その横顔にキスをして   作:チョコましゅー

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早く陽向と千早がイチャイチャしないですかね(笑)
そんなわけで陽向をはやく攻略しなきゃですね


白銀の姫君と太陽2

「失礼しまーす。宮藤陽向ですが、千早お姉さまはいらっしゃいますか?」

 

 昼休みに入ってすぐに3-Cの入り口に陽向が入ってきた。受付嬢である蒔田聖(まきたきよら)は千早に対しての客の対応になれていたが、陽向は珍しい来客だったので答えるのに少しだけ間をおいてしまった。

 

「は、はい。千早さんですね。まだ教室にいらっしゃると思いますので少々お待ち下さい」

 

「お願いしまーす!」

 

 陽向が千早を訪ねてくるのは、たぶん聖の記憶違いでなければ2度目のはず。最初はたしか生徒会長である初音と、千早の侍女である渡會史(わたらいふみ)と、陽向と同じ一年の栢木優雨(かしわぎゆう)と一緒だったはず。だからこうして一年生が一人で千早を訪ねてきたことに少しだけ驚いていた。まあ同じ寮の住んでいるから他の一年生よりも訪ねやすいのかも知れない。

 

「千早さん、来客ですよ。宮藤さんがみえています」

 

 そんなことを思いながら千早を呼びに言った。

 

「陽向ちゃんが…?」

 

 やはりというか、千早も少しだけ意外そうな顔でそう反応した。

 

「聖さん、ありがとうございます」

 

 千早は少しだけ疑問に思いつつも陽向の待つ入り口に向かう。

 

「陽向ちゃんが私に会いに来るなんて珍しいわね」

 

「いやあ、たまにはエルダーのお姉さまとご一緒してもバチは当たらないかと思って」

 

「あら、あなたがそんなこと言うなんてなにか裏がありそうね」

 

「はうっ!?」

 

「まあでも、今日は私もお弁当じゃないから喜んでご一緒しますけど」

 

 クスクスと笑う千早を陽向はじと目でみやる。

 

「千早お姉さまって、たまに思いますけどなかなか意地が悪いですよね」

 

「あら陽向ちゃん、それは思っても口にしないものよ」

 

 そういえば似たようなことを雪ちゃんにも言われたなーと思いながら千早は陽向と共に食堂に向かう。

 

 

 

 

 

「それで陽向ちゃん。本当はなんのようだったのかしら?」

 

 お昼ご飯を食べ終わり、食後のティータイムにさしかかったところで、千早は陽向に尋ねた。やはり千早からしてみれば陽向がこうしてわざわざ自分とお昼を一緒にするのは、何かしら理由があるからだと思ったのだ。しかし、その質問を投げ掛けられた当の陽向は、キョトンとした顔をしている。

 

「まさか本当に私とお昼をとりにきただけなのかしら?」

 

「はい。たまたま今日はそんな気分だったので」

 

「そう。ならいいのだけど」

 

「もしかして迷惑でしたか?」

 

 少しだけ不安の色を瞳に宿しながら、陽向はそう聞いてくる。そんな陽向の姿がやはり普段とは違うイメージで、だからか先ほどの答えでは満足できず、千早はもう一回だけ質問してみる。

 

「たまたまそんな気分、と言いましたけどそれってどんな気分だったのかしら?」

 

「い、いや、えっとぉ…」

 

「まさか、日替わり定食みたいな扱いなのかしら?昨日は香織理さん、今日は私、明日は薫子さん、のように」

 

「ぜ、全然違います! 私は千早お姉さまとお話がしたくて……あ」

 

「私とお話を?」

 

 それこそ千早からしてみれば青天の霹靂だ。千早の陽向に対する印象は、元気で明るく、でも人の感情の機微をしっかりと汲み取れる繊細な観察力を持っていて、だからこそ誰とでも打ち解ける人柄をしている。しかし、千早にはどこか一歩引いた立場にいる感じがあったのだ。別に敬遠されているわけではない。むしろ千早の立場を考えると踏み込んでこない陽向の立ち位置は好ましいと思えるものだった。それこそ、千早がなにか隠しているとわかった上での対応なのかもしれない。

 

 だから、今日の陽向には違和感を感じていたのだろう。自分からわざわざ千早の教室まで迎えに来て、特段用があるわけではなく、ただ単に話をしたいという理由だけでこうして一緒に昼食をとっている。普段の日向からは考えられない行動だ。

 

 今回の相手が香織理や薫子、初音ならば違和感を感じない。あの三人と陽向はしっかりと打ち解けているのだから。

 

(それとも、僕のヒミツに感づいたとかかな?)

 

 内心で男である自分を出しつつ、警戒心を高める。

 

 と、そこで気がついてしまう。

 

 ことあるごとにこうして身構えていれば何かあると公言しているようなものではないかと。学友や普通の後輩ならともかく、寮で一緒に過ごしている、いわゆる家族のような身内にはそこから違和感を感じ取ってもおかしくないのではないか。そんなことが頭のなかによぎった。

 

(要するに、警戒するに越したことはないけど、しすぎるのもまた怪しさが増すというわけだね)

 

 もしばれてしまったら大変だが、しかし千早はそうなったら仕方がないと諦めようと思った。初音ではないが、千早もすでに寮に住んでいる人たちのことを家族みたいなものだと思っている。そんな温かい人たちに自分は嘘をつき続けているという現状が心苦しいと思い始めている。

 

(それに、陽向ちゃんは受け入れてくれそうな気がするしね)

 

 その考えが、千早にしては異常だということを自分では気づかないまま、陽向に対する警戒を解く。そして純粋な疑問だけが残ったのでその話をしようと思考を切り替えた。

 

「なにかあったのかしら?」

 

 見た感じ、陽向は自分でも千早に対しての考えがまとまっていない。だから少しだけ意地悪かなと思いつつも、今朝のやり取りを思い出しながらそんな質問をしてみる。

 

「いえ、これといって何かあったわけではないのですが、なんだか今日は千早お姉さまとお話をしたいと思ってしまって」

 

「それは、今朝のことについてなにか思うことでもあったのかしら?」

 

「別にそんなことは…なくはないのですかね?」

 

「陽向ちゃん自身がわからないことは私にもわからないわよ?」

 

「いや、そうなんですが…。強いていうなら…」

 

「いうなら?」

 

 陽向は少し思案しつつ、探りながらといった感じで言葉を紡いでいく。

 

「千早お姉さまと仲良くなりたかったから、ですかね?」

 

 疑問符がついているから自分でもまだ納得していない答えなのだろうけど、それでも千早は陽向の口からそんなセリフが出てくるとは思わなかった。

 

 別に陽向が誰かと仲良くなりたいと思うことが意外だったのではない。陽向は誰とでも仲良くなれるとも思っている。

 

 ではなにが意外だったのかというと、誰とでも仲良くなれるともいう陽向が、まだ千早とは仲良くなれていないと感じていて、しかも面と向かって仲良くなりたいと言わなければそんな関係になれないと思っていたことが意外だったのだ。

 

(そういうことか)

 

 陽向に対して一線を感じていたのは、すなわち千早が引いていた一線でもあったのだ。

 

 気づいていても気にしない初音や、気付かないまま好意を寄せてくれる優雨とは違い、気づいたから踏み込まなかったわけなのだ、陽向は。

 

『天真爛漫に見えて、かなり大人ね、あの子は』

 

 千早はかつて香織理がいった言葉を思い出した。その意味が少しだけ理解できた千早は、しかしまたもわからないことができてしまった。

 

 いままでそのような立ち位置にいたのに、なぜいまになって陽向は踏み込んで来たのだろうかと。

 

 そう思い、しかし千早は考えるのをやめた。

 

 仲良くして欲しいと可愛い後輩が言っているのだ、それに答えてあげないのはお姉さまとしても、男としても無いと思ったからだ。

 

「私と陽向ちゃんは仲良くないと言いたいのかしら?」

 

「そそそ、そんなことないですよ!」

 

「ふふ、冗談です。陽向ちゃんが言いたいのは、姉と妹、というよりも友達という立場として仲良くなりたい、そういうことでしょうね」

 

「そ、そんな大層なことを思ったわけではないんですが、そうですね。私って千早お姉さまのこと寮ですごす姿しかしらないなぁと思いまして。そりゃ学校でのお姉さまの評判は知っていますし、噂が絶えない存在なのでどういうお方なのかも知っています。ですが、そうですね、確かに友達としての目線からのお姉さまを見てみたいなぁと思ったのかもしれません」

 

 陽向ちゃんはいまだに自分の中にある思いがまとまらないようすで、身ぶり手振りでそんなことを話す。

 

「あとは、薫子お姉さまが話す、意地悪な千早お姉さまが今朝のやり取りで少しだけみれて、そういうあんまり私や優雨ちゃんに見せない面が知りたくなっちゃったってこともありますね」

 

 薫子さん、なにを吹き込んでるんだ…。

 

「そうですね、それなら話をするだけでなく…」

 

 千早は少しだけ思案する素振りを見せてから、にっこりと笑顔で

 

「デートしましょうか」

 

 そう提案した。

 

 




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