極悪な奴ら/THE EVIL HERO   作:早乙女

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長い間、放置してしまって申し訳ありません。そして大変長らくお待たせいたしました!! いよいよ、あの4人が・・・?


第39話「衝突」

私がまだ子供だった頃、ソイツはまるでカルガモの子供のようなヤツだった。

 

まだ教会に居着いていた頃、姉貴たちに外出許可を得て外へ出かけ、興味本位で教会を見て回った。

 

人間界に降り立ったばかりの私は、まだ世界がよくわからず、不安なことも多かった。

 

でも、人間界は魔界と違って戦争やテロもない、随分と静かな世界だ。小さい頃の私はそう思った。

 

廊下や講堂、礼拝堂など、私にはまだ珍しいと思うものばかりだった。

 

そんな中、そこで会ったのは青い髪のまだ小さな子供だった。

 

その頃の私はきっと両親に連れてこられたか、この教会に育てられているんだろうと思った。しかし、その割には表情はクールな面持ちだった。

 

ソイツは、私の着物姿が珍しかったのか、奇妙なモノを追いかけるように後ろを着いてくる。まるで好奇心旺盛な子供のようだった。

 

まだ人を恥ずかしいと思い、立ちの悪いストーカーのように感じた私は彼女を振り切ろうと早足になった。

 

しかし、ソイツはいくら振り切っても、いつの間にかそこにいる。

 

私は鬱陶しいと思い、帰ろうと思った。案の定、その少女は私の後ろを着いてくる。

 

私は思わず、足を止めた。

 

「・・・ねえ」

 

少女は私の声に足を止めたのか、足音がしなくなる。私は振り返って声を掛ける。

 

「なんでわたしのあとをついてくるの?」

 

「・・・・・・」

 

少女は答えずに沈黙する。私はその様子を見ると溜息を吐き、少女に近づく。

 

すると少女は急に怯えたように後ずさるが、私はそんな少女の頭に手を置く。

 

「ほら、有害じゃないでしょ?」

 

私は少女の頭をなでながら言う。そんな少女の顔は頬を赤く染めたようになった。

 

私たちは教会へと戻り、聖堂でいろいろと話をした。この頃はいろいろと打ち解け合っていた。

 

そして、私は気になることを聞いてみた。

 

「なんでわたしについてきたの?」

 

その少女は、少し沈黙した後、口を開いた。

 

「・・・ともだち」

 

「えっ?」

 

「ともだちが・・・ほしかったから・・・」

 

少女が呟いた言葉に、幼い頃の私は驚いた。

 

教会は、友達という概念が必要のない神聖な世界。彼女も教会にそういうことを教えられているはずだ。

 

でも、そんな中でも彼女はそのような存在が羨ましく、誰も構ってくれない環境の中で彼女も飢えていたのだろう。

 

私はそれを聞くと彼女に対して微笑む。

 

「じゃあ、なる? ともだち」

 

「えっ・・・?」

 

「ともだち、ほしかったんでしょ? わたしがさいしょのともだちになってあげる」

 

私の言葉に彼女は呆然としていたが、次第に目元を潤ませていく。

 

幼い頃の私は、困惑せずにはいられなかった。

 

「えっ。な、なんで泣きそうなの!?」

 

「ち、ちがう。うれしかったの」

 

嬉しいときは笑うものではないのであろうか。泣くとか、そのときの私は意味が分からなかった。今でも意味は分からないけど。

 

私は少女を宥めながら落ち着かせ、よく分からないが一緒に手を繋いで歩くことにした。

 

「名前はなんていうの?」

 

「・・・ゼノヴィア」

 

ゼノヴィア・・・おかしな名前のヤツだと思った。でも、変すぎて逆に覚えやすい名前だと思った。

 

「私はサクラ・・・風花桜よ」

 

私も不公平にならないように、彼女に名前を名乗る。

 

「よ、よろしく・・・」

 

「ええ、私もよろしく」

 

私たちはお互い笑顔になりながら、手を繋いで教会を見て回ったのであった。このときの私たちは、今では見る面影も無いくらいまだ女の子らしかっただろう。

 

こうして私に人間界に来て初めての、友達ができた。

 

・・・・・・なんて、そのままの二人と思えていたのはそれから何年後だっただろうな。もう、忘れた。

 

向こうは友達だと思っているだろうが、今の私にはそんな認識はない。

 

・・・そう、悪となった私には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「む? サクラとリリー?」

 

「えっ? 何で二人がここに来るの?」

 

翌日の放課後、部室で必然的にコイツらに出くわした。

 

どうやらコイツらのほうから来たようだが、この駒王町一帯がグレモリーの土地であることを考えると当然の事だろうな。

 

教会闘士にも礼儀正しいヤツはいたんだな。ちょっと、意外だ。

 

「オカルト研究部の部員だからに決まってるだろ」

 

「それ以外に何があるってのよ? 自称“教会闘士”」

 

「じ、自称じゃないもん!! 私は誇り高き教会闘士なのよ!!」

 

「ふーん」

 

「ちょっと、何よその反応は!?」

 

リリーの煽りに栗毛の少女―――イリナが涙目になって反論するが、リリーは全く意に介さず冷たくあしらう。敵とはいえ、こういう泣き顔も大概そそるな。

 

私とリリーは二人とは向かい側のソファに座る。

 

そしてイリナは私の背後から入ってきた人物にも驚きの反応を見せた。

 

「エ、エレンお姉ちゃん!?」

 

「あらイリナ、お久しぶりですね」

 

「まさか、ロックハートまで一緒にいるとは・・・」

 

「俺がここにいちゃ悪いってのかよ。二人とも部員だよ、部員。会って早々失礼な奴らだな」

 

アイツらにとってはかつての教会闘士がここにいることが不思議らしい。っていうか、二人とも部員じゃないだろ。

 

まあ、その辺は口裏を合わせておくか。

 

無駄な話は無しになって本題に入るかと思われたとき、グレモリーが私たちに聞いてきた。

 

「あなたたち・・・知り合いなの?」

 

「知ってるも何も、オレとコイツは昔の相棒だし」

 

「仕事仲間よ。憎いくらいにね」

 

「イリナと私は姉妹ですよ。血は繋がっていないですけどね」

 

私、リリー、エレンが口々に言う。っていうか、コイツは私らのことを知っているはずだ。

 

「つーか、俺らが教会闘士だったってことは知ってんだろ?」

 

ウィルが私の言いたいことを代弁するかのように言う。

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

「だったら、オレらのことを関わりが無くても知っていておかしくないだろ」

 

私はそう吐き捨てる。全く以てくだらない質問だった。教会ではそこそこ名は挙がっていたし、誰かの耳に噂とかで入っていてもおかしくない。

 

「サクラ、グレモリーたちとつるんでいるのか?」

 

「まさか、ただの許可取り相手だよ。ついでにコイツらが悪行を犯さないか監視しているだけだ」

 

ゼノヴィアが不意を突くようなことを聞いていたが、何を心配しているんだろうな。

 

「そうか・・・ならいいが」

 

「サクラ、お前何言って―――」

 

私は兵藤に歩み寄ると乱暴に口を塞ぐ。そして睨みながら言った。

 

「黙れ。お前は余計なことを言わなくていいんだよ。口裏を合わせろ。お前もだ」

 

グレモリーにも耳元で小さく声を掛けると二人とも軽く頷いた。二人には汗が滲み出ていたが、別に気にしなかった。

 

確認した私はソファに戻る。そういえば一緒にいる木場が殺気を向けていたような気がするが、おそらくあの二人にだろう。下手をすれば今すぐにでも斬りかかりそうな雰囲気だ。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

イリナがようやく本題を切り出した。全く、このくだらないやり取りのせいで私は疲れたよ。

 

それにしても、エクスカリバーが奪われた・・・か。教会の管理は相変わらず温いな。どうせ堕天使の誰かにでも盗まれたのだろう。

 

ふと兵藤の顔を見ると訳が分からないといったような顔をしているのが目に見え、私は口を開いた。

 

「兵藤、お前はエクスカリバーが1か所に保管されているんじゃないのか、とでも思っているだろ?」

 

「えっ、何でわかったんだよ!?」

 

「・・・お前はすぐ顔に出るから分かりやすいんだよ。エクスカリバー自体は現存しない」

 

私はそう言って解答すると兵藤はまだわからない、と言いたげな顔をしている。

 

するとグレモリーが口を開く。

 

「ごめんなさいね。私の下僕にはまだ成り立ての子がいるから、エクスカリバーのことも込みで話を進めてもらってもいいかしら?」

 

イリナはグレモリーの申し出に頷くと兵藤に顔を向けて言った。

 

それは元教会闘士だった私でも知っている、童話のおとぎ話のようなものだ。

 

エクスカリバーは大昔の大戦で折れてしまい、それを錬金術によって新しく作り変わったのが8本ある現在のエクスカリバーだ。

 

「いまはこのような姿さ」

 

ゼノヴィアが布に巻かれていた物体を解き放つ。私たちからしてみればどうってことはないが、成り立ての兵藤とアーシアにとっては側にあるだけでキツイものだろう。

 

ゼノヴィアが持っているものは『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』。ゼノヴィアが所属しているカトリックによって保管されている。

 

イリナのほうも長い紐のようなものを懐から取り出す。そしてそれはうねうねと動き出し一本の日本刀のような形になった。

 

「私のほうは『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』。こんな風に形を自由自在に変えられるから、持ち運びにすごく便利なんだから。このようにエクスカリバーは特殊な能力を持っているの。私が持っているものはプロテスタントが保管しているわ」

 

自慢げに言うが、やけにお喋りなヤツだ。あまりべらべらと話すと敵に弱点を教えているようなものだろうに。まあ、私にはどうでもいいが。

 

要するに今のこの状況は伝説の聖剣が二本もここにあるということだ。まあ、言わせてみれば模造刀だけどな。

 

そんな聖剣相手に背後からプレッシャーを放つ金髪の少年――――木場。気付いてよく見てみれば、鬼の形相でエクスカリバーと二人を睨んでいた。

 

木場はエクスカリバーを憎んでいる。そしてその憎き聖剣が今、目の前にあるのだ。まさかこんなところで出くわすなんて思っても見なかっただろう。

 

「・・・それでエクスカリバーを奪ったのは?」

 

「奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』だよ」

 

・・・グリゴリだと? 何故ヤツの組織がそんなことをする必要がある? もしや戦争でも起こすつもりか?

 

いや、アイツがそんなことをするヤツとは思えない。先の大戦でも先に身を引いたのはヤツの派闘だったからな。

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの? 失態どころの騒ぎではないわね」

 

「奪った主な連中は把握している。グリゴリの幹部、コカビエルだ」

 

なるほど、ヤツか。ヤツだったらそんなことを犯しかねないだろう。聖剣の一つでも奪って、戦いでも始めようという魂胆だろう。

 

そして、彼女らはここに来た本当の目的を話しはじめた。

 

「私らの依頼―――いや注文は私たちと堕天使のエクスカリバーの争いに悪魔が一切、関わるなということだ」

 

ゼノヴィアの物言いにグレモリーの眉が吊り上る。あれは怒っているな。

 

「ずいぶんな物言いね。私たちが堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの? 手を組んで聖剣をどうにかすると」

 

「あり得ない話ではないと思っているものでね。上は悪魔や堕天使を一切信用していない。堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなた方を完全に消滅させる。それが魔王の妹であろうともだよ」

 

ゼノヴィアはグレモリーの睨みに動じることなく、淡々と言葉を返す。

 

・・・確かにあり得ない話ではないな。聖剣は悪魔にとって脅威の一つ、神側から取り上げれば悪魔は万々歳なわけだ。充分、悪魔側にも利益はある。

 

私は別に興味はないな。脅威でもないし、そんなものが通用するのであれば一般人がウナギで空を飛べるようなレベルだろうな。

 

「正教会からの派遣は?」

 

「奴らは今回の話を保留にした。仮に私とイリナが奪還に失敗したとして、最後に残った一本を死守するつもりだろうさ」

 

「二人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーの奪還に行くつもり? 無謀ね。死ぬつもり?」

 

呆れたような声のグレモリーだが、どうでもいい。教会は相変わらず鬼畜だな。反吐が出るよ。

 

「そうよ」

 

「私もイリナと同意見だが、できるだけ死にたくはないな」

 

決意の眼だが、随分と中途半端な発言じゃないか。イライラする。

 

「死ぬ覚悟でこの日本に来たというの? あなたたちの信仰は常識を逸脱してるわね」

 

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい。ね、ゼノヴィア」

 

「まあね。教会は堕天使に利用されるくらいなら、エクスカリバーが消滅してもかまわないと断定した。私たちの役目はあくまでも堕天使からエクスカリバーを失くすことだ。そのためなら私らは死んでもいいのさ」

 

・・・私らには理解不能だ。死にたくないとほざいておいて信仰では死んでもいいなどと、全く以て人間の価値観はそういった意味の無いことに思考を費やそうとする。

 

人間は本当に莫迦ばっかりだ。

 

会話が断絶したところで、イリナとゼノヴィアは立ち上がって帰ろうとしたが、その視線は一箇所に集まった。その先は元シスターのアーシアだ。

 

「―――兵藤一誠の家で会ったとき、まさかと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか? まさか、この地で会おうとは」

 

『魔女』と呼ばれたことにビクッと体を震わせるアーシア。アーシアにとってその言葉は辛いものだ。

 

ゼノヴィアからそのような言葉を振られたときに、リリーの眉が吊り上った。怒りを感じているのだろう。

 

イリナはアーシアのことを興味深そうにまじまじと見つめてくる。

 

二人に言い寄られて、対応に困るアーシア。

 

「聖女と呼ばれていたものが、堕ちるところまで堕ちたものだな。まだ我らの神を信じているのか?」

 

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているわけがないでしょう」

 

「いや、その子から信仰の香りがする。私はそういうものに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」

 

「そうなの? アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

その問いかけにアーシアが悲しげな表情で言う。

 

「・・・捨てきれないだけです。ずっと信じてきたものですから」

 

その答えにゼノヴィアが布に包まれたものを突き出す。

 

「そうか。なら今すぐに我々に斬られるがいい。いまなら神の名の元に断罪しよう。罪深くとも、我らの神なら救いの手を差し伸ばしてくれるはずだ」

 

アーシアに近づくゼノヴィア。そこに庇うように兵藤が立つ。それはもう、怒りの表情だった。

 

「アーシアに近づいたら、俺は許さない。あんたアーシアを『魔女』だと言ったな?」

 

「そうだ。少なくとも彼女には『魔女』だと呼ばれるほどの存在ではあると思うが?」

 

「ふざけるなッ! 救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろう!? アーシアのやさしさを理解できない連中なんかただのバカだ! 友だちになってくれる人が一人もいないなんて、そんなの間違ってる!!」

 

「『聖女』に友達が必要だと思うか? 大切なのは分け隔ててない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めたとき、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛があれば生きていけたはずなんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格はなかったのだろう」

 

その物言いに兵藤の怒りのボルテージが上がった。

 

「自分たちで勝手に祭り上げておいて、少しでも求めていたものと違ったから、見限るのか!? そりゃねぇだろ!? アーシアの苦しみを誰も理解できなかったくせによ!! 何が神だ!! 何が愛だ!! その神様はアーシアがピンチだったときに何もしてくれなかったじゃないか!?」

 

「神は愛してくれていた。何も起こらなかったとすれば、彼女の信仰が足りなかったか、もしくは偽りだっただけだよ」

 

私は立ち上がるとゼノヴィアの側に近づいて、彼女の横っ腹を蹴りつけた。

 

「グフッ!?」

 

蹴られたゼノヴィアはふっとばされて、イリナのほうへ転がる。

 

「ゼノヴィア!?」

 

「・・・もういいや。本当にくだらない」

 

私はボソボソとそういうとゼノヴィアたちのほうに向き直る。

 

「オレの獲物に手を出さないでくれるか? イライラすんだよ」

 

ゼノヴィアは痛みに呻いていたが、イリナは私の顔を見て驚いたような顔をしていた。

 

「サクラ、何してんの・・・?」

 

「くだらないおしゃべりを終わらせてやっただけだよ。議論する価値も無いお前らの言い争いをな」

 

「そうじゃなくて! 何であなたがゼノヴィアを―――」

 

「へぇー、アンタらのその雑な思考のせいでアタシの友人は追い出されたってワケね。ふーん?」

 

イリナが言い終わる前に私の隣に出てきたのは、先ほどから細かい殺気を放っていたリリーだった。その表情は怒りに満ち溢れている。

 

「それでオレらも追い出される原因になったわけだ。・・・教会って生ける者全てを舐めてるよな?」

 

「本当よね。愛だの神だの言ってるけど、所詮は厄介なヤツを追い出したいがための戯言よね」

 

私とリリーはお互いに笑みを浮かべあっているが、笑ってはいない。むしろ教会に対する怒りが爆発したようなものだ。

 

「サクラ・・・何を・・・?」

 

ゼノヴィアが棚に手を掛けながら立ち上がるが、私はそんなヤツに淡々と返す。

 

「お前らの言っていることが理解不能でイライラしただけだよ。神はいつ人を救った? その証拠はあるのか? 今まで現れなかったくせにどうしてそんなものが信じられる? オレだったらそんな存在しないものはお断りだな。信仰が足りなかった? 基準が分かんない。偽りだった? 誰のどこが? 神からの愛があれば生きていけた? じゃあ、その愛はどこかから貰う? 断罪されれば神は許してくれる? 死んだら死体しか残らない。全く以て理解不能だ。そんな得体の知れないものに、オレは二度と信仰するものか」

 

ゼノヴィアは私の発言に目を見開いた。

 

「アタシもお断りだね。友人を救わなかった神なんか、クソ食らえなんだよ」

 

そう言ってリリーは側にあった椅子を蹴りつけた。口調も変わっていることから、彼女の怒りは尋常ではないだろう。

 

「・・・サクラ、どうして―――」

 

ゼノヴィアが体を震わせながら何かを言っているようだが、もしかして泣いているのか? それとも寒いのか。

 

・・・と思っていたが、どうやら違ったようだ。

 

「どうしてだ!? 私たちは、共に神への愛を誓い合ったはずだ!! それなのにお前は、私たちの神を貶すようなことを言っている・・・! どうしてなんだ!?」

 

「そうよ!! リリーも何で!? 一緒に主のために頑張ってきたのに!!」

 

ゼノヴィアとイリナの言葉に、私らは淡々と答えた。

 

「・・・オレが端っから信仰しているとでも思ったのか?」

 

「ホント人間ってバカよね。簡単にコロリと騙されるんだから」

 

私らの発言に二人は言葉を失っているようだった。だがどうでもいい。コイツらは私らにとってはどうでもいい存在だからな。

 

「アリア姉さんを救わなかった神なんかいらないよ。彼女だって神のために己の力を振るってきた。血が滲むような信仰心があってもな。だけど、神は認めなかった。信じてやることすらもせず、愛も与えなかった。そんな無意味な存在を信仰して何の価値があるというんだ?」

 

「アタシも最初は信じてたわよ。でも、友人が見放されるようになってから考えが変わったの。誰かを信仰するだけ無駄だって。特に教会の連中はね」

 

「神なんかどうでもいい。むしろいないほうが清々する」

 

「そんな・・・神にとっての最大の侮辱をするなんて・・・! ま、まさか、お姉ちゃんも・・・?」

 

絶句したイリナがエレンに投げかけるとエレンは眼鏡を直しながら言った。

 

「そうですね。まあ、私がどう思おうとあなたには関係ないですけど」

 

「見守るとかほざいてるけど、結局は見殺しだよな。・・・そんなヤツを信仰するほうが頭おかしいよな」

 

ゼノヴィアは私らの言葉に俯くと言葉を発する。

 

「そうか・・・ならお前たちも断罪しないといけないな」

 

立ち上がると私たちを睨みつけ、布に包まれているものを私らに突き付ける。

 

「やれるものならやってみれば? どうせできもしないくせに」

 

私は右手を天に掲げるとリベリオンを出現させ、ゼノヴィアへと突き返す。

 

「死んでもいいんでしょ? だったらアタシらが()ってあげるわ」

 

リリーはそう言いながら右手に青い槍を出現させる。

 

「望むところだ!!」

 

ゼノヴィアが吼える。イリナはまだ戸惑っているようだった。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、三人とも!! 私たちは―――」

 

「構えろ、イリナ。もう二人は私たちの知っている二人じゃないんだ。私は私の想いを踏み躙ったコイツらを許さない」

 

ゼノヴィアがイリナにそう諭す。分かっているじゃないか。いずれはこうなるんだろうとな。

 

もう何を言っても無駄だ。私らはもう、衝突する気満々なんだからな。

 

「・・・・・・っ」

 

イリナは悲しげな顔をするが、後にやけくそになったのかエクスカリバーを構える。

 

「サクラ、リリーお止め――――」

 

「黙れ。オレに指図するな」

 

私はグレモリーの言葉を斬り捨てる。邪魔をするなと何度も言っているはずなんだがな。

 

「アタシも我慢できないのよ。友人を侮辱する死にたがりの駄犬共にね」

 

リリーもそう吐き捨てる。コイツも思ったほど大人じゃないということだ。

 

よく見ればウィルとエレンのヤツも、先ほどから殺気を発している。コイツらも私たちと同じ教会を憎む連中の一人だ。

 

「リリー、よくわかっているじゃないか。命は一つしかないのに、相手の力量も考えずに命を散らそうとするこういう莫迦な連中がダメなんだってことがな」

 

「サクラ!! それ以上の愚弄は許さんぞ!! 戦え!!」

 

私のさりげない煽りにゼノヴィアが怒り出す。そういう莫迦なところも何も変わってないな、コイツは。だから、ウザいんだよ。

 

「エレン! ウィル! 二人を止めて!!」

 

性懲りもなくグレモリーがそう言うが、エレンとウィルは淡々と言い放った。

 

「別にいいのではないですか? こんな状況で私は止める理由がよくわからないですけど」

 

「やりてぇって言ってんだからやらせりゃいいだろ。グレモリーの嬢様は頭が固いねぇ」

 

「そんな無責任な・・・!」

 

グレモリーは絶句していたが、エレンとウィルは何も意に介さなかった。

 

よし邪魔するヤツはいなくなったな。さっさと片付けるか(・・・・・)

 

こうして私たち元仕事仲間は、衝突した。

 

これから私らに盾突いたことで酷い目に遭うことを、知りもせずに・・・。

 




また、だいぶ先になるとは思いますが、読んで下さると幸いです。

よろしくお願いします。
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