ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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最後の方ちょいさぼりました。

ロキファミリアのベルに対する対応がちょいガバガバな気がしないでもない・・・

12/18 最後の方少し変えました


そして少年は開示してしまう

ロキファミリアホーム 黄昏の館の一室にて

 

ヘスティアファミリアの駆け出し冒険者、ベル・クラネルはロキファミリアの主要メンバーと主人ロキに包囲されていた。

ベルのレベル差を覆す手品の種を暴いてやろうと意気込むロキ。本来、冒険者間で互いの能力を探り合うのはタブーだが、ロキはあくまで神。下界で慎ましやかに過ごす人間を愛してはいるが同時に面白おかしく引っ掻き回したいとも思っている娯楽の亡者。気になるんだったらファミリアの団員が獲物の横取りしたことやボコボコにしたことなど一旦おいて悪神らしく吐くまで粘る(神相手だったら殴って吐かせる)。

一方周囲のロキファミリアメンバーはロキを止めることはなく、含み笑いだったり興味津々だったり不信感露だったりしてベルの返答を待つ。

本来団員がロキのような行為をしたら止めるのだが、

 

『我らが主神様が申されているのであれば何も言うまい。私達も聞きたいし。』

 

皆が一級ファミリア特有の団結力で口にせずとも思いを読みとっている。まったく困ったものである。

 

結果として悪神と一級冒険者達が駆け出し冒険者を取り囲む図の完成である。

 

まさに四面楚歌。弱いもの苛め。

 

圧迫面接のはじまりはじまり

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・なぜあなた方に言わなくてはならないんですか?」

 

ベルは取り敢えず逃げの一手。

この状況では遅かれ早かれ魔術について多かれ少なかれ吐かなければならないだろう。しかしだからと言って抵抗しない理屈にはならない。出来るだけ時間を引き延ばしてはかざるを得ない情報量も少なく済ませなければ。何よりこの悪神の物の言い様は酷く気に食わない。

ベルは軽く睨みを聞かせてロキを威嚇する。

 

「おぉ怖!まぁそんな構えんで楽にし。それにあんたのその力、神達(あたしら)の間でのルール破ってるかもしれへんしな。」

 

ロキはずん、とベルに顔を近づけると細い目を少々開いてベルを見つめる。突然近づいたロキにベルは混乱しそうになるがロキの目に言い様のない不快と安心を感じた。

全てを見透かされている様な、否、見透かしている瞳。下界の者(子供達)の嘘を見抜く()の顕現。

隠し事が出来ないからこそ、本当の事を常に言わざるを得ない。だからこそありのままをさらけ出せる安心感、開放感。

目を離そうと思うが、心とは別に目はロキを見つめて離そうとしない。

 

(まずい!このままじゃロキに呑まれる!しっかりしろベル・クラネル!視線程度で思考を止めるな!)

 

「ベル・クラネル。ヘスティアはあんたに神の力(アルカナム)使ったたんとちゃうやろな?」

 

「違う!!!!」

 

「!?いひゃあ!?」

 

質問に突然大声で答えたベルにロキは一瞬驚くが問題はそのあとだった。

ベルは止まりかけた頭で腕を何とか動かして近くにあったロキの体を突き飛ばしたのだ。そして突き飛ばした際に触った部分が胸だったのだ。

いくら絶壁、まな板、RJ、中身はエロオヤジ、暇潰しで戦争起こすキチガイたるロキと言っても一応女性。自分の大事な部分を、しかも男に触られてはたまったものじゃない。

 

「な、何すんねん!人の事突き飛ばしてその上胸触るなんて!自分、どうなるか分かってるやろな!?」

 

「うぅぅうるさいです!顔が近いんですよ顔が!それに胸って!男のくせに胸触られたくらいでどうこう言わないで下さい!」

 

瞬間、ロキの顔が凍った。

周囲のロキファミリアメンバーは「あ~あ、言っちゃった」と言わんばかりにベルを憐れみの目で見ている。その目の理由は分からんが放置していたあなた方がする目じゃないだろ!とロキファミリアメンバーを睨むベル。

するとゾワリ!と背後から強烈な寒気を感じた。恐る恐る振り返るとそこには幽鬼のように佇むロキの姿が。うわ言のようにブツブツとベルに何かを呟いていた。ベルの全身に鳥肌が走る。

 

「・・・・やない。」

 

「・・・え?え?な、何ですか?」

 

「男やない!!ちゃんとあるわボケェ!!!!」

 

「え?嘘?だって感触なんてこれっぽちも・・・ってうぉ!?物を投げないで下さい!」

 

「うっさいわアホォ!!気にしてることさらっと貶しよってからに!これでもあるんじゃボケェ!死ね!死にさらせぇ!!!」

 

「痛っ!ちょっと落ち着いて下さい!待ってロキ様!椅子はイケナイ!冷静になって!?」

 

「知るかぁあああああ!!!野郎ぶっ殺したるうぅぅぅ!!!」

 

「ちょっとロキ様暴走しすぎ。ティオナ!」

 

「はいはーい!」

 

今まさに怒りに任せて座っていた椅子をベルに振り下ろさんとしているロキをティオナ、ティオネのアマゾネスコンビが取り押さえ、部屋から追い出そうとする。主神に対する扱いがあまりにもぞんざいではないかと目を疑うベルだが、周囲のメンバーは特に変わった様子もなくいつもの光景として処理している。まぁあんな癇癪起こす相手なら当然か、とベルも何となく納得した。

 

「離さんかい二人とも!!あのガキにはSEKKYOが必要なんや!!」

 

「今のロキは何をしでかすか分からないもん。私たちと一緒に別室待機ね。」

 

「黙れド貧乳!!」

 

「・・・屋上行こうか・・・久しぶりにキレちまったよ。」

 

ロキとティオナがお互いに肩を組んで首を絞めあいながら部屋を出ていく。ゴリゴリと骨がこすれるような音が聞こえた気がするがベルはあくまで気のせいだろうと自分に言い聞かせる。女怖い。

 

「争いは同レベルの間でしか起きないって言うけど、まさにその通りね。」

 

ティオネが出ていった二人に続いて呆れた溜息をついてからその後を追う。騒がしさの原因たるロキがいなくなったことで部屋は一時的にではあるが、静寂が訪れた。

 

「さてクラネル君。ロキもいなくなったことだし、ここは冒険者同士水入らずで会話でもどうかな?」

 

「・・・会話って、どうせ話題はロキ様と変わらないんでしょ?」

 

「そう白状すれば君は教えてくれるのかな?」

 

「・・・経緯はどうあれ、治療してもらった恩があります。ある程度はお教えします。」

 

「ある程度か・・・妥当だね。そういうしたたかなところ、冒険者にはある意味最も必要なものだ。よく覚えておくといいよ。」

 

フィンの言葉に流石に抑えきれずにあからさまに舌打ちをした。

 

(主神の暴走を放置して、今も言わせるような空気を作っている奴が言いやがる)

 

外見は兎の様に愛らしく、優しさと心の強さを兼ね備えるベル・クラネルがロキファミリアのおかげで口が悪く、舌打ちしちゃうダークサイドベル・クラネルが誕生しそうな勢いである。

 

「それじゃあまずあなた方の考察を聞かせてもらえますか?僕の何が不思議で、その不思議の正体は一体何なのか。」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

フィンはロキが部屋から退場させたことを失態だと内心唇を噛む思いでいた。

あのままロキを放置させていたら話が進むことは恐らくなかっただろうが、その代わり『神は嘘を見抜ける』というカードをみすみす捨ててしまった。しかしそれは問題ないだろうとフィンは考えていた。

部屋にいる団員は皆一級冒険者だ。いつものメンバーで集まったら結果として駆け出し冒険者の一人と言わず100人単位でも威圧しかねない形で取り囲む形となってしまった。だがこの場においては適切だ。見たことも聞いたこともないスキルとも魔法ともつかない能力を使う者が相手なのだ。やりすぎ位が丁度いい。それにどれだけ何と言おうと駆け出し冒険者。これだけの冒険者に囲まれればゲロってくれると思っていた。しかし返答は

 

『まずあなた方の考察を聞かせてもらえますか?』

 

ここで誰かの考察にイエスと答えればそれですんでしまう。つまりベルはてきとうな情報を自分から用意しなくともロキファミリア側が用意してくれる状況を作ったのだ。

ここにロキがいれば嘘を見抜けたのだが、生憎ロキはティオナと身体的な醜い争い、団栗の背比べの最中である。

まったく我らが主神は情けない、と人知れず溜息をつきたくなるフィンであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ではまず私から。」

 

そう言ってまず名乗りを挙げたのはリヴェリア。

 

「クラネル君の能力を整理すると

 ・魔法の一時的なレジスト

 ・レベルに見合わない並外れた身体能力

 ・能力かどうかは分からないが、スライムのようなアイテムによる治癒

の3つになる。ここまではいいか?」

 

ロキファミリアメンバーは頷くが、ベルはあくまで返さず、表情を固めてリヴェリアの出方を待つ。顔に似合わず可愛いだけではないようだ、とリヴェリアの中でのベルの評価が上がった。

 

「・・・沈黙は同意とさせてもらおう。私の予想は君が魔法の無効化(レジスト)のスキルとアイテム作成のスキルの保有していること、身体強化系の魔法を使える、といったところか。」

 

「リヴェリア、こやつはlv1じゃぞ。スキルは愚か魔法の保有なぞ考えられんわなぁ。」

 

「あくまで予想だ。それにこの子はベートに魔法まで使わせた。そうでも考えないと説明がつかない。」

 

リヴェリアはベルのその表情、眉や目、口元などの動きを注視する。エルフの女王としても一級冒険者としても人の感情を読み取るのが上手かった。もし今言った中に正解があれば何らかの形で表情にでるはずだ。しかしベルにその兆候は見られない。先程と同じ、能面の様に表情を動かさず、話す気など欠片もない様子だ。

 

「私もいいですか?」

 

そう声を発したのはレフィーヤ。ベルの真っ正面に来るように移動するとベルの目を真っ直ぐに見つめ、推理を開始した。

 

「あなたが使っているのは正確には魔法じゃない。そうでしょ?」

 

ベルの瞳が微かに揺れた。レフィーヤはそれを見逃さない。

 

「恐らくエルフのように先天的に教え伝えられてきた魔法の様なものだとは思うけれどあなたは人間(ヒューマン)。たまに勘違いしているエセ魔法は聞くけれどそんなものじゃない。よく言えないけれどもっと理論的で体系化されているもの。もっと別な、恩恵で授けられたものじゃない。私達冒険者が『魔法』としているものの理を外れたもの。違う?」

 

レフィーヤの確信を持った発言。実際にベルの不思議な力を使った戦闘を見たからこそ言える魔法使いの直感。それをあらかじめ聞いていなかったアイズ以外の3人は目を見開き、驚きを隠せない。

一方ベルもほとんど正解に近い答えを出され、感心するとともに観念したかのように溜め息をつくと説明をし始めた。

 

「・・・まぁ大体合っていますよ。」

 

「まさか!じゃあ君のそれはスキルでも魔法でもないという事か?」

 

「待てフィン!もしそうだとしたら、この坊主はどこでそんな力を手に入れた?」

 

「・・・教えてくれるかい?クラネル君。」

 

「・・・僕は師匠に教えてもらいました。冒険者になる前、大体4年前くらいから。」

 

「師匠・・・?君のその力は君だけのものではないという事か。」

 

「ええ。でも師匠以外に使っている人なんて見たことないですし、僕以外に師匠には弟子はいませんでした。」

 

「その師匠がいまどこにいるか分かるかい?」

 

「さぁ、オラリオに到着する少し前に別れたので分かりません。本人も特に行先も告げずにどこかへ行ってしまいましたから。」

 

ベルはしっかりとロキファミリアメンバーを、特に魔術の特異性に気がついたレフィーヤを見据えてはっきりとした口調で話す。

その姿にどうやら嘘ではないようだ、と全員が確信する。

 

「・・・もういいですか?情報も提示しました。そろそろお暇させていただきます。」

 

そう言うとベルはベットから立ち上がり、レフィーヤの目の前に立ち手の平を出す。アクアちゃんの入った試験管を返すように意思表示する。だがレフィーヤはベルに渡そうとはしない。まだその手の中に試験管が握られている。

 

「最後に一つ。あなたのその能力、何て呼ばれているの?」

 

「・・・魔術。師匠はそう呼んでいました。」

 

さっさと返せと言わんばかりに手の平を再度レフィーヤの前で広げるベル。レフィーヤはフィンをみて、頷かれるとアクアちゃんの入った試験管をべるに帰した。

受け取ったベルはもう用はないと言わんばかりに黄昏の館を後にするため部屋から出ていこうとする。

 

「クラネル君!」

 

フィンの大きい声にベルの脚が止まる。

 

「すまなかった。根ほり葉ほり聞くような真似をしてしまって。だが用心しておいたほうがいい。君のその魔術という力も、光る腕と背中もここではあまりにも特異で珍しい。娯楽に飢えた神だけではなく冒険者からも狙われかねない。注意しておいてくれ。いざというときは僕たちも力になろう。」

 

「・・・ご忠告感謝します。」

 

本来ベルは『あんたらが言う様に仕向けたんだろ!』と文句の一つでも言いたかったが、相手は1級ファミリアの中核戦力である。下手な事言って波風立てるより、とりあえず『困ったら頼れ』という言質はとったため、いつか使わせてもらおうと胸にしまっておくことで今は我慢した。

そして今度こそベルは部屋からの脱出がかなった。

ベルはついにロキファミリアによる圧迫面接から逃れることが出来たのだ。少しの情報を犠牲にして。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ヘスティアファミリア根城(ホーム)にて

 

ベルが帰る頃には空はもう夕暮れ色に染まっており、自分がどれだけ黄昏の館で寝ていたのかを自覚した。あんな根ほり葉ほり聞いてくる連中に面倒見てもらったのは不覚であったと反省するベル。

 

今度からは相手ファミリアの事も考えて喧嘩売ろう。

 

・・・そうじゃないでしょ。

 

「ただいま帰りましたー、ってヘスティア様おかえりなさい。帰られてたんですか?」

 

ベルが教会の地下室に入るとソファに座ったヘスティアがいた。足をテーブルの上に置き、何だかやさぐれている感じだ。何かあったのだろうか?

 

「ああ、ついさっきね。友人への頼みごとがあってね、実はその帰りに面白い話を聞いたんだ。」

 

「へぇー。どんな話ですか?」

 

「実はある酒場で喧嘩があったそうなんだ。」

 

「(ビクッ!)へ、ヘェ~。物騒な話ですね~。」

 

・・・ベルの体が跳ね、嫌な予感が走る。

 

「まったくだよ。しかもその喧嘩、駆け出しの冒険者とロキのところの一級冒険者が戦ったらしいんだ。」

 

「(ビクビクッ!!)そ、それはまた命知らずがいたもんですね~。」

 

(いや待て!まだ大丈夫!他の連中が喧嘩起こしたのかも知れないし!)

 

・・・さっきより大きく跳ね、ベルの憐れな現実逃避は加速する。

 

「本当だよね~。そいえばその駆け出し、白い髪に赤い眼をしていたんだって。」

 

「ず、随分特徴的な外見をしているんですね~。」

 

(まだ、まだ行ける!僕の他にもいるだろ多分!髪の白い、目の赤い冒険者なんて!)

 

・・・そうそういるものではない。それに一晩に二度も一級冒険者を相手にした馬鹿野郎が現れる訳がない。

 

「兎みたいだったらしいよ~。それでね、その冒険者、ベル・クラネルって名乗ったそうだよ。」

 

「へ、ヘェ~。ソれはドこのベル・クラネルなンでショーねェ~。」

 

(はい終った!確定!僕しかいないよねそりぁ!)

 

ここで素直に謝ってしまえばいいものを、ベルは自分の背後から発せられるプレッシャーに振り返ることが出来ない。重い。物理的にも精神的にも重い!

ベルは今ヘスティアを見たら多分死ぬ気がした。スイーツ。

 

「完全にベル君しかいないよねぇ?ベ~ルく~ん?なんで僕を見ないんだい?」

 

「そ、ソンナコトナイデスヨヤダナ~ヘスティアサマ~ハッハッハ。」

 

ロキファミリアのプレッシャーなんて目じゃない!あれが可愛く思えてくるレベルだ!

 

 

 

「・・・ベル君、こっち向きなさい。」

 

「イエスマム!!」

 

低い声で発せられた言葉に本能は逆らう事を止め、ベルはすぐさまヘスティアに向き直る。

・・・振り返ったベルが見たものは、髪が逆立ち、怒りをあらわにせず、微笑を浮かべるヘスティアの姿。

いつもならとてもかわいらしい、ベルにダイビングおかえりなさいを繰り出すヘスティアだが、今はそんなもの微塵も感じられない。

 

ベルは思う。

般若だ。般若がいる・・・。

 

「ベル君、今失礼なことを考えたね(ピキピキ)」

 

「め、めっそうもない!ヘスティア様はいつも通り美人できれいだなと思っていました!」

 

「・・・嘘、ついたね?」

 

「あ、」

 

 

 

 

 

 

 

「ベル君、正座。」

 

 

 

 

 

 

 

 

この後朝になるまで説教食らった。




何だかヘスティアがしっかりものになりつつある・・・どうにかせねば・・・

次回は怪物祭やります。神の宴は多分カットします。すまない・・・カットしてしまってすまない・・・

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