大きくなってる気がするんですけど!? 魔法とか、全然関係ない存在だろ、絶対に!!」

 

抗議の声を上げてくる松田。イッセーは元浜の掴んでいる手を引き剥がすと諌めようとする。

 

「待て待て! ほら、まだ紹介が済んでいない面子もいるし!」

 

次に日本の鎧を全身に身に纏った人物である。

 

「えっと・・・私、スーザンといいます。こちらが彼氏の堀井くんです」

 

そう言って右手を差す彼女の隣には甲冑姿の人物が座っていた。

 

「はじめまして、みなさん。僕とスーザンは同じ大学に通う大学生です。兵藤くんとリアスさんの紹介で、今日は合コンに参加しようかなと思いまして。よろしくお願いします」

 

まあ、着込んでいるものさえとれば普通の人物なんだろうが、唖然としている松田と元浜にはそんな思考は持ち合わせていなかった。

 

「鎧武者と甲冑騎士って何だそりゃ!? 大学生なの!? そっちの鎧着込んだ子、女の子なのかよ!? 嘘ぉ!? しかも、彼氏彼女のご関係!?」

 

「というよりも、どうやって店内に入り込めた!? どう見ても、全身銃刀法違反じゃないか!! ほらッ!! 武者は帯刀しているし、そっちのナイトはランスを持ってる!!」

 

松田と元浜のツッコミが入る中、元浜に武器のことを指摘された堀井は疑問に答えた。

 

「ああ、これはもしものときの防衛手段です。何かと物騒ですから。ねえ、スーザン・・・」

 

「はい・・・日本刀ぐらいは持たないと何者かに首を跳ねられてしま―――」

 

「刎ねない刎ねない!! むしろこっちのほうが刎ねられるって!!」

 

松田のツッコミが入るが、大方スルーされることに。

 

実はカラオケボックスに入店する際に、リアスとサクラが魔力を使って店員の方々に特殊な暗示をかけて、この2人も入店できるようにしていたのは、また別の話である。

 

さて、次の自己紹介だ。

 

「よっ、ウィルヘルム・ロックハートだ。サクラが何か面白いことをやるっていうから来たんだが、本当に愉快な連中が来てやがんなぁ。まっ、よろしくな!」

 

銀髪のイケメンであるウィルが軽く話す。まあ、紹介するまでもないシキの同僚で、1年上の先輩である。

 

「イッセー、お前どういうつもりだ!? こんなイケメンを連れてくるなんてッ!!」

 

「我らの天敵を連れてくるとか、貴様正気か!? 我々が完全に浮き足立つではないかッ!?」

 

「っ、しょうがねえだろ! あのイケメンはサクラが呼んだんだから、追い返しちまったらサクラが機嫌を損ねてこの合コンがぱあになってしまうかもしれないだろ!!」

 

3人が何だか揉めていると、そこに冷ややかな言動が返ってきた。

 

「おい、オレが連れて来たヤツに不満でもあるっていうのか? 騒ぐのは勝手だけど、頼んだヤツにケチを付けるとぶち殺してやるぞ」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・。

 

「「「す、すいません・・・」」」

 

サクラの気迫に負けて、3人がビクビクしながら謝罪の言葉を口にする。

 

「ほら、最後のヤツ紹介しろよ」

 

「えっ、最後ってどこにいんだよ?」

 

「俺の目には見えないようだが・・・」

 

サクラが急かすように次の自己紹介を催促する。しかし、席には誰にも座っていない。

 

「・・・そこにいるだろ」

 

サクラは溜息を吐くとテーブルの上を指さす。そこにあるのは、スマートフォンだった。

 

スマートフォンは画面が付くと、電子音で会話をし始めた。

 

「どうも~♪ シキゲルゲの紹介できた謎のスマートフォン・スマッシー(仮)でぇーす! 今日もいろんな嫁さんの顔をしかと見ていきたいと思うザンショ!」

 

仮にスマホさんと呼んでおくが、その自己紹介にサクラが顔を顰め、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

 

「もはや人ですらねえじゃねえかッ!! 何で合コンにスマートフォン!? もはや人ですらカウントできねえよ!! 参加者でもねえだろうがッ!! それにスマッシーって何!? ネッシーのつもりなのか!?」

 

「しかもあのスマートフォン、どういう原理で動いているのだ!? 先程からブルブルと勝手に動いたり、タップダンスを踊ったりしているぞ!! 俺たちは幻覚でも見ているのか!?」

 

もはや唖然を通り越して、怒りすら覚えているバカ2人。もう何が何だかわからない。

 

「いや、アルカリ電池で動いているでザマス! いつでも動けるように、元気に取り換えられているでザマス~」

 

「いやいやいや!! スマートフォンは普通動かないから!! むしろ俺たちの心臓が止まっちゃう―――って、ちょっと待てよ!」

 

松田はここで血の涙を流しながらイッセーの胸ぐらを掴んだ。

 

「イッセー、テメェ!! まさか! これが合コンのメンバーだってのか!? 姫島先輩は!? アーシアちゃんは!?」

 

「リリーちゃんとエレンさんはどうしたというのだ!?」

 

元浜も一緒になって抗議するが、イッセーとサクラからは非情な言動しか来なかった。

 

「2人とも予定があって来られなかったんだ!」

 

アーシアは未だに女性の友人たちとどこかへ出かけているし、朱乃は悪魔家業の別件で誘うことができなかった。

 

「電話はしてみたけど、2人とも手が離せないらしい。楓子も掛け持ちのバイトがあって、今日は無理だって言ってたな」

 

リリーとエレンは上層部の会議が長引いて、無理だという電話が来た。

 

楓子は一緒にバイトをしているサクラの秘密の友人である。確か今日のバイトはオフだったはずだから電話して合コンに誘ってみたのだが、間の悪いことに別のバイトのシフトに出てくれと言われてしまい、断られたのだ。

 

「野郎6人に女の子6人と、ちょうどいい数合わせじゃないか」

 

確かに人数的にはちょうどいいが、数だけを捉えていても松田と元浜は納得しない。

 

「いやいや、見ろよ!! 鎧武者と甲冑騎士に、銀髪のイケメン野郎に、変なスマートフォンと、魔法少女に偽装している格闘家じゃないか!! 武芸者が4人と変質者がいるんだぞ!! 合コンじゃなくて、剛気の剛に魂と書いて、『剛魂』と呼ばれる集会に間違って集まったんじゃないのか!?」

 

「松田の言う通りだッ! 俺は色物プロレスを見に来たんじゃないんだぞ!!」

 

これ以上喋らせると状況がエスカレートして最悪発狂しかねないので、イッセーが2人を諌めようとする。

 

「落ち着け、2人とも! 合コンはまだ始まったばかりだ!」

 

そう言うイッセーの前にいる松田と元浜の顔色が変わった。

 

「・・・松田、俺たちにはまだ、アレがある!」

 

「あっ、そうだった! 大事なことを忘れるところだった、グフフフ」

 

松田が女性の裸でも見たかのような嫌らしい笑いをすると、こう宣言する。

 

「王様ゲェイムッ! やろうぜ、みんな!」

 

かくして、ここからが本当の合コンの開始だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王様ゲーム・・・それは番号のくじを参加者に全員に引かせ、『王』というくじを引いたものが他の番号の人に命令ができる楽しいゲームである。

 

例えば、2番の人が4番の人にしっぺをするとか、3番が『王』の肩を揉むとか。

 

そして、『王』の命令は絶対に従わなければならないのだ。合コンでは定番のゲームになっているとか。

 

以上、説明終わり。

 

「俺と松田でくじを作ってきたのだ!」

 

「ほらほら~、この割り箸にぃ~、番号と王が書かれているから~みんなどんどん取ってってくれ♪」

 

笑顔でくじを取り出し、説明をする。そして、リアスと小猫にくじを差し出す。

 

「あら、王様ゲームだなんて私、初めてだわ。楽しめそうね」

 

リアスは笑顔でくじを引いた。

 

「・・・スケベな命令なら拒否しますけど」

 

小猫は無表情でくじを引いた。王様の命令は絶対である。

 

「サクラとハルカちゃんもどうぞ♪」

 

「・・・まあ、このままいても退屈だし」

 

感情の籠らない声を出しながらくじを引く。

 

「わーい、王様ゲームって大好き! 当たって~王様~!」

 

ハルカはワクワクしながらくじを引いた。

 

こうして全員にくじが回り、松田は最後にイッセーにまだ引いていないくじを差し出す。

 

「ほら、イッセーも取れよ!」

 

「無論だ! 当たれよ、部長との王様ゲーム!!」

 

どうしようもなく熱い思いを秘めながら、イッセーもくじを引いた。

 

「よし! 全員に行渡ったな!」

 

そして、愉しい王様ゲームが始まる。

 

「王様の命令は絶対でぇす! 王様、だーれだ!?」

 

松田のこの掛け声と共に、全員は割り箸のくじの番号を見る。そして、手を挙げるものがいた。

 

「あっ、私です・・・」

 

「王様はスーザンか! じゃあ、命令してよ!」

 

「で、では・・・」

 

スーザンは咳払いをした後に、命令を述べる。

 

「5番の方が・・・3番の方の切腹を介錯してください」

 

その命令に、顔を青くして絶句したものが約1名いた。

 

「お、おいマジかよ!? 3番俺なんだけど!? 俺、何でカラオケボックスで腹を斬らなきゃいけない状況になってんだよ!?」

 

3番を引いたのは、松田だった。でも、3番の人は腹を斬らなければいけない上に、首を打ち落されなくてはいけないのだ。

 

「はーい♪ ミルたんが5番だにょ! 介錯役になったにょ!」

 

「では・・・私が持参したこの名刀・鬼神丸国重にて、あの方の首を刎ねてくださいね・・・」

 

そういえば、スーザンは都合よく刀を持っていたのだ。ミルたんにその刀を渡したとして、このカラオケボックスに何本刀を持ち込んでいるのだろうか。

 

松田はスーザンがミルたんに刀を渡している姿を見て、青い顔を更に青くした。

 

「いやいやいや!! 俺死ぬの!? 首取られるの!?」

 

「大丈夫にょ。首が胴体とおさらばしても、ミルたんが復活の呪文で直してあげるにょ」

 

その復活の呪文は中二病的な台詞としか言いようがない。人間界だけの条理でいうのであれば、死んだ人間は生き返らないのだ。

 

シキがイッセーの悪魔家業の際に、いろいろとおかしなことを吹き込んだせいでもあるが、ミルたんはすっかり動かされて調子に乗り始めてしまったようだ。

 

「復活の呪文ッ!!?? 今日一番胡散臭い台詞を貰っちゃったよ!? って―――」

 

松田もツッコんでいる場合ではなかった。ミルたんが国重を振り回しながら追いかけてきているのだから。

 

「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!! 誰か助けてぇぇ!!」

 

「待つにょー! 魔法を信じるにょー!」

 

介錯のやり方の欠片も分かっていないミルたんの刀から、松田が泣きながら逃げ回っている。

 

これも女風呂や女子更衣室を覗こうとする、日頃の行いの報いなのか。松田とミルたんはちっともロマンスじゃない鬼ごっこをしながら、カラオケボックスから消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、さあ! 気を取り直して!! 王様ゲームを再開ということで!」

 

松田とミルたんがいなくなり、それを何事も無かったかのように割り箸のくじを差し出す元浜。

 

「松田を捨てたのか、元浜!?」

 

「・・・松田は、いい奴だったよ」

 

戦死したパーティーを想うかのような優しい笑顔をする元浜。もう、見捨てたも同然の行為ではあるが。

 

「さあ、お前もくじを引け! もしかしたら、リアス先輩と小猫ちゃん、サクラやハルカちゃんとムフフなことができるかもしれないんだぞ!! 松田とミルたんが脱落したことによって、確率は更に高くなったんだ!」

 

「た、確かにお前の言う通りかもしれないけど・・・!」

 

(こんなの馬鹿げていると分かっているのに、俺はスケベ心を捨てられない!!)

 

スケベ心を闘志に宿した兵藤一誠。覚悟を決めて元浜からくじを引く。

 

「よし! また、みんなに行渡ったな?」

 

脱落者以外の全員がくじを引いたところで2回戦を開始する。

 

「王様、だーれだー?」

 

元浜の掛け声と共に、全員は割り箸のくじの番号を見る。そして、手を挙げるものがいた。

 

「あら、私だわ」

 

「部長ですか! 命令をどうぞ!!」

 

「ええ。じゃあそうね・・・」

 

悪魔の世界でも王であるリアス・グレモリーが顎に手を当てて考えた後、これまたとんでもない命令が飛び出してきた。

 

「1番の人と3番の人は、今から一緒に日光猿軍団と戦ってきて頂戴」

 

この命令を聞いて、狼狽えたのが約1名。

 

「おっ、お猿軍団と戦ってくるんですか!? 俺、くじが1番なんですが・・・」

 

そして、もう一人は何だか冷静だった。

 

「おや? 僕が3番ってことは、日光に赴かなければいけないのかな?」

 

甲冑騎士の大学生・堀井が3番のくじだったようだ。

 

命令した相手が分かるとリアスは諭吉が書かれている札束をテーブルの上に差し出した。

 

「はい、日光までのタクシー代。50万円あれば足りるわよね? 残りはお猿さんと戦うための軍資金にしていいわ」

 

その様子を見て、酷薄な笑みを浮かべたサクラがどこからか日本刀を取り出してテーブルへと置いた。

 

「ランスだけじゃ武器は足りないだろ? ソイツをやるよ。猿を斬り殺すんだったら、バッサリと取れるようにしないとな」

 

「いやいやいや。札束と日本刀とポンと渡されても・・・ってか、何で猿軍団なんですか!? マジで俺は日光に行かなきゃいけないのか? 嘘ですよね・・・?」

 

「いや、行きましょう!」

 

元浜が信じられないといった言葉を返すと、リアスが返答するよりも早く堀井が立ちあがった。

 

「それこそが僕は、真の王様ゲームなんだと思います! 王の命令は絶対ッ!! 外に出てタクシーを拾いましょうか」

 

堀井はランスを高々と上げながら言い、リアスからの軍資金と日本刀を持つ。そして愛するもの、スーザンの両手を手に取る。

 

「スーザン・・・僕は日光でお猿と戦ってくるよ」

 

「クスン・・・堀井くん、絶対に生きて帰ってきてね・・・」

 

「当然だよ。僕は必ず、日光で勝利を掴む!!」

 

堀井はまたランスを高々と上げながら宣言する。そして、元浜の首根っこを掴み引きずりながら部屋を出ていく。

 

「では、行きましょう」

 

「がはっ! 襟首を掴むな! 離せぇぇ!! うわあはぁ! 猿なんかと、戦いたくないぃぃぃ・・・!」

 

ちなみに言うが、王様ゲームは天下を取るゲームではないのだ。ルールを把握していないとこのような事態に陥るのである。

 

盗撮の常習犯・元浜の叫び声も虚しく、二人目の変態は堀井と共に日光へと赴いていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・遂に8人だけになってしまったわね、イッセー。王様ゲーム、思った以上に過酷だわ」

 

「いいえ、王様ゲームって何か課題をもらってコンビで外に戦いに行くゲームじゃありませんからね!! 室内でみんなでキャッキャッウフフして楽しむためのゲームです!!」

 

「・・・もう外枠を越えてる気がするんだが」

 

イッセーのツッコミとサクラの淡々とした言葉が紡ぐ。

 

この現役『(キング)』は単なるお遊びゲームをサバイバルの一種であると勝手に解釈をしてしまっているらしい。だから、日光猿軍団と戦って来いなどというどうやっても1日ではできないことを平然と言ってのけるのだ。

 

「・・・イッセー。現実は厳しいのよ。彼らは生死を掛けた戦いに赴いたのよ」

 

「何でそんな悟ったかのような顔で、そんな訳の分からないことを言ってるんですか、部長~!?」

 

リアスの真面目な顔に、イッセーは頭を抱えるしかなかった。

 

「とりあえず、王様ゲームは続けるぞ。ほら兵藤、くじを引け」

 

言い出しっぺの松田と元浜がいなくなってしまったので、代わりにサクラが進行を務めることになった。

 

(くっ・・・しかし、考えて見れば、ウィルがいることを除けばおいしい思いをすることも増えているはず! 俺は部長や小猫ちゃん、シキやハルカちゃんとニャンニャンなことをするんだい!! 松田、元浜、お前たちの死は無駄にしない!! 俺は今日、大人への階段を上がっていくんだ!! 来い! 来い、いいくじっ!!)

 

2人の散っていった悪友の想いを胸に(死んではいないが)、イッセーはサクラからくじを引く。

 

「みんな、引きましたね!」

 

全員が引いたところで、緊張の3回戦が始まる。

 

「王様、だーれだー!?」

 

イッセーの掛け声と共に、全員は割り箸のくじの番号を見る。そして・・・・・・。

 

「あら。また私だわ」

 

「また部長ですか!?」

 

「じゃあ、命令をするわね」

 

魔王はイッセーを見放したのか。またしても、リアスが王様だ。

 

今度は然程考えもせずに、命令を下す。

 

「2番の人と4番の人は、日光で忍者を捕まえてきて頂戴」

 

「また日光ですか!? どんだけ日光に夢中なんですか、部長は!?」

 

その命令にツッコミを入れたイッセーだが、その後にエロジジイのような電子音も聞こえてきた。

 

「おう、2番だぜベイベー♪」

 

2番だったスマホさんは物凄く喜びながら、着信音をピーヒャララと鳴らした。

 

「ガッテーム、4番です・・・わ、私も日光に行かなければいけないんですか?」

 

大人しめな声のスーザンが4番だったようだ。

 

「・・・スマホ野郎、スーザンに手を出したら叩き割るからな」

 

「俺は彼氏のいるお姉さんに手を出す趣味はないザンショ! むしろ、彼氏の方に手を出したいぐらいだぜイェイ!」

 

「・・・分かってるのか、コイツは?」

 

サクラはスマホさんを睨みながら言うが、ふざけた態度に一層の睨みを強くした。

 

「日光は死と隣り合わせの世界なのよ。スマホさん、スーザンをよろしくね」

 

「綺麗なお姉さんのお願いなら聞いてやらないこともないぜぇい! 行こうぜ、マイハニィー♪」

 

悪ガキのような口調でスマホさんが電子音を発する。

 

「お、王様ゲームって・・・凄いゲームなんですね・・・日光で堀井くんと合流します!! 忍者の首を取ってきますッ!!」

 

スーザンは日本刀を振り回しながら、スマホさんを肩に乗せて日光へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残りはあと6人だな。次は誰が脱落するんだろうな」

 

「おい、サクラ。お前もしかして、王に当たったら脱落者を出そうとしていないか?」

 

「そのつもりだけど、それがどうした?」

 

「どうした?じゃねえよ!! 普通、王様ゲームに脱落者なんか出ないし、こんな状況になるのなんてあり得ないことなんだけど!?」

 

イッセーがツッコむも、シキは軽くスルーした。

 

「王様ゲームってこんなに恐ろしいものだったんだね。うぅ・・・背筋が震えてきちゃったよ・・・」

 

「いやいや、ハルカちゃん! 王様ゲームはもっと家庭的なゲームだから!! こんなに人が減ること自体、ありえないから!!」

 

「・・・風邪でも引いたんじゃないのか。ああ、お前莫迦だからそれはあり得ないか」

 

「酷いっ!! 私だって風邪ぐらい引くよぉ!!」

 

イッセーとハルカがギャーギャー騒いでいる中、サクラは意を介さず目を瞑る。

 

ハルカは馬鹿は風邪を引かないというのは信じていない。そんなことをすると本当の馬鹿に成り下がってしまうからだ。その発想自体、すでにバカだが。

 

「・・・王様ゲームを続けましょう。イッセー先輩、くじを引いてください」

 

(うう・・・何の命令が当てられるのかが怖いけど、それでも俺は部長とポッキーゲームをするんだい!! どうか、どうか俺に運を分けてくれ!! 出でよ! 王様のくじっ!!)

 

イッセーはもう半分やぶれかぶれになって、それでもスケベな気持ちを残したまま割り箸のくじを引いた。

 

「全員、引きましたね! 王様、だーれだー!?」

 

全員が引いたところで、もはやだれそうな4回戦が始まる。

 

イッセーの掛け声と共に、全員は割り箸のくじの番号を見る。そして、遂に・・・。

 

「ん、オレか」

 

「えっ、サクラ!? サクラが王様!?」

 

王のくじを引いたのはシキだった。彼女の口から淡々と命令が告げられる。

 

「・・・じゃあ、1番と4番の人がアマゾンへ行って獰猛な生物を狩ってこい」

 

「日光の次はアマゾン!? アンタら、どんだけ1日じゃクリアできない命令を下すんだよ!?」

 

イッセーのツッコミと同時に、顔を青ざめさせているのが約1名いた。

 

「わ、私、1番なんだけど!? アマゾンに行かなきゃいけないの!?」

 

「俺が4番か・・・まあ、アマゾンの狩猟ぐらいなら楽勝だろ。なあ、ハルカちゃん?」

 

「何で私に振るんですか、ウィル先輩!! 嫌ですよ!! 何でアマゾンでサバイバルをしなくちゃいけないんですか!?」

 

ウィルが後輩の肩をポンと叩き、それに対して冷や汗を垂らしながらハルカが喚く。

 

「おいおい、ハルカ。王様の命令は絶対だろ? ほら、お前の分のパスポートを発効しておいたから、アマゾンへ行ってこい。あと、この日本刀も持っていけ」

 

「いやいや、こんなもん渡されたって私、剣なんか振ったことないし!! パスポートだって絶対偽装だよね!?」

 

「俺が教えてやるから問題ねえよ。頑張って獰猛な生物を捕まえようぜ」

 

「何で王様ゲームで命をかけなきゃいけないんですか!? 私はまだ、死にたくない!!」

 

ハルカがまだ躊躇していたので、サクラはハルカの手を取りながらこう言った。

 

「ハルカ、頑張って捕まえてきたら、俺がその生物で飯を作ってやるよ」

 

「ええ!? ホントに!? サクラちゃんがご飯を食べさせてくれるの!?」

 

「もちろんだ。生きて帰ってきたらな」

 

シキは満面の笑みでそれだけ言うとハルカに背を向けた。

 

「さあ、行ってこい! あっ、ハルカ。パスポートを失くしたら日本に帰ってこれなくなるから気を付けろよ」

 

「分かったよ。サクラちゃん、私は必ず生きて帰ってくるからね」

 

「ああ」

 

「じゃあ、行こうウィル先輩!」

 

「おう! 威勢がいいね!!」

 

ハルカはウィルと一緒にアマゾンへと赴いていった。

 

サクラは2人がいなくなった後、こう思っていた。

 

・・・演技って意外と使えるもんだなーと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうとう4人だけになってしまったわね」

 

「訳分かんねえっすよ!! 何で王様ゲームで脱落者がこんなに出るんだよッ!? しかも、メンバーのうち何人かが日光に行っちまったし、2人はアマゾンへ狩猟に行っちまったしさあ!! 世界旅行ゲームじゃねえか、これ!! 特に日光の何が、部長を掻き立てるんですか!?」

 

イッセーのツッコミは当然のようにスルーして、リアスが割り箸のくじを差し出す。

 

「さあ、くじを引きなさい、イッセー。勝負よ」

 

「勝負ってどういう勝負なんですか!? ええい、ままよ!!」

 

もうヤケクソになったイッセーがくじを引く。

 

「王様、だれだ?」

 

サクラもやる気がなさそうに掛け声をする。そして、遂に・・・。

 

「よっしゃー! 王様を引き当てた!!」

 

「あら・・・イッセーの勝ちなのね。あっ・・・」

 

リアスは残念そうな顔をしたが、手を滑らせてくじを落としてしまった。

 

そのくじをリアスの隣に来たサクラが拾い上げて渡した。もちろん、とんでもないことを言いながら。

 

「・・・落としたぞ、2番のくじ」

 

「ちょ、ちょっと! 何で番号を言うのよ!?」

 

「・・・お前、調子に乗り過ぎてイライラする。こんぐらい妥当だろ」

 

リアスの抗議の声にそっぽを向きながら、一蹴するサクラ。

 

一方のイッセーはサクラが呟いたことによって、リアスに命令できるチャンスがあった。

 

「ほら、兵藤。さっさと命令しろ」

 

「もぉ・・・」

 

サクラが命令を急かす。リアスは無視されて、頬を河豚のように膨らませていた。

 

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。

 

(サクラが部長の番号を教えてくれたな! これは、待ちに待った瞬間!! 遂に部長とポッキーゲームができる!! 松田、元浜、ミルたん、スーザン、堀井くん、ウィル、ハルカちゃん、スマホさん! 散っていったみんなの犠牲は、無駄にしない!!)

 

胸の興奮を抑えつつも、ここまで脱落していったみんなの顔を思い浮かべながら、イッセーは命令を口にする。

 

「2番、部長・・・俺と・・・」

 

「俺と?」

 

「え・・・え・・・っと・・・」

 

ポッキーゲームがしたい、この一言さえ言えればいいのだが、恥ずかしさが邪魔をして言葉が出てこない。

 

しかし、思ったこととは別の単語が口から出てきた。

 

「・・・ひ・・・」

 

「ひ?」

 

「・・・膝枕、してください」

 

・・・ボソボソとした声で、意図とは違う命令が出てしまった。

 

イッセーは地面に膝をついて、床を拳で何度も叩きたくなるような感情に染まった。

 

(言えなかった!! ポッキーゲームしたい、って言えなかったッ!! サクラがせっかく密かにお膳立てしてくれたのに!! 何てヘタレだ、俺はッ!! 肝心なところでいつもそうだ!!!)

 

泣きたくなった。たかがこの一言を言えない自分が嫌いになりそうだった。

 

それを聞いたリアスは特に嫌がった様子はなく、むしろ笑顔だった。

 

「分かったわ、膝枕ね。いらっしゃい。ほら、早く」

 

リアスは自分の膝の上に手をポンポンと叩きながら、イッセーを呼ぶ。

 

「あっ、はい・・・」

 

イッセーは頬を赤らめながら、リアスの隣に来て膝の上に頭を乗せる。

 

「甘えん坊ね、イッセーは。ふふふ」

 

リアスはイッセーの頭を撫でながら言った。これが情愛の深いグレモリーの血なのか。

 

「何かいろいろあったけど、これはこれでいいのかな・・・?」

 

今までの出来事は無かったことにするのは到底無理だとは思うが、最後に日光やアマゾンに飛ばされるよりはマシだろうと思ったイッセーなのだった。

 

そして、蚊張の外であるサクラと小猫はきつねうどんを啜り、からあげを摘みながら、カラオケボックスのメニューを見ながら話していた。

 

「このケーキ美味しそうだな。次はコイツは注文してみるか。小猫、お前もどうだ?」

 

「・・・頂きます」

 

リアスとイッセーのいい雰囲気を邪魔をしない辺りは配慮をしているのか、それとも単にどうでもいいだけなのか。

 

こうして、カラオケボックスでの夜はふけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、日光に赴いた松田と元浜、ハルカは戦士の顔になっていた。

 

まあ、この話は特筆するべきではないことなので、伏せておくことにする。

 

ともかく、リアスとの膝枕をゲットできてご満悦のイッセーなのだった。

 

・・・サクラからのカラオケボックスでの請求が来ることも忘れて・・・。

 

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