ぼっちじゃない。ただ皆が俺を畏怖しているだけなんだ。   作:すずきえすく

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そして、お気に入りに登録してくださった皆様、
ありがとうございます。

第2話をお届けさせていただきます。
稚拙な文体は相変わらずですが
よろしければ、どうぞお付き合いくださいませ。


※2016年1月28日に加筆修正を行いました。




第2話 マッ缶はa○azonでも買える

【前回のハイライト】

 

 「あ、あの・・・もしかしてタ○リさんですか?」

 

 そんな、見知らぬ私からの問いかけに

 

 「明日、来てくれるかなっ?」

 

 あのお馴染みなセリフを、振り向きざまに間髪入れず返してくれた、サングラスでオールバックな人。

 

 もしかしても何も、どう見てもタ○リさんだよー。

 

 千葉の英雄ジ○ガーさん以外で、生まれて初めて目撃した芸能人…しかもタ○リさんを前に、その驚きと興奮を隠せない私。

 

 

 まさか…それが、モノマネの人だったなんて!

 

 

 ヒッキーは”サングラスからしてモノマネ感たっぷりだろ”って言ってたけど、それ以外は全然見分けつかないよ。だって私、思わず”いいともーっ”って言っちゃったもん。大体、モノマネの人が似過ぎてるのが悪いんだもん。だから、私は悪くないもん。ヒッキーだって、その場にいたら絶対騙されてたもん。

 

 そもそも”大丈夫か?お前…そのうちオレオレ詐欺とかに、引っかかんじゃねぇの?”って、いくら何でも失礼過ぎだしっ!ヒッキーのばかっ!そんなのに引っかからないもん。西山きよし夫妻の出演する振り込め詐欺予防DVDとか見てるから、対策は完璧だもん!

 

だから大丈夫だもん・・・多分。

 

 

 あのあと”タ〇リさんじゃないって、最初から知ってたし!”って、慌ててメールを送ったけど…絶対バレバレだよね。

 

 あぁぁぁぁっ、超恥ずかしいしっ!!私のばーかっばーかっ。

 

ヒッキー…私のメール見て、めちゃくちゃニヤニヤしてそうだよぉ…。

 

 

 この後10分もの間・・・、待ち合わせていた優美子と姫菜が来るまで、私は公園のベンチで、延々と頭を抱え悶える事になるのだった。

 

 

 

第2話 

 

はa○azonでも買える。

 

 

 俺の記憶が確かならば、俺の妹とは小町の事だ。そしておばちゃんは言った。”妹さんが来てはりますえ”と。

 

 それならば、俺の目の前にいるのは小町でなければならないはずだ。ところがだ…目の前にいるのは、どう見ても小町ではない。

 

 キラッキラと輝かせた大きな瞳で、如何にもってな具合で、俺を上目遣いで見つめて来る、あざいことこの上ないこいつの名は一色いろは。

 

 とっても面倒な、俺の後輩だ。

 

 

 「ご無沙汰してまーす♪とってもカワイイいろはちゃんですよぉ♪」

 

 

 片目を閉じて、軽く舌を出し”てへぺろっ”とポーズを決める一色。自分で自分の事を”カワイイ”とか言っちゃいますかね、こいつは。

 

 もしこの展開が、俺ではなく並の男子が相手であれば、遠路遥々恋人でもない女子が訪ねて来たという、不自然極まりない事実に大喜びし、勘違いをした挙句にコロッとやられていたに違いない。だが、幸いな事に(主にフラれる方の)恋愛経験豊富な俺であれば、こんな程度ではグラリともしない。

 

 

 これまでの経験がなければ、危ない所だった…。

 

 

 綺麗な薔薇にはトゲがあるし、画廊の前に立つお姉さんの後ろには、絵画の売買契約書が隠れている。つまり、自分にとって都合の良さそうな展開の裏には、必ず危険が潜んでいるものなのである。増してや、今回の相手はあの一色なのだ…。

 

 また何か、厄介事を持ち込んで来たのではあるまいな…。

 

 

 この様に、ぶつくさと熟考していた俺に痺れを切らしたんだろうな。一色は、口いっぱいにドングリを詰め込んだ仔リスのように両頬を膨らませ、拗ねた表情を浮かべると、”ちょっとぉ、私の事無視しないで下さいよぉ…”と言いながら、俺のシャツの裾を掴んでクイクイっと引っ張った。ちょっ‥おまっ! だから、そういう所があざといんだってばっ!

 

 女子の皆さん、無闇に体に触れて来るのは止めような?勘違いするからさ。八幡との約束だ。

 

 とはいえ、一色の言い分はもっともだ。折角、気合を入れてポーズまで決めたのに、俺のリアクションってば、完全スルーに近かったからな…さぞかし不本意だったに違いない。

 

 ここはひとつ…年長者として、ちゃんと構ってやらなきゃな。

 

 その後、俺の”はいはい。かわいいかわいい。”という答えに”むきーっ”と怒りを露にする一色。なんだよ…折角リアクションし直したのに。お前、カルシウム足りてないんじゃねえの?

 

 

 まぁ…こんな具合で全然話が前に進まないので、俺は挨拶もそこそこに、取り敢えず頭に浮かんだ疑問を、一色にぶつける事にした。

 

 「お前・・・何でここまで来たの?」

 

 そもそも、俺の下宿先を知っている人間なんて限られている。小町を含む家族と戸塚、由比ヶ浜、そして雪ノ下だけだ(材木座は知らん)。なんでこいつが知ってんの?

 

 それに対し一色は、きゃるん♪とした表情を浮かべてウインクしながら答えた。

 

 「やだなぁ、新幹線に決まってるじゃないですかぁ♪」

 

 なんともお約束な回答だが、確かに歩いて来るには大変な距離だ。なにせ、直線距離でもここまで600km近くあるからな。人の歩く速さを4km/hと仮定して、立ち止まらずに延々歩き続けたとしても、6日とちょっとは掛かる計算だ。

 

 それを考えると、江戸時代に踏破した(設定の)東海道中膝栗毛の弥次喜多は凄ぇな!俺だったら歩けるか歩けない以前に、チャレンジする前に心がバッキリと折られるまである…つまり、歩きたくない。ちなみに、三条大橋の珉○前に弥次喜多像があったりして誤解されやすいけど、彼らは架空の人物だ。これ豆な?

 

…っていかんいかん、また話が逸れちまった。

 

 

 「いやそうじゃなくて、俺の住んでる所がよく分かったな」

 

 質問の仕方が悪かったと思って再度訊ねてみたものの…一色から返ってきたのが、”とある筋から、情報を仕入れちゃいましたっ♪”という答えだけ…。

 

 何か、超怖いんですけど…。話し方がきゃぴきゃぴしている分、怖さ倍増だ。なんだよお前…ガ○エージェンシーか何かなの?そのうち、刃のついてない刀を、あちこちで振り回したりし始めるんじゃないだろうな…。

 

 

 

 

 

 この様に、玄関でうだうだとやり取りを続けていたのだが、そこへ大家のおばちゃんがやって来た。

 

 「遠くから、よぉ来はりましたな。それにしても可愛い妹さんやねぇ」

 

 さすがは年の功、リップサービスにもそつが無い。一方一色は、可愛いの一言に気を良くしたのか、満面の笑みを浮かべつつ、けれども事も有ろうに”比企谷いろはですっ。兄がいつもお世話になっています♪”と、のたまいやがった。

 

 ちょっ、おまっ!妹どころか、比企谷ですらないじゃないかっ!

 

 

 驚愕し絶句する俺をよそに、二人はやりとりを続ける。

 

 

 「素敵なお名前やね。今日はお兄さんに会いに?」

 

 「そうなんですよぉ。ちょっと、兄の様子を見たくなりまして♪」

 

 「お兄さんと仲がよろしいんやね」

 

 「ハイ♪大好きです!」

 

 

 よくもまぁ…こうも簡単に、口から出まかせがポンポン出せるもんだな。それとさ、とっても和やかな雰囲気で話してるけど、”大好きです!(下僕として)”とか後ろに隠れてそうで、お兄ちゃんちょっと怖いよ‥。

 

 いやいや、だから俺はお前の兄貴じゃねぇ。

 

 

 「大家さん、兄はご迷惑をお掛けしてませんか?」

 

 「え、そんな事あらしまへんえ。安心してな。」

 

 「よかったぁ♪兄の場合、目がちょっとアレなので…ご近所のウワサになってたりしないか、ちょっと心配だったんです♪」

 

 

 おいそこっ、目だけでご近所を騒がせちゃう俺って一体何!?俺の目力は、ハリウッドスターを凌駕しちゃってるって言いたいの?それとも、人ならざる目とかって言いたいのかね?

 

 一応、誤解の無い様に言っておくけどさ…俺と目が合ったからって、相手が石になったりしないし、ビームが出たりとかもしないから。

 

 

 

 まぁ…子供は半泣きになるけどな。

 

 

 

 

 

 「あー・・・・大丈夫やと思うけど・・・多分。」

 

 

 多分なのかよ。

 

 

 この様に、延々続く二人の会話に対して、ひたすら(心の中で)突っ込みを入れ続ける俺であった。

 

 こいつら、俺をディスる事に全く躊躇が無ぇ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほらっ、これしか無いけど良かったら。」

 

 俺は冷蔵庫からマッ缶を取り出すと、それを一色に手渡した。永遠に続く様に思われた二人の会話だったが、一息ついたのを見計らって一色を自室に招いたのだ。

 

 「うわっ、相変わらずこんな甘いものを…って、よくこちらで手に入りましたね。」

 

 「あぁ。その気になれば、a○azonでお取り寄せ可能だ。」

 

 こっちで暮らし始めて一番驚愕したのは、マッ缶がどこにも置いて無かった事だ。確かに、修学旅行で泊まったホテルの自販機にも置いて無かったけどさ…どこにも見当たらないなんて事は、全くの想定外だった。

 

 何軒も店を回って分かった事なのだが、”MAXコーヒー?あぁ、昔そんなのあったね”ってのが、こちらでのスタンスらしい。一応、以前は全国販売してたんだけど、今は再び、ローカル飲料への原点回帰を図っている…らしい。ソースはWikipediaだ。

 

 

 そんな訳で、日頃から色々とお世話になっているam○zon様のお取り寄せラインナップに、マッ缶が新たに加わったのだった‥ってこらそこっ、ベッドの下なんて覗くんじゃない!

 

 「だって、ベッドの下チェックはお約束じゃないですかぁ♪」

 

 

 

 

 お前は鬼か。

 

 

 俺がマッ缶に思いを馳せている間に、一色はそんな事お構い無しに、俺の部屋のガサ入れを行っていたらしい。いろはす…恐ろしい子!

 

 しばらくして、”ありましたっ!”という大声と共に、一色がベッドの下から引っ張り出してきたのは、セクシーポーズを決めた、胸の大きなお姉さんが表紙の本だった。

 

 「・・・。」

 

 「・・・。」

 

 なんか、ネタっぽく漁ってたら、ガチなやつが出てきました…みたいな感じで、一色は唖然としている。それにしても、訊ねてきた女性に隠してたエロ本を見られる事が、こんなに精神的に来るなんて、八幡知らなかったよ…。相手がドン引きしてるのなら、尚更な。

 

 

 気まずい空気が流れる中、一色が口を開いた。

 

 「…センパイ。」

 

 「なんだ?」

 

 それまで、虚ろな目でエロ本を眺めていた一色だったが、俺の方へ顔を向けると、感情を喪失した様な抑揚の無い声で言った。

 

 

 

 

 

 

 「今日から、デラべっぴん先輩って呼んでもいいですか?」

 

 

 やめてっ!勘弁してっ!

 

 

 だらだらと過ごす予定だった日曜日。ところが、そんな平和を打ち砕かんと、一色いろはという名の炸裂弾が、俺のライフをガリガリと削ってゆくのであった。

 

 

 

 

つづく

 

 

 【おまけ】

 

 「枕の下に写真を入れると、それが夢に出てくるんですよ?」

 

 「まぁ…そういう話も聞かなくは無いな。」

 

 「という事は、センパイのエロ本を枕の下に入れると…。」

 

 「いや、出てこなかった。だから迷信だと俺は断言する。」

 

 「・・・もしかして、既に試しました?」

 

 「・・・あぁ。」

 

 「・・・。」

 

 「・・・。」

 

 「・・・センパイ。」

 

 「・・・なんだ?」

 

 「・・・。」

 

 「・・・。」

 

 「・・・なんか…済みませんでした。」

 

 「・・・まぁ…気にするな。」

 

 

 




第2話の最後までお付き合いいただきまして
ありがとうございました。

以前、溜池NOWという番組で
MAXコーヒーが取り上げられた事があり、
それ以来”飲んだ事無いけど気になる”一品です。

全国販売をしていた時期に飲んでみれば良かったのですが、
いつか買おう買おうと思っているうちに姿を消してしまい・・・
現在に至るわけです。

そのうちa○azon様でぽちって見たいと思います。


それでは、第3話でまたお付き合い頂けるなら
嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。


2020,2.2 加筆修正。

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