「そ、そこで止まれ! 怪しい奴め、動くとこいつの一撃が脳天ぶちぬくよ!」
「お、お燐。こ、こいつがそうなの!?」
「間違いないよ。パルスィを人質にして地霊殿を落とす気なんだ! 目つきの悪い赤髪のチビ、ついでに謎の人形つき。地底指名手配犯の風見燐香に間違いない!」
「よーし。全力でぶっ放しちゃうよ!!」
「動いてないけどやっちゃえお空! 私達の手柄にしてさとりさまに褒めてもらおう!」
「分かった!」
ギュイイイイイインと凄まじい勢いでお空の制御棒にエネルギーが充填されていく。それはきっちりとこちらに向けられている。というかまだこちらは何も言ってないのに話がどんどん展開していく恐怖。恐ろしい。
隣のパルスィはといえば呆れ顔のままやれやれといった感じ。このままだと私と一緒に吹っ飛ばされるんですけど。なんとかしてくださいと目線で合図を送ったがフンと鼻で笑われてしまった。仕方ないのでここは私がやるしかない。
「ちょ、ちょっと待ってください。私は地底から手紙を受け取ったから来たんです。星熊勇儀さんっていう人から来ないとヤバいことになるって! なので、まずは管理者の古明地さとりさんにお話を通そうと」
「はっ、そんな話はアタイは聞いてないよ! それにさとりさまの計画にないし! よってこのままぶっぱなす!」
「ラジャー! 発射まで5、4――」
「嘘でしょ!」
カウントダウンが始まってるし聞く耳を全く持ってない。止めてくれそうな親切な人もいない。どうしよう。とりあえずこちらの話を聞いてもらわないと始まらない。
「パルスィさん、ちょっと目を塞いでくださいね!」
「なんだかやる気に満ちてるわね。楽しそうで妬ましいわ」
手に白黒彼岸花を作成。こいつは永夜の異変で使った特殊な彼岸花で、その効果はいわゆる閃光弾だ。そいつをポイっとお燐とお空の前に投げつける。不意を突かれた二人はそれに目をやってしまう。初見でこいつを回避するのはとても難しい。アリス&ルーミアにも通用したし。私に相応しい初見殺しの姑息な技である。
「お花?」
「なにこれ」
「陽符、サンフラッシュ!!」
激しい閃光が迸り、二人は目を抑えながら床の上を転がりまわっている。超至近距離だったから効果も抜群だったようだ。しかも普段地底暮らしだから光に弱そう。ちなみに私の目も結構まばゆいことになっている。手で押さえてもそこそこ貫通してくるからね! 慣れると霊夢のように簡単に対処されてしまうので乱発に注意しよう。
「ふぎゃあああああああああ!」
「うぎゅーーーーーーーーー!」
充填されていたエネルギーは無事に消滅したので、とりあえずの危険は去った。問題はこの後。今なら隙だらけなのでダウン攻撃を行えば簡単にKOできると思う。でも私はカチコミに来たわけではなく、お詫びに来たわけで。いや、来てしまったのは私の意志じゃないけど。見知らぬ誰かが私を勝手に地底に放り込んだんだけど!
「いきなりすみませんでした。でも、こうしないと話を聞いてもらえないと思ったので。というわけで、私の話、聞いてもらえますか」
「め、目が、まぶしい。あ、は、はい、聞きます。なのでどうか潰さないでください」
「目がー目がー。助けてーさとりさまー。潰されるー」
お燐とお空の頭を押さえて、こちらへぐいっと向ける。風見流交渉術の一つ。『話を聞かせる時は、こちらに顔を向かせましょう』。花梨人形の陰陽印がギュイーンと回転を増していく。なんだか嬉しそうな表情になってきたパルスィ。「やっぱり見覚えがある」とブツブツ呟いている。意味は分からないが、回転している理由は分かる。どうやら戦闘行為で感情が高ぶってきているらしい。アリスには弱点だから背中に隠せと言われたけど、なんか格好悪いのでそれは守っていない。花梨人形は私の相棒なので一緒に戦うのである。一心同体になった今は『もう一人の私』というやつである。うん。
「別に潰したりしませんよ。私を古明地さとりさんのところに案内してください。まずは管理者さんにこの前の件を謝罪します」
そう言い切ると私はお燐とお空を強引に立たせてあげるのであった。そう、幻想郷の少女は話せば分かるのである!
「ど、どうするのお燐。コイツの言うこと聞くの? まずくないかな」
「うーんここは連れていくしかないでしょ。こちらから仕掛けたのにやられちゃったし。ま、大丈夫、さとりさまならこうなることも全部お見通しさ!」
「流石はさとりさまだね! いつもみたいに計画通りなんだね!」
さとりはお燐たちからの信頼度が極めて高いようだ。しかも計画云々言ってるし。ということは修羅系ではなく、理知系の可能性が高い。実に素晴らしいことである。目指せラブアンドピースだからね。修羅と少女は相容れないのである。誰が何と言おうとそうなのである。
……しかし、話せば分かるは良いけれど、何か大事なことに気づいてしまった気がする。私ってこっそり原作の知識を持ってる部分がある訳で。理知系らしい古明地のさとりさんは私の心が読めるわけで。あれ、結構やばくないかな。いや、大丈夫か? どうなんだ。口八丁で誤魔化せるだろうか。うーむ。よし、無理だったら諦めて土下座でもしておこう。うん。それがいい。
◇
「初めまして、といえばいいのかしら。私は古明地さとり、この地霊殿の主です。こちらに控えているのが私の妹の古明地こいしです」
「よろしくー」
「は、初めまして、風見燐香です」
地霊殿の一室に通された私は、厳しい視線でこちらを見ている古明地さとり、呑気な顔のこいしと相対することとなった。いや、別に敵対するわけじゃないんだけど、威圧感が凄い。良く分からないけど、机に肘をついて両手を組んでるし。いわゆるゲンドウポーズ。サードアイはきっちりとこちらを睨んでいる。こいしの方はなんか某冬月先生みたいな感じで後ろに手を組んで控えてるし。いつもなら色々とツッコミたいんだけど、今はそんな空気ではなかった。パルスィは椅子に座って退屈そうに欠伸をしている。できたら事情を説明して欲しい所だけどダメそう。
「それで、先ほどうちのペットを可愛がってくれたそうですが、何しにいらっしゃったのです? おかげで逃げる暇もなく――ゴホン、二人を瞬殺だったようですね。今度は彼岸花ではなく自身の手によるカチコミということですか?」
「い、いえ誤解です。攻撃を仕掛けられそうでしたので、交渉のために一時的に無力化を。というか、私の心が読めるのでは?」
「ええ、先ほどから試みていますよ。ただ、貴方があまりにも混沌としていて、読み取るのが非常に難しいのです。そういう時は面倒くさいので話した方が早いのですよ。というか、何しに来たんでしたっけ」
「ええと、だからお手紙を頂いたので、前回の異変のお詫びをと」
「なるほど、カチコミに来たわけではないと。大変良く分かりました。では詫びるなら遠慮なくどうぞ。用事が済んだならとっととお帰りください」
……ニヤリと高圧的な雰囲気を出しながら笑っているさとり。でもなんだか演じているような違和感がある。さきほどから続いているゲンドウポーズといい、なんか台詞も微妙にゲンドウっぽいような。これはもしかしてツッコミ待ちなんだろうか。本当にツッコンでいいんだろうか。そして何故エヴァンゲリオンなんだろう。まさか地霊殿は特務機関ネルフなの?
「……うん? 貴方、今、ネルフって考えました? そう、あの特務機関ですよ。え、まさか、知っているんですか?」
「あ、はい知ってます。……って、私の心が読めたんですか? あ、その前にまずはお詫びを。本当に申し訳――」
「ちょ、ちょっと、ちょっと待って。は? なんで空飛ぶ戦艦に乗ってるの? というか、誰これ! ナニコレ! どうなってるの!?」
さとりががばっと立ち上がり、こちらに駆け寄って私の肩を掴んで揺らしてくる。サードアイが私の顔の超近くにやってくる。もしかしてだけど、この人、旧版の知識しかないんじゃ。私がうっかりエヴァについて考えちゃったから色々な記憶を読み込んでしまったようだ。可哀想に。あれをいきなり流し込まれたら大混乱間違いなし!
「お姉ちゃん、落ち着いて。お客様がびっくりしちゃってるよ」
「そ、そうね。思わず取り乱してしまったわ。ふー、ええ、大丈夫。はい、えっとなんでしたっけ。そうそう、貴方のお詫びの気持ちは確かに受け取りました。こちらこそ間欠泉騒動でご迷惑をおかけしましたし、お互いさまということで手打ちといたしましょう。大丈夫、鬼の星熊勇儀には私から上手く伝えておきます。今はセントラルドグマじゃなくて縦穴で防衛戦闘に入ってますので」
「防衛戦闘? 誰か侵入者ですか?」
「ええ。縦穴でアンノーンを迎撃中です。恐らくはパターン青、地上の妖怪ですね」
「しょせん妖怪の敵は妖怪ってことだね、お姉ちゃん」
「そうよこいし。我々地底妖怪の倒すべき敵よ」
「……あの、エヴァごっこはまだ続いてるんですか?」
私が思わずツッコむと、さとりはニコリと微笑んだ。こういうところは地底の管理者っぽい威厳があるのだが、やっていることがアレである。もしかしたら結構アレな人なのかもしれない。
「ふふ、地底は本当に退屈なのでこれくらいは大目に見てください。こんな閉じられた世界ですから娯楽は本当に限られています。酒に溺れてくだを巻くくらいしか一時はできなかったのです。しかし、退屈は不満を呼び暴力に繋がり混乱を生み破滅を招きます。そのために――」
「お姉ちゃんが八雲紫と交渉して、いろいろな暇つぶし用の道具をばら撒いてもらったんだよ。ヤバそうなのは上で検閲済みなんだけどね。あと、珍しいのはあまり出回らないし、続き物だと揃えるのは大変なんだよ。でもそれも楽しいんだって。交換とかしたり」
「まぁ、そういうことです。全ては地底住民の心の補完のために行ったのです。私も骨を折った甲斐がありました」
「でも本当は自分だけのために頑張ったんだよね。どうしてもこの先が見たいってベッドでゴロゴロ転がりながらギャーギャー喚いてたし。『そうだ地底の皆の為ってことにして大量にばら撒けば見つかるかも』とか『そしたら全部経費で落ちるし一石二鳥ね』とか超笑顔で呟いてたし」
「おだまりなさい」
良い話かと思ったけどきっかけは私欲だった。でもそれで不満が解消できるなら安いものでは。暇だから殺し合いしよーぜーとか、地上攻めよーぜーとか地底の妖怪は普通に言いそうだし。そういう意味ではさとりは頑張っているともいえる。きっかけは私欲だけど。
「ゴホン。ですから今の地底の住民は皆、心の中になにかしらのバイブルを持っています。地霊殿はご覧の通りエヴァンゲリオンです」
「私とお姉ちゃんの二人だけどね! お燐たちはビックリマンシール集めてるよ。私もちょっとだけね」
「ビ、ビックリマンシールですか」
たくさん買うとチョコウエハースが余ってしまうあれ。開けてしまうとしけって不味くなってしまうが、開けないと中身のシールを取り出せないのだ。食べないと勿論親に怒られる。
「ええ、至る所に貼られて迷惑しています」
「いいじゃん別に。減るもんじゃないし」
「そういう問題じゃないのよ。コレクションというのはいかに原形を留めるかが大事なの。貼ってしまうなど論外の論外。もうその場所でしか楽しめないじゃない。丁寧にファイリングしてこっそり楽しむのが通というものよ」
「つまらないね、お姉ちゃんは。もっと楽しく生きればいいのに」
「私は十分に今の生を堪能しています。ここは確かに陽の当たらない場所ですが、住めば都ということなのですよ」
「このまえ糞みたいな場所とか言ってたくせに」
「おだまりなさい」
コレクター論を語るさとり。そして心のバイブルがエヴァンゲリオンとビックリマンシール。これでいいのか地霊殿。楽しそうだからいいかも。そしてさらっと地底をディスっていた管理者さとり。修羅じゃないけどどうやら図太い妖怪のようだ。紫とは相性が良さそうな気がする。
「それと、私は良く知りませんが、地底の妖怪の間では鬼を殺す漫画が最近流行ってるとも聞きますね。市松模様や滅の文字が入った服を着ている妖怪を結構見かけますし。ええ、私は良く知りません。読んだこともありません。呼吸の意味なんてさっぱりです」
とぼけてるけど絶対知ってるだろうとツッコミたい。しかも、よりにもよって鬼殺隊制服を鬼の前で着ていいのかと、猛烈にツッコミまくりたい。それにしても地底の方が地上より文化がとがっているんですけど大丈夫なんだろうか。間欠泉地下センターとかいうやべーのもそのうち出来るはずだし。地底の文化がマジでやばい。
それはともかく帰りにちょっと旧都のお店を覗いてみたいところ。お土産も欲しいし。でも地上妖怪お断りとか言われそうな気もする。だって地底妖怪御用達のバイブル販売店らしいからね。意味はよく分からないけど。パルスィを上手く煽てて付き合ってもらうとしよう。そういえばちょっと気になったので、そのパルスィに話を振ってみる。だって詫びは受け取ってもらったからフリートークの時間ぽいしね。
「そういえば、パルスィさんは何かにハマッてるんですか?」
「失楽園よ」
「あ、そうですか」
「何よ。私の趣味に何か文句でもあるの?」
「いえなにも」
「興味があるなら一から百まで語ってあげるけど。原作も実写版もバッチリよ」
「いえ大丈夫です」
「まぁ、貴方のようなお子様には百年早いわね」
「しょ、精進します」
嫉妬の妖怪らしくドロドロ恋愛物語が好物らしい。深く語られると対応に困るから適当にすっとぼけたところで、さとりが口を挟んできた。
「ところで燐香さん。ここからどうやって帰るおつもりで? 私達の間では手打ちになったとはいえ、まだまだ貴方を敵視している妖怪は多いでしょう。旧都をふらふら出歩くのは、あまりオススメできません」
「そ、それはそうですよね」
「私が八雲紫に連絡を取りましょう。帰りはスキマでさっさと帰れば良いかと。ですが、それではあまりにも慌ただしい。どうやらペットたちが迷惑をかけたみたいですし、是非暫く地霊殿に滞在していってください。おもてなししますよ」
「は? い、いや、紫さんに連絡を取れるならすぐに帰ろうかと。長々とお邪魔してもあれですし」
「いやいやいや、とんでもない。是非とも泊って行ってください。そうだ、良いことを思いつきました。一話から完結編までぶっ通しでオールの鑑賞会をしましょう。こいしだけとのトークにそろそろ飽きてきたのもあるので、新しい風を取り入れたいのです。シンとやらの話も根こそぎ聞きたいですし、色々と一緒に考察しましょう」
「私だってお姉ちゃんとのトーク飽きたよ。それより、ね、ね、泊っていきなよ。大体せっかく上から連れてきちゃったんだから、こんなに早く帰られたら骨折り損のくたびれ儲けだよ。別に骨は折れてないけど」
とんでもないことを言いだした妹の方のさとり妖怪がいる。犯人は紫じゃなくてこいつじゃん! 無意識の力は向日葵畑の監視網や幽香の警戒も突破できるらしい。恐るべし無意識を操る程度の能力!
「あの、私を地底に連れてきたのはこいしさんですか?」
「うん、そうだよ」
「パジャマから着替えさせたのも?」
「うん? 服を渡したら勝手に着替えてくれたよ。無意識ってやつだね!」
「あちゃー」
私は思わず頭を抱える。そこで目を覚ましておけばこんなことにはならずにすんだのに。まさに後悔先に立たず! というかどれだけ寝坊助なんだという話で。
「……そんな話は聞いてないわよ、こいし。一体どういうことなの」
「うん。だって全然来ないから。間欠泉騒動で来るかと思ったら来ないんだもん。だからこっそり連れてきたんだよ。多分」
「そ、それは本当に申し訳ありません。心の準備が必要でして。でも、もうちょっとやり方が」
「あるかもしれないけど謝る時は早い方が良いよね! 思い立ったが吉日ってやつだよ」
「……あと、それならなんで私を廃屋に放置したんです? 起きてから大混乱だったんですけど。地霊殿まで連れてきてくれれば良かったのでは」
「それはね、途中で重くなって疲れちゃったからポイって。どうせパルスィが近くにいるから、まぁいいかなーって。後でお姉ちゃんに言おうと思ってたんだけどうっかり忘れちゃってた!」
「……こいし」
一言だけ呟くと、さとりが目頭を押さえて深い溜息を吐いている。こいしはニヒヒと悪びれずに笑っている。良いコンビだとは思うが、私としてはたまったものではない。というか、幽香やアリスがきっと心配しているだろう。なんだかすごく嫌な予感がする。
「あの。一刻も早く紫さんを通じて母さんに連絡をしてください。なんか激烈に嫌な予感が」
「ええ、分かりました。貴方の恐怖のイメージを読み取ることが出来ました。私の仕事が増えるのが嫌――ではなく地底の平穏のために動かねばなりません。ではこんなところに通信機があるのでこれを使いましょう。緊急事態ですしね」
さとりが懐から何かを取り出すと、アンテナを伸ばしてピポパとボタンをおしている。昔懐かしの携帯電話だ。ガラケーとかそういうレベルじゃなく、液晶画面が白黒で小さいガチの昔のやつ。こいしは手元でポケベルをいじって遊んでいる。ポケベルに遊べる要素ってあったっけ。ここは地霊殿改めレトロ博物館なのかな? そしてどういう原理でその携帯で会話するつもりなのか私に教えて欲しい。ツッコミ役が少なすぎるのでそろそろ助っ人の妖夢を呼びたいところだ。彼女なら切れ味鋭く全てを捌いてくれるだろう。
「あ、もしもし八雲紫ですか。私私。ちょっと困ったことになりまして」
私私詐欺をしているさとり。ふざけているのか本気なのか分からない。先ほどの威圧感はかけらもないし。私の考えが読まれにくいというのはいいんだけど、真面目な顔のまま何かしでかしそうで怖い。こいしが積極的に動き回っているから更にヤバイ。仲は良さそうだけど。
「ええ、ここにいますよ。犯人も知ってます。はい、そうですその通りです。ええ、それは手打ちということでお互いに。ああ、それはとてもまずいですね。ええ。一応反省してるみたいですので、できたら直接。――え、もう来てる? どこに?」
さとりが慌てて立ち上がり、窓へと駆け寄っていく。凄まじい爆音が鳴り響き、広がる黒煙とともに空中に何かが飛び出してきた。一人は額の角が特徴的な星熊勇儀。楽しそうに不敵に笑いながら両こぶしをガシガシ打ち付けている。見るからにやる気満々だ。もう一人は、両腕をだらりと前にたらして暴走モードに突入している我が母ゆうかりんだった。目は真っ黒で吐息が白く、身体からギュインギュインと謎のオーラが迸っていてマジで怖い。
なるほど、先ほどのパターン青のアンノーンは幽香だったというわけだ。しかしうんうんと納得している場合ではない。だって一拍置いたかと思ったら、再び空中で肉弾戦を繰り広げているし。撃ち合う度に衝撃波が出てるし。ドラゴンボールとかで見たことある奴だこれ!
「……そうですね。はい。古明地こいしが腹を切ってお詫びいたします。ええ、それで手打ちということで。私は全然大丈夫です」
「ちょっとお姉ちゃん! 全然大丈夫じゃないよ!」
「ビークワイエット! プリーズ!」
何故か英語で怒鳴りつけるさとり。不満そうなこいしだが、さとりとサードアイが睨みつけると口を両手で押さえて静かにするポーズ。とりあえずはこいしが腹を切ることで話はまとまったようだ。介錯役は是非とも私が立候補しなければ。地上で鍛えた熟練の技をお見せできるだろう。というかそんな冗談いってないで、アレを止めないといけないんだろうなぁと、私はひどく憂鬱になるのだった。幽香は暴走モード中でも私を判別してくれるんだろうか。それは謎である。ま、多分大丈夫だろう。人生とはポジティブ思考が大事なのである。
ちなみにこうなった原因は主にエヴァバーガーのせいです。