ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖しているだけなんだ。   作:すずきえすく

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皆様、いつもお世話になっております。
最近、戸部っちや八幡がたまに言う台詞である

”ジューシーポーリーイェイ”が何なのか知りました。

なんだか今は、喉に刺さった小骨が取れたかの様に
スッキリしています。

さて、今回は第11話となります。
今回もどうぞよろしくお願いいたします。




第11話 格闘家の武○選手は、新右衛門さんの子孫らしい。

 恋や愛を語る手立ての1つとして、これまで幾億もの…そう、それこそ星の数ほど膨大な数のLOVE SONGがこの世に生み出されてきた。ジャズやロックはもちろん、ヒップホップや演歌、大きく時代を遡ると和歌や短歌に至るまで…時代やテイストは違えど、人という生き物は、自分の想いをメロディに乗せて表現してきたのだ。

 

 また、お気に入りのLOVE SONGの1つや2つは、誰しもが心の中に抱えているだろう。例えば、メリケンオールスターズの”いとしのペリー”だったり、おはよう娘の”ケッタマシーン”だったり、末法思想の”昏睡姫”だったりと、数え挙げればキリが無い。

 

 そんな中、俺が思う最強のLOVE SONGは”とんちんかんちん一休さん”だ。何故ならば、俺の知っているLOVE SONGの中で、あれだけ”好き好き”連呼しているものは他にないし、しかも”好き好き”連呼するだけでは飽き足らず、更に”愛してる”とダメ押しするのである。これほど強烈に、愛する気持ちを表現している歌は他にあるだろうか?(いや、無い!)

 

 ただし…仮にカラオケ、あるいはギターを片手に意中の相手に歌って聴かせたとしても、決して甘いムードとなりはしないだろう。ギャグだと思われて流されるならまだしも、”何でアニソン熱唱してんの?オタガ谷。”と生暖かい目で見られるまである。

 

 何気に、とんちが不発でモヤモヤしたまま話が終わったり、湖に身投げを決行したりと、お茶の間を騒然とさせる展開も多かった一休さん。俺はてっきり、紆余曲折を重ねつつも最後には一休さんとさよちゃんが結ばれるという”とんちラブコメ路線”だと思っていたんだが、まさか、一休さんが修行をする為に、寺をあとにするという、放浪ENDになるとは思わなかった。

 

 あれ?これって、ドラゴ〇ボールの天津飯みたいじゃね?

 

 

 それはさておき俺も例に漏れず、これまで数々のLOVE SONGに胸を打たれてたのだが、その全てが吹き飛ぶくらいに一色の言葉は強烈だった。

 

 

 

「そうですよ?センパイの事、好きに決まってるじゃないですかぁ。」

 

 

 

 そりゃ、多少は好かれているだろうとは感じでいたけどさ…。でもそれは、せいぜい戸部以上葉山未満といったレベルの話だったはずだ。そうだお前、葉山はどうしたんだよ?

 

 

 さらっとした口調とは裏腹に、微笑みを浮かべつつ真剣な眼差しを向けてくる一色を前に、頭の中が真っ白となった俺は、呆然とその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一休さん…一大事でござる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第11話

 

は、新右衛門さんの子孫らしい。

 

 

 

 

 

「・・・センパイ?」

 

 

 

 

 少しの間続いた沈黙を、一色が破った。そりゃあ一色にしてみれば、さりげなくではあるが好意を口にしたにもかかわらず、俺がノーリアクション(の様に見えるだけで、動揺して言葉が出なかった)では居心地悪く感じるのも無理はない。

 

 「え…あぁ、うん。」

 

 何とか言葉にしようと声を絞り出したが、この有様で本当に悪いな。

 

 その後も、頭に血を集めてフル回転させようとしたのだが、健闘虚しく俺の思考は空回りするばかりだった。そして一色はというと、変な唸り声をあげている俺に、文句ひとつ言わずにしばらく様子を窺っていたんだが、やがて”ハッ”とした表情を浮かべると、早口で一気に捲し立てた。

 

 「センパイ!もしかして、好きって言われたからといって”俺の嫁だ”なんて思ってるんじゃないですか?好きには違いないですけど付き合うとかそういうのは懸案事項が片付いてないのでまだ無理ですっていうか私の気持ちを知ったからといって調子に乗らないで一度滝にでも打たれて修行してから出直してきてくださいごめんなさい。」

 

 

 あれ?何も言ってないのに即フラれてるんですけど…。

 

 

 俺も色々な(主にフラれる)経験をしてきたが、”好きに決まってるじゃないですかぁ”と言われた相手から、間髪入れずに”ごめんなさい”というのは流石に初めてだ…っていうか、人類史を照らし合わせても、前代未聞の出来事じゃね?俺、マジ革命児。

 

 

 ともかく、ずっとノーリアクション状態ってのもなんなので”あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ”的な、軽くポル○レフ状態に陥りつつも、俺はなんとか声を絞り出した。

 

 

 「えっと…なんか、すまん。」 

 

 

 いや…俺らしくない返事だったとは思うんだよ?普段なら”ちげぇし!”で済む話だからな。だが今回は、一色の意図が全然読めない。これまでも何度となく繰り広げられてきた一色の”ごめんなさい劇場”なのだが、今回はいつもと違って、俺のリアクションには萎んだ風船の様に、全くキレが無かった。

 

 

 「あ、あのっ!センパイ…その…そう!い、今のは違うんです!」

 

 逆に、それに対して慌てたのが一色だ。今考えると、一色なりに変な空気を打破しようと、いつものノリで話を振ってきたのだろう。

 

 だが、打破するどころか俺の返事がアレだったからな…。冗談のノリをマジっぽく返されたら、そりゃ立つ瀬がないだろう。”しまった!”ってのが思いっきり顔に出ていて、ちょっと申し訳なかった。

 

 その後も一色は、何かを伝えようと口を開くも”えっと…違うというか”とか”その…違わないというか”といった調子で、なかなか考えている事を言葉に出来ない様子だった。

 

 一色でも、取り乱す事くらいはあるんだな…。

 

 そんな、テンパっている姿を見て逆に冷静になった俺は、とりあえず一旦の水入りを提案すべく一色に話しかけた。

 

 「なぁ一色、分かったから取り敢えず落ち着こう…お互いにな。」

 

 俺が口を開いた瞬間、一色はびくっと体を震わせた。その後一旦俺に背中を向けて、2~3度大きく深呼吸をすると再びこちらへ向き直り、

 

 「ハイ。」

 

と小さく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほら…マッ缶じゃなくて悪いが。」

 

 俺は、自販機で購入してきた”京都○山名水ロイヤルミルクティ”とパッケージに書かれた缶を一色に差し出した。ちなみに”ロイヤルミルクティ”ってのは和製英語だ。海外のカフェかどっかで”ロイヤルミルクティ、プリーズ”って注文したら、確実に首を傾げられるから気をつけろ。

 

 差し出された俺の手を見た一色は、”いえ、むしろこっちの方が嬉しいです。”と、信じられない様な事を言いつつそれを受け取った。おいおい一色さんよぉ、あまりマッ缶を甘く見ない方が良いぜ?いや、甘いんだけどさ…とっても。

 

 全日本コーヒー協会のホムペによると、コーヒーの香りには癒しと集中力向上の効果があるそうだ。つまり逆説的に考えると、マッ缶を毎日の様に飲む俺は、常に”集中力”と”癒し”を兼ね備えた存在であると言える。

 

 …まぁ、癒し効果はあっても、ぼっちだからあんまり意味無いけどな。

 

 

 俺は一色の横へ再び腰掛けると、自分の缶コーヒーのプルタブを開けた。”ぱしゅっ”と音を立てると同時に、コーヒー豆の香ばしい空気が俺の鼻腔をくすぐった。マッ缶ではないが、これはこれで悪くない。

 

 また、一色のやつはちょっと熱かったのか、缶の飲み口に”ふぅっ”と息を吹きかけながらも”とっても…暖かいです♪”と、一口こくりと飲んだ後に呟いた。

 

 

 こうしてしばらくの間、俺達は互いにティータイムを楽しんでいたのだが、やがて”よしっ!”と呟いたのを皮切りに、一色はポツポツと話し始めた。

 

 「センパイ…クリスマスの時の事、覚えてますか?」

 

 多分…も何も、葉山に告白するも玉砕した一色が、電車の中で俺に決意表明したアレだよな…。それならば、当然YESだ。縦に首を振る俺を確認した一色が、話を続ける。

 

 「あれから、本物って何だろうって…ずっと考えてました。」

 

 ぐはぁ…かつて、雪ノ下と由比ヶ浜の前で大泣きしてしまった記憶が、鮮明に蘇る。うわぁん…アイデンティティクライシスが再びやってくるよう。

 

 「一色…俺、アイデンティティクライシスだから、前にも言ったがそれは忘れてくれ。」

 

 俺は黒歴史を刺激され、悶絶しつつ懇願したのだが、一色は”前にも言いましたが、それは無理です…忘れられませんよ、今でも。”と、真剣な表情を崩さない。

 

 「だって、あの件がきっかけで、私の価値観が大きく変わりましたもん。」

 

 まさか、廊下に漏れ聞こえたような言葉が、人の価値観を左右する程の影響を与えるとは…。なんか俺って、未踏の地に布教に来た宣教師みたいじゃね?高校時代の俺、マジ伝道者。

 

 一色は、なおも話し続ける。

 

 「時間が経つと、本物だった気持ちが思い出になってしまうかも知れません…。だからこそ、今を大切にしたいんです。かけがえの無い気持ちを、古ぼけた思い出になんてしたくないから、一歩踏み出そうと思ったんです。」

 

 そして、それまでのシリアスな空気を吹き飛ばす様な、弾けた笑顔を俺に向けると

 

 

 「だから安心してください。私の気持ちは本物ですよ♪」

 

 

と、ハッキリ言い切った。

 

 

 ここまでハッキリと、好意をぶつけられた事があまり無かった俺は、どうして良いのか分からなかった。ただ、淀みの無い笑顔と真っすぐな視線が眩し過ぎて、俺は一色から目線を逸らしつつ、

 

 「あ…あぁ。分かった。」

 

と返事を返すのが精いっぱいだった。

 

 そんな俺の様子を見た一色は、先程とは打って変わって”にやぁ”と顔を崩すと、

 

 「あれぇ?センパイ照れてますか?照れてますよね?ねっ?」

 

と、嬉しそうに俺の頬っぺたを人差し指で突っつきだした。俺は顔を背けるも、それが火に油を注いだ形となったのか、”えいっ!えいっ”と余計に手数が増えてゆく。ええい、うっとおしいっ!

 

 こんな様子で、一色が突っついて俺が避けるという攻防が繰り広げられていたのだが、やがて一色は手を止めると、満足そうに”ふぅ”と一息ついた。

 

 そして俺から視線を外すと、遠くを眺めながら話を続けた。

 

 「返事は要りません。私…長期戦でいきますから、覚悟しておいて下さいね♪」

 

 ん?長期戦?

 

 「そうです。時間を掛かるかも知れませんが、私もセンパイの本物になってみせます。それに…強力なライバルが2人もいますから、手抜かりは一切許されません。という訳で、これからビシバシアタックしていきますから♪」

 

 ライバル2人って…どう考えても、あいつらの事だよな。っていうか、ビシバシアタックって、物理的な攻撃じゃないだろうな?アルゼンチンバックブリーカーとか。痛いのは勘弁してくれ。

 

 そんな事を考えている俺を余所に、一色は高らかに宣言した。

 

 

 

 「絶対に…”一色、お前がいないとダメだ”って言わせてやるんですからっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、昼ご飯代わりに模擬店で焼きそばとタコ焼きに舌鼓を打ち、校内を適度にブラブラして回ったところでタイムアップとなり、俺達は駅へと向かった。

 

 バスを降りたその足でみどりの窓口へと向かい、切符を購入する一色。それにしても、迷わず”グリーンでお願いします”とか…凄いなお前。

 

 一色の抑えた新幹線が出る時間まで、あと30分って所だ。まぁなんだ…名残惜しくない訳ではないのだが、ここまで来たらあとは電車を待つだけだ。とりあえず、お茶でも飲んで時間を潰すか…なんて思っていたら、一色が恐るべき提案をして来た。

 

 

 「センパイ、プリ〇ラ撮りましょうよー♪」

 

 おいおい、目の死んだゾンビが写った心霊写真が増えるだけだぞ。だから止めておいた方が良いと説いたのだが、結局押し切られてしまった。

 

 

 ここにきてようやく、延ばし延ばしになっていた話に、時系列が追いついたのである。

 

 「あの太陽・・・落ちてこないかなぁ。」

 

 

 

 

 

 「センパイ、どのフレームにしますかぁ?」

 

 「正直分からんから、任せる。」

 

 まぁ滅多に撮らない上に、メカの進化には全く追いついていけない俺だ。ここは一色に全てを委ねるのが妥当だろう。出来れば俺の目もなんとかしてくれ。

 

 「えっ、お友達と撮ったりしないんですか?…って、ごめんなさい。ぼっちですもんね…。」

 

 一色は、心から気の毒そうに呟いた。いや、だから撮った事はあるからね?戸塚(と材木座)と。ぼっちなのは否定しないがな…。

 

 ”それじゃあ、これにしましょう…えいっ”と一色は慣れた手つきでコンソールに入力していく。そして一色が、”ちゃんと決めポーズを取って下さいよぉ?”と俺に促したのと同時に、プリントシール機が”んじゃ撮っから。3・2・1…”と、気だるそうにカウントダウンを始めた。

 

 えっ、マジでもう写すの!?ちょっ・・・タイムっ!

 

 

 ”ぱしゃり”

 

 

 1回目の撮影が終わり、モニターに画像が映し出された。画面の中の一色は、ウインクをしていつもの敬礼ポーズを決めている。流石に馴れているだけあって、どうすれば自分が可愛く写るのかを熟知してらっしゃる。そしてその横には、虚ろな目をしたゾンビが、笑顔を引きつらせて写っていた。

 

 

 

 

 「…後で、目を弄りましょう。」

 

 一色がぼそっと呟く。えっ!そんなん出来るんですか?

 

 

 そんなやり取りをしている間に、”んじゃ2回目撮っから。3・2・1”と、プリントシール械が再びカウントダウンを始めた。ええいっ、同じ轍は踏むまい!

 

 

 ”ぱしゃり”

 

 

 2枚目は、1枚に比べると比較的穏やかに写った。目も腐ってはいるが死んではいない。笑顔は極めて不自然だが、きっとこれ以上まともには撮れないだろう。一色のやつは、てへぺろっとポーズを決めていた。出来上がりに全くの隙が無い。

 

 「センパイ…次でいよいよラストですよ?」

 

 一色の囁きに続いて、プリントシール機が”んじゃ、泣きの1回な。3・2・1”とカウントダウンを始めた時に事件は起こった。

 

 一色は”えいっ”と俺の右腕を引き寄せたかと思うと、自分の顔を俺に近づけて、俺の頬…というより唇のほぼ真横に、”ちゅっ…”と自身の唇を押し当てた。

 

 しっとりと湿り気を帯びた一色の唇の感触が、俺の胸を破裂させんばかりに高鳴らせる。想定外の事態に、腰が抜けるほどに驚いた俺は、一色からの身体的接触に一切の抵抗が出来ず、されるがままになっていた…って、何故このタイミングでっ!

 

 

 

 ”ぱしゃり”

 

 

 

 シャッター音が鳴り止んだ後も、一色は押し当てた唇を離そうとはしなかった。俺の右腕を抱きしめる一色の両腕に”きゅーっ”と力が込められ、強く押し当てられた胸から伝わる鼓動は”とくんとくん”と生々しい音を立てている。そして唇の触れられた部分から、一色の体温がダイレクトに伝わってきて、その部分が発熱したかの様に高い熱を帯びていた。

 

 

 ”ザ・ワールド”

 

 あまりに想定外の出来事に、完全に思考が停止する俺。まるで、時の流れが止まってしまったかの様に錯覚してしまう。

 

 

 だが、時間とは限りあるものだ。やがて”ちゅぷっ…”という音を立てて唇が離され、最後に唇の触れていた部分を、一色の舌先が名残惜しそうに”ちろっ…”と軽くひと撫でした。

 

 その未知なる感触は、耳元で話しかけられた時とは比較にならないくらい、俺を官能的に刺激した。俺は思わず、衝動的に一色を抱きしめそうになったが、既の所で思いとどまった。いかんいかん…今の衝動は、ただの勢いだ。

 

 

 一方、自分から仕掛けてきたにも関わらず、一色は一色で余裕が無かったらしく、顔を真っ赤にしながら、”ホントは唇を狙ってたんですけど…ヘタれちゃいました…。”と、小さな声をなんとか絞り出して囁いた。

 

 

 

 そして、タイミングを見計らったかの様に、全ての仕事を終えたプリントシール機が、”おいお前ら、エロいの撮ってんじゃねぇだろうな?”と、見透かしたような台詞を吐いてきた。

 

 

 

 …まさか、中に誰か入ってんじゃないだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プリクラを撮り終えた俺達が、新幹線の改札を通ってからしばらくすると、16時24分発ののぞみ270号東京行きが、風を切るような音を立てて12番ホームに入ってきた。

 

 「センパイ、本当にありがとうございました♪」

 

 一色は俺に向き合うと、バカ丁寧に頭を下げた。まぁ…ようやく台風一過だな。

 

 「あーっ、私にあんな事やこんな事をしておいて、そんな事を言うんですね!」

 

 ちょっ…一色さん、声が大きいですってばっ!っていうか、”あんな事やこんな事って…具体的にどんな事だったでしょうかね?八幡わかんなーい”と恍けてみたのだが…

 

 「それを私に言わせるなんてっ!セクハラです!今すぐここで土下座してください♪」

 

 あっさりと返された。勘弁してくれ・・・。

 

 俺が軽く頭を抱えた様子を見て、プッと噴出した一色は”冗談ですってば。土下座は次にお会いした時までお預けです♪”と笑いながら言った。

 

 土下座は確定事項なのですね…まぁ、スライディング土下座の練習でもしておくか。

 

 

 

 ”ぷるるるるるるる・・・”

 

 まもなく、発車を告げる音がホームに響き渡った。

 

 それを合図に、一色は新幹線のデッキへと足を進めた。そして再度俺と向き合うと、”それではセンパイ…しばしのお別れです。”と頭を下げた。

 

 「ん…まぁ気をつけて帰れ。」

 

 「ハイ。」

 

 「それと…」

 

 「・・・?」

 

 これは、言おうか言うまいか少し迷ったのだが…まぁ、言うだけならタダだよな。

 

 「まぁ…なんだ。良かったら…また来いな。」

 

 それを耳にした一色は、ぱぁぁぁっと向日葵の様な笑顔を浮かべると、”ハイッ!”と元気良く返事した。俺らしくないだろうけど、喜んでいるみたいだから大目に見てくれ。

 

 ”ぷしゅー・・・”

 

 ドアが閉まり、ゆっくりと列車が動き出した。その動きに合わせて俺も歩き出すが、列車の速度が徐々に上がり始め、それと共に俺も少しずつ駆け足となっていく。

 

 車内の一色は俺に向かって、名残惜しそうに小さく手を振っていたのだが、列車は更に速度を上げ続け、やがて俺を振り切るとホームから旅立っていった。

 

 

 

 

 

 俺は、何かをやり切ったような心地よい疲労感を身に纏いつつも、一色が去った事によって急激に訪れた静寂さに、若干の物寂しさを感じていた…。い、一色がいなくなったからって、全然寂しくなんてないんだからねっ!

 

 

 それにしても…やれやれ、穏やかな3連休のはずだったんだけどな…。

 

 そう独り言を呟きつつ、俺は一色と過ごしたこの二日間を思い出しながら、ホームの端に佇んだまま、列車が小さくなって見えなくなるまで見送り続けた。

 

 

 

 第1章 おわり

 

 

 

 




今回も最後までお付き合い下さり
ありがとうございました。

ひとまず第一章の終わりとなります。


飽きっぽい性格の私が、なんとか
一区切りの所まで持ってこられたのは、
こうして見て下さっている、貴方様のお陰です。

本当にありがとうございました。


後々章分けを行いますが、

第一章 いろは、襲来。
第二章 結衣の逆襲。
第三章 雪乃、荒ぶる。
エピローグ そして伝説へ…

と流れる予定です。

相変わらずの稚拙・遅筆ではございますが、
引き続きお付き合い頂けますと、嬉しく思います。
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