自分の丈も有ろうか、という禍々しい、黒光りする大剣を振り、一人の青年は、”人型の魔物”の急所を的確に貫き、動きが止まったのを一瞬で見切り、刹那で剣を引き抜くと、美しい弧を描き、首をはねた。
赤黒い液体を、一振りして拭うと、懐から銀の、美しい装飾を施された、”自動拳銃に、限りなく疑似した”武器を取り出すと、まだ動く魔物の体の急所を、非情に撃ち抜く。
暗い町付近の林に、鋭く銃声が響き渡った。
完全に生命を停止した魔物は、まるで土に呑まれるように地面に溶けていく。
「仕事は終わりだ」
まだ若さが抜けていない声と共に、黒いコートをはためかせ、邪悪な大剣を背負うと、所々裾がボロボロになっているズボンのポケットに、銃を突っ込んだ。
音。
ここから近い。
歩行でも数十秒も掛からないだろう。
私を殺す敵?
警戒して、魔力を分散、擬似的なレーダーを作成。
生体反応は3つ。
いや、一つ反応は消えた。
目的が、何かの殺害?
そんな奴が私を見たら、殺される可能性が高い。
しかし、今の消耗状態では、成人した人間を倒すこともできない。
逃げねば。
自分自身が何者かも分からない今、まだ死ぬわけにはいかない。
脚が動かない。
覚悟するしかないか?
いつの間にか、足音は、私の後ろまで。
「んー?ここらにゃもう魔物はいねーぞー」
声の主を見るため、振り向く。
外套を着た青年だった。
まだ成人しかけの、のんびりと構えた表情。
軽い、敵意を感じさせない口調。
だが、信用するのはまだ早い。
「...私を...殺すのか?」
思ったよりも声が出ない。
魔力も、最早火の粉さえも起こせない程に無い。
意識も霞んできた。
訳が分からない、という表情で青年が近寄ってきた。
もうどうにもなら無い。
「...私の側に...ちか...よる...なッ...」
その程度の、掠れ声での反抗しか、意識が朦朧とする私にはできなかった。
依頼人の男は、深夜の時間、近くの電灯に照らされながら、待ち合わせに指定されていた公園のベンチに、体を擡げて、依頼報告を待っていた。
彼が頼んだのは、数十体の人食いの魔物の討伐。
何人か用心棒を雇い、送ってみたが、綺麗に全滅、病院送りになってしまった。
諦めかけていた彼は、たまたま古ぼけた町の掲示板の張り紙を見かける。
その張り紙の内容は―
『気に入った仕事は大概します Liberal』
半ばやけくそで、張り紙に書かれた住所に突撃し、適当に依頼してしまった彼は、前金を取られて逃げられてもおかしくない、と考えてはいるが、依頼報告という幻想に浸らずは居られなかった。
依頼を受理していたのは、煙草を吹かした老人で、あんな化け物に勝てるとは思えない。
後ろに、誰も座っていない、あの建物の主が座るであろう椅子があった為、その主が行うのだろう。
実際、そこまで金額は取られてはいなかったのだが、用心棒を雇うのに使いすぎていたのだ。
よって、金は使わないに越したことはない、と考えていた彼にとっては痛手だったという訳だ。
考え込んでいた彼は、耳にする。
何者かの、土を踏む足音を。
驚きと、不安に満ちた眼で、足音の主を一目見ようと顔をあげる。
そこには、物々しい深淵の黒に染まった大きな剣を背負った青年がいた。
―一人の、ぼろぼろの白い服を着た少女をお姫様抱っこの要領で抱き上げながら。
青年は、めんどくさそうに、しかし、笑みを浮かべながら喋りだす。
「取り合えず全部狩った。報酬は俺んちの『liberal』で受け取るから、明日来てくれよ。嘘だと思うなら部下でも派遣するといいさ」
勝手に喋った後は、更に勝手に踵を返して去ろうとする青年。
混乱しながらも、依頼した男は、確かに心の謎を言葉にした。
「あんたは一体誰だ!?」
顔を向けると、青年は、不敵な笑みを浮かべた。
「俺かい?俺は...」
「リベラ。しがない何でも屋だ」
リベラの元ネタは、liberal(英訳で、自由な~や、寛大な~を現す)。
あんまりがんがんあげられませんが、適当なペースで頑張りますッ!