極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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あけましておめでとうございます!今年もいい一年になりますように

今年最初の投稿は、第3章となります。

新キャラクターも登場です!



第3章 セイクリッド・アヴェンジャー
第34話「聖剣と桃髪の狩人」


目を開けるとそこは、見覚えのある空間だった。

 

宙に浮いているようで、実際はそうではない私。手で下を触ってみても感触があるし、ちゃんと地面に身体は着いていることが分かる。

 

周囲を見渡せば、そこはいかにも呪いが存在しているとでも言いたげな髑髏が浮かんでは消えると言った世間一般から見れば不気味な空間だろう。まるで数百の魂が血液のように循環しているようだ

 

しかし、私にとってはピリピリとした気を感じつつも、そこは静かにできる居心地のある空間。いっそのこと、ここで生を過ごしてもいいのではないかと思うくらいだ。

 

「フハハハハハ・・・」

 

・・・ここにヤツの存在が無ければの話だけどな。

 

「・・・何だ、お前か」

 

『何だとは随分な対応だな。それにいい加減に我輩のことを名前で呼んだらどうだ』

 

ヤツが私に命令をしてくる。人に頼んでいるとは思えない随分な態度で。

 

面倒臭い・・・何でお前の名前を呼ばなくちゃいけないんだよ。

 

「『お前』で通じてるんだから別にいいだろ。何で変える必要があるんだよ、お前」

 

『・・・これが10年以上も付き合ってる我輩に対しての態度なのか?』

 

「どんな態度であろうとお前との関係が変わるわけでもないだろ」

 

ヤツが不満を漏らしているが、私はそう吐き捨てる。私には関係ない。コイツが苦汁を舐めようが消えようが、私にはどうでもいいことだ。

 

『全く、偉大なる我輩がせっかくお前の頭の中に現れてやったというのに』

 

・・・どんだけ暇なんだよ、お前。スランプ中の画家でもそんなことをしないぞ。

 

私は寝る体勢を崩さぬまま、ヤツの言葉を斬り捨てた。

 

「頼んでない。お前はオレの頭の中に現れずに、ただ使われてるだけありがたいと思ってればいいんだよ」

 

つーか、余計なお世話だ。必要以上に構われるのは嫌いだ。

 

『よく言うわ。年中寝てばかりの堕落した姫如きが』

 

「何が不満なんだよ? フェニックスの、上級悪魔の血を与えてやっただろ」

 

『ふん、獣の、ましてやあんな下品な悪魔の汚れた血など我輩の刃(舌)が腐るわ』

 

「・・・妖魔は獣じゃないのかよ」

 

・・・血に飢えてる獰猛な獣だというのに、その血が欲しいとか意味が分からん。まあ、悪魔の血を吸いたくないというのは分かるが。

 

まあいいけど。コイツの趣味なんかに合わせて考慮する必要はないしな。

 

と思いつつも、私はもう一つの到底あり得そうにない提案をしてみた。

 

「だったら生きている人間を絶望させればいいか?」

 

『他人の絶望に沈む顔か。まあ、悪くはないが、それをやればお前の姉君が制裁しにくるのだろう? よいのか?』

 

「バレなければどうってことはない」

 

そうだ。バレなければ、それは犯罪にも事件にもならない。現場を抑えられなければ何も始まることは無い。

 

ちなみにヤツは人間の骨の一部である頭蓋骨のような顔をしているが、そのまんまである。むしろ骸骨の模型の頭部をそのまま持ってきたんじゃないかと言えるほどに骨だらけだ。

 

ただ違うのは、喋る口が何やら黒く光っているということだけだが、まあその辺についてはツッコまないでおこう。

 

そんな無駄な話は置いておいて・・・。

 

「で、何の用? まさか、くだらない話をするために現れたわけじゃないよな?」

 

『無論だ。お前は最近、やることが温くなったのではないか?』

 

温くなった? 私が?

 

「何を根拠にそんなことを言ってるんだよ」

 

『とぼけるな。お前は悪魔の連中と交わっているのだろう? そのせいでお前の中にある憎しみの心が、あんな下等種族などに関わっているせいで薄まっているように見えるのだよ』

 

「・・・・・・・・・」

 

『まさか、あんな奴らに現を抜かしているわけではあるまいな?』

 

・・・何を莫迦なことを。私の憎しみの心が揺らいでいる? そんなことがあるわけがない。

 

私は、私を拒絶したあの連中の憎しみを忘れたことは無い。それは人間と同じように食事をし、勉強をし、寝そべっているときも同じだ。

 

「莫迦を言うな。アイツらは単にオレの楽しみに利用してるだけだ。仲間だと思ったことは一度も無い。ただの気紛れだ」

 

『どうだかな。いまだに過去の仲間の未練を引きずっている貴殿は、本当は居場所が欲しいだけなのではないか?』

 

・・・・何故その話を持ち出す? 私の思い出したくもない過去を・・・!

 

ヤツは私の心中を抉るかのように、更に言葉を続けた。

 

『あのときのお前の憎しみは最高だった。まるで蟷螂の孵化のように、とてつもない憎しみを溢れさせたのだからな。友人ごっこという戯れの合間にな』

 

・・・うるさい。

 

『お前が友人などという腑抜けたものを作ったときにはどうしようかと思っていたが、お前のその体質柄は我輩の頭の中のシナリオ通りになってくれた。その結果があれだ』

 

うるさい、黙れ。

 

『暴風雨のように荒れ狂い、暴れる姿はまさに極上だった。あのような特別な憎しみを持っていたお前を睨んでいたのは正解だった。あのような下等種族でもお前と我輩のために役に立ってくれたのだからな』

 

黙れ・・・黙れ・・・・!

 

『お前は感謝すべきなのだよ。その死んでくれた下等な人間を―――』

 

「黙れッ!!!」

 

いつまでも戯言を並べるヤツに、私は自分でも普段上げない怒気を張り上げた。

 

「知ったような口を叩くな。これ以上喋るとその顔を叩き割るぞ・・・!」

 

『おお、怖い怖い。そうだ。それだよ。そのままでいろ。その怒りこそが、この我輩を扱うに値するものになりうるのだ』

 

私が鋭く睨みつけてもヤツは全く意に介さず、不敵に笑っているだけだ。

 

『仲間ごっこも大概にしておけ。我輩は本当の「怒り」「憎しみ」「復讐心」を持つ者だけに扱われるに値するのだ。お前がそのような見劣りな態度では困る。この我輩が選んだ人種なのだから』

 

「・・・ふん」

 

選ばれた覚えはない。あんなのは子供だった頃の単なる気の迷いだ。

 

『お前はぶれずにそのままのお前でいればよいのだ。そうすればお前にとっても我輩にとっても優越でいられるのだからな』

 

・・・そんなことはお前に言われなくても分かってるんだよ。私は、私を拒絶したアイツらを許さない。

 

そのような感情の下で、私は生きているのだから。

 

「御託はそれだけか? だったらもう用は済んだだろ。オレの視界から消えろ」

 

『つれないな。昔はもう少し可愛げがあったというのに』

 

「黙れ。さっさと消えろ」

 

『・・・まあよい。腑抜けに陥るなよ、鳳凰の姫君』

 

怒気を強めてそう言うとヤツは私の視界から煙のように姿を消した。私を苛立たせて、本当にムカつくヤツだ。でも、そんなのは分かってる。

 

ヤツが消えたのを確認した私は横になって目を瞑る。

 

私に仲間などいない。私はいつだって一人だ。一人で生きてきたのだから。

 

私の邪魔をする者は精神だろうと、敵でなかろうと容赦はしない。ましてや、あんな偽りの平和を偶像する犬共なんかに・・・。

 

全ては私のために・・・全てはこの汚れきった世界のために・・・。

 

そう考えているうちに、不愉快な思いを抱いた心地よい空間はフェードアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

私は、現在兵藤の家にお邪魔させてもらっている。本来ならばグレモリーによる部活動が始まる予定だったのだが・・・。

 

「で、こっちが小学生の頃のイッセーなのよー」

 

「あらあら、全裸で海に」

 

「ちょっと朱乃さん! 母さんも見せんなよ!!」

 

・・・何故アルバムの鑑賞会になっているのだろうか。しかも、こんな莫迦の面白くもなんともない写真など。

 

小学生から生まれたままの姿で海に入るとは。コイツは遥かに続くものを風呂だと勘違いしていたのだろうか。

 

「アンタって小さい頃から節操無かったのね。正直、引くわ~」

 

「こ、これと変態は関係ないよ、リリーちゃん!!」

 

リリーが兵藤を蔑むかのような目で見ながら言う。私も今回ばかりは兵藤に同感。

 

幼い頃にやることなど、一時の気の迷いだ。何年も経てばそれが恥ずかしいことだと思い知らされる羽目になるのだから。

 

「・・・イッセー先輩の赤裸々な過去」

 

「小猫ちゃんも見ないでぇぇぇぇぇぇ!!」

 

兵藤が顔を真っ赤にしながら叫ぶ。後輩にここまで舐められるとか、本当に先輩としての威厳の欠片もないな。

 

と、私はリリーがアルバムをキョロキョロしているのを見て声を掛ける。

 

「おい。お前、アイツのことが嫌いなんじゃなかったのか?」

 

「当たり前でしょ。それがどうかしたの?」

 

「その割にはやけにアイツのアルバムを真剣に見てないか?」

 

「うん。アイツの弱みを握れるものがないかなぁーっと思って」

 

ああ。平常運転だな。コイツは全くブレない。っていうか、弱みなんか握ってどうすんだよ?

 

そもそも、兵藤嫌いのリリーが何故ここにいるのか。もちろん、アーシアとグレモリーの監視だ。好きでここにいるわけじゃない。

 

私一人で十分なはずなのに、何で来たのかを聞いたところ―――。

 

『別に来たくて来てるわけじゃないもん! アーシアに変な虫が寄りつかないか心配なだけなんだからね!』

 

・・・明らかに素直になっていないのが垣間見えるが、それ以上言うと面倒くさそうなので受け流しておいた。とにかくそういうことだ。

 

その件に関しては私も同じ理由だ。上からの命令が無ければ、誰がこんな『王』なんかを監視なんかしてやるものか。よって、好きでここにいるわけではないのだ。

 

それにこの女は最近、この兵藤の家にホームステイをするようになったらしい。半ば強引に家へと押し入って、一緒のベッドで寝ていることもあるらしいな。当然、兵藤の両親も公認済みだ。何を使ったかは知りたくもないけどな。

 

まあ、そのほうが分散しなくても済むからその分、監視は楽に行えるのだが、それはそれで何だかムカつく気分だ。上の思うつぼだとでもされているように任務が下ったのだからな。

 

「小さいイッセー・・・」

 

その『王』は、小さい頃の兵藤の写真をマジマジと見ている。頬を真っ赤に染めているようだが、欲情したのか? まあ、悪魔だから分からなくもないけど。

 

「・・・幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー・・・」

 

何やらぶつぶつと呟き始めたが、気でも狂ったのか? 変質者みたいで、正直引くな。気持ち悪い。

 

「私もなんとなく、部長さんの気持ちが分かります!」

 

「そう、あなたにも分かるのね。嬉しいわ」

 

瞳をランランと輝かせるアーシアが、グレモリーの手を取る。完全に2人だけの空間を作っているな・・・。

 

こういう連中は絡むと面倒なので無視。私はいつものように昼寝に入ろうとする。

 

「お、おい! 木場! モココも見てんじゃねぇよ!!」

 

「ハハハ、いいじゃないか。もう少しイッセーくんのアルバムを見せてよ」

 

「イッセーの可愛らしい過去が、ぷふっ・・・」

 

「テメェ! 笑いやがったな、この大福ウサギ!!」

 

「いや~ん、イッセーこわ~い」

 

視線を向ければアルバムを取り上げようとする兵藤とそれをさらりとかわす木場とモコナの姿が。何を見たのか知らんが、吹いたモコナに更に憤る兵藤。

 

「別にいいじゃない。アルバムぐらい見たって。見られて減るようなモンじゃないでしょ」

 

「減るわ!! 俺の尊厳と精神が磨り減るわ!!」

 

逆ギレに近いリリーに兵藤が抗議の声を上げる。騒がしいヤツらだ。アルバムぐらい静かに見れないのか。って、それは無理か。

 

ふと、木場のほうに視線を見ると何かを食い入るようにアルバムを見つめていた。楽しむと言うよりも、予想外のものを見つけたとでも言いたげな感じだ。

 

その様相はまるで、昔の私を見ているかのようだった。

 

「?」

 

私は気になって木場の背後からその写真を見る。その瞬間、私は顔を顰める。なるほど、気になるのも無理は無い。

 

そこに写っていたのは兵藤と、一時期教会で一緒にいたあの女とその両親だろう。コイツらの小さい頃の写真だ。私もよく覚えてるものだな。

 

そして何よりも目立つのは、この男の人が持っている西洋剣。それは私もよく知っているものだった。

 

「リリー」

 

「? 何?」

 

私はリリーへ手を拱いて、こちらに呼び寄せこの写真を見せる。確か、コイツも昔は連れ添って一緒に来た記憶がある。

 

「!!?」

 

案の定、驚いたような顔をしてその後は顰めた顔をする。まるで昔のことを思い出してしまったような、そんな表情だった。

 

確か、コイツとこの女は同じ教会出身で同期だったよな。アーシアに会う前の教会でよくコンビで仕事をこなしたことがあると聞いている。

 

「これ、見覚えは?」

 

真剣な声で問う木場。いつもの爽やかな声とは違い、トーンの低い声だった。

 

「うーん、いや、何分ガキの頃すぎてよく覚えてないんだけどな・・・」

 

「こんなことがあるんだね。思いがけない場所で見かけるなんて・・・」

 

木場は苦笑していたが、その目はかつてないほどの憎悪に満ちていた目だった。

 

ああ、二度と関わらないと思ってたんだけどな。何だか面倒臭そうなことになりそうな気がする。

 

この一枚の写真が、部活動に影響をもたらすとは誰も思っても見なかったんだろうな。

 

「これは聖剣だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

その夜、私はエレンから連絡を受けていつもの妖魔退治へと出かけていく。面倒臭いけど、行かなければ楽しみは見つからないからな。

 

・・・そういえば、昼間の木場の様子が変だったな。まるで、仇敵を見つけたかのような私にとっては興奮するような目だった。

 

あれは、一体何だったのだろう。私もリリーもあの写真は見て不愉快だったが、それは栗毛のアイツが写っていたからなのだろうか。よく、分からなかった。

 

まあいい。とりあえずは、妖魔退治だ。私とモコナはその目的地である廃墟へとたどり着いた。ここに連絡を受けた例の妖魔がいるらしい。

 

「ここに妖魔がいるの?」

 

「・・・じゃなかったらどうなんだよ?」

 

「静かな場所で夜寝とか・・・」

 

「こんな埃臭いとこで夜寝なんかできるか」

 

少しイライラしていた私はモコナに素気なく言葉を返した。こういうところは埃臭くて、息が苦しくなるから嫌いだ。

 

でも、入らないと妖魔が現れない可能性がある。ああ、面倒臭・・・。楽しむのに疲れることも必要ってか?

 

仕方ないので、廃墟の中に入る。入った途端、気分の悪くなりそうな不快な臭いがしてくる。

 

グルルルルルルルルルル・・・・・・。

 

どこからか獣の唸るような声が聞こえてくる。中に入っていくごとにその声は徐々に大きくなり、同時に臭いも増してきた。

 

「ねぇ、何か変な臭いがするんだけど~・・・」

 

モコナが鼻を抑えながら臭いを訴えているが無視。そんなことは分かってるんだよ。私の顔も段々と顰めてきているんだから。

 

臭いが耐え難い領域へと達し、着物の袖で鼻を覆う。これが妖魔の仕業とは限らないが、この廃墟に何かがいるというのは確かだな。

 

「っ・・・」

 

それにしても、臭い・・・。誰も寄りつきたがらないのが分かるな。現に私も帰りたい気分だ。

 

大分奥まで入ってきたところで周囲を見渡すが、どこにもいない。見えるのは瓦礫だけだ。

 

グルルルルルルルルルルル・・・・・・。

 

だけど、唸り声は聞こえている。なのに姿が見えないのは何故だ? どこかに隠れているとか。

 

そういえば、この廃墟は二階もあるな。まあ、崩れ放題でもはや二階といえるものなのかは微妙だが。ていうか、建物の原型は元々留めていない。

 

仕方ない・・・上に行ってみるか。

 

私は背中に翼を生やすと崩れた天井の穴から二階へと上がってみる。

 

「うっ・・・く・・・」

 

二階は酷いな・・・黄色いガスが充満している。臭いが下にいるときよりもキツくなった。どうやら上にいるのは正解だと見てもいいかもしれない。

 

「けほっ、けほっ、も、もうダメ・・・」

 

モコナは臭いに耐え切れずに魔方陣に包まれて消えた。元よりコイツには何の期待もしていない。戻ってくれてた方が助かる。

 

グルルルルルルルルルルルル・・・・・・。

 

周囲を見渡してみると妖魔が一体、そこで眠っているのを目に移した。ということはさっきから聞こえてきた唸り声はいびきか。紛らわしいな。

 

妖魔の形状もよく見てみると紫と黒で形成された斑な模様をしている。あの模様は・・・スカンクか? しかも、体長は3メートルぐらいあり、私よりも大きい。

 

スカンクはマレー諸島の西側の島々に生息し、あそこから強烈な分泌液を放つ動物だが、この妖魔の場合は体中から悪臭を放ち、その距離は3キロメートルまで届くという。

 

エレンによるとここ最近、この周辺で悪臭騒ぎが相次いでおり、その調査を行って討伐を行って欲しいとのことだ。

 

どうりで臭いわけだ。でも、ここは廃墟だから危険だし誰も近づかないから、この臭いを確かめようがなかったんだろうな。

 

まあ、とりあえず、私もいい加減耐え難い気持ちになってきたのでこのスカンク型の妖魔を狩って、さっさと帰ることにしよう。

 

私は右手をかざして魔剣リベリオンを出現させる。妖魔が眠っていることを確認し、跳躍して飛び上がる。そして、妖魔に目掛けて魔剣を振り下ろす。

 

ガキンッ!

 

「なっ!?」

 

・・・大きな尻尾で防がれた、だと? コイツ、まさか起きてたのか!?

 

私は魔剣を押し退けて飛び退き、妖魔から距離を取る。程なくして安眠を妨害された妖魔は起き上がり、私のほうを見て威嚇する。

 

威嚇しながら様子を伺っている妖魔。妖魔が様子を伺うようにゆっくりと動いているに連れて、私も後ろを取られないように伺うように動く。

 

私と妖魔は睨みあう。そして・・・・・・。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ガアァァァァァァァァァァァァァッ!!

 

同時に突っ込んでいく。私は妖魔を両断するために縦に振り上げ、妖魔は後ろ足で体勢を取り前足を振り上げる。

 

カンッ!!

 

魔剣と爪が受け止め合い、攻撃を相殺し合う。妖魔の爪に押されそうになるが、私も負けじと魔剣を押し返す。

 

押し負けそうになった妖魔は尻尾を硬化させて振り上げ、こちらに目掛けて先端を付き出してくる。

 

ドォンッ!!

 

もちろん、私は押し退けたその一瞬を狙って瞬間移動をして避け、背後へと移動。翼を背中に生やして降下し、目障りな尻尾を斬りおとそうと振り下ろそうとする。

 

すると妖魔の尻尾の根元の下にある穴が私のほうへと向き、そこから黄色いガスが噴出された。

 

「んっ・・・!!」

 

まともに浴びてしまった私はあまりの臭さに思わず体勢を崩してしまい、そこへ硬化した尻尾が襲い掛かる。

 

「ぐぁっ!」

 

薙ぎ払われ石造りの壁にぶち当たり、落ちる私。すぐになんとか起き上がり戦闘態勢に移そうとするが、左腕に痛みが走った。どうやらさっきの尻尾で腕を斬られたらしい。鋭い刃になっているのか、あの尻尾は。

 

ああ、着物もさっきので左袖の部分がボロボロになってしまっている。紺色の着物、これお気に入りだったのにな。

 

「けほっ、けほっ!」

 

臭さで思わず咽る私。そうしている間にも妖魔は私のほうに重い音を立てながら近づいてくる。

 

私はその場から瞬間移動を繰り返しながら妖魔をかく乱し、様子を伺う。どこからあの目障りな尻尾を斬ればいいのかを確かめるためだ。

 

スカンクが尻の穴からガスを噴出するのを忘れていたぜ。まあ、興味の無いことはあまり記憶しないのが私だからな。

 

だとするなら・・・尻の穴を向けられない場所から狙えばいいから、身体の横から斬り捨てるしかないか。

 

私は妖魔の下半身の部分の横に瞬間移動をし、横薙ぎに払い尻尾を根元から削ぎ落とそうとする。

 

ガキンッ!

 

「!?・・・ちっ・・・!」

 

私は思わず舌打ちをする。尻尾がダイヤモンドのように硬化されていて、リベリオンで斬れなかったのだ。

 

悔しがっている隙に妖魔の背中から3本の触手が生える。その先は剣のようになっていて、内の1本が私に襲いかかってきた。

 

私は両手で持っていたリベリオンから右手を離すと腰から短剣を抜き、刃の攻撃を弾く。別の触手が襲い掛かるも、範囲内で回避しながら、いなしながらリベリオンを尻尾から離し、妖魔から距離を取る。

 

そこに触手が3本一斉に私に襲い掛かるも、羽ばたきながら回避しその触手をリベリオンで切断した。

 

グオォォォォォォォォォォ!!

 

妖魔が咆哮を上げ、口から私に目掛けて黄色いガスを放った。コイツ、口からも吐けるのかよ。

 

・・・本当は疲れるから魔力を消費しないようにしていたけど、仕方がない。本当は切り刻んで遊んでやりたいところだけど――――。

 

「もう臭いのは勘弁だぜ」

 

私は右手から赤い炎を出し、それを黄色いガスに目掛けて撃ち放つ。炎はガスを包んでいき、燃やしていく。臭いすらも跡形も残さず、黄色いガスを燃やし尽くした。

 

臭いも消える・・・ああ、そうか。ということは、この場で私の右手で炎を燃やしていれば・・・。

 

私は地面に降り立つと右手の炎の火力を上げる。すると黄色いガスが炎に吸収されていき、この階を充満していた黄色いガスはきれいさっぱり燃え消えた。同時に臭いも無くなったようだ。

 

グアァァァァァァァァァッ!!!

 

妖魔が高く飛び上がり、前足の爪を私に目掛けて振り下ろしてきた。私は瞬間移動をして真上へと飛び、攻撃を避ける。すると妖魔の前足は地面にぶち当たり、石の床にヒビが入って妖魔は1階へと落下した。

 

莫迦なヤツだ。自分の体重を考えれば、ここが崩れること自体分かるだろうに。妖魔にそこまでの知能は持ち合わせていないということか。

 

私は妖魔が瓦礫に埋もれている隙に左腕の傷に炎を当て、傷をきれいに燃やし尽くす。炎で燃やしたというのに、黒焦げにならずにそのままの肌に戻るとは、聖なる炎は使えるな。使う分、疲れるけど・・・。

 

グオォォォォォォォォォォッ!!

 

妖魔が瓦礫から這い出て、天高く咆哮を上げる。そして、また黄色いガスを口から放出させようとしているようだ。

 

「臭いのは勘弁だって言っただろ」

 

私は右手に纏った炎をそのまま球にして、妖魔の口の中に目掛けて放つ。確かスカンク型の妖魔には体の中にあの臭いガスを作り出す器官があるはずだ。まあ、確証はないけどあってもいいはずだろう。

 

聖なる炎の玉はガスを放とうとしていた妖魔の口の中に入っていき、中へと消えていく。

 

よし、体の中に入ったな。あとはこうするだけで・・・・・・!

 

私は右手をパチンと鳴らす。すると――――。

 

ボォォンッ!!

 

妖魔の体から爆発と共に炎が噴出され、体から炎が放出される。これは体の中で炎が爆発し、弾けた炎が妖魔の体を貫いたためだ。

 

口と穴から煙を出し、横に倒れる妖魔。痛さか衝撃からか、体をピクピクと痙攣させている。

 

黄色いガスは・・・どうやらもう吐き出さなくなったようだ。これでこのスカンクはただの肉と骨と毛の塊と化したわけだ。

 

数秒の末、足を震わせながらも立ち上がる妖魔だが、ただの獣となったコイツに為す術は無い。

 

私は今の妖魔の隙を見逃さない。妖魔の後ろに瞬間移動すると厄介だった尻尾をリベリオンで根元から斬り払う。

 

ザシュッ!!

 

グギャアァァァァァァァァァ!!

 

妖魔はまだ戦う意思は残っているのか私のほうに振り向いて、前足の爪を立てようとする。しかし、私は全く臆さずに前足を斬り捨てる。

 

ザシュッ! ザシュッ!!

 

グアァァァァァァァァァァァ!!

 

前足を失った妖魔は前のめりに地面に倒れ、そこを私は真下から妖魔の顎に魔剣を突き刺す。

 

ドスッ!!

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

倒れてきたその勢いに乗せて、私は前に力を入れて妖魔の体を斬り裂いていく。そのときの青い血が私の顔に掛かるが、問題は無い。

 

ブシャアァァァァァァァァァァァァ!!!

 

頭から尻まで魔剣の刃が通った妖魔の体は真っ二つに割れた断面から豪快に噴き出し、お互いの肉片が反対方向へと崩れ落ちた。

 

血を吸った魔剣を振って払うと、背中へと収める。

 

ああ・・・あのガスのせいで服が臭い。さすがに炎でも体や服の臭いまでは燃やせないか・・・。帰って洗濯をしないとな。お風呂にも入らないと。

 

振り向いて妖魔がしっかりと肉塊になっているのを確認した私は目も暮れずに廃墟を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は廃墟から出ようとして、隠れた。外にとんでもない光景が広がっていたからだ。

 

「!!??」

 

ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン

 

ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン

 

ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン

 

ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥン

 

何十体もの巨大なハエの妖魔が、廃墟の外で飛び回っていたのだ。大きいのと多数もいるというだけあって、羽音が気持ち悪いくらいにうるさい。目はまるでマイクのように切れ目が入っていて、気味が悪い。

 

まさか、ガスの臭いでこの廃墟に近づいてきたのか? ハエは臭いものに寄るというし、あながちおかしなことでもない。

 

本当はこの場にエレンがいれば問い詰めたいところだが、今は私一人だ。悪臭騒ぎを起こした妖魔は1体だと確認したはずなのに、こんなに大勢の妖魔がいる。こいつらは悪臭騒ぎとは無関係だろう。こんなことは聞いていない。

 

妖魔は辺りを徘徊して、エサを探しているようだ。まだ、私には気づいていない。

 

体力もあまり残ってはいないが、このハエの妖魔共は大して強くないから今の私でも十分倒せる。面倒だが、やるしかないか・・・・・・。

 

私は背中に背負っているリベリオンを再び構える。こんなヤツらに炎を使うまでもない。

 

意を決して私は近くにいた妖魔のうちの一体に魔剣を振り下ろす。妖魔は真っ二つに裂け、血を噴きながら地面に落ちた。

 

すると周囲の妖魔たちが一斉に私のほうに視線を向けた。

 

「オレに見つかったのが運のツキだな。みんなまとめて切り刻んでやるよ」

 

魔剣を大群へと構え、そのまま妖魔に突き進もうとした、その時――――。

 

グサッ、グサッ

 

ドォォォン!! ドォォォン!!

 

「っ!?」

 

妖魔のうちの一体に二本のナイフが突き刺さり、爆発を起こした。胴体の半分を失った妖魔は地面へと落ちた。

 

ドスッ! ドスッ! ドスッ!

 

尻尾のようなものが私の背後から伸びてきて、三体の妖魔の体を一辺にに貫いていく。そして――――。

 

ブチャァッ!!

 

先端から最初に貫いた妖魔の方まで棘が突出し、妖魔を更に串刺しにした。

 

グサッ、グサッ、グサッ!

 

ドォォォォォン! チュドォォォォォォン! ドォォォォォォォン!!!

 

先程よりも大きめのナイフが三本飛んできてそれぞれの妖魔に突き刺さり、より大きな爆発が起きた。

 

ビィィィィ!! ビィィィィィ!!

 

黄色の光線がどこからともなく飛んできて、妖魔の体のほとんどを消滅させていく。あれは『閃光(ライオ)』だな。しかも、あれは私も良く知っている。

 

とすると・・・っ・・・私も呆然としていられるか・・・!!

 

私は右手に炎を灯すとそれを妖魔に目掛けて撃ち放つ。打ち上げた炎は3つに分裂した後に、鳳凰のように形成されて3体の妖魔に襲い掛かる。

 

キィィィィィィィィィ!!

 

耳障りな不快音を立てながら、3体の妖魔は灰と化していく。

 

更に私はその場から瞬間移動で妖魔の横へと移動し、魔剣を横に振り払う。

 

ザシュッ!

 

妖魔の上半身が斬り飛ばされ、地面へと落ちる。それを見た2体の妖魔が私に襲い掛かってくるも、全く動揺せずに魔剣に赤いオーラを込める。

 

そして翼を生やして飛び立つと、それを妖魔に目掛けて振りおろす。

 

ズバァァァァァァァァン!!!!

 

赤いオーラの渦が地面から放たれ、2体の妖魔を飲み込む。消えた後には、もう何も残らなかった。

 

背後から聞こえてきた爆発音といった狩りの音が止むと、私は妖魔を全滅させたことを悟る。

 

そして、横槍を入れてきた邪魔者に向かって、振り向かずに声を出す。

 

「オレの得物を横取りをするとはいい度胸だな」

 

背後から小馬鹿にしたような口調の声が聞こえてくる。

 

「あら、アンタの得物はデブスカンクじゃなかったわけ?」

 

当然のように言い放つ。私はこの声を知っている。何故なら私と同じ機関の一員なのだから。

 

「自分が狩って当然みたいな言い方をするな。今のお前の行動はオレに対する妨害行為だ」

 

「そんなのアンタの被害妄想でしょ? 妖魔は殺しちゃいけないなんてルールは存在しないわよ。勝手な言い分すんな❤」

 

横取りを誤らないどころか、屁理屈ばかりを捏ねてきやがる。ああ、腹が立つ・・・。

 

私は振り向き様に背後に立っている邪魔者を睨み付ける。

 

「2年経っても、その小馬鹿にしたような態度は相変わらずだな。リリス」

 

「リリスはリリスよ。アンタも自分勝手な理論を吐く態度は変わんないでしょ? サクラ」

 

お互いに魔剣リベリオンとトレンチナイフを向け合う。これ以上言い合いを続ければ、今にも殺し合いが始まりそうな感じだ。

 

これが、ピンク色の髪の女―――リリスと私の、最悪の再会だった。

 

「どうせアイツも来てんだろ? 悪趣味な服を着て、頭にベールをしている変態も」

 

「ええ、来てるわよ。分からないくらい遠いところで後方支援してもらったけどね❤」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リリスとサクラが邂逅したね、ウフフ」

 

どこかの遠いところでは藍色のシスター服を着て、ベールを被っている少女が高みの見物をしている。

 

その表情は一見無垢な笑みに見えるが、彼女の性格を知り得る人から見れば邪な笑みに感じるだろう。

 

シスター服の下から出ている尻尾(・・)を機嫌の良さそうに揺らしながら、カステラを食べる。

 

「責めて火照させるのも好きだけど、こうやってサクラの嫌そうな顔を見ているのも悪くないねぇ」

 

子供のようにキラキラとさせながら、少女は呟く。まるで自動で動く玩具を面白げに見ているかのようだ。

 

カステラを一口口に入れ、飲み込むと唇を歪ませながら言った。

 

「サクラはやっぱり可愛い・・・ウフフ。あの子には及ばないけどね」

 

カステラを食べ終えると少女は立ち上がり、見ている光景から背を向け、尻尾を服の中に収める。

 

「そろそろ帰りますか。行かないとエレンもご立腹だろうし」

 

シスター服の少女は手を前にかざして闇の回廊を出現させ、その場から去っていった。

 

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