ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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ようやく一巻分おわり。次回からたぶんリリ回。


そして少年は半身を与えられる

『・・ル君!・・きて!・・・べ・・ん!起きて!!!』

 

自分を呼んでいると思われる必死さのうかがえる声にベルは意識を覚醒させた。

 

「ん・・・んあ・・?」

 

「ベル君!起きたんだね!」

 

「ヘスティア様・・・あの植物は・・・っつ!」

 

ベルは起き上がろうとするが突如胸の脇の方に鋭い痛みを感じて手で押さえる。肋骨をやられたのだろうか?ヘスティアも心配そうにベルの手を持ち、ベルを支える。回りを見回すと先ほど自分を打ち飛ばした植物とそれに対峙するように構えているロキファミリアの4人、それに触手の壁で自分達が囲まれていることが理解できた。

 

「どうしてロキファミリアが?」

 

「気絶したベル君が襲われそうになっていたところを助けてくれたのさ。あのアマゾネス君が僕たちを逃がそうとしてくれた時に触手が壁を作ってね。」

 

そういってヘスティアは植物の本体を忌々しそうに眺める。ベルとは違いアイズ、ティオナ、ティオネ、レフィーヤの4人と植物の戦闘を見ていたヘスティアは何となく4人に後がないことを理解していた。だからと言って状況を好転させられる術を持ち合わせている訳でもない。なす術なしか、と絶望していたところでレフィーヤが触手に捉えられ、首を締めあげられ、振り払わんと必死にもがいていた。

 

「ったく!世話の焼ける!!」

 

締め上げられるレフィーヤの姿を見たベルは肋骨に走る痛みを気合で無視し、アゾット剣を強く握ると飛び出さんとする。が、ヘスティアがベルの足を掴んでそれを阻む。

 

「どうして止めるんですか!?」

 

「待ってベル君!あのモンスターは君じゃ倒せない!今度こそ死んじゃうよ!あれは雪崩だ!災害に突っ込むのは愚か者がやることだよ!!」

 

「だからって見捨てられるわけないだろ!!!」

 

「最後まで話を聞け!この脳みそ筋肉!!」

 

「!?」

 

ヘスティアには似合わないあまりの怒張のこもった叫び声と主神にまで『脳みそ筋肉』と言われたショックからか、ベルの動きは固まった。その様子を確認した彼女は背負っていた風呂敷を広げ、中に入っていた鞘に収まったナイフをベルに渡した。ベルはナイフを鞘から取り出してみる。刀身には神聖文字(ヒエログリフ)が刻まれ、鞘にはヘファイストスの刻印がある。

 

「ヘスティア様、これは一体・・・」

 

「プレゼントさ。僕とベル君だけの特殊武器(スペリオルズ)。名付けて神の刃(ヘスティアナイフ)!」

 

神の刃(ヘスティアナイフ)・・・」

 

「ベル君それ貸して?後、背中見せてくれるかい?ほら早く!」

 

突然のプレゼントに喜びたいベルだが、状況が状況だけにどう反応すればよいか分からない。ヘスティアはそんなベルからナイフをひったくり、ナイフに自分の血を垂らすと、そのままベルの背中への神の血(イコル)を垂らした。

その瞬間、ベルは魔術回路が外部の何かと接触したような感触を味わい、思わず目を見開いた。

本来魔術回路というものはいわば内臓のようなものである。他者の魔力が介入することはあっても回路自体が接続しあうことなどそうそうない。それこそ、魔術師間での性交でもなければ。

 

「ヘスティア様、何をしたんですか?」

 

「ベル君とナイフをつないだのさ。このナイフは生きている。使い手の、君自身の成長に呼応してナイフも強くなるんだよ。」

 

そういうとヘスティアは、ベルを自分と向き合わせるように回転させた。その目はベルを真っ直ぐに見据えて、離さない。

 

「ベル君言ったよね?僕が君の事を信じていれば、それだけで強くなれるって。

 でもそれだけじゃダメなんだ。僕だけが信じるなんて納得出来るもんか!僕たちは家族(ファミリア)なんだから、ベル君にも僕のことを信じてもらわないとね!」

 

ヘスティアはナイフの柄の部分を逆手で持ってベルの胸をこつんと叩いた。

ベルはナイフの握られたヘスティアの手を優しく両手で包むとそのままナイフを受け取った。瞬間、体中の全魔術回路がナイフへと接続を開始した。

 

「これは・・・!!」

 

エメラルド色に光る黒いナイフとベルの背中と右腕。ベルは感覚として、それまで32本あった回路が2倍の64本になっている事を自覚する。成程、生きている、呼応するとはよく言ったものだとベルは感心した。

 

「どうしたんだいベル君?いきなり魔術を発動させて。」

 

「・・・いえ。どうやら魔術回路がナイフに出現して僕のと接続したみたいです。」

 

「えっと・・・つまりどういうこと?」

 

「パワーアップしたってことです!!」

 

今なら出来るかもしれない、いや確実出来る、魔術回路が倍になった今ならば!!!

 

ベルは内ポケットから水月霊液(アグミス・ローグラム)を取り出し、難なく自分の周囲に従わせる。その姿は、ベルが初めて師匠に助けられた、村のゴブリンを駆逐した師匠そのものだった。

 

「ヘスティア様、行ってきます。」

 

「うん。必ず生きて帰ってくるんだよ。」

 

ベルはヘスティアに少し笑うと、アイズ、ティオネ、ティオナ、レフィーヤを取り囲む触手の群へと突っ込んだ。

 

とりあえず威力的にも生理的にもその触手は目障りだ。全部切り刻んでやる・・・!!!

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Slice()

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ご迷惑おかけしました。お手伝いします。」

 

突然、自分達が苦戦していた触手の大軍が一瞬にして細切れにされたことにより、3人は言葉を失った。いくら武器が無いとはいえ、3人は一級冒険者である。その3人が苦戦していた相手を目の前の駆け出し冒険者は一瞬にして撃退してしまった。なんと底の知れない冒険者だろうか。これが神の恩恵に頼らない『魔術』の力とでもいうのか。

だが思考するのは後だ。まずは解放されたレフィーヤの元にティオネが行き、アイズとティオナが植物を警戒する。植物の方も、触手が一瞬で細切れにされたことで、鋭い口のついた獰猛な花を展開させて警戒しているようだ。

 

「レフィーヤ!お願い!!目を覚ましてレフィーヤ!!!」

 

ティオネがレフィーヤを起こそうと大きく肩を揺らして呼びかける。が、ティオネの肌は冷たくなっていくレフィーヤの体温を感じていた。アイズとティオナも植物への警戒のため、振り返りはしないものの悔しさを顔ににじませている。

 

「ティオネさん、これを飲ませてください。」

 

その様子を見ていたベルは綺麗なオレンジ色の液体が入った試験管を取り出すと、ティオネに投げつけた。

 

「何よこれ。」

 

「エリクサー、みたいなものです。自作なので効能は補償できませんけど、無いよりましでしょ。」

 

「へんな術使ってる奴が作ったものなんかあんまり使いたくないけど・・・これでレフィーヤが死んだら承知しないわよ。」

 

ティオネはベルを一睨みしてから試験管の蓋をとり、レフィーヤに飲ませる。するとレフィーヤの体に熱が戻り始め、小さかった息も整い始めた。その様子に3人だけでなく、ベルも安堵の表情を浮かべた。最もベルのはティオナにボコられる心配がなくなったことと自作の回復薬が機能したことへのものだったが。

ティオネはレフィーヤを後ろへと移動させて横に寝かせると、アイズとティオナ、そしてベルと同じように植物に対して横一列になるように並んだ。

 

「ありがとう魔術使い。助かったわ。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。こっちも助けてもらいましたし。それと、呼ぶなら魔術師って呼んでもらえません?」

 

「えー!魔術師じゃメイジと被るじゃん!私には用のない人たちだけどさ。」

 

「それじゃメイガスでお願いします。」

 

「来るよ!」

 

ティオナとティオネとベルの会話に割り込むようにアイズの警告が疾る。触手は復活し、先程と同じように襲いかかる。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

花は咆哮をあげ、中央の本体に付随する小さな花はエネルギーを集中させて破壊光線っぽいのを撃たんとしている。危険を察知したアイズ、ティオナ、ティオネは横へと跳び、触手を蹴散らして回避しようとするが、ベルだけがその場から動かず、ただ静かにヘスティアナイフ片手に突っ立っていた。

 

「あのバカ!何してんのよ!早く避けなさい!!」

 

ティオネが叫ぶが、ベルに聞いている様子はなく、むしろ届いていすらいないのでは、と思えるほどだ。ベルはナイフを前に突きだし、破壊光線を撃たんとしている花をその目に捉える。

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Defensa Autónoma(自律防御)

 

ベルが詠唱すると、魔力の波を関知してそれまでアイズ達に襲いかかっていた触手の全てがベルへと進み、又花も破壊光線が当たる角度をベルへと定めた。

 

「マズった!あの花、魔力に反応するんだった!」

 

「メイガス君!今すぐ魔術を中断して!」

 

ティオネとティオナがしまったと言わんばかりにベルに向かう触手を撃退しようとするが、時既に遅し。触手と花の破壊光線は同時にベルに降りかかる。

 

(お願い!間に合って!)

 

「リル・ラファーガ!!」

 

アイズはベルを助けようと神速をもって突っ込む。全てを防ぐことは出来なくとも、ベルを守るくらいは剣を失った彼女でも可能だ。触手を減らしつつベルの背後に着地したアイズはそのまま振り返って風を付与(エンチャント)とした折れた剣を構えようとした。しかし、彼女は振り返った瞬間に目に入った光景に思わず目を開かせた。

なんとベルは自分の周囲の魔石の輝きを持つ水を自由自在に操り、触手を斬るだけでなく、花から発射された破壊光線のその全てを自分の周囲にドーム状に水を展開させることによって防御していたのだ。

いくら接したことの無い力とはいえ、自分が冒険者となり、数年かけて得た実力に手の届きそうな位置にある駆け出し冒険者のベルの魔術は、アイズを羨ましがらせるには十分であった。

 

「アイズさん、来るなら来るで一言言ってくれません?これの操作も楽じゃないんですよ?」

 

「・・・すごい。それが魔術なの?」

 

「ええ、そうですよっと!」

 

ベルが指揮をするようにナイフを振るとベルを覆っていた水が刃となり、中央の本体以外の小さな花を茎ごと刈り取っていく。花は汚い断末魔をあげ、周囲に体液を撒き散らすと、本体から切り離され栄養がいかなくなったからであろうか、みるみるうちに枯れていく。その様子を感じとったのだろうか、本体の巨大な花が悲しげに小さな金切り声をあげたと思うと、ベルに対して激しく咆哮し、花弁と牙の目立つ口を目一杯開かせ、破壊光線を撃たんとエネルギーを溜め始めた。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

(参ったな・・・あれは防げそうにない。)

 

魔術師として魔力量に関しては敏感に反応できたベル。先程は小さな花による破壊光線だったので水月霊液(アグミス・ローグラム)による防御が可能だったが、あれほどの魔力量を一点集中にされては防ぎようがない。避けられればいいのだが、触手によってドーム状に壁が形成されているため空中には逃避けずらく、加えて後ろにはレフィーヤとヘスティアの護衛対象がいる。戦闘組が避けられたとしても、確実に背後の二人に被害が及ぶ。撃たせてはならない。となれば、撃たれる前に殺すのみ。

 

「アイズさん、さっきこっちに突っ込んできたやつ、もう一回出来ますか?」

 

「出来るよ。でもどうするの?私は剣が折れてるからあの魔法を斬れないし。」

 

「いつもなら魔法斬ってるんですか?規格外ですね。」

 

「君に言われたくない。」

 

お互いをジト目で見る二人。

ベルから言わせれば、魔法だろうと構わず斬るやからなどそれこそ化け物染みていると考えている。「剣姫の姫は鬼だろ」とは決して口にはしない。

一方アイズにしてみればlv1なのにファミリアの同僚である一級冒険者のベートに挑んで、攻撃を何回も受けても持ちこたえ、しかも一発ボディブローを入れたタフネスだ。それに魔術という未知数の力も兼ね備えているとなれば規格外もいいとこであろう。

 

「まぁいいです。僕がとどめを刺します。手伝ってもらえますか?」

 

「分かった。私の装備じゃ無理そうだし、託すよ。で、何すればいい?」

 

「合図したらさっきのやつお願いします。風をあの花目掛けて放って下さい。」

 

「花に放つ・・・ダジャレ?」

 

「ちげーよ。」

 

それだけ言うとアイズとベルは本体の花目掛けて走り出した。アイズのlv5の俊敏な足にベルは魔術回路をフル活動させてついていく。神の刃(ヘスティアナイフ)による回路の増設で出力は上がったが、それでも着いていくのがやっととは。ベルは改めてレベルの差というものを感じずにはいられない。が、今はそれどころではない、と気持ちを入れ換える。

花は狂暴な口を大きく開け、叫び声をあげながらエネルギーを溜めている。触手によって閉じ込めたことがあるのだろう、これ以上ないほどの一撃を喰らわさんとエネルギーの量がレフィーヤに撃った比ではないほどに集中させている。エネルギーに集中して、花の視界にはベルとアイズは入っていないようにも見えるが、突如横から触手が出てきてベルを襲わんとする。

 

「チッ!構っている暇なんて無いのに!」

 

ベルは速度を上げて避けようとするが、触手はその動きすら読んだように降り下ろす角度を変え、襲いかかる。しかし、当たるはずの触手は、殴打によって倒された。

 

「邪魔するな!!糞花ァ!!」

 

「私たちを忘れてんじゃないわよ!!アイズ、魔術使い頼むわよ!!」

 

ティオネとティオナの援護によって触手は撃退される。一級冒険者の援護とはなんと心強い。対応能力といい、チームワークといい、さすがは一級ファミリアである。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

エネルギーの臨界を迎えた花は、今にも破壊光線を撃たんと叫び声をあげる。大きく開かれた口を更に大きく開かせた時だった。

 

(今だ!)

 

「アイズさん!」

 

吹き荒れろ(テンペスト)

 

ベルの合図にそれまでとてつもないスピードで走っていたアイズは踵で地面をめくりあげつつ無理矢理踏ん張って止まると、一瞬にして暴風を身に纏わせ、その全てを花へと放つ。それを待ってましたとばかりにベルは用意していた詠唱を右手に神の刃(ヘスティアナイフ)、左手にアゾット剣を持って唱えた。

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Peso ligero, salto(軽量、跳躍)

 

瞬間、ベルの身体は羽のように軽くなり、アイズの放った風に向かって跳んだかと思うと、なんと風を足場に空中を走ったのだ。

あまりの無茶苦茶さにもはやアイズ、ティオナ、ティオネの3人は驚く事すらやめている。

どんな方法でもいい。託した。あのデカブツを倒してくれ。それだけを思っていた。

 

アイズの風に乗ったベルはそれまでの自分の速度とプラスした速度で花へと突っ込む。ベルの頭にあるのは正面突破、花の前で展開されるエネルギー体ごと花本体を殺すことのみである。となれば、尋常でない速度を生み出している今とるべき攻撃は、

 

(一点突破!貫くのみ!!)

 

Hervir el stand,mi sangre(滾れ、我が血潮)

 

ベルの右手の神の刃(ヘスティアナイフ)を中心に水月霊液(アグミス・ローグラム)が大きく鋭い(スピア)の形となり、それをエネルギー体を貫く勢いで突撃を開始する。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!!」

 

「らあああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

エネルギー体と水月霊液(アグミス・ローグラム)、異なる魔力の接触により火花や電撃が発生し、触手の壁を焼かせる。花はベルの突貫に対し、生意気なと言わんばかりにさらに叫び声をあげてエネルギーを増やしていく。しかしこの場において重要なのは魔力の量ではなく点攻撃に対する強力な防御力だ。いくら今頃魔力を溜めようともはや遅い。エネルギー体はベルの刺突によって切り裂かれ、それによって露わになった花の口の奥には一際大きい魔石が見えた。ベルは花の口が閉じられる前に素早く左手に持ったアゾット剣を魔石に突き立てた。

 

「■■■■■■ーーーーー!?!?!?」

 

「おまけだ!とっとけぇ!!!」

 

ベルは右腕、背中、神の刃(ヘスティアナイフ)の魔術回路全てを活動させ、残り全ての魔力を叩き込む勢いで、ナイフを持った右手の拳で思い切りアゾット剣の柄の球体を殴った。

 

läßt(レスト)おおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「-------ー!?!?!?」

 

解放された魔力は、叫び声をあげる時間も与えぬまま花を爆ぜさせ、魔石のみならず植物が根まで焼き払う勢いで直径10mのクレーターを作った。ベルたちを覆っていた触手の壁は、枯れるようにしてボロボロと崩壊し、たった数分閉ざされていただけであるのに、やけに眩しい太陽の光がベルたちを迎えた。

 

「倒したみたいね。」

 

「あーあ、最後ほとんどメイガス君のひとり勝ちだったね。私いらなかったんじゃない?」

 

「そんなこともないわよ。ね?魔術使い?」

 

ティオナはベルに一言何か言って欲しいのだろうか、話しかけるがベルが返答することはなく、ただ突っ立っているのみ。不信に思ったティオナがベルの側に向かおうとした時に、ベルの体が崩れそうになる。だが地面に倒れるはずの体はアイズによって抱き支えられた。

 

「メイガス君どうしちゃったの?」

 

「・・・寝てるみたいね。疲れちゃったのかしら。」

 

3人がベルの顔を覗きこむ。魔力を使いすぎたからであろう、ベルは脱力したような表情で眠っていた。

 

「・・・お疲れさま。」

 

アイズは、化け物を退治した英雄に薄く笑みを浮かべた。

 

 

 

 

ちなみに、ちょうど植物が倒された頃に目を覚ましたレフィーヤと、外で触手の壁が崩れていくのを見ていたガネーシャファミリアの冒険者と自身のファミリアの団員を連れたロキ。彼女らの目に入ったのはお気に入りのアイズが他ファミリアのベルを抱き支える光景で・・・

 

 

「「ーーーーーーーーーーー」」

 

 

暫く気を失ったそうな。

 

 

なおヘスティアは

 

「おい剣姫くん!そこは僕の役割だ!退け!退くんだぁ!」

 

理不尽に怒っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あひゃひゃひゃひゃ!!さすがクラネル君!私の弟子!!助けてもらったとはいえ自分より格上のモンスターをいとも簡単に!!素晴らしいねぇ!!めでたいねぇ!!今日は飲むぞぅ!!!あひゃひゃひゃひゃ!!」

 

「なら、せっかくだから私も頂こうかしら。」

 

「あん?」

 

鐘のある塔で1人何がそんなに面白いのだろうか、ご機嫌にワインを飲んでいた男の横に何処からかローブに包まれた女神が現れた。女神は男の横に座るといかにも年代物のボトルを開け、男の空いたグラスにつぐ。男も女神からボトルを渡されると、ワインの豊潤な香りに気分をよくして女神のグラスにつぐ。

 

「素晴らしいワインに乾杯。」

 

「あら?私との出会いには乾杯してくれないのかしら?」

 

「ハッ!冗談やめてくれるかい?色気ふりまいて股の緩いビッチ野郎との出会いなぞ不利益でしかないよ。酒だけ置いてとっとと失せてくれるかい?」

 

心底嫌そうな顔をして自分を拒否する男に女神は苛立ちつつも興味がつかない。自分の魅了が通じず、自分が今最も気になっている子どもの何かを知っている。そして何より、色が見えない(・・・・・・)。下界の子どもたちの心を色として見ることの出来る女神にとって、色が見えないことなど今までに無かった。そして実際に会ってみて言えることは、むしろこちらが見透かされているのでは、と思えてしまうほどの、生まれてくる得体の知れない感情。

 

「あなた、一体何者?」

 

「さぁて、誰だろうねぇ?ただ聞くんじゃなくて自分で考えろよ神様さん!いひひひひひ!!」

 

男は人を最も苛立たせると思わせる笑いと仕草で女神を挑発すると、立ち上がり、グラスのワインを一気飲みする。

 

「プハー!たまんねぇなぁおい!酒!飲まずにはいられない!あ、そうだ。今後クラネル君にちょっかいかけるときは是非頼ってくれていいよ!君たちのは生ぬるいからねえ!!では、アディオース!!!」

 

男はそれだけ言うと、ワインの残ったボトルを抱え、時計台から飛び降りる。女神はそのあとを目で追おうとするが、一瞬目を離したときにはいなくなっていた。

 

「・・・まぁいいわ。癪に触る男ではあるけれど、あの子の輝きをもっと見せてくれるというのであれば。」

 

女神は少年の勇姿を思いだし、口に涎を溜まらせて、舌なめずりをした。




ヘスティアナイフの性能

ステイタスに合わせて成長
装備すれば魔術回路2倍

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