その辺は独自に解釈して構わないので、ご覧ください!
雨が降る夜のとある公園。
そこでは、人間たちの倒れた後による地獄絵図が作られていた。
胸を刺されて血を流している者、頭を歪に凹ませて息絶えている者、脳震盪を起こして唸っている者といった様々な人間たちが乱雑に地面に横たわっている。
その人間の大半は顔にアクセサリーやピアスを付けたり、丸坊主で筋肉体質だったり、髪型をリーゼントに整えていたり、サングラスで時代遅れの学生服を着ている者たちだ。
流れる血が水たまりに混じって、赤く染め上げている。
「全く人間って下等で無粋な生き物ね。それでいて貧弱だし」
「ぐ・・・あぁ・・・」
そんな中で演武を演じた桃色の髪の女性―――リリスは地面に倒れている男を
「殺しちゃダメだよ~リリス。聞きたいことがあるんでしょ?」
「分かってるわよ、うるさいわね」
シスター服を着た少女―――エステルが笑顔でリリスを諭しながら言う。そういうエステルの蠍のような尻尾には、男たちの遺体が突き刺さっている。
「お、お前ら・・・よく、もグフッ!」
「誰が喋っていいって言ったワケ? 殺すわよ」
忌々しげに睨む男の言葉を、リリスは顔面に鉄拳を浴びせて中断させる。
「質問に答えてくれる? この辺に銀髪で剣を持ったイカれた男の姿を見なかった?」
「だ、だれグフッ! がぁ・・・!!」
拒否をしようとした男の腹に拳を浴びせ、右手で一瞬だけ首を強く絞める。
「お前に拒否権はないし、イエスかノー以外の答えは認めない。さっさと答えろ❤」
リリスが目を細めながら言う。
「リリスをあんまり怒らせないほうがいいよ~? 楽に死にたいならね♪」
エステルはまるで子供のような口ぶりで言う。エステルはリリスと長年付き添っているので、彼女が怒ると彼がどのような結末を迎えるか容易に分かるのだ。
「ぐっ・・・か・・・」
「早く吐けっつんだよ❤」
「し・・・知らな・・・い・・・」
「あっそう」
男の答えにリリスは不機嫌そうに言うと首を掴んでいた手を離す。
「エステル、ソイツの腕と足を縛って」
「何々~? 面白そうなことするの~? 拘束プレイ~?」
「気持ち悪いこと言ってないで、縛れっつの❤」
「はいはい」
エステルは軽口を叩きつつも、どこからか結束バンドを取り出すと仰向けに倒れている虫の息の男をうつ伏せに転がすと両腕を背中の後ろに回して一纏めにすると手首の辺りで結束バンドを引き絞る。更に両足をくっつけ合わせるともう一つ結束バンドを取り出し、足首の辺りで結束バンドを強く引き絞る。
「な、なに、を・・・」
男の不安を余所にエステルを男を仰向けに転がす。リリスはそれを確認すると腰に提げているトレンチナイフを取り出す。そして、そのナイフを――――虫の息であるその男の目へと近づけた。
グサッ・・・
「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁ・・・!!!」
刃が右目に突き刺さり、男の口から絶叫が上がる。リリスはその様子を見て「ふふふ」と鼻で笑う。
「適当に答えてれば大人しく帰れるとでも思ったぁ? 特にアンタのような社会のクズの言葉なんか簡単に信用するワケないでしょ」
リリスは不敵な笑みを浮かべて言うと、トレンチナイフを右目から抜く。
「エステル、足は一応抑えといてね。途中で放したらアンタを斬るからね」
「う~ん、斬られるのも魅力的だけど・・・この人間の苦しんでいる姿のほうが面白そ~。いいよ~」
「うぁ・・あぁ・・・」
エステルは声のトーンを落とさずにそう言う。男は痛みに呻きながらも状況を理解しようとするが、その間にもリリスのナイフが襲う。
リリスは次に胸の辺りへとナイフを近付け、躊躇なく突き刺す。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
痛みで体を仰け反らせた男の口から絶叫が上がる。リリスはグリグリと抉るようにナイフを動かした後、引き抜いて持っている手でクルクルと回す。
「死にたくないなら本当のことを言いなさいよ。アンタが嘘ついてんのは分かってんだから」
「し、知らねぇ!! お、俺は本当に知らねぇ!!」
「ふーん、まだそんなことが言えるんだ? 仕方ないわね、左目も頂こうかしら」
「や、やめろ! お、俺は本当にグアァァァァァァァァ!!!」
男の哀願も無視して、リリスは笑みを浮かべながら左目へとナイフを突き刺す。目から涙のように血が流れ、その痛みに男が絶叫を上げる。
「白状しないと目玉をくり抜いちゃうわよ? まあ、アンタの薄汚い目なんかいらないけどね」
「ギャアァァァァァァ、ジ、ジラナ、ガアァァァァァァァァァァ!!!!」
「じゃあ、このままくり抜いちゃおうっと♪」
リリスはそう言うと何かを刺そうとするかのように更にナイフを奥まで入れる。目から更に血が吹き出して、男の口から濁った絶叫が上がる。
「グギャアァァァァァァァァァ!! イダイィィィィィィィ!! 目がぁ、俺の目がぁぁぁぁ!! ガアァァァァァァァァァァァァ!!」
「アッハハハハ!! 喚いてる喚いてる~! いい声で鳴くところが人間のいいところよね~」
「ギ、ギッギィ、ギィィィィィィィ!! ウアァァァァァァァァァ!! グぅ、グゥギャアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
リリスは笑いながら目をグリグリと抉るように動かし、その度に泣き喚く男の叫び声。そしてナイフを引き抜いたとき、男の壮絶な絶叫と共に目玉が引き抜かれた。
「あ~あ、目玉取れちゃった。まあ、アンタが悪いんだけどね」
笑みを浮かべながら言うとナイフに刺さっている目玉を自分の口へと運ぶ。中で噛み潰した瞬間、リリスは顔を顰めて「不味っ」と呟く。
「やっぱり人間の血なんか美味しくないわね」
リリスは愚痴を零しながらも、噛み潰した目玉を飲み込むと男の髪を掴んで自分の顔へと近づける。
「で、銀髪の神父はどこにいんのよ?」
「知らない・・・俺は本当に、知らない・・・」
男のその問いを聞くとリリスは不機嫌そうに鼻を鳴らして、ナイフを縦に振るう。すると男の左腕が血を噴きながら夜空を舞った。
「グギャアァァァァァァァァァ!!! 俺の腕があぁぁぁぁぁぁ!!!」
「まだしらばっくれんの? アンタが知ってるってことは臭いでわかんのよ」
片方しかない目を見開き、男が絶叫を上げる。そんな様子を気にすることなく、リリスは若干怒気を強めながら言う。
リリスは元々鼻がよく利く体質を持っている。サクラは目で物事を判断する能力があるのだとすれば、リリスは鼻で物事を判断する能力がある。アーシアを悪魔だと見破ったのもその一例だ。
リリスは答えを待つも反応が無いため、舌打ちをするともう一度ナイフを振り上げる。
「ま、待・・・て・・・・」
「何、やっと吐く気になったの?」
リリスは男の待ったを掛けた声にナイフの動きを止める。
「街はずれの・・・教会・・・そこ、で・・・試し斬り、すると言っていた・・・」
「試し斬り?」
「その男は・・・剣を、持ってた・・・見たことの、ない・・・でも、西洋のような、剣だった・・・」
途切れ途切れに話す男に、リリスは「ふーん」と返すと男の髪から手を離すと――――右腕に向かってナイフを振るう。
「ウアァァァァァァァァァァァ!!!」
「素直に話さなかった罰よ。全く人間はどいつもこいつも馬鹿でつまんない生き物ね」
右腕が宙に舞い、男の口から悲鳴が上がる。リリスはそんな男に向かってそう言うと、更にナイフを男の胸の辺りに突き刺す。
「ゴフッ」
男は喀血し、体をピクピクと痙攣させる。
「あーあ、もう助からないわねぇ。まあ、アタシのせいじゃないけど」
リリスは不敵な笑みでそう言うとすでに意識の朦朧としている男に背を向ける。
「私が治療しとく~?」
エステルは男に近づくと背中のリリスに問う。それに対してリリスは歩みを止めず、エステルを見ようともせずに手を振る。
「いいわよ、そんな男。生きている価値もなさそうだし」
リリスは素気なくそう言う。エステルは男をもう一度見ると納得したように言葉を返す。
「そうだね~。私も男より可愛い女の子のほうが治療したいな~」
「ならさっさと行くわよ、エステル」
「は~い」
エステルは明るく返事をするとリリスの後をついていく。それと同時にピクピクと痙攣させている両腕を失った男に刺さったナイフが砂のように消えた。
「全く、何でアタシがこんな面倒な任務をしなきゃいけないのよ?」
リリスは上司から与えられた任務に毒づきながら、苛立ったように歩みを速めた。
「しょうがないじゃない。私たちの担当の直々の任務なんだから~」
「何よ、エレンに背いたぐらいで。それに嬉しそうに言ってんじゃないわよ、このドM」
「あ~ん、もっと罵って~」
「キモッ」
リリスとエステルは険悪そうに見えてそうでもない漫才を繰り返す。二人はいっつもこんな調子である。
「ああもう、ビッシャビッシャ。何なのこの雨」
「一旦帰ってシャワー浴びない? エステルと裸の付き合いをしながら~」
「・・・そうね。アンタと一緒に浴びようかしら。血のシャワーを」
リリスはエステルに皮肉的な台詞を吐く。その表情はどこかしら歪んでいるようにも見えた。
その後、エステルがリリスにズタズタにされるのはまた別の話である。
◆◆◆
パンッ
雨音に混じって乾いた音が部室内に響く。その発生源はグレモリーと木場からだ。木場がグレモリーに頬を叩かれたからだ。
「どう? 少しは目覚めたかしら?」
グレモリーが怒気を含みながら言う。その表情は冷たそうにも見えた。
競技自体はオカルト研究部の優勝で終わった。私も面倒だけど動き、珍しくチーム一丸となって望んだのだが、一人だけ競技に真面目に参加していない者がいた。
それが木場祐斗だ。正確に言えば貢献してくれてはいたが、その大半はボーっと突っ立っていた。そういえば試合中にもグレモリーが怒っていたが、木場はどうでもいいというような態度だった。
その木場は頬を叩かれたのにもかかわらず、無表情で無言だった。木場はこんな性格していたっけな? それともこの性格がアイツの本性なのかもしれない。
すると木場はいつものようなニコニコした顔に戻す。
「もういいですか? 球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですか? それと疲れたので普段の部活も休ませてください。昼間は申し訳ありませんでした。どうも調子が悪かったみたいです」
「木場、お前最近マジで変だぞ?」
「・・・・・・」
「君には関係ないよ」
私は無言だったが、兵藤の言葉に明らかな作り笑顔で冷たく返す。
「俺だって心配しちまうよ」
兵藤の言葉に木場は苦笑する。
「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔だと思うけど。まあ、主に従わなかった僕が今回は悪かったと思っているよ」
私はその言葉に少し苛立ちを覚えたが、まあ関係のないことだから私は何も言わないけどな。
「チーム一丸としてまとまっていこうとしている矢先でこんな調子じゃ困る。この間の一戦でどんだけ痛い目に遭ったか、俺らは感じ取っただろ? お互いに足りない部分を補うようにしなきゃこれからダメなんじゃねぇか? 仲間なんだからさ」
兵藤の言葉に木場が陰りを見せる。兵藤の言っていることはハッキリ言って綺麗事だ。生命は別に仲間を頼らずとも生きていくことなんかできるんだよ。鳥類以下の動物が一番いい例だろう。
「仲間か」
「そう、仲間だ」
「君は熱いね、イッセーくん・・・。僕はね、ここのところ、基本的なことを思い出していたんだよ」
木場は勝手にそう語り出す。思い出していることは大抵、見当が付く。
「基本的なこと?」
「ああ、そうさ。僕が何のために戦っているか、を」
グレモリーのために戦っていないことはわかる。何故なら明らかにそういうようには見えないからだ。
「部長のためじゃないのか?」
兵藤のその問いは真正面から否定される。そして、木場がようやく本当の姿を見せる。
「違うよ。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー―――。それを破壊するのが、僕の戦う意味だ」
木場はそう言うと部室から出ていった。
私はその直後、数秒だけ部室の窓を見る。そして視線を戻して立ち上がると私も部室のドアへと向かう。
「サクラ? どこにいくの?」
「・・・ちょっと用事がある」
私はリリーにそう問われるも、淡々とそう返すと部室のドアノブを握る。
っていうか、何でリリーは気付かない? 私よりもレベルが低いからか?
「おいサクラ、今日の活動はどうするんだよ!?」
「・・・休む。お前一人で契約者のところへ行け」
兵藤の問いにもそう答え、私はドアを開けて部屋を出る。
・・・・・・懐かしいアイツがいるな、この町に。少し一泡吹かせてやろうか。
私はそう感じるとその場所へ向かうための準備をするために、家へと戻った。
◆◆◆
「聖剣計画?」
エロ猿の言葉にリアス先輩はうなずく。
活動が一通り終わった後、アタシたちは猿の家にアーシア、猿、先輩の4人で戻った。アタシとアーシアと先輩が猿の部屋に入り、先輩から祐斗くんについての話を切り出していた。
・・・何でアタシが猿の家にいるかって? そんなことはどうでもいいのよ。
「そう、祐斗はその生き残りだったの。数年前まで、キリスト教内で聖剣エクスカリバーを扱える者を育てる計画が存在したの」
「・・・初めて知りました」
アーシアがこの計画を知らなかったのは当然かもね。だって汚い人間たちに聖女として祭られてたんだからね。そんなことを知り得るわけがない。
でも、アタシはその計画を知っている。
「そうだったんだ。どうりであんなに聖剣にこだわるわけね」
「リリーちゃん、知ってたの?」
「当たり前じゃない。アタシもサクラも、数年前までは教会にいたんだから」
聞いてきた猿にアタシは冷たく返す。当然、聖剣についても知っている。
「聖剣っていうのはね、魔を滅するための絶対な武器。魔が触れようものならたちまち身を焦がし、斬られれば強さに関係なく消滅させられる。神を信仰し、アンタのような者を敵視する者が使えば究極ともいえる武器よ」
アタシは表のエクソシストだったから、聖剣は持たせてもらえなかったけど、そんなことをしなくても仕事はしっかりとこなせていたから関係なかった。
でも、聖剣ぐらいは知って当たり前のこと。これは元々教会にいたものからすればの特権だ。
「聖剣にはいろいろあるけど、有名なのは祐斗くんも言っていたエクスカリバーよ。その辺は神話のいろんな文献に載ってるから見れば分かるわ。でもね、聖剣は神に祝福されて選ばれたものにしか使うことができないの。使える相手なんか教会の中からすれば、十人に一人しか出ないって噂よ」
「そうなんだ・・・。木場って魔剣を作り出す『
質問が多いわね、この猿は。少しは自分で調べようと思わないワケ?
「あるんじゃないの? エレンみたいに聖を宿した様々な属性の銃を作り出す『
アタシはそこまでは知らない。だって『
ここで先輩が猿の質問に答える。
「ないわけじゃないわ。だけど現存する聖剣と比べると、聖なる
『
「だけど、どんなに強い聖具の
・・・っていうか、話が段々と脱線して来てるわね。これ以上はこのバカも理解できそうにないし、話を元に戻すか。
「で、祐斗くんはその聖剣計画に参加したのよね」
「ええ、そうよ」
「ってことは、木場は聖剣が使えるんですか?」
猿の答えに先輩は首を振る。そんなこと、あの反応を見れば分かるでしょうに。
「祐斗は聖剣に適応できなかった。それどころか、祐斗と同時期に養成された者たちも全員適応できなかったようなのだけれど・・・」
「アンタ、バカじゃないの? 聖剣が使えてたら、アンタらと仲良くなんかできるわけないでしょ」
猿がアタシの言葉にムッとするも、アタシは気にしない。猿の視線なんか誰が見るもんですか。
あれほど魔剣を使えていたとしても、聖剣は扱えなかった。
「それから聞いた話なんだけど、適応できなかった者たちは『不良品』と判断されて、まとめて殺されたらしいじゃないですか」
先輩はアタシの言葉に、静かに頷く。不快な思いなのか目を細めていた。
「祐斗を含めた被験者の多くは殺されたそうよ、『聖剣に適応できなかった』という理由だけで」
「そ、そんな・・・主に仕える者がそのようなことをしていいはずがありません」
アーシアもその言葉にショックを隠し切れない様子だった。目元を潤ませている。
・・・全く人間は残酷な生き物ね。自分たちの役に立たないからといって、すぐに斬り捨てようとする。アタシらとは大違いだ。
これだから教会は大嫌いだ。神だの何だの言って、結局は自分たちが生き残ることしか考えていないんだから。
「彼らの教会の者たちは私たち悪魔のことを邪悪だとか言うけれど、人間の悪意こそがこの世で一番の邪悪だと思うわ」
先輩のその言葉には憂いを帯びていた。アタシも今回ばかりはその言葉に同意だ。
先輩は優しいわね。悪魔でありながら人間の感情を持っちゃうとか、余程人間界に染まってきたのね。アタシも羨ましいな。
「私が祐斗を転生させたとき、あの子は瀕死の中で強烈な復讐を誓っていたわ。生まれたときから聖剣に狂わされた人生だったからこそ、私は悪魔としての生で有意義に使って欲しかった。でも、あの子は忘れられなかった。聖剣を、聖剣に関わった者たちを、教会の者たちを――――」
「忘れられるわけないでしょ」
アタシが途中で冷たく呟いた言葉に、三人が振り返る。
「憎しみや怨みっていうのはね、一種の強い感情なのよ。リアス先輩、アンタがいくら人生の別の路を作ろうが、学園で思い出を作ってあげようが、そんなことで想いを塗り潰すことなんかできないわよ」
アタシは更に言葉を続ける。
「それにしても、教会は相変わらず酷い連中ばっかりね。自分が不利益になるとそうやって隠蔽してなかったことにしようとする。所詮、神の子も称する教会関係者も人間ってわけね」
アタシは教会に対する侮蔑の言葉を述べる。そう、アタシの親友が追い出されたのもその理由だ。
「サクラとリリーは元教会関係者なのよね?」
「そうですけど、それが何?」
先輩の言葉にアタシは苛立ったように答える。思い出したくもない思い出を思い出して、少し感情的になってしまった。
「リリーはどうして教会を止めたの?」
「・・・・・・」
アタシはその質問に右手を握りつぶさんばかりに強く握り締める。それから少し怒気を含めてこう答えた。
「・・・アタシの親友を蔑ろにしたからよ。それを『悪魔を回復させた』っていう理由だけで」
アーシアを見ながら言葉を続ける。その言葉に猿が問う。
「それって・・・アーシアのことか?」
「・・・そうよ。何でそんな理由でアンタが追い出されなきゃいけないのよ? アタシはそう祭司と上層部の連中に問いただしたら、アイツらは勝手なことばかり言って。アタシは怒りは治まらなかった。更には『これ以上関わったら、お前も異端者扱いする』とかほざきやがって・・・!! それからアタシは、教会の連中が一切信じられなくなったのよ」
アタシが言葉を紡いでいる際に、アーシアが途中で言葉を挟んでくる。
「そ、それは主が試練を与えて下さったんですよ。そのような悪い人たちと関わってはいけない、と―――」
バキッ!!!
『!?』
アタシはそのアーシアの言葉に、壁に拳を叩きつけた。その行為に三人は驚いた顔をしていたが、アタシは気にしない。
「何が『主の試練』よッ!!? 教会はどいつもこいつも、綺麗事ばっかり言ってッ!!」
アタシは思っていたほどに怒りの感情を抱いていたようだ。よく見ればアーシアはアタシの姿を見てプルプルと震えていた。
本当はここで止めておけばよかったと思うが、そんな姿を見たからといってアタシの怒りの言葉は治まらなかった。
「いい気なもんね、教会は。見たことも無いものに、祈りを捧げてれば自分の立場を保てるんだもんね! それだから統率もできない、自分の信仰に合わない者を処罰しようとする、そういう醜い考えが生まれんのよッ!! そのふざけた考えのせいで過去に何人もの命が失われたことか! アタシは教会を許さない!! アーシアを追い出したあの連中を許さない!! 教会の、あんなヤツらの信仰に下るぐらいだったら、人間なんか辞めたほうがマシだッ!!」
アタシはそこまで吐き出すと半ば沈黙した。怒りは治まってきたが、憎しみは消えていない。
「リリーさんは・・・」
アーシアがアタシに何かを言おうとしている。その声は悲しみに震えているような気がした。
「リリーさんは、もう主を信じていないのですか・・・?」
アタシが主を信じていないのか、ですって? そんなこと、聞かなくても分かるじゃない。
「ええ、それどころか口に出してほしくもない。アタシの親友に酷い判断を下す主なんか死んでもお断りよ。そんなもの地面に埋めて、小便でも掛けてやるわ」
アタシは目を細めながら、アーシアにそう言った。彼女には悪いけど、アタシはもう教会に関わるのはゴメンだから。
そのとき、アタシのスマホが震えているのを感じた。ポケットから取り出してメールを確認すると相手はサクラだった。中を開いて確認する。そこに書かれた内容を見て、アタシは心が冷たくなるのを感じた。
アタシは立ち上がって部屋から出ようとする。
「・・・アタシ、帰るね」
「リリーちゃん、どこに行くんだよ?」
スマホを覗いていたのを見ていたのか、猿がアタシに向かって問う。
「・・・アンタには関係ないでしょ」
アタシは冷たく返すと部屋の外を出ていく。本当は行きたくないけど、機関の命令なら行かなきゃ。まずは家に帰って準備をしなくてはいけない。
・・・ああ、アタシの気分は最悪だ。だから、今日は本当に最悪の日になるかもしれない。
アタシはそう思いながらも、自然と邪な笑みがこぼれてくるのを感じた。
アイツらを
アタシも楽しみよ、フフフ・・・。
◆◆◆
ジュバッ! ジュバッ!!
ギャアァァァァァァァァァァ!!!
大雨の中。体を打ち抜かれた妖魔が断末魔の叫びと共に、地面へと倒れて絶命する。
ザシュッ!!
剣を振るう音が響くと妖魔の首が宙を舞い、地面に落ちる。
「フッ」
ジュバッ!!
「オラァッ!!」
ザシュッ!!
銃から紫色の光線が放たれ、人間よりも一回り大きい大剣が妖魔へと振るわれていく。
戦う音が止まった頃、辺り一面は妖魔の残骸で一杯になっていた。
その中で立っているのは、紫の髪のシスター服を着た少女―――エレンと白髪でクールな顔付きの青年―――ウィルだった。
エレンは銃を消滅させると濡れた髪を手で掻き上げる。
「最近、妖魔が増えてんのは気のせいなのか?」
ウィルが剣を宙に空いたホールへと収納するとエレンに問う。
「そうだと思いたいですけどね。でも、ここ最近数時間でこんなに出ると肯定はできませんね」
エレンがそう言うとウィルは舌打ちをする。
「十中八九アイツらの仕業ってのは想定できんだけど、この町で一体何をやらかそうっていうんだよ?」
「それが分かれば、とっくに話してます」
「俺が察するには、何か計画を隠そうとして時間稼ぎのために妖魔を放ってるとしか思えねぇんだけどな」
ウィルがなんとなく言った言葉に、エレンは顎に手を当てて思考する。
「まあ、考えるのは後でもいいでしょう。それと海外からの教会闘士2人がこの町に来ているようですが」
「・・・なんだと?」
「どんな理由で教会がわざわざ派遣したかは知りませんが、私たちの任務の支障になるのであれば、排除しなくてはいけませんね」
エレンはそう言うとアジトである教会のほうへ体を向ける。
「その二人はきっとリアス・グレモリーに接触して来るでしょう。私たちもそのときは協力関係の間柄、リアス・グレモリーに加わりますよ」
「・・・いいのかよ? アイツらに着いたって何のメリットもねぇって言ってたじゃねえか」
ウィルがクールな口調でそう言うと、エレンはウィルのほうに顔を向ける。
「・・・私たちの過去を考えれば、そんなことわかるでしょう?」
エレンは冷たく返すと教会へと歩き出す。ウィルはその姿を見て頭をポリポリと搔く。
「あーあ、あれは汚いものを見ているような目だな。まあ、俺もアイツらなんかクソ食らえだけどな」
ウィルもそう吐き捨てるとエレンのほうへと歩き出した。
「まあ分かるけどよ、そんな服着てる時点で説得力がねえと思うぜ?」
「黙りなさい。これは私の敬愛する上司の形見です。教会闘士やはぐれエクソシストのような歪んだ想いと一緒にしないでください」
エレンがウィルのその言葉に不快感を示しながら言う。
「持っているロザリオや聖書も形見だってのかよ?」
「・・・あれは上司がプレゼントでくれたものです。他の神父やシスターが持っているような汚いものとは違います」
「・・・大して変わらねえだろうよ。じゃあ、エステルのあれだって形見かよ?」
エレンが足を止めてウィルに目を細めつつ。その口には侮蔑かどうかは分からないが、歪んだ笑みを向けた。
「そんなこと知るわけないでしょう、あの変態の経緯なんか。直接聞いてみたらいかがですか? 私は物知り博士じゃないので」
そう言うと再び歩き出すエレン。
「チッ、あんな顔しなくてもいいじゃねえかよ」
ウィルは忌々しそうにそう言いながらも、表情は余裕そうにしながら再び歩き出す。
「サクラとリリー、リリスやエステルにも連絡しておかないと」
「・・・リリスとあの変態は来ないと思うぜ」
「それでも一応です。配属されているんですから、言っておかないと上がうるさいんで」
エレンとウィルはそんな会話を繰り広げながら、歩いていく。エレンのその笑みはしばらくは戻ることは無かった。
そんな彼らのやり取りを見ているかのように、大雨は強さを増していった・・・。