ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中) 作:ヤママ
話はあまり進まない。ごめんちゃい。
今年は多分これで終わり。皆さんよいお年を。
「ベル君、反省した?」
「はいそれはもう。二度と酔って喧嘩なんてしません。」
ソファで座るヘスティアに、ベルは正座で痺れてしまった足をかばうように四つん這いになりながら顔をあげ、真面目な口調で答える。まったくもって様にさらない。
ヘスティアはその姿に溜め息をつく。手間のかかる子ほど可愛いとは言うが、せめて自分と仲の悪いロキとは問題を起こさないでくれ、と思うヘスティア。
「ヘスティア様・・・ご心配おかけしました。」
「まったくだよ!ダンジョンで無茶するならまだしも、いや、あまり無茶してほしくはないけど。酒場の喧嘩で血まみれになったって聞いた時の僕の気持ちが分かるかい!?」
ヘスティアの終わったと思っていた説教が再開しそうになり、ベルは諦めるように項垂れる。今回に関しては自分の浅はかさが招いたこと。煮るなり焼くなりお気の召すままにどうぞ、といったところか。
「あぁもう!そんなに気を落とさないでおくれ。何はともあれベル君が無事でよかったよ。」
そう言ってベルに笑顔を向けるヘスティア。何だかんだベルの事が大好きな主神様である。
その姿にベルは見惚れている。この人(?)なら何があっても自分をきちんと叱り、そして受け入れてくれるだろうと。ヘスティア様マジ天使。神様だけど。
「それで?ロキのとこで変な事されなかったかい?」
「えっと・・・非常に言いにくいんですけど・・・魔術のこと、少しだけですけど喋っちゃいました。」
瞬間、ヘスティアは頭に鈍い痛みを覚えベットへとフラフラとおぼつかない足取りで歩き、そのままうつ伏せにベットへと自由落下の如く倒れこんだ。
「ヘスティア様!?大丈夫ですか!?気をしっかりもって!ヘスティア!!ヘスティア!!」
「気をしっかり持てとか・・・だいたいベル君のせいなんだけど・・・」
ベルの呼び捨てにも反応出来ないくらいヘスティアの精神は疲れきっていた。彼女はそのまま気を失うように眠ってしまった。
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「だから!おみゃーはシルのおっちょこちょいにこれを届けるにゃ!」
「すみません。話が見えないんですけど。」
豊穣の女主人の前でベルと猫人が話し合っていた。
先日喧嘩を起こしたことを詫びに豊穣の女主人へと訪れたベル。ミアに頭を下げると
『店の外に出たから許してやるよ。今度やったら承知しないけどね!』
と豪快な笑いと背中への平手打ちで事は収まった。あとはベルはよく食べる方なので、今後も店に金を落とすように言われた。何だかんだいい人だなぁ、と思い、店を出たベル。しかしすぐに店員の猫人が財布片手に出てきて、ベルにそれを渡すと説明を始めたのだ。最も、その猫人は断片的に伝えているのだろうか、ベルは自分に何をしてほしいのか、全く分からなかった。
「なんで分からにゃいにゃ!やっぱりおみゃーは噂通り脳みそ筋肉にゃ!」
「おい待てそのネタどこから拾ってきた!」
「そこらじゅうに広まってるにゃ。命知らずの駆け出しがギルドの受付嬢にシめられてる噂。」
「マジかよ・・・エイナさんのバカ・・・」
そのまま膝をついて四つん這いになり項垂れるベル。その姿を見て猫人は呆れた声で「にゃに喧嘩沙汰起こしておいて今頃落ち込んでるだか・・・」とベルを見下ろすような形になっている。
「・・・何をやっているんですか?アーニャ」
なんやかんやしていたら店の陰から金髪のエルフが出てきた。こっちもこっちで四つん這いのベル見て不信感MAXといったところか。
「この脳みそ筋肉が自分が脳みそ筋肉って呼ばれてるのに絶望してるだけにゃ。」
「やめて・・・もう脳みそ筋肉って言わないで・・・」
涙目でかつ嗚咽混じりに訴えるベル。とてもじゃないがベートと喧嘩したとは思えないほどの弱虫ぶりだ。
「ところでアーニャ、シルの財布のことは伝えたのですか?
「リューはアホにゃ。そんなこと、一々説明しなくても分かるにゃ。」
「いや、分かりませんよ・・・言ってくださいよ・・・」
回り道になったもののシルに財布を届けるということが分かったベルは立ち上がり、自分の手にある渡された財布をポケットにしまうと祭りをやっている闘技場辺りへと向かうことにした。
「っとその前に、ところで
「毎年やっているガネーシャファミリア主催のお祭りですよ。ダンジョンから連れてきたモンスターを
「要するに、えらくハードなお祭りってわけにゃ。仕事さぼってまで行ったっていうのにやっぱりシルはあほにゃ。それとシルの言う通り一言『分かりました』って言ってほしいニャ脳みそ筋肉。」
「ベル!僕にはベル・クラネルっていう名前があるんです!脳筋って呼ばないで!」
「ちなみにシルはちゃんとお休みをもらっています。クラネルさん、お願いできますか?」
「フー!フー!・・・まぁそういう事でしたら了解しました。配達、任せてください!」
ベルは金髪のエルフに笑顔で答え、猫人には不満たらたらな視線を向けるとグーで自分の胸を軽く叩き、風でもおきそうな勢いで闘技場方面へと向かっていった。
「それにしても、脳みそ筋肉におつかいにゃんてできるのかにゃあ?」
「そんなこと言ってはいけませんアーニャ。せっかくのシルの想い人なのですから。」
アーニャのベルへの熱い脳みそ筋肉風評被害をリューがたしなめる。アーニャはオーダーを間違えたり
「おじさん!綿あめ一つ!」
元lv4冒険者の視力で見た先には、凄い勢いで出発した割には露店の列で足が止まっているベルの姿が。
・・・まぁ仕方ないよね!いくら冒険者っていってもベル君14歳だし!遊びたい年頃だし!田舎から出てきた右と左は分かるけど上下斜めはまだいまいち分からない少年だし!
「・・・これはアーニャの言う通り、ダメかもしれませんね。」
一人誰にも聞こえないように呟くと仕事を続けようと店内に戻るリューだった。
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あるカフェの一角、大通りに面するテラス席でロキとフレイヤが向かい合って席に座り、ロキの傍らにはアイズが控えている。
ロキは面白そうに、しかし少々睨みを効かせてフレイヤを見つめる。そんなロキに、フレイヤはただ小さく微笑み返すのみ。
「またどこぞのファミリアの子供にちょっかいだそうとしとるんか?そんで?どないなやつなんや?美の神の御眼鏡にかかったんは。」
「人の話を聞かないで突っ込んで行ってしまう、見てるこっちがハラハラしてしまうような子。」
「なんやそれ。そんなんどの
そう言ってロキは横に控えているアイズをニヤニヤと見つめる。思い当たる節が多すぎる、というより日常茶飯事的に身の丈を超える危険に突っ込んでいくアイズとしては、申し訳なく思うところでもあり、思わず視線をずらしてしまう。そんな姿をフレイヤも可愛らしいと思ったがロキは何かを感じ取ったのか、睨みがきつくなったので少々肩をすくめてから本題へと戻る。
「ええその通りね。でも綺麗だった。透き通っていた。今まで見たことの無い色をしていた。ちょっとまぶしすぎるきらいはあるけれど。見つけたのは本当に偶然。たまたま視界に入っただけ。」
初恋の相手のように大事そうに語るフレイヤ。黒のベールで包まれた顔から赤く染めた頬を覗かせている。その姿は、口元だけだというのに男女関係なくすべての生き物を魅了させる。
「ごめんなさい。急用を思い出したわ。ごめんなさいロキ、また今度。」
「っておい!・・・なんやあいつ。しかも勘定もこっちもちかいな・・・。」
突然席を立ち、有無を言わさずに出ていったフレイヤ。ロキはいきなりのことに呆然としているが、一方アイズは表情の出にくい顔にわずかに眉間にしわを寄せ、難しい顔をしていた。
「どないしたんやアイズ?」
「いえ・・・何でも」
そういうアイズの視線の先には、先ほどロキとフレイヤの会話の際にベルがカフェの前を通りかかった大通りがあった。
(そういえばベル、色々持ってたな。綿あめとか焼きそばとか)
祭りということもあり、ベルも露店の商品を食べ歩きしているのだろうか?と推測するアイズ。彼女にとって露店といったら愛してやまないじゃが丸君。知らない相手だろうが、見知った相手だろうが、美味しそうに食べ物を頬張っている姿を見せられては自分も食べたくなるというもの。
「ロキ、じゃが丸君食べに行こう。」
「なんや!アイズも祭り楽しみたかったんか!アイズたん萌え~~!!よっしゃ!おごったるでぇ!!」
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「・・・すごい人だな。こりゃシルさん見つけるのは苦労しそうだ。」
露店と露天の間で小休止するベル。
田舎では見られなかった列をなす露店につい心踊らされて1500ヴァリスほど食べ物に散在してしまった。魔術師的に資産管理は重要なステータスであるが、今買った食べ物の原価を考えれば考える程気分は沈む一方である。
腰を下ろし、うなだれるベル。しかしその両手には綿あめと焼きそば。はたから見れば結構楽しんでいるように見える。
「あ、いた!ベル君!」
聞きなれた声に顔を上げるとヘスティアがいた。いつも通りの白のワンピースに加えて今日はメッセンジャーバックのような背負い方で何かを持っているようだ。自然とたわわな胸の谷間を強調するように風呂敷がヘスティアの谷間に食い込んでいる。ベルは思わず青少年らしく目を奪われてしまう。
「・・・・・・・・・・・(胸ガン見)」
「ベル君?一体どこ見て・・・うひゃああああ!?!?」
ベルの視線に気が付いたヘスティア。処女神であり、天界において欠片として男っ気のなかった彼女にとって男の、しかも意中の相手からのそういう視線にどう対応すればいいか分からず、とりあえず本能的に声を上げて胸元を両腕で隠した。しかしその後はどうすればいいか分からず、頭を混乱させながら目をグルグルさせている。
「ベベベ、ベル君のスケベ!!!」
「――スケ!?と、とりあえず場所を移しましょうヘスティア様。ここではどうにも・・・」
「な!?場所を変えるって、いったい何するつもりだい!?僕としては君が望むっていうのなら
「な、何言ってるんですか!?周り見てください!」
ベルにそう言われてヘスティアが勢いにまかせて周囲に目を走らせると面白い見ものが出来たと言わんばかりに自分たちを見る民衆の群れが。老若男女問わず、嬉々とした目で次はどんな口喧嘩をしてくれるのかと楽しみだと言わんばかりだ。
「どうした嬢ちゃん!もっと爆弾発言頼むぜ!」
「浮気なら男の玉を蹴ってやんな!そうすりゃどんな男でも簡単に手なずけられる!」
四方八方から歓声のオンパレードだ。場所と状況を一旦落ち着いてようやく飲み込めたヘスティアは顔を真っ赤にして俯き、固まってしまった。その姿を見てベルはチャンスとばかりにヘスティアの手を引き、自分達を見物にしていた群衆の中へのまぎれるのだった。
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「ヘスティア様、落ち着きましたか?」
「・・・うん。ごめんねベル君、取り乱しちゃって。」
「いえ、もとはと言えば僕がその・・・ヘスティア様のその・・・む、胸を見なければよかっただけの話ですから・・・。」
人混みの激しい中から一転、ベルに手を引かれてヘスティアが来たのは闘技場前の広場。芝生が敷いてあり、どの人もある程度の間隔でプライベート領域が形成されていたため、落ち着いて話をするにはよい場所だった。
互いに顔を真っ赤にさせながら謝罪するベルとヘスティア。こうなった原因がお互いに疎い性的な事柄であるため、どう切り返しすればよいか分からず、固まっていた。
「と、ところでヘスティア様はなんで祭りに?」
最初に動いたのはベル。
「あ、あぁ。君へプレゼントがあってね。それにせっかくのお祭りだろ。だから、その・・・デートしようぜ!」
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ガネーシャファミリアの闘技場、地下倉庫では見張り役の団員達が全員涎をたらし、だらしなく惚けて地面に突っ伏していた。
ダンジョンより運ばれてきたモンスターがもし抜け出すようなことがあったらすぐに始末出来るようにするために、見張りに割り振りされるものは腕利きである。
そんな彼らを無力化した女神が彼らには目もくれずモンスターが入れられた檻へと足を進める。それまで檻の中で暴れていたモンスター達はたちまち静まり返り、目の黒い部分を縦に細くして魔性を感じさせている。そんなモンスター達の中、女神は一匹の白毛の巨大なゴリラのようなモンスターの前で立ち止まる。
「そうね。あなたがいいわ。」
女神が檻の間にから手を伸ばし、モンスターの頬に触れる。モンスターが暴れる様子はなく、ただ女神の手を受け入れるのみ。
「あぁだめね。しばらくは見守っていようと思ったのだけれど、つい手を出してしまいたくなる。」
その言葉一つ一つをモンスターが理解することは出来ないにも関わらず、声色だけでも本能を魅了されてしまう妖艶さ。その妖艶さを持って女神はモンスターに
「さぁ、小さな私を捕まえて。」
女神やモンスター達は気付いていないが、僅かに銀色の液体が天井を這いながら両名を捉えていた。
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オラリオの街が一望出来そうなほど時計台、大きな鐘がある塔の頂上で一人の男がきれいに整えられたコートをたなびかせて闘技場を見下ろしている。よくみるとコートから若干覗かせる左腕や指先がエメラルド色に光っているようにも見える。
「ふーん。やっぱりフレイヤはシルバーバックをクラネル君に当てさせるか。でも今のクラネル君なら簡単に倒せるだろうからなぁ。いやーどうしたものかなぁ。そろそろオラリオでも死ぬ位の思いしてほしいねぇ。」
男は指先で額を何回か小突くと目を大きく見開き、思いついたような様子だ。
「そういえば地下で拾ったヤバそうな植物があったな。アレを当てさせてみるか!アレならクラネル君でもベリーハード位だろうから大丈夫だろ。いやー、ルナティックな相手を当てないなんて、私ってなんて優しいんだろ!ほんとこんなに素晴らしい師匠がいるなんてクラネル君は恵まれてるなぁ!果報者だなぁ!!」
男は一人で勝手にテンションをあげると懐から試験管をとりだし、その中身を地上へと落とすと同時にボソボソ何かを呟いた。地上に落ちた銀色の液体はまるで意志があるかのように動きだし、やがて地下へと向かっていった。その姿を
「さぁて、前と同じように私のいい酒の肴となってくれよ?クラネル君?」
師匠登場!
ソードオラトリア編することあったらロキファミリアと師匠絡ませます。