「………………」
「目覚めの機嫌はいかがかしらって、言うまでもなく最悪よねぇ」
幽香は意識を取り戻す。視線の先には疲れた表情の八雲紫。扇子を仰ぎながら、やれやれとでも言いたげだ。全身が軋む。妖力の残量も少ない。確か、鬼の勇儀と戦闘中だったはずだ。直ちに戦闘態勢をと思ったが、身体が言うことを聞かない。だが、動かす。
「寝起きには最悪だった。お前のおかげでやる気がでてきたわ」
「強がって無理しないほうがいいわよ。貴方、精神状態が最悪の状況で戦ったでしょう。本来なら戦えるようなコンディションじゃなかったわね? そのハンデを覆す気迫と殺意はすさまじかったけど、鬼を討ち取るまでにはいかなかったわ。貴方の最大の味方である太陽もないし、長期戦になったらこの場所で鬼に勝ち切るのは至難の業。まぁ向こうも、これ以上は旧都への被害が出そうだから引き分けでいいって言ってくれたけどね。判定なら貴方の負けよ、幽香」
「何を勝手なことを。向こうが仕掛けてきたことでしょうが。はい止めました、なんて通用するわけがない」
「それはお互い様でしょう。あの彼岸花の異変、地底の妖怪からしたら何を仕掛けられているか分からない恐怖があったはずよ。地底に追いやられた上に、更に嬲り殺しに来たのかってね。まぁあれが黒化しても妖怪には影響はなかったんでしょうけど。向こうからしたらただの敵対行為よ。怒るのは当たり前の話ね」
「……………………」
「うすうす気付いているでしょうけど、勇儀は貴方を煽って本気を出させたかっただけよ。貴方はそれにうっかり乗って大暴れして妖怪大戦争勃発ってわけね。で、暴れて少しは鬱屈した気分は晴れたかしら? 酷い有様だったみたいだけど」
余計なことをべらべらと喋る紫を睨みつける。その手には鬼が持っていた赤いマフラーが握られている。
「…………」
「ああそうそう、この大事なマフラー預かっているわよ。縦穴に落ちていたのを拾ったんですって。ちゃんと洗濯までしてくれたみたいで良かったわね」
紫が赤いマフラーを手渡してくる。確かに、汚泥は完全に落ちている。それを受け取り、あたりを見回す。燐香は一体どうなったのか。
「風見燐香は無事よ。この私、八雲紫が確認したわ。というか、貴方が気を失ったのは、乱戦の最中に彼女が制止の声を掛けたからなんだけどねぇ。無事を確認したら張りつめていた糸が切れてしまったのかしら。ほら、無意識のうちに安堵しちゃったんじゃない?」
「そんなことはどうでもいい。燐香はどこにいるの。本当に、怪我はないの?」
「ええ、傷ひとつないわよ。腕一本もぎ取るだの、晒し首だのも勇儀の煽り言葉よ。まぁ、詳しくはこれから来るお馬鹿さんに直接聞きなさいな。……ブチ切れても殺さないようにしなさい。後が面倒だからねぇ」
そう言うと、紫はドアを開け退出していく。入れ替わりにはいってきたのは、体にまとわりつく目玉が特徴的な、紫髪の妖怪。あのさとり妖怪だ。抑えきれぬ殺意が滲み出てくる。敵意を籠めて睨みつけると、表情を変えることなく、頭を下げてきた。
「風見幽香さん。今回の件は、大変申し訳ありませんでした。地霊殿の主、古明地さとりが謝罪いたします。全ての責任は、この私にあります」
「じゃあ、お前が燐香を攫ったさとり妖怪ってことで良い? 最後に言い残す言葉は?」
拳を強く握りしめる。この至近距離なら頭部を粉砕することは訳ないだろう。妖力を溜め、狙いを定める。
「誤魔化しても仕方がないので、全て正直にお話しします。私は心を読むしか能力のない妖怪です。貴方の厳重な監視を潜り抜けて攫うなど、私には不可能です。そもそも私は管理者ですから、許可がなければ地上に出られません」
「…………で?」
「貴方の娘、燐香さんを連れ出したのは、私の妹、古明地こいしです。彼女は無意識を操り、人に気づかれずに行動できるのです。燐香さんを連れ出した理由は、形だけでも謝ってほしかったようですね。私が弱腰であると、地底妖怪から責められているのをなんとかしたかったようです。ええ、ただそれだけのためです。別に危害を加える気はなかったようです。全ては私のために彼女はやったんですよ。ですから、全ては私のせいともいえますね」
「お前、私の心を――」
「ええ、全て読めています。なぜなら私はさとり妖怪ですからね。このように謝罪しているときでも読めてしまうんですよ。止められないんです。私たちが忌み嫌われる理由が分かるでしょう。ああ、貴方からの嫌悪感が伝わってきます。ええ、至極当然のことです」
「お前っ!!」
幽香がさとりの胸元を掴みあげるが、平然としている。紫の言葉があるから、やらないとでも思っているのだろうか。
「そういうわけではありません。別にやっても構いませんが、私を殺した場合、色々と面倒なことがおこります。ですから、半殺し程度ですませていただけると助かりますし、お勧めです。ええ、地上と地底の平穏のためですよ。私が貴方に殺された場合、地底の妖怪は黙っていないでしょう。少なくない連中が地上を目指して進撃していくはずです。ああ、私が慕われているとか、かたき討ちとかそういう類ではなく、ただ単純に『地上の連中に舐められたままではいられない』、『殺してくるなら殺してやる』、ただそれだけです。私は彼らから心底嫌われていますからね。そしてこいしを差し出すのはどうかご勘弁を。彼女がいなくなったら私はひとりぼっちになってしまいます。それだけは認められません。ですので、今回の一件は私が全責任を負いますので、それでご容赦いただけませんか、風見幽香さん」
「……ぺらぺらと良く舌の回るッ!」
「自覚はしているのですが、心を読むことに慣れるとこうなってしまうのです。自然と独りよがりになり、コミュニケーションがまともにとれなくなるのです。私とまともに話してくれるのは妹のこいしとペットくらいのものです。ああ、貴方の娘の燐香さんもそうですね。彼女はその在り様が混沌としていて心が読みにくいのです。能力が通用しないからまともに会話ができるというのも不思議なものですね」
燐香の名前で思わず毒気を抜かれてしまい、つい掴んだ胸元を離してしまう。冷静に考えてみる。こいつを殺した場合の弊害が大きすぎるのは確かだ。それにこいつを半殺しにしたところで連れ去った張本人ではないのだから、ただの憂さ晴らしにしかならない。
では古明地こいしならばどうか? 攫った犯人を処罰するのだから幽香としては収まりがつく。だが、こいつはひとりぼっちになることは認められないと言った。危害を加えて黙っているとは思えない。地底を巻き込んでの復讐を行うに違いない。燐香への危険度は確実に上がるだろう。ということは妹にも手が出せないということだ。それを全部分かった上でこいつは提案してきている。勇儀の言う通り、陰険でいけすかない妖怪というのは間違いない。全てこいつの計画通りなのだろう。実際に燐香はさとりの手に落ちており、自分は手を出すことができないでいる。それがまた頭にくる。
「貴方が怒るのは当然です。反論の余地もありません。また陰険でいけすかないというのを否定するつもりはありません。ですが、全てが計画通りというのは違います。私は意味深なことを適当に言っているだけで、実は深い意味はないんですよ。本当に計画なんて立てていませんし。ちょっとふざけて言った言葉を、ペットのお燐が盛って言いふらしただけなんです。ええ、嘘くさいですが本当なんです。心が読めるからと言って全能になれるわけがないでしょう。燐香さんは分かってくれましたが、普通はこんなこと信じられませんよね。ええ、当たり前のことです。仕方ありませんよ。私は嫌われ者のさとり妖怪ですから」
「…………」
「もう、口もききたくないくらいに怒っていますね。なるほど、自分を卑下して上手いこと言い逃れようとしているのか、ですか。そういう訳ではないのですが、そうとられるのも仕方ありません。とても良く分かります。ですから、私を半殺しに――」
さとりが言い募ってくるところに、どこからか口が挟まれる。帽子を被り目玉を身体に纏わせた、見覚えのある妖怪だ。その目玉はさとりと違い完全に閉じている。
「ちょっと待って! やったのは私だからやられるのは私じゃないとおかしいよ」
「こいし下がっていなさい。貴方の出る幕はないわ」
「いやだよ。だって悪いのは私だし。私が罰を受けないと」
いつの間にかもう一人のさとり妖怪が古明地さとりの隣に立って、頭を下げていた。そして、ドアからは心配そうな顔をした燐香が入ってくる。
「だ、大丈夫ですか、母さん。滅茶苦茶激しくやりあってましたけど」
「燐香。本当に、大丈夫なの? 貴方こそ、怪我はないの? 何もされなかった?」
「本当の本当に大丈夫です。ほら、なんともないでしょう。むしろ母さんの方がボロボロですよ」
「…………」
「私のことより、えっと、お話の件ですが。元はと言えば私が地底に手を出したのが原因なので、ここはひとつ、全部まるっと後腐れなしの貸し借りなしにするのはどうでしょう。ほら、私も勝手に連れてこられたけど、何かされたわけでもないですし。むしろおもてなしまでしてくれたので。地霊殿の方とは良い感じに交流ができました!」
「え?」
「このまま恨みつらみをずっと持ち続けるのもつらいですし、そうは思いませんか?」
「……………………」
「なるほど。確かに、一理も二理もあります。燐香さんは本当に素晴らしいことを仰っていると思います。さぞかしお母さまの教育が良いのでしょうね。ええ、私に異論などあろうはずもありません。さぁ、こいし、一緒にあやまりましょう。さぁさぁ」
「わ、分かったからそんなに急かさないでお姉ちゃん。……勝手にお家から連れ出して、本当にごめんなさい。心の底から反省してます。本当です」
「幽香さん、燐香さん。妹が勝手な真似をして本当に申し訳ありませんでした。こいしの姉として、また地底の責任者として、私もこのとおり謝罪いたします。本来ならばこいしが腹を切るべきところだとは思いますが」
「いえいえ、本当に死んじゃいますから腹なんて切らないでください。私も彼岸花異変で大変なご迷惑をおかけしてすみませんでした。お手紙までいただいていたのに、スルーしようとしてましたし。じゃあ、これで全部手打ちということで仲直りですね!!」
「ええ、勿論です。幸いなことに死者はいませんからね。縦穴の方で怪我人はいますが好戦的な連中なので、むしろ喜んでいるでしょう。勇儀も大暴れできて満足そうでしたし。というわけで、これにて全て万々歳、無事問題は解決というわけです。実に素晴らしいことですね。地上と地底に分かれても、やはり妖怪同士。話せば分かるのですね」
「うーん、でも本当にそうなのかな? というか所詮妖怪の敵は妖怪って、お姉ちゃんも納得して頷いてなかったっけ」
「おだまりなさい! 話は全部まとまったからもういいのよ。ラブアンドピースが私のモットーだもの」
「また嘘ばっかり」
話がどんどんと進んでいく。さとり、こいし、燐香が頭を下げ、皆が順々に握手している。なんなのだ、これは。思わず口を挟もうとしたら、耳障りな口調の言葉がそれを遮ってくる。
「あらあらあらあら、本当に良かったわぁ。どうやら無事に話はまとまったみたい。幽香も話せば分かるようになったのねぇ。これで地上と地底の悲惨な大戦争につながらなくてすむし、私の顔も立つし、さとりの首もつながったというわけ。色々あったけど燐香ちゃんも新しい交友関係が出来たみたいだし、うんうん、とても素晴らしいわ! さ、用事がすんだならさっさと帰りましょう。皆心配してるわよぉ」
紫がそそくさと乱入してきて、有無を言わせずスキマを展開する。強引に幽香の腕を掴みあげると、スキマへと導いていく。それを見た燐香がすたすたと近寄ってくる。何故か名残惜しそうに、さとりとこいしに手を振っている。それに笑顔で振り返しているさとり妖怪たち。本当に意味が分からない。こいつらは誘拐の主犯と実行犯ではなかったのか。いつの間に仲良くなっているのか。
「見事なまでの吊り橋効果、と言いたいけど意外と相性が合っているのかもしれないわねぇ。掛け合いが本当に楽しそうだったもの。ま、貴方としたらふざけるなって感じでしょうけど。そんなに目くじら立てず、大目にみてあげたらどうかしら。友達が増えて悪いことはないでしょう」
「お前、一体なんのつもりなの。私はまだ納得をしたわけじゃない。そもそも私が話を付けようとしたのをお前が」
「言いたいことは解るけど、状況は変化するものよ。そしてここが矛の収めどころってことよ、幽香。昔の貴方なら突っぱねても良いんでしょうけど、今は違うでしょう。さっさと燐香ちゃんとお家に帰って美味しいご飯を食べてお風呂に入って一緒に寝ちゃいなさい。そうすれば爽やかな朝がやって来て、貴方の悪夢も無事に終わりを告げるってわけ。ね、簡単でしょう」
「さっきから、誰が余計なことをしろと――」
「余計なことをするのが私の仕事なのよ。でも今回みたいな不測の事態は本当に疲れるから、少しは労わってほしいわぁ。あ、そうそう、さとり。近々お邪魔するから覚えておいてね。貴方には積もる話が腐るほどあるから。……本当に死ぬほど長くなるわよ」
「あ、はい」
「………………」
嫌そうに頷くさとりを、幽香は睨みつける。もう会うことはないだろう。だが、その顔は忘れないでおく。絶対に忘れない。
「ああ、それはそうなりますよね。…………最後に、本当に死ぬほど余計なことですが、伝えさせてください幽香さん。燐香さんは、別に貴方のことを恨んでなんかいませんよ。それだけはしっかりと読み取れました。本当に家族だと思っています。私もふらふら出歩く妹がいるから、貴女の不安になる気持ちが良く分かります。今回はこんなことになってしまいましたが、いつか、ゆっくり話せる日が来ることを願っていますよ。これは嘘ではありません」
「はいはいはいはい、余計なお話はそこまで! それじゃあ喧嘩になる前に出発!」
幽香が声を荒げる前に、スキマが包み込んでいく。暗闇に飲まれていく。幽香の手を、燐香が握りしめてくる。スキマの先から光が溢れてくる。あれほど酷かった頭痛は、いつしかおさまっていた。
◆
「…………」
「お姉ちゃん?」
「全員行ったかしら? もう誰もいない?」
「行っちゃったよ。エヴァのオールナイト鑑賞会できなくて残念だったね。でもまたの機会でやればいいよね。シンのことも聞きたいんでしょ? また今度誘ってみようかな。ウチでいいかな?」
さらっとやべーことを言っている奴がいる気もするが、もう聞こえないし聞きたくない。見ざる言わざる聞かざるだ。だがさとりのサードアイは決して閉じないのである。何故かというと閉じたら野垂れ死ぬ未来しか見えないから。さとりはまだまだやりたいことが一杯あるのである。新とシンを見届けるまでは絶対に死ねない。まだ溶けたくない。嘲りを受けようとも嫌われようとも、生に一生懸命しがみつく妖怪、それが古明地さとりである。精一杯生きる! 故に、これから心の声が漏れだすのは仕方のないことなのだ。
「………………あああああああああああああ。マジで危なかった。本当に殺されるかと思った。絶対死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。滅茶苦茶黒で死のイメージ! 絶対殺す死んでも殺すって百回言ってたし! 今更ながら足が震えてきた。本当に危なかった。大体、鬼と互角に戦う奴の攻撃で半殺しで済むわけがないでしょ! 絶対に背骨折られるし! 私死んじゃうから! さっき胸元掴まれたとき、首をコキっておられるかと思ったわ!」
「お姉ちゃん?」
「は、吐きそう。もうダメ」
さとりは立っていることができず、先ほどまで幽香が寝かされていたベッドへと倒れこむ。サードアイがこてっと頭に落ちる。こいしの呑気な言葉など全く耳に入らない。マジで危なかった。絞首台に乗せられた罪人の気持ちが初めて分かった。死ぬまで分かりたくなかった。
通信機で連絡を取った後、それはもう鬼のような勢いで八雲紫が現れた。血相を変えていたので、真面目に焦っていたのだろう。いつもの胡散臭い余裕は一切なかった。だがその紫ですら直ぐには介入できなかった。風見幽香と星熊勇儀の血みどろバトルは誰も止めることもできず旧都上空で一時間程度続いた。迫力満点マジギレバトルに旧都の妖怪たちは大盛り上がりだったらしい。全員溶けて死ねば良いのに。
で、ようやくお互いのスタミナが尽きてきたかなというタイミングで風見燐香に介入してもらった。そこで幽香は意識を失い気絶、勇儀は『いやぁ死ぬほど疲れた。でも大満足だ!』と言って大の字でぶっ倒れたのだ。微妙なところだが、まぁ勇儀優勢の引き分けといって良いだろう。本調子ではなかったようだし。そんな状況で鬼と殺しあえるのは絶対にやばい。命を狙われたら確実に死である。しかもアホの勇儀が腕をもぎとるだの晒し首だのと煽っていたことが判明。さとりの寿命が風前の灯状態に。これはやべーと思ったさとりは、頼るべき友人である紫に助言を求めたのだった。
「ねぇねぇお姉ちゃん、掃除が大変だからここで吐かないでね。我慢できないなら外に行ってね?」
「掃除のことより私のことを心配しなさい」
ツンツンと突いてくるこいし。さとりはまだ起き上がれないでいる。
紫曰く、普通に謝ったら100%頭を吹っ飛ばされる、良くて背骨をへし折られると脅されたので、ではどうすればと泣きそうな顔で尋ねたら、もう勢いで誤魔化すしかないと適当に言われてしまった。そして遺書を用意しろとも。これはもう駄目だと思わず諦めかけたが、『しっかり生きて、それから死になさい!』という心のバイブルの言葉が脳裏に浮かんだのだ。
というわけでさとりは燐香に協力を懇願し、こいしと一緒に謝りまくってうやむやにするという最後の策に出たのであった。普段の行いが良いおかげで窮余の策は成功。なんとか上手く行ったとはいえ、さとりの胃は崩壊寸前だ。胃薬がすぐにでも必要である。マジで吐きそうだし。最後に余計なことを言う時なんて特に。あんなことは言わなければよかった。さらに怒りを買ってしまったし。ただ燐香には最後にお世話になったので、一応伝えるべきだろうと義理を果たしたのだった。
「でもさ、八雲紫がもう勢いで丸め込むしかないって言ってたけど、本当に上手く行ってよかったね。失敗したら死ぬって言われてたし。死んじゃったら色々と大変だよね!」
「あ、貴方ね。他人ごとみたいに言ってるけど、もとはといえば貴方のせいだということを、絶対に忘れないように。それを嫌というほど肝に銘じておきなさい。無意識の行動だからといってなんでも許されるわけじゃないのよ。やべー奴の逆鱗に触れることもあるということを、その能天気な頭に、しっかりと、刻み込んでおきなさいッ! そうしないと私が死ぬことになるわよ! 責任を取らされるのが責任者なんだから!」
「本当にごめんなさい」
こいしがしょぼんとした様子で謝罪してくる。うっ、とさとりは言葉に詰まるが、これもこいしの無意識の行動だ。さとりがそれに弱いということを分かってやっている。それでも許してしまうのはやはり、家族だからだろう。ひとりぼっちになるのは嫌だというのは本当である。心を閉ざそうが調子に乗ろうが、家族であることは変わらない。
「ま、まぁ分かればいいのよ分かれば。私も今回は色々と勉強になったし。というか地上って凶悪な妖怪多すぎないかしら。鬼巫女もやばいし。ますます行きたくなくなったわ。別に行く用事なんてないけども。私は地底で平和に籠ることにするわ。色々とアレだけど、地底は私の心のジオフロントだもの」
「うん、本当に意味が分からないよ。……ん? でもさ、私が発端だけど炎上させる原因を作ったのはお姉ちゃんのせいでもあるよね。だって、調子に乗って全ては計画通りとか言っちゃうから」
「こいしが乗せたんでしょう!」
「乗るほうが悪いんじゃないかなー。やっぱりお姉ちゃんってアレだよね」
「うがぁあああああああああ!! お前は、どの口がッ!!」
絶叫したさとりが、全力のげんこつを喰らわせようと拳を振り上げたが、そこにはもうこいしの姿はなかった。本当に、ずるい妹なのである。
誤字指摘ありがとうございます。本文を少し修正しました。
1/11 20:00
1/7の更新後より頂いた感想には、全て返信させていただきました。
(万が一抜けてたら申し訳ありません)
それ以前のものも全て読ませていただいております。
感想、ありがとうございました!