難しかった!!
僕はいつも君がどこかに行ってしまわないように手を繋ぐ。
隣で笑う君の横顔は今日の空のように真っ直ぐで、隣で笑う君の声は今日の空のように澄んでいる。
君は僕が好きだ、 君はそう言ってくれた。
僕も君が好きだ、 ごめん、今日もその一言が言えない。
言えないけれど、分かっているよね
「私さぁ、オーストラリア行ってみたいな。」
「そっか、何か見てみたいものがあるの?」
「えー、何となくよ。」
なんだよそれ、と君の頭を軽くたたいた。いたいな、もう、と言ってまた澄んだ声で笑う。
「オーストラリア行ったら、何したいの?」
「だから、何となくだって。」
「カンガルーとか、自然がきれいだとかさ、あ、サーフィンとか。」
「へー、よく知っているね。行きたいの?」
行きたいって言ったのは君じゃないか。
それから、沈黙があった。君は僕から視線をそらし、空を見た。
あぁ、行ってしまう。待って、行かないで。追いかけなくちゃ、追いかけなくちゃ。足音も聞こえないからどこまで今、君が遠くにいるのか分からない。
君はたまにいなくなる。隣にいるのに、ずっと遠くを見つめて。そして僕をまるで知らない人のような目で見るんだ。カシュー色の、君の瞳の中の瞳孔は真昼の太陽を浴びてしゅんと小さくなる。
心配になった僕は君を抱きしめた。君の体温を感じる。君は僕の胸に顔を埋める。ほら、またいなくなってた。手を繋いでいるのに。君の左手は僕の右手を握っているのに。
「どこに行っていたの?」
知らない人を見るような目で、カシュー色の瞳で、澄んだ声で、君は言った。
「どこって、ずっとあなたのそばにいるじゃない。」
僕が好きになった君はちょっと変わっている。会話は歯車がいつもすこしだけあっていないし、感性がずれているというか、他の誰も気付かないようなことに気付いたり、他の誰も言わないようなことを言うこともある。たまに、というより正直かなりの頻度で驚かされることがある。
「ねぇ、どうしたの?」君は僕の顔を覗き込んで聞いた。
「急に抱きしめたりして。ちょっとびっくりしちゃった。嬉しかったけど。すごく。温かいんだね、人って。」
「そう?もう一回しよっか?」冗談交じりに僕は聞く。
「えー、バカップルみたいだよ、付き合ってる訳じゃないんだから。」
と言ったすぐ、君はまた、僕の胸に顔を埋めた。ぐっ、とさっきよりも強く。
カシュー色の瞳は、僕をはっきりと捉えている。そして、子どものように君は笑った。
ねぇ、好きだよ。