ベル・クラネルが魔術師なのは間違っているだろうか(凍結中) 作:ヤママ
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ベル君は何でも出来る魔術師じゃなくて魔術師(物理)にすることにしました。
モデルは知らない間にバゼットさんになってました。ただしナイフを使う。
――――――――数年前
「さぁて、クラネル君。はっきりいって君の魔術の才はちんぷんかんぷんなところが多すぎる。訳がわからないよ。ルーン魔術の基本たるガンドはすかしっぺみたいな威力しかないし、物質の再構成に至っては魔力を込めすぎて更に壊す始末だ。あぁ、壊したガラスはきちんと掃除しておくように。私の靴の底にガラスが詰まったらどうする気だね君は?
おんやぁ?なんだいその「こいつうぜぇ」と言わんばかりの表情は?師匠たる私にそんな態度をとってもいいのかいクラネルくぅん?
フッフッフッ、よろしい。では話を戻そう。私がいいたいのはだね、君は基本がからっきし出来ない癖に自分の部を超えた魔術をコロッとやってのけてしまうところだ。固有結界を体内展開して自身の体内時間を操作する
まったくなーんで君は基本のきの字すらまともにこなせないというのに変な方向への成長は早いんですかねぇ・・・。
え?何?ガンドは放出系だし物質の再構成は操作系、自分でないものを操ったり自分の体から離れた魔力を扱うのはなぜだか出来ない??その代わり自分の体の中で魔力を流す分にはスムーズにいく?
ふーん・・・つまり脳みそ筋肉ってことかじゃないか!(名推理)
ってコラコラ待ちたまえクラネル君。ファイティングポーズをとるんじゃない。殴り合いじゃ私は君にかないっこないから。まぁ私は天才肌で基本的に何でも出来たから君の気持ちが分かるわけじゃないけどね!ふぁっふぁっ「ガシッ」ファッ!?ゴメンゴメンクラネル君!謝るから襟を掴んだその手を離して!!
ハァハァ、鍛えるようになってからちょいと野蛮になったんじゃないかい?師匠たる私に向かって何たる態度!こりゃあ脳みそ筋肉に拍車がかかるねぇ。
ん?だとそんな君がなぜ水銀ちゃんの亜種を作ろうと思ったんだい?それに中々の出来だよ、君が造ったあれ。水銀の代わりに砕いた魔石を入れた水に月の光を浴びせて魔力をため込み、水銀ちゃんと違って質量ではなく魔力で機能の大部分を補うとは。燃費は悪いけど何も知らずに創作で見たまんまの再現は出来てるし、初めてにしては上出来だよ。80点位あげようじゃないか。
・・・どうしたのかな?目を点にして?・・・師匠に褒められたのは初めて?
そうだっけ?よく覚えてないけど。ま、これからも精進したまえ!はっはっは!
え、クラネル君がめっちゃいい返事した。キモチワルッ。お前誰だ?ってうぉ!ああ!この容赦ない右ストレートはクラネル君だね!間違いない!疑いが晴れたにも関わらずなぜまだ私を殴ろうとする!?止めないかクラネル君!そう人を殴るものではゴハ――――――!!!」
―――――――――――――――――――
「・・・・最悪な夢だ。」
オラリオに来てから最も目覚めの悪い夢を見たベルは思わず口に出してしまう。なぜあの
(どこだここ?)
「よかった。気が付いた?」
声の方に向くと、長い金髪の少女と褐色のアマゾネスの少女が2人、ベルの顔を覗きこんでいた。
「うぉっ!」
突然目の前に耐性のない女の子の顔があったことでベルは思わず体を起こして女の子がいる方向とは逆の方へと逃げる。
「ああああああ、あの!あああああなた達はいったい!?というか、ここどこですか!?」
「あっはははは!何この子!いきなり起き上がったと思ったら今度は恥ずかしがっちゃって!カワイイーー!」
「やめなさいティオナ。混乱しているんだから。」
「あの、覚えてない?」
一気に3人もの女の子に話しかけられ、ベルはいっぱいいっぱいである。
アババババ!早く、誰でもいいから状況を説明してくれっ!
「ハッ!おおかたミノタウロスに頭のどこかをやられちまったんじゃねぇのか?」
「ちょっとベ―ト!なんであんたはそう嫌味しか言えないのよ!?」
壁に寄りかかっている狼人の発した「ミノタウロス」のワードにベルの記憶が徐々によみがえってくる。
(そうだ。確か7階層なのになぜかミノタウロスが出てきて、倒そうと思って算段もついたところであの人に・・・)
ベルは目の前の自分を見つめる少女の顔を見る。
金色の長髪に整った顔立ち。どっかで見たことあるような・・・
「おいこらテメェ!なにアイズのことジロジロ見てる!」
「はーい。ちょっっと黙ってようねー」
「ぐはぁ!おまっ、鳩尾・・・っ」
ベルの視線に少女は「何かあった?」といった感じに首をかしげる。可愛い。
「大丈夫?」
その声は、ダンジョンでミノタウロスを倒したあの少女と同じ声で・・・
「ああ、横取りした人。」
ベルはポン、と手のひらでグーを受け止めてから少女を指さし、そういった。
――――――――――――――――――
「テメェ吠えるじゃねぇか!!lv1の分際で!!」
狼人はベルの発言が気に食わなかったのか、ベルに大声で威圧してくる。面倒くさいことになると何となく分かったベルは他の3人に目でエマージェンシーを送る。
『この人何とかして下さい』
しかし当の3人は、少女が目を点にし、アマゾネス2人にいたっては「こいつ何言ってんの?」と言わんばかりの視線をベルに投げかけ、聞いてきた。
「私も気になるな~。どうしてlv1の君がミノタウロスを、しかも一人で倒せるなんて思ったのか。」
「そうね。そこら辺をキッチリ説明してもらわないと、アイズが助けたのが横取りになっちゃうもの。それとも、レベル差をひっくり返すスキルでも持っているの?」
(ヤバイ。根掘り葉掘り探られるパターンだ。)
たとえスキルではなく、自前の魔術回路であったとしても他者に無い有利な点を露呈させることは冒険者の間ではあまり好ましいものではない。手札は伏せておくものだ。ベルは一旦話をそらすことにした。
「あ、あの!!とりあえず、ここは一体・・・それと、あなた達誰ですか?」
「「「話をそらすな」」」
明らかに格上らしき冒険者3人(うち一人は知らぬ間に回復していた。普段から殴られなれているのだろうか?)の圧力にベルは言葉を詰まらせる。とんでもないファミリアだな。身体強化して無理にでも逃げ出そうか、と考えていたところで救いがやってきた。
部屋のドアが開き、品のある緑髪のエルフが入ってきて、ベルを取り囲む3人に面食らったような様子だ。
「客人に何をしている?」
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「いやすまないクラネル君。ファミリアの者が無礼をはたらいたようで。」
「いえ!無礼だなんてそんな!僕の方こそ、助けてもらった上に治療までしてもらって、本当にありがとうございます。」
途中で入室してきたリヴェリアは3人を黙らせると、ベルがミノタウロスを倒したアイズに対して一言いうと倒れてしまったため、ファミリアのホームに運んだという経緯を説明した。そういえばミノタウロスに左腕をやられていたことを思い出したベルは、治っていることに気づき、リヴェリアに聞くとどうやらポーションと魔法で治してくれたとのこと。見知らぬ冒険者である自分にそこまでしてくれたとなれば、ベルも感謝せずにはいられなかった。
「それにロキファミリアの方々と話しをしたなんて、僕みたいな零細ファミリアの駆け出しにとってはとんでる雲を掴むような話ですし。すごく光栄です!」
目をキラキラさせて見上げるようにリヴェリアを見る背の低い赤眼の少年。兎を連想させる姿にリヴェリアの母性本能がくすぐられる。
「そ、そうか?まぁ私たちもまだまだだ。君も精進すればいつか追いつく。頑張ってくれ。」
「はいっ!!」
白い歯を見せ、笑顔で答えるベル。守ってあげたくなるオーラを発するベルにリヴェリアは一旦目をそらす。これ以上は体に毒だ。
「ところで!ベ―ト、ティオナ、ティオネ。お前たちはベル君に何をそんなに問い詰めていた!客人にそんな態度とは、ことと次第によっては罰を与えるぞ!」
「おいリヴェリア!完全に私念入ってるだろ!それに呼び方がかわって「フンッ!」グハッ!また・・・鳩尾・・・ッ」
「あーあ、ベ―トったら、余計なこと言うから・・・」
「あとはお前たちだ。ティオナ、ティオネ。さぁ!キリキリ喋る!」
「あれ?いつもとだいぶ違う・・・?」
リヴェリアの指示にはティオネが答えた。駆け出しであるベルがミノタウロスを撃破したアイズを「横取り」と呼んだことを。
「それは・・・」
リヴェリアとしては判断に困る話だった。本来ならモンスターに襲われそうになっていた冒険者を助けたとなれば良い話だろう。しかしミノタウロスを逃したのはロキファミリアの失態。マッチポンプも甚だしい。
加えて今回は状況がやや複雑だ。駆け出しがミノタウロスに挑むなど明らかに自殺行為。いくら強くなりたいとはいえ、そこまでしては殺されても文句は言えまい。しかしアイズがミノタウロスを倒したときベルはまだ
これは命知らずの駆け出し冒険者に説法しなければ。
リヴェリアは椅子の座り、ベルと目線を合わせると優しく、母親の様に語り掛ける。
「クラネル君。君は冒険者だ。だがまだ駆け出し。自分の実力も正しく測れないような時期だ。今はまだ、命の駆け引きをすべき段階ではない。」
「は、はぁ。」
実のところベルは魔術を行使するうえで何度も死線を体験してきた。
魔術回路の生成、身体強化の暴発による筋組織の断裂、
「魔術とは神秘を行使し、深淵を覗くもの。油断してりゃあコロッとイっちゃうから精々キバって行きな!」
と師匠に言われてもいたため、用心して取り組んでいた。そういう意味では、ベルは並の冒険者より命の管理がうまいほうだと自覚している。リヴェリアの話に一応同意はするものの、内心反抗的な態度をとっていた。
「君はアイズを横取り呼ばわりしたそうだが、はたしてミノタウロスを倒すことができたのか?」
「それは・・・」
正直に言ってしまえば出来ただろう。確実に自分の布石はミノタウロスに刻まれていた。延髄部に浅く刺さったアゾット剣に魔力を流し込めば確実に仕留められた。だが今それを言えば自分の能力を露呈させることになる。それは避けたい。ベルは二言目をいうのを止める。
「強くなりたいその気持ちは分かるが、そう急ぐことはない。ゆっくりでも確実に強くなればいい。」
「・・・・はい」
ベルはうつむき、言えない悔しさに拳を握りしめる。
(言いたい・・・!!ヴァレンシュタインさんがこなければ確実に狩れたってすごく言いたい・・・!!)
ベルの様子を、自分の弱さに不甲斐無さを感じる冒険者の姿であると思ったリヴェリアは微笑を浮かべるとアイズに声をかける。
「アイズ。お前から何か言う事は?」
「・・・手を出してゴメンね。あとこれ、ミノタウロスに刺さってたんだけど、君の?」
アイズはベルに申し訳なさそうに謝ると、布に包まれた短剣をベルに渡す。柄頭には球体があり、ベルは一目でアゾット剣だと理解する。
「あぁこれ!ありがとうございます!はぁー、よかったー。」
一応内包されている魔力量も確認しておく。変化はないようだ。よかった。
「随分華奢な短剣だね。」
「えぇ、元々は儀式とかの時に使うものだったらしいので。」
「そんなものでよくダンジョンに潜っていたな。」
「意外と丈夫なんですよ?因みにギルド支給の駆け出し冒険者向けのナイフはミノタウロスにかすっただけで砕けました。」
「だろうな。ミノタウロスを相手にするのだったら大体2万ヴァリス位装備で戦わなくては」
「2万ヴァリス・・・ハハハ。とりあえずお金を貯めることから始めなくちゃならないみたいですね・・・」
「それも修行。頑張って。」
「ハハハ・・・。ありがとうございました。それじゃあ僕はそろそろ。帰りが遅いと神様が心配するので。」
「あぁ、こちらも引き留めて悪かった。また遊びに来るといい。」
「じゃあね。」
「はい、さようなら。縁があればまた。」
―――――――――――――――――――
「まさに駆け出し、といった感じだな。」
「ケッ!駆け出しの分際でアイズを盗人呼ばわりすたぁ、これだから雑魚は気に食わねぇ。」
「アレアレ~?ベ―トもしかしてアイズのために怒ってたのぉ~?」
「バッ!馬鹿野郎!何言ってんだ!少し黙ってろナイチチ!」
「んだとこの犬コロォ!!!!!」
「でもあの子、駆け出しとはいえミノタウロスに一撃加えたんでしょう。」
「うん。それも背中側の首元あたり。」
「延髄のあたりか。うわえっぐ。」
「だが駆け出しでありながらそれほどの技量を持っているということになる。」
「どうせまぐれだろ?話題にするほどのやつでもねぇだろ。」
「さてな。意外とそうでもないかもしれんぞ?もしかすると・・・」
「何々?みんな揃ってなんの話してんの?」
「ロキか。いやなに。アイズがあった駆け出し冒険者の話だ。」
「へぇ~。んで?どこの子なん?うちのお気に入りのアイズたんとコミュ二ケーションとった阿呆は・・・!!」
「ロキ。本当にやめてください。斬りますよ。」
「あぁん、アイズたんが冷たい~。」
「ロキやめろ。子供じゃあるまいし。」
「かんにん、オカン。」
「誰がオカンだ!」
「いやいや、ホンマ堪忍やでリヴェリア。それで?どこのファミリアの子供なん?」
「ヘスティアファミリア。名をベル・クラネル。」
「へぇ・・・。ヘスティアかぁ・・・。」
ロキは悪神に相応しい、ピエロの様な笑顔を浮かべた。
最後の方は正直さぼりました。情景とか仕草の説明書くのって結構難しいですよね。
次回はステイタス更新、エイナに砕けたナイフについて文句を言う、豊穣の女主人での一幕の3本でお送りしまーす(サ○エさん風)