ゆうかりんか   作:かしこみ巫女

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外伝11 カルテット

 春も近いというのに、未だ寒い幻想郷。私たちは居間でこたつに入りながらぬくぬくと過ごしていた。もうお外に出たくない気分で一杯である。おー寒い寒い。お茶がとても美味しい。

 

「あーこたつが暖かい。いやぁ春が待ち遠しいですよね」

「燐香の頭はいつも春だよね。うらやましいなー」

「確かにそうですね。いつも春度が高い。むしろ高すぎる」

「あはは、まさに年中おめでたいってこと!」

 

 私がぐでーっとしながらお菓子をぱくついていると、流れるような勢いでディスるワードが飛んできた。いつもの四馬鹿勢ぞろいである。『一年中お花畑でうらやましいなー』とか言いやがった性格の悪い黒リボンに、チョコウエハースを放り投げると、楽しそうに食いついてきた。とはいえ、実は意外と心配してくれたのかもしれない。だってわざわざ様子見に来てくれたし。フランは美鈴から聞いてすっ飛んできてくれたらしい。妖夢はアリスと一緒に白玉楼からやってきた。まさに先客万来だ。いつもの日常って感じ。

 

「そういうことを言っていると、もっとしけってる奴を食べさせますよ」

「別に美味しいから全然良いけど」

「まだまだ腐るほど貰いましたから。死ぬほど食べて行ってください」

「どれだけあるのこれ」

「だから死ぬほどです。地霊殿から大袋で一杯届けられました。当分食料には困らないです。しけってますけど」

 

 ビックリマンシールだけ抜き取られて放置された哀れなチョコウエハース君。私がいらないならくださいと言ったら、さとりが山ほどありますので遠慮なくどうぞとどんどんくれた。八雲宅急便で大袋5個ほどがぎっしり届いた。というか、外の世界でも旧タイプはそんなに生産されてなさそうだけど。いろんなバリエーションの奴をかき集めているのかもしれない。アニメだの野球バージョンだのもあった気もするし。

 コレクター魂のあるさとりはキレそうだけど、お燐たちは特に統一性にはこだわりがないのかも。私は集めるだけ集めると満足してなくしちゃうタイプなので、シールをコレクションするのは止めておこう。

 

「燐香ってさ、本当に変なのと良く知り合うよね。なんで? 頭がアレだから?」

「失礼な。第一、そのアレな連中の上位集団がこの4人だと思いますよ! 私だけじゃなくて、連帯責任です。何を一人だけ逃れようとしてるんですか」

 

 他人事のように妖夢が聞いてきたので巻き込んでおく。フランは嬉しそうで、ルーミアはそうなんだーと呟いている。ルーミアの手には謎の干し肉が握られているので注意しよう。手品ですり替えてくる可能性もあるし。人肉を私に食わせたいという野心は捨てきれないらしい。私は今も口にしたことはないし、したくはない。私は人間友好度の高い素敵なお花妖怪なのだ。まぁ死ぬ前ならルーミアの頼みを聞いてあげてもいいかもしれないけど、やっぱり遠慮したい気分で一杯である。まだまだ生きる気満々だからね。

 

「いやいや! 私は本当にいれなくていいから。この際だから新メンバーを探しなよ! その地底の連中でもいれたらいいじゃない!」

「だから何を言っているんですか。妖夢は不動のセンターなんですよ。魂魄妖夢無くしてこの四馬鹿は語れません。誇りをもってください!」

「だから何の誇りだ! そもそもセンターって一体なんの!? というかこの前なんて、見知らぬ子供にいきなり『何か面白いことやって!』とか意味わからないこと言われたんだけど! 絶対四馬鹿が定着したせいでしょこれ!」

 

 荒れる妖夢を全員スルー。しかし、その光景を思い浮かべるととても面白いと思ってしまった。まさに芸人殺しの子供である。やりとりは確実に笑いがとれるはずなので、永久保存版として映像で残しておいて欲しかった。で、その一件の原因はもちろん私です。

 

「あー、多分この前射命丸さんの四馬鹿についてのインタビューで、妖夢は神対応型のツッコミ芸人なので、どんなフリでもウェルカムですって言ったからですね。で、その子にはどんな神対応をしたんです?」

「やっぱりおまえのせいか!! 『私は芸人じゃないので面白いことなんてできないですよ。他をあたってください』って言っただけなのに、『凄い! 本当に面白い!』って言われてどっか行きやがったんですけど。なんでそうなるの!?」

「多分、独特の間が面白さを生んだんですね。中々できることではありません。妖夢、それは天性のものなので、後天的に身につけるのは難しいと言われています。流石は私が見込んだだけはあります。ふふ、どうやら免許皆伝も近いようですね」

「ね、それってなんの免許なの?」

「風見流お笑い術ですけど。何を隠そう、この家は風見家お笑い道場なんです」

 

 フランがしけったチョコウエハースをパクつきながら聞いてくる。意外と気に入ったようだ。どうやら妖夢はお気に召さないらしい。贅沢はいけないので、大袋から砕けたのを掴んで妖夢のお皿を山盛りにしてあげた。私は気遣いができる妖怪なのだ。 

 

「全然知らなかった! じゃあ私も門下生なの?」

「ええ、勿論ですとも。天然ボケ芸人として今後も頑張ってください。栄えある一番弟子の座をお譲りしましょう」

 

 嬉しそうなフラン、満足そうに頷く私。是非精進していずれは私に姉妹漫才を見せて欲しい。きっと紅魔館が爆発する素晴らしいオチをみせてくれるはずだ。この前はプラネタリウムだったから、次はなにができるかな。スーパー銭湯とかできないかな。温泉もいいけど、屋内でゆっくりまったりとしたい。サウナとかいいね!

 

「ちょーっと待って! いつ私が入門したんだ! いや絶対にしてねーし!」

「流れるようなノリツッコミだね。流石は師弟の漫才。あれ、でもどっちが師匠だっけ」

 

 感心しているルーミアの問いに答えてあげる。

 

「それはもちろん妖夢ですよ。ちなみにルーミアは師範代ですのでよろしくお願いします」

「そうだったんだ。じゃあ燐香は何なの?」

「もちろん私は社長ですよ。もう少しでCEOに進化できるので楽しみに待っていてください。ちなみに我が社は天下り大歓迎です。私はコネや忖度という言葉が大好きです」

「そうなんだ。全然知らなかった。よろしく、社長」

「こちらこそ。これからも期待していますよ」

 

 私はルーミアとがっちりと握手。フランが楽しそうに拍手してくれる。

 

「いやいや、ここは会社じゃなくて風見流道場じゃないの!? というか免許皆伝してないのになんで私が師匠なの! しかも燐香が社長!?」

 

 その道の達人にしかできないと言われる3段ツッコミ。流石は魂魄妖夢師匠である。私は満足そうに頷いた後、頭を下げた。

 

「皆さまの温かいご支援ご指導ご鞭撻を是非お願いいたします。特に支援を充実させてください」

「何が温かいご支援だ! こんな会社すぐに倒産に決まってるでしょ!」

「そんな、ひどい」

「ひどくない!」

 

 私達がてんやわんやで居間で騒いでいる中、向こうの部屋では幽香とアリスが今回の騒動の反省会を行っている。中々絡みづらい雰囲気なので、向こうには近寄らないでおく。ちなみにフランとやってきた美鈴は、空気を読んでお茶を出したりお菓子を用意したりと何故か家事を頑張っていた。まさに苦労人であるが本人が楽しそうなので良しとする。

 

 鬼とガチで殺りあった幽香はかなりのダメージを負っていたが、後に残る怪我はないとのことだった。私の責任ではない……いや大元を考えるとちょっとはそうかも、とは思うが、心配をかけさせてしまったのは事実なので、ちゃんと謝っておいた。そうしたら『そんなことは気にしなくていい。本当に無事でよかった』と穏やかな笑みと共に頭を撫でられてしまった。ガチ切れしていた時の修羅とは別人のような仏様状態に、思わず拝みそうになってしまったのであった。で、二人でのんびりしようとしていたら、愉快な連中が押しかけて来たという訳。そう言ったら『一番愉快な奴に言われたくない』とルーミアにクールに突っ込まれてしまった。

 

「でも久々にピリッとできてよかったね、燐香。念願の地底にも行けたし」

「いやいや、ピリッとする必要ないですよね。そもそも地底に行きたいって言ってないですし。間欠泉騒動の時の私のビビリっぷりを見ていましたよね?」

 

 私がそう言っても、ルーミアは全く聞く耳を持っていない。パクパクとチョコウエハースを食べながらうんうんと深く頷いている。

 

「最近ずっとだらけ気味だったから妖怪としてどうかなーって思ってたんだ。相変わらず美味しいお肉も食べてくれないし。だから良かった良かった」

「なんでだらけちゃいけないんですか!」

「なんだか面白くないから」

「なるほど。一理ありますね」

「ちょっと。そこでなんで納得するの! もっと反論しなよ!」

 

 私が思わず頷くと、妖夢のツッコミが炸裂する。

 

「うわー流石は師匠だね。キレ味が違うよ!」

「そうでしょうフラン。ツッコミは何よりタイミングが大事なのです。天賦の才と日々の努力がなければとてもこのキレは出せません。私も社長として鼻が高いです」

「こらっ!」

 

 妖夢が砕けたチョコウエハースを投げつけてきたので、颯爽とぱくつく私。無様に失敗して鼻にあたってしまった。なかったことにしてコソコソと拾って口に入れたが、ばっちりとルーミアにみられていた。私は素知らぬ顔で全てをなかったことにする。

 

「それでですね。私としては想定外の地底旅行だったわけですけど」

「目覚めたら地底の廃屋だったとか面白すぎるよ。流石は燐香! 存在が滑稽で愉快だね!」

「いやぁ褒め過ぎですよフラン」

「い、今のは別に褒めてないような。いや、こいつらの中では違うのかも。どうなんだろう」

「考えすぎるのは良くないよ妖夢! ありのままを受け入れないと駄目なんだって。だって私達ってそういうものじゃない」

「そ、そうなのかな?」

 

 フランの言葉で迷宮に迷い込んでしまった妖夢は放置しておく。こいつらとか他人事のようにいってるけど、自分もその中の一人であることを自覚しないといけない。だって四馬鹿だから。特に妖夢はセンターなのでエースとしての自覚が必要である。

 

「地底の文化は地上と比べて、結構尖ってるみたいでして。興味深いものが色々ありそうだったんです。で、本当は旧都散策とか、お土産探しもしたかったんですけど。そんな時間はなかったんですよね」

「それはまぁ、って地底で指名手配喰らってるんでしょ? 無事だっただけで満足しないと駄目でしょ! 幽香さんとアリスさんがどれだけ心配したと思ってるの!」

 

 妖夢がお姉さんぶって注意してくる。はいはいと適当にあしらうとぷんぷんと怒りだしたので宥めておく。

 

「分かりましたから落ち着いてくださいって。あ、ちなみに指名手配は今回の手打ちで解除してくれるみたいです。でも、当分は顔を出せないですよね。まだ怒ってるでしょうし」

「ま、まぁ私も無関係じゃないので出禁なのは同じかも」

「地霊殿にこっそりくらいならいけなくはなさそうですけど。多分、母さんが激おこになるのでやっぱり無理ですね。すぱっと諦めましょう」

「あー私もお土産は気になるな。今度美鈴に行ってもらおうかな。うん、どうせいつも暇してるしそうしよう」

 

 旧地獄行きが知らぬ間に決定しそうな可哀想な美鈴。それはともかく、今回の件で私とさとり、こいしは友好度が上がったけど、幽香からの彼女たちへの友好度は地底より更に下に行ってしまったし。全員が全員仲良くなるなんて不可能だから仕方がない。それもまた人生というものである。何かが切っ掛けで仲良くなれる可能性もあるし。うんうんと意味深に私が頷いていると、ルーミアが何故か楽しそうに口を挟んでくる。

 

「でも、面白い妖怪がいたでしょ。嫉妬パワーが凄い妖怪」

「ああ、パルスィさんですね。親切に地霊殿まで案内してくれました。いつの間にかいなくなってましたけど」

「燐香に嫉妬したんじゃない。知らないけど」

「そうなんですかね。……あれ、なんでルーミアがパルスィさんのこと知ってるんです?」

「それは秘密」

「ま、まあいいんですけど。今度ちゃんと御礼したいですけど、当分は機会もなさそうです。困りました」

 

 こっそり地底に乗り込むとかそういうつもりは全くないし。向こうが地上に遊びに来てくれるわけもなく。お手紙でも書こうにも届く気がしない。そもそも住所は橋? どこで暮らしてるのかさっぱりだ。

 

「でも近いうちに会えると思うよ。やっと全員そろったから、またあの面子で楽しいことをやりたいし。うん。何をやろうかなー」

「は? 何がまたなんです? あの面子っていったいなんのことで――」

「私、天人、嫉妬妖怪、そして燐香だよ」

「えっと、天人って比那名居天子さんのことですか? 私はほとんどお話もしたことないですけど。そもそもその面子につながりが何もなくないですか?」

 

 ないと思う。ないはずだ。いや、何となくうっすらとどこかで黒い記憶が残っているような。もやもやが生じてくると、横に座らせていた花梨人形の陰陽印が回転を始める。何故か分からないが、黒がざわついているようだ。なんとなく楽しげな気配がある。それを横目で見やりながら、ルーミアが言葉を続ける。質問への回答はない。

 

「あの時、きっと楽しいことをしたんだけど、やりきったら全然楽しくなくなっちゃったんだ。全部真っ黒になっちゃったから行き止まりで終わり。だから、今の方が絶対に楽しいんだよ。どうなるか分からないから面白い。でも、せっかくだからあの面子で何かやりたいなー」

「……それで、具体的に何をやるんです、というか、ルーミアは何かやったんですか?」

「うん、絶対に教えてあげない」

 

【挿絵表示】

 

 ルーミアが黒リボンを大切そうに弄りながらニヤリと嗤っている。覗く尖った歯がとても妖怪っぽい。楽しそうで何よりだが、なんだか無性に嫌な予感がする。嫌な予感はなかったことにするのが一番。結局回避できるわけではないのだが、その時までは平々凡々と暮らせる利点がある。

 

「ま、まぁいいです。私は平和を愛するお花の妖怪ですからね。もう物騒なことはしないんです。ええ。私のモットーはラブアンドピースです」

「本当に少しは静かに暮らせばいいのに。なんで燐香はそうなの? 馬鹿を越えた大馬鹿なの?」

「知らないですよ。私は静かに暮らしたいんですけど。……きっと、運命がそうさせるんでしょうね」

「プッ」

 

 意味深にキリッと決めたらルーミアとフランに鼻で笑われてしまった。妖夢は呆れて溜息だけ。こんなときこそ自慢のキレ味を見せて欲しい。私はそんなことを考えながら、最後のチョコウエハースを口に放り込むのであった。物凄いしけっていたが、やはり甘くておいしかった。なんだかんだでこの4人でいると楽しいし落ち着くのである。皆そう思ってくれていると良いなぁ、なんて恥ずかしいことを思う私であった。

 

 




誤字修正しました。ありがとうございます。うっかりでお恥ずかしい。
感想、一言コメント、ここすき、ありがとうございます!

にゃらると様@nyararutoにルーミアエンドアフターのイラストを描いて頂きました。
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