魔人転生 〜兵藤一誠〜 - the outer demigod -   作:カイバル峠

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どうも、お久しぶりです。
カイバル峠です。

エタらない宣言をしておきながらも気分が乗らなかったり忙しかったりで書きたいことは色々あるのになかなか執筆に乗り出せないこと数カ月。
息抜きついでに投稿しました。
なお、本作はスピンオフ的なものでもあるので短期間で完結させるつもりです。

それではどうぞ。



プロローグ -魔人降臨-

プロローグ

 

 

 

 

 

『しっかりしろ!相棒っ!』

 

 

 

見渡す限り広がる、万華鏡のような世界。

 

 

 

朦朧とする意識の中で赤の龍帝が俺を呼ぶ。

 

 

 

思い出すのは家族や仲間の顔。

 

 

 

時に厳しくも、常に温かく見守ってくれていた両親。

 

 

 

時に衝突し、それでもいつも仲直りして、お互いに切磋琢磨し合った仲間達。

 

 

 

俺の周りにはいつも笑顔が溢れていた。

 

 

 

辛いことも、哀しいこともたくさんあったけど、それでも俺は幸せだった。

 

 

 

そんな日々が、いつまでも続くものだと信じていた。

 

 

 

 

――――でも、それは間違いだった。

 

 

 

 

 

「貴様のその力、我らのために利用してこそ価値がある……人間の分際で我らのために働けること、光栄に思え!」

 

 

ある日突如として現れた、黒い蝙蝠のような翼を生やした集団。

 

 

 

自らを悪魔と称するそいつらが現れたその時から、全てが狂い始めた。

 

 

 

奴らは「領地」と称して俺達人間の世界で狼藉を働いた。

 

 

 

そして言葉巧みに特殊な力を持つ人々を連れ去った。

 

 

 

奴らの娯楽と、戦争の道具にするために。

 

 

 

それから戦争が始まった。

 

 

 

悪魔と敵対する天使、そのいずれとも相容れぬ堕天使。

 

 

 

それらも加わった、長い、長い戦争が。

 

 

 

轟々と燃え盛る、一面に広がる炎の海。

 

 

 

巻き込まれた人々の阿鼻叫喚が響き渡る。

 

 

 

そこに当たり前に在ったはずの日常は既に影も形もなく、断末魔の叫びと共にあらゆるものが灰燼に帰す。

 

 

 

俺の知る人、見慣れた景色、住み慣れた町。

 

 

 

その全てがいとも容易く消えていく。

 

 

 

そして―――――

 

 

 

 

 

 

――――――グゥヴォオオオオオオオオオオッッ!!――――――

 

 

 

 

 

―――――全てが無に帰した。

 

 

 

俺は、守れなかった。

 

 

 

極めれば神や魔王さえも超えられるといわれる力を持ちながらも、何一つ守ることができなかった。

 

 

 

ゆっくりと意識が遠ざかる。

 

 

 

手足の末端から、徐々に感覚が消えて無くなっていく。

 

 

 

万華鏡のような景色が歪み、視界もぼやけ始める。

 

 

 

俺は全てを失った。

 

 

護るべきものも、帰るべき場所も、もう……

 

 

 

 

 

 

……もう、何もない――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、なかなか面白いですね、あなた……いいでしょう。その望み、叶えて差し上げます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇      ◇◆

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

満月が照らし出す夜空の下、木立の中を一人の和服姿の女性が息を切らしながら走っていた。

濡葉のような髪の間から覗く猫のような耳、着物の裾から見える二股に分かれた尻尾。

彼女は人ならざる者だった。

ずっとこの調子で走り続けてきたのだろうか。

足取りを緩める様子は微塵もなく、何かに追われるように時折背後を振り返るその金色の瞳に長く張り詰めた緊張に対する疲弊の色を浮かべつつも、まだ生きる意思を捨てていない。

 

「っ」

 

彼女の瞳が背後で閃光が煌めくのを捉えた。

次の瞬間、周囲の木々をなぎ倒し、静寂の支配する闇夜の世界を暴力的な破砕音で満たしながら紫色の光が迫ってきた。

 

「くっ、まったく……しつこいのよッ!!!!」

 

彼女は宙高く跳躍して紫色の光弾をやり過ごすと、両の手に禍々しい色の魔力を収束させ、お返しとばかりに光弾の飛んで来た方向に投げ返す。

それは一瞬のうちに視界の内から消える。

彼女は地に降り立つと、そのまま振り返らずに走り出す。

 

直後、背後で巨大な爆発が巻き起こる。

 

頬を撫でる風が、何が起こったかを教えてくれるが、一顧だにしない。

 

一秒でも早く、一ミリでも遠くへ、彼女の脳内を支配するのはそれだけだった。

 

そんな時、不意に彼女は足下の土が盛り上がるのを感じた。

 

「っ!」

 

次の瞬間、爆発が巻き起こる。

彼女は爆発の間際に跳んで避けたために傷を負う事はなかったが、不意を突かれたことでバランスを崩し、転倒してしまう。

 

そして襲撃者はその一瞬の隙を見逃さない。

 

彼女が身を起こした次の瞬間には、彼方より飛来した縄によって雁字搦めにされていた。

 

「このッ……」

 

彼女は必至でもがき、縄を破ろうとするが、呪力を込められた特殊な縄のようで、ビクともしない。

 

「無駄だ」

 

声と共に、複数の人影が、彼女を取り囲むように地に降り立った。

全員の背から生えた蝙蝠のような翼。

彼らは悪魔と呼ばれる存在だった。

 

「それは貴様のような凶悪犯罪者を封じこめるために魔王様が直々にお作りになったモノだ。いくら貴様に力があろうとも逃れることはできん。大人しく一緒に来てもらおうか、SS級はぐれ悪魔の黒歌?」

「……」

 

彼女――黒歌は視線だけで人を殺せそうなほどの殺気を込めて悪魔を睨み付ける。

 

「しかし貴様も馬鹿な奴よな?折角名誉ある我ら悪魔の端くれに加わるという栄光を与えられながら、それを悪魔でも無い妹のために捨てたのだからな。」

 

黒歌を捕えた集団の長と思しき悪魔が嘲るように吐き捨てると、周囲にいた悪魔たちからも嘲笑する声が聞こえてくる。

しかし黒歌の視線は隊長格の悪魔を見据えたまま、外さない。

 

「ッ……あんたに、あんたに何が分かるってのよ?!私達が一体アイツにどんな仕打ちをされてきたか……あんたに分かるの?!!あの子を守るためにはこうするしかなかったのよ!!」

「は?貴様何を言っている?悪魔に転生するということは主たる上級悪魔に隷属を誓うということだ。どのような形であれ主の役に立てるのなら喜ぶべきだったのだよ、貴様も、貴様の妹もな。まったく、見当違いも甚だしい……どうした?」

 

黒歌の訴えを一蹴すると同時に、悪魔の眼前に通信用の小型魔法陣が展開する。

 

「うむ、そうか。了解した。引き続き任務に当たれ。」

 

そう言うと、通信は途絶えた。

 

「さて、我々にとっては良い知らせだが貴様には悪い知らせかもしれん。こうまでして貴様が守りたがっていた妹のことだ……」

「ま、まさか……」

 

黒歌の顔が瞬時に青ざめる。

脳裏によぎるのは最悪の展開。

冷たい汗が頬や背中を流れ落ちる。

 

「貴様の妹の身柄だが、我ら憲兵隊が保護(・・)したと連絡が入った。しかしよりにもよって身内にこのような不始末を起こされるとは……妹の方もこれからさぞかし大変だろうな?」

「?!どういうことにゃ?!あの子に一体何をするつもりなの?!」

「さあな。だが姉である貴様がこれほどの大罪を犯し、かつその原因が本人にあるとなれば、それ相応の償いをしてもらわねばなるまい。文字通り身を持っての償い、ちょうどあの年頃の娘を欲する貴族のお偉方もごまんといるしな。」

「きっ、貴様―――――うぐっ?!」

 

黒歌は激昂するが、その怒りは強引に押しとどめられる。

悪魔の蹴りが鳩尾に突き刺さり、黒歌は数メートル先まで飛ばされた。

 

「ごふっ、ごほっ……くぅッ…」

 

地面の上を転がり、咳き込む黒歌の着物ははだけ、至る所が土で汚れていた。

 

「身の程を弁えろ。大罪人の身内なれば当然の報いであろう?フン、そのようなことも分からぬとは、やはり下劣な転生者か。それはそうと」

 

隊長の悪魔は横たわる黒歌の髪を掴むと、強引に立たせ、顔を近づける。

 

「貴様、逃亡する途中随分と我らの部隊に損害を与えてくれたようだな?正式な処分が下る前に少々礼をさせてもらおうか?ちょうど持て余している者も多いことだしな。」

「ッ……」

 

隊長は空いているもう一方の手で着物の内側に手を入れ、まさぐる。

黒歌は声を殺してじっと来るべき恥辱に耐えようとするが、周囲の悪魔達のからみつくようなねっとりとした視線、そして妹を守り通せなかったことを考えると、図らずも涙が浮かんで来た。

それを見た隊長はその顔を一層醜悪に歪める。

 

「いや、それだけではつまらないな。なれば抵抗されたことにして手足の一本か二本、いただくのも「じゃあ、いただくぜ」っ?!」

 

刹那、黒歌を弄んでいた隊長の片腕が消失した。

 

「う、うあああああああああああああっっ?!!!!俺の、俺の腕がッ!!」

 

腕を落とされた痛みで隊長悪魔は反射的に黒歌を掴んでいた手を放してしまう。

 

「う、腕が、腕が「ごちゃごちゃうるせぇよ」な――」

 

それが彼の最後の言葉だった。

再び年若い青年と思しき声がするのと同時に、彼の躰はバラバラになって崩れ落ちる。

 

「隊長―――うぐッ?!!」

「おのれッ、何奴―――――がっ?!」

 

残された悪魔達は身構えるが、しかし誰一人として襲撃者の姿を捉えることができず、一人、また一人と沈黙する。

そして最後の一人となった時、その姿を見せた。

 

「ったく……やたらと悪魔(ゴミ)臭いと思えば、こんなに大量発生してやがるとはな。」

 

現れたのは、マントに学生服のような服を纏った茶髪の青年。

顔の半分を覆うマスクを付けているので、素顔までは分からない。

そして手に握った一振りの刀。

溢れ出る霊験あらたかな波動は紛れもなく聖剣の類、その曇り一つない銀の刀身を月下に晒していた。

 

「な、何者だ貴様?!!」

「何者か、だって?」

 

青年はだるそうに髪を掻き上げる。

 

「生憎だが、俺はテメェなんぞに名乗るほど安っぽい名前は持ち合わせてないんでな。それにそんなこときいてどうする?……テメェ、これから死ぬんだぜ?」

「ひっ!」

 

青年が刀を構えると、悪魔は悲鳴を上げ、完全に戦意を喪失して逃亡する姿勢に入った。

しかし非常にも、青年は裁きを下す者の名を唱える。

 

「逃がすかよ――――――『天児屋根(アメノコヤネ)』――――」

 

その瞬間、眩い光が辺り一帯を覆い尽した。

 

 

 

 

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