惚けてた結果がこの様です...
私は、辺りに漂っている嫌な空気を感じ、意識を覚醒させ、身体を起こし、床に足をつける。
久々にじっくり寝られた為、魔力も完全に帰ってきた。
体力も、身体の弱さを差し引いても、かなり戻っている。
これなら、連中にも一泡ふかせられそうだ。
自分の周囲に、自分自身の魔力を充満させる。
この建物の中には、幾つか生命反応があった...が、恐らく、この小さな反応は、黒光りする虫だろう...
と、なると、やはり建物の外だろうか。
そう思った私は、魔力を使ったセンサーで読み取った建物の構造を頭の念頭に置きつつ、辺りを見回す。
―私自身の力は貧弱そのもの。
魔力で身体を強化しても、病弱といっても過言ではない。
基礎での底上げなど、たかが知れている。
だから、この部屋に鉄パイプ等の鈍器や、刃物があれば、是非とも持っておきたいのだ。
その時、リベラが妙な心配をしていた、あの禍々しい大剣の事を思い出す。
あの剣、もしかしたら使えるかもしれない。
...探してみようか。
先程食事前、リベラが出てきた部屋にある、ということもあり得る。
人の家を捜索するのは悪いこと、というのは知ってはいるが...
そんなことを考えながら、私はリベラが出てきていた部屋の扉を開く。
私の予想通り、その部屋の中に、私の身長よりも高い大剣は『居た』。
壁に立て掛けられて。
目に捉えるだけで、身を切り裂くような『何か』が、私の身体を震わせる。
まてよ、この剣は喋るんだった。
一応、許可は取るべきか。
「貴方を、少し使わせてもらってもいい?」
だが、剣は何も喋らない。
まさか、あの時は幻聴だったのだろうか?
まぁ持っていくからいいのだが。
私は剣の柄を掌に収めてみる。
柄の感触は、肌を擦るようにざらざらしていて、且つ、何故か持つだけで、剣から発せられる凄みが、犇々と感じられた。
威厳を何とか押し返しつつ、私はその剣を持ち上げ―
「...っ」
られなかった。
見た目に違わず、恐ろしく重い。
これを持ち上げ、使うには、あれを使うしかないか。
身体的な反動が一日後に来るから使いたくはないけど...
私は、一つ、溜め息をつき、数秒瞑目する。
次に、目を開き、身体に魔力をたぎらせた。
そして。
「promotion―『physical』raise」
その魔法の名を、詠唱した。
魔力が全身に満遍なく何度も行き渡る。
「...っく!」
瞬間、全身を這うような痛みが襲う。
我慢できず、小さく悲鳴をあげてしまった。
でも、これで...
私は、もう一度剣を持ち上げてみる。
すると、あっさりと紙を拾うかのように、今度は持つことができた。
―promotionは、言わば魔力での強制的な助長。
その為、魔力の消費は勿論、強制的に底上げされた部分は、効果を解いたとき、絶大な疲労が襲う。
...見敵必殺だ。
もう、建物の外の生物反応も出ている。
一瞬で片付けてしまえば、肉体疲労なんて二の次に出来る。
「...私を殺す気でしょう?ならば戦争よ」
剣を一振りし、私は、建物から全速力で飛び出した。
promotion(助長)
physical(肉体的な~)
raise(上げる)
リベラが物理役、リリアが魔法役でもう、いいんじゃないかしら...(困惑)