ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中)   作:ヤママ

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型月好きだから筆が軽い軽い


そして少年は剣姫と出会う

ベル・クラネルはミノタウロスと対峙していた。

 

本来lv2相当のモンスターであるミノタウロスが、lv1冒険者向けの7階層にいる異常事態にベルは冷静に対応する。

 

この際なぜ7階層(ここ)にミノタウロスがいるのかは考えない。

切り替えろ。今大事なことは目の前の敵に集中することだ。

 

ベルは手に持ったナイフを再度力を込めて握ると、ミノタウロスをおびき寄せる。 

猪突猛進に向かって来るミノタウロスにベルは姿勢を低くし、すれ違いざま腱を狙って素早く切りつけた。

が、ナイフがミノタウロスを傷つけることはなく、逆に粉々に砕けてしまう。

それもそのはず。そのナイフはギルドから支給された駆け出し冒険者向けの貧弱ナイフだからだ。

 

 

ベル自身は自分のナイフ(というより短剣?)を既に持っていたため受け取りを拒否したが、「(駆け出しとして)分相応の装備で挑まないと自分の実力を見誤っちゃわよ」とギルドの受け取り嬢であるエイナに無理やり持たされた。というより買わされた。

ベルとしてはファミリアへの入団の際にすべてのファミリアから「ガキが来るとろじゃない」と門前払いを散々喰らっていたため、自分の実力を低く見られることは慣れたものだった。しかし既に事足りてる装備を買わされてはたまったものではない。うちは零細ファミリアなんだぞ。万年金欠に無駄な出費させないで下さい、とついつい「こんな駄ナイフいらないよ・・・」と心の声が漏れてしまう。

 

「な に か い っ た ? ベ ル く ん ?」

 

黒い覇気を従わせて「ゴゴゴ」と効果音を言わせんばかりの笑顔をベルに向ける。

女性を怒らせると怖い。それを身をもって知ったベルはその後長々と続いたエイナによる「ダンジョンなめんな」講義とナイフ代を勉強料と自分を納得させて黙って聞き、購入したわけだが・・・

 

 

(うわっ!早速壊れたよ!しかも砕けるって!)

 

さすがにいくらレベル的に格上の相手とはいえ、一振りで壊れるとは予想していなかったため、不満よりもむしろ清々しさすら感じた。

 

足を攻撃されたことに気がついたミノタウロスは、思い切り蹴りあげる。しかしベルは既にミノタウロスの横を通過した後だ。当たることはなく、空気を切る音がするのみ。

 

「グウゥゥゥゥゥウオォォォォォ!!!!」

 

蹴りがはいらなかったのが余程気に入らないのだろうか、ミノタウロスは雄叫びをあげながらベルの方を向くと姿勢を低く、角を突きだして突進してくる。

 

ベルは腰に携えた短剣をとると右腕と背中にある魔術回路(ライン)に魔力を通す。

 

Hervir el stand,mi sangre(沸き立て、我が血潮)

Peso ligero, salto(軽量、跳躍)

 

魔力回路を鈍くエメラルド色に光らせながら詠唱すると、ミノタウロスの突進をlv1冒険者の脚力では考えられない跳躍で縦に半回転しながら避ける。跳躍した勢いで天井に足をつけ、膝を曲げ、速度をもってミノタウロスの首もと、延髄部めがけて短剣を突きつけた。だが、

 

「――――――!?!?ガアァァァァァァ!!!」

(浅い!?)

 

人型のモンスターであるミノタウロスであるなら今の一撃で沈む予定だったが、延髄には到達せず、仕留めるには至らない。痛みに苦悶しつつもミノタウロスは腕を振り回し、空中のベルを追い払おうとする。

 

(クソッ!避けられない!?)

判断したベルは両腕をクロスさせて防御姿勢をとる。

 

「ガハッッ!!!」

 

ベルは吹き飛ばされ、地面を二回ほどバウンドしてからダンジョンを壁部分を構成する石に突っ込んだ。

腕はミノタウロスの攻撃を受けたため、痛みつつも何とか動かせるのは右腕のみ。頭からは血を流し、並の冒険者であれば撤退を選ぶのが定石。まぁ、lv1でありながらミノタウロスに挑む時点で普通ではないが。

 

しかしベルの目から闘志は消えていない。右腕を支えに立ち上がり、ミノタウロスを見据えながら現状(・・)可能な倒す方法を考える。

 

 

手持ちの武装はゼロ。普段持ち歩いている魔術礼装は調整中で根城(ホーム)に置いてきた。運の悪い!

残された攻撃手段は、あまり得意ではないがルーン魔術のガンドと魔石を使用した急ごしらえの宝石魔術。まだましなのは肉体を強化して殴ること。

・・・どうする。ガンドと宝石魔術はまともに練習したことが無く、暴発を考えるとリスキーだ。(ベル・クラネル)の将に合っているのは肉体強化だが、片腕が使えない今では十全には生かせないだろう。

 

思考するベルをよそにミノタウロスは再び突進の体勢をとる。

「グッガアァァァ――――」

 

今度こそとどめを刺してやる。俺に傷をつけた代償は払ってもらうぞ、と言わんばかりの眼光でベルを捉えるミノタウロス。それでもベルは恐怖することなく、次の一手を探るためにまずは呼吸を整える。そしてまだミノタウロスに刺さっている短剣が目に入った。

 

(・・・あれだ)

 

その短剣はアゾット剣と呼ばれるもので、ベルが魔術の師匠に「もう私が教えることは何もない!あとはテキトーに自分でやってくれ。」と言われ、去り際にもらったものだ。本来は剣として使用するのではなく、魔術礼装や儀式のために使用する形式的なものらしいが、そんじょそこらのナイフと比べればよっぽど頑丈でマシなのでベルは使用していた。重要なことは、対象を刺した後、柄の部分の玉に魔力を流せば剣に貯まっていた魔力を解放できることだ。

 

(今確実に倒せる方法はあれしかない)

 

手段は決まった。後は実行するのみ。

 

しかし体の状態から考えて可能だろうか。一目見れば誰もがボロボロだと言うだろう。そんな状態でミノタウロスの突進をいなし、首元に手を伸ばそうというのだ。lv1はおろか、lv2冒険者にさえ出来るものはそういないだろう。失敗すれば確実に死ぬ状況。危険な賭け。だがベルの頭にあるのはこれより前にミノタウロスに遭遇した人と、もし自分が倒れた際にミノタウロスに遭遇するであろう人のこと。

 

(こんな階層までミノタウロスが来たってことは僕の前にも誰かがミノタウロスに遭遇してるってことだ。きっとその人たちはミノタウロスに立ち向かったのかもしれないし、逃げたのかもしれない。

僕はその人の「勇気」を忘れない。

強者に立ち向かう「勇気」を。自分の命を守り、明日へ繋げる「勇気」を。

もし今ここで僕がミノタウロスを食い止めなかったら、誰かがまた襲われてしまうだろう。そうならないように、いや、その人に見せてやりたい。

 

立ち向かう「勇気」を!限界を超える「勇気」を!)

 

意気込みを整えると何故だか分からないが、身体の奥から力が湧いてくる。ベルにもはや失敗する恐れやミノタウロスへの恐怖はない。あるのは、自らの「勇気」を示す決意のみ。

 

ミノタウロスに刺さるアゾット剣を捉え、再度「スーハー」と呼吸を整える。

 

 

 

「・・・いくぞ。」

「ーーーーーーーグウゥゥゥゥゥオォォォォォ!!!!」

 

ミノタウロスが雄叫びをあげ、ついに突進してくる。ベルも魔術回路をフル稼働させ、ミノタウロスを迎えうつ。

 

 

Hervir el stand,mi sangre!!(沸き立て、我が血潮)

 

 

あと15メートル

 

 

「ーーーーーーーオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

あと8メートル

 

 

Peso, endureciéndose!!(重量、硬化)

 

 

あと3メートル

 

 

「ーーーーーーーオォォォォォォォォォ!!!!

 

 

あと1メートル

 

 

( いなす!)

 

 

接触する両者。だが描かれるはずの攻防は、一陣の風によってミノタウロスが両断されることによって終わった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・えっ?」

 

ベルは来るはずのミノタウロスが目のまえで真っ二つになり、その血が自分を濡らしたことでいったい何が起きたのか理解出来ない。

 

 

「大丈夫?」

 

声のする方を向くと、金髪の少女がいた。少女が持っている剣には血が少し付着している。

 

「あの・・・」

 

少女は返答のないベルに話し掛けてくる。

 

恐らく彼女がミノタウロスを撃退したのだろう。僕がめちゃくちゃのりにのってテンションマックスでこれから倒そうとしてたときに・・・・

 

 

 

 

「ないわー。」

 

 

ベルはそう呟くと、今までの疲れがどっと出たのだろう。倒れるように寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「何が・・・・ないの・・・・?」




ベル君スペックはのちのち詳細に考えます。

今はとりあえず、
原作通りナイフを使う。
魔術回路持ちでもっぱら身体強化に使う。
今回は調整中で出ませんでしたが、劣化月随零液を好んで使う

ってとこでしょうか

のちのち、英雄への憧れからくるオリジナル魔術を英雄願望とあわせて作っていきたいと思っています。

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