やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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俺とルミルミ、時々ママンと。(2)

 

 留美との久々の再会とルミルミママンとの衝撃の出会いから数日経ち、冬休みも最終日を迎えたある日。俺はとある一軒家の前で、恥ずかしそうに頬を赤らめた小さな女の子に出迎えられていた。

 

「いらっしゃい、八幡」

 

「……おう」

 

 ……いや、ほんとにどうしてこうなった。

 

×××××× 

 

 遡ること数日前。事の発端は留美とルミルミママンと会ったその日の夜のことだった。

 

「げ……」

 

 思わず声を漏らしてしまった俺の目線の先には、スマホの画面に映る「お義母さん」の文字。あの人何でこんな名前で登録してんだよ……。

 

『あ、もしもし、八幡君? お昼ぶりー』

 

「いやそんな友達みたいなノリで言われても。ど、どうも……」

 

 人当たりのいい声で話すもんだから、そのまま世間話でも始める……って訳ではないんだよな。まぁ分かってはいるが一応聞くだけ聞いてみるか。

 

「……で、要件は何ですか」

 

『えー、八幡君も分かってるでしょ? 真面目な話』

 

「だから昼にも言いましたけど俺は何も……」

 

『それでもよ』

 

 言葉を遮られ、つい声が詰まってしまう。今はルミルミママンって呼び方は封印しといた方がいいな。

 ……彼女からしたら大事な娘の話だし。俺と留美の関係性についての説明もするしかないのだろう。

 

「……分かりました。言っときますけど、この話は今回だけですからね。重苦しいのは苦手なんです」

 

「うん、ありがとう」

 

 電話越しからでも分かる、心地のよい柔らかな声音で彼女は返事をする。彼女からしたら俺もまだまだ子どもなんだし、気負わせないように配慮してくれているのだろう。

 それから俺と彼女は留美についてたくさんのことを話した。内容の大部分は夏の林間学校の時期の話が中心だった。

 留美が辛い思いをしている事に気づけず、無理をさせてしまっていたこと。それでも留美は家族には心配をかけまいと笑顔を見せて林間学校へ行ったらしい。

 そんな時に留美はあなたに会えたと。詳しいことは教えてくれなかったけど、あなたのおかげで救われた。それだけは確かだと教えてくれたらしい。

 だから、俺は本当の事情を彼女に説明した。何も事情を知らない彼女へ曖昧なままに「そうだったんですか」で済ましていいわけがない。

 俺が取った行為は本当に危ない橋だったし、一歩間違えたらもっと酷い事になっていただろう。もしかしたら留美の周りの環境を更に悪化させ、更に傷つけていたかもしれないのだから。

 詳しい事情を説明して謝罪をしても、それでも彼女は俺に礼を言ってきた。あなたが否定しても、これだけは言わせて欲しいと。

 このまま受け入れないといつまで経っても平行線だ。それに、自分より年上の人に何度も礼を言わせるのは何だかこっちが申し訳なくなる。

 だからこのことはこれで終わりでいいと、俺は甘んじて彼女の礼を受け入れることにした。

 

『じゃあ、この話はおしまいってことで。それじゃ八幡君、今度うちにいらっしゃい』

 

「いや、話変わりましたかそれ? 礼はもう大丈夫ですから……」

 

『あ、もう本当にさっきの話じゃなくてね? もう一つの問題があるからよ』

 

「もう一つ?」

 

 はて、何のことやらと俺が電話だってのに意味もなく首を傾げていると。

 

『結果として留美があなたに懐いちゃったでしょ? 私的にはそこが一番の問題なのよ』

 

「いや、まぁ……それは何て言えばいいのか……」

 

『あの時のことが余程嬉しかったのか、あの子いつもあなたの話ばかりで……』

 

「……そうですか」

 

 そう聞かされると、いつもつっけんどんな態度を取られてるぶん可愛く思えてしまう。まぁ親御さんからしたら複雑なのは間違いないだろうけど。

 何なら俺も複雑まである。あんまり懐かれちゃうと事案になっちゃうからね!

 

『というか、あれはもう大好きってレベルね。あなたの話をする留美を見てお父さんが死にそうな顔してたもの』

 

「……何も聞こえなかったことにしてください」

 

『現実から目を逸らさないで』

 

「ひぇっ……」

 

 いや、ルミルミパパンの気持ちを考えたら逃避の一つや二つしたくもなりますよ……。もし小町が好きな男子の話を楽しそうに喋ってたら、俺と親父はギャン泣きして一ヶ月は家に引き篭もることになるね。

 

『あなたとあの子じゃ歳の問題もあるでしょ? まぁ八幡君がロリコンだったら話は変わるけど。そもそもロリコンだったら留美に近づけないけど』

 

「正常なんで勘弁してください……」

 

『ふふ、冗談よ。大人になれば五つくらいの歳の差は気にすることもあんまりなくなるしね』

 

 言って、ルミルミママンは楽しそうにくすくすと笑った。さっきまで真面目な話をしていた人は全く別の人なんじゃないかと錯覚してしまうが、あれは彼女の留美の母親としての一面なのだろう。

 だとしたら何で留美の恋愛に対してはこんなに軽いのだろうか。いや、留美が俺に恋愛感情を持っているのかは全く分からんけど。

 

「……大人になるまでに色んな出会いもあると思いますけど」

 

『それもそうだけど、やっぱり初めてが悲惨だと可哀想でしょ?』

 

『……まぁ、そうですね』

 

 その気持ちは過去の俺が痛いほど知っているので何とも言えなくなってしまう。ただ、留美の気持ちがハッキリと分からない現状じゃ俺もどう対応すればいいかなんて分からないのだ。

 

『今日も八幡君に会えて本当に嬉しそうだったの。だから八幡君さえよければ、これからも適度に付き合っていって欲しいの』

 

「適度、ですか」

 

「そう、適度にね」

 

 ルミルミママンの言う適度の度合いはよく分からないが、留美とこれからもしばらくは関われるという事実に多少喜びを覚える自分がいるのは確かだ。何だかんだ言っても可愛いもんだしな。

 

『まぁもし数年してから、留美があなたを押し倒したりしたら私は止めないから存分に楽しんでね?』

 

「はは……」

 

 何か今外堀埋められてる感じがめっちゃして全く笑えなかったんだけど……。

 

『じゃ、とりあえず冬休みの間に一回うちに来るってことでいい?』

 

「えっと、冬休みあと四日しかないんですけど……」

 

『でも学校が始まってからだと色々あるだろうしそっちのが都合いいでしょ?』

 

「……まぁ、了解です」

 

 友達がいないので特に何もないですなんて言えるわけもなく。まんまと娘思いの優しい母親の策にハメられてしまっている気がしないでもないのはどういうことなのだろうか。

 だって既に俺に対しての扱いが雑になりだしたしね。押せばなんとでもなると思ってるのだろうか。当たりだよ畜生。

 

『それじゃ、今日はこれで。これからも留美をよろしくね?』

 

「……はい、分かりました。それじゃあ失礼します」

 

 言って、彼女との通話を切ってベッドに倒れ込む。ルミルミママンが俺と留美をどうしたいのかはよく分からんが、どのみち全ては留美次第と言うことだろう。

 俺のこれからの命運が全て小学生に委ねられてると思うと何だかとってもドキドキしちゃうね! いやほんと色んな意味でドキドキしちゃう。

 ……と思ったらもうお姫様からの電話か。タイミング的にルミルミママンの差し金だろう。

 

『も、もしもし……』

 

「……おう」

 

 ……まぁ、今は難しいことは考えずにルミルミと楽しく話すことにするか!(逃避)

 

××××××

 

 てな感じで、冒頭に戻るわけだ。うーん、逃避が長いし回想でも逃避してたしもう逃避しかしてないな俺。

 玄関で俺を出迎えてくれた留美は、服装も気合を入れていて表情も少し嬉しそうに見える。あの時ルミルミママンの話を聞いたこともあって、この何とも言えない健気さが可愛くてしょうがなく見える。

 

「元気してたか?」

 

「この前会ったばっかりじゃん。八幡、おじいちゃんみたい」

 

「早く本当のおじいちゃんになって隠居生活をエンジョイしたいけどな……」

 

「だめ、もっと若くして」

 

 不満そうに言って、留美は猫背になった俺の背中をぐいぐいと押して家の中に押し込んでいく。この歳でもう若作りしなきゃいけないって早すぎないかな俺……。

 リビングへ連れていかれると、ルミルミママンが笑顔で迎えてくれた。わぁ、良い笑顔なのにどこか含みがあってこれから先のことが怖いよ……。

 

「いらっしゃい、八幡君」

 

「ども……」

 

「じゃあ、八幡のこと部屋に連れてくから」

 

「はーい、いってらっしゃい」

 

「え、ちょ、え?」

 

 いや、ほんとに何この流れの早さ。八幡びっくりしすぎてガチでテンパっちゃったよ?

 

「あ、そうだ留美。お母さん夜ご飯のお買い物行ってくるから、二時間くらい留守番よろしくね」

 

「うん、分かった」

 

 ルミルミママンが一瞬で家からいなくなり、それを見送ってから留美の部屋の前まで連れていかれる。怒涛の展開に俺の頭は完全にフリーズ状態でした。

 

「ここでちょっと待ってて」

 

「ん、分かった」

 

 留美が部屋に入ったのを確認し、大きなため息を漏らす。ほんとどうしてこうなった……。

 ……ルミルミママンは俺のこと信用しすぎじゃないですかね。いや、これは逆に俺が本当に何もしないのか試されてるのだろうか。

 考えても結論が出るわけもなく、手持ち無沙汰になりかけた所で部屋のドアが開く。すると、部屋から顔を覗かせた留美がちょいちょいと可愛らしい仕草で手招きをした。

 

「お邪魔します」

 

 多少の緊張の中、留美の部屋の中に入る。綺麗に整っているシンプルな部屋に関心していると、部屋の鍵がガチャリと音を立て閉められた音がした。

 

「何で鍵閉めたのお前……」

 

「何となく。それで部屋の感想は?」

 

「ん? あー、女の子らしくていいんじゃないか。可愛い可愛い」

 

「何その適当な感想」

 

 むぅ、と頬を膨らませた留美はテーブルの近くにあるクッションを指さす。どうやら座れということらしい。

 大人しく指示に従ってクッションの上に胡座をかくと、その上に留美がちょこんと座ってきた。

 ……いや、何で?

 

「……何してんの」

 

「八幡は今日、私の椅子」

 

 頬をほんのりと赤らめた留美の謎発言に、今日という日は一筋縄ではいかないなと大きなため息が漏れた。

 




今回で色んな問題は終わらしたということで、次回から本格的にルミルミとのイチャイチャをスタートすることになります。ほんわかしてもらえれば嬉しいです。

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!
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