”創られた”少女と、自由な狩人   作:通行人 放浪

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久しぶりで無茶しましたー...





未だに尽きぬ戦いの焔

不思議なことだ。

 

自分が狙われるのは、全く怖くない。

 

 

だが、ソリッドや、この娘が敵視され、死に目に会ったとしたらどうだろう。

 

自分でも驚くほどに、殺意が沸く。

 

 

そして、今この時、何者かに追けられているのにも、不快さを感じていた。

 

後ろから犇々と感じる敵意から、相手は恐らく魔物。

 

 

その相手に、一発かましてやりたい。

 

 

だが、その追けてきている相手に近寄れば、間違いなく戦闘へと発展するだろう。

 

別に、戦い自体は、大した問題ではない。

 

いや、俺も無敵じゃないから、戦闘自体は御免被りたいが...

 

 

話を戻そう。

 

それの、何が問題かと言うと、意識のないリリアが、戦闘に巻き込まれ、怪我を負ってしまう事。

 

つまり、傷付く必要がない人には、痛みを伴って欲しくないのだ。

 

攻めたいものの、その事実は、俺による切り込みを、押し留まらせている。

 

 

攻めれば彼女が傷付く事になるし、放っておけば、いつ攻撃が来るか分からない。

 

たかが一体の魔物に優柔不断になる屈辱さに、苦虫を噛んだような表情を、俺は否応なしに作った。

 

 

リリアを地面に寝かせて潰しに行くか?

 

 

――こんな魔物に目が付きやすい所にか?本末転倒だ。

 

 

 

俺は、大きく溜め息をつくと、周りの仲間の様子を見る。

 

 

「全く、お前は何時も注意が足りないと――」

 

「アウシの言う通りなのですよ、それに――」

 

 

セラフとアウシは、全く気付いていないらしく、二人で俺に、未だに説教を続けていた。

 

聞きたくない、聞こえない。

 

 

落胆しかける俺だったが、一条の望みをかけ、ソリッドの様子も、溜め息をつきながらチラ見する。

 

 

 

ソリッドは、険しい表情をして、後ろを何度か振り向き、その度、仮の姿とはいえ、老人の目とは思えぬほど激しい敵意を露にしていた。

 

 

彼は、自分を追ってくる『敵』に対し、憎悪を抱いている。

 

――俺の一条の望みは、運良く叶ったらしい。

 

 

「ソリッド、ちょっと頼みたいことがある」

 

 

俺は、騒がしい二人の声を、完璧に聴覚から切り離し、小さくソリッドに手招きする。

 

それに気付いた彼は、後ろへの警戒心を剥き出しにしつつも、俺の傍に寄ってくる。

 

 

そして俺は、頼み事を、淡々と彼の耳に囁いた。

 

 

 

 

 

まるで骸骨に、赤色の袋を被せたかのような魔物が、一人の『廃棄物』と、その傍にいる、最重要で殺さねばならない少女を、静かに、尾行していた。

 

縦と横の大きさは、なんらリベラと変わらない。

 

 

彼は、陰に身を隠し、腕らしき部位についている、鋭い鉤爪を、小さな音で打ち鳴らす。

 

その自慢の刃で、二人を切り裂くのを今か今かと待ち望む。

 

先程、固まっていた筈の老人と、黒髪の少女、白髪の少女が散開するのを見て、違和感を魔物は感じるも、興味無さげに捨て置いた。

 

 

そして、『廃棄物』と、彼に抱き抱えられたもう一人の白髪の少女が二人きりになったことを、魔物は千載一遇の幸運だとほくそ笑む。

 

 

最早、待つ必要は無い。

 

 

魔物は、嬉々としながら、『廃棄物』の背後へと、命を断つべく飛び掛かった。

 

 

 

 

「かかったなアホが!」

 

 

 

 

瞬時に彼は、掛かってきた魔物へと振り向く。

 

 

不敵な笑みを浮かべ、魔物に対する罵倒を吐きながら、片手に握っている武器を、刹那の早さで、魔物の方へと投げつけた。

 

 

紙一重で右腕の爪を用い、それをパリィ(受け流す)した魔物は、上へと流した、相手の武器を視界に容れる。

 

 

 

それは、夜だと言うのに、銀の光を帯びた短剣であった。

 

その、場違いの剣の煌めきに、魔物が一瞬狼狽している間に、いつの間にか剣は姿を消す。

 

 

何度も起こる理解不能の自体に、魔物は混乱を隠せずにいた。

 

 

だが、数秒も立たない内に我に帰り、投げ付けてきた敵へと、再び殺意は向けられる。

 

魔物に殺気を向けられていた『廃棄物』――リベラは、不敵な笑みを湛えつつも、目に、殺気に対する敵意を宿し、背に掛けてあった大剣を、ゆっくりと引き抜く。

 

 

辺りに、コートと剣が擦れ、ズルズルという、少し君の悪い音が響き渡る。

 

 

そして、その大剣で、一度空を切ると、魔物に剣の切っ先を向け、言い放つ。

 

 

「リリアまで狙う下衆どもに、くれてやるチップなんてねぇからな」

 

 

 

その瞬間、彼は、地を踏み、その衝撃を用い、高速で魔物へと突撃した。

 

 

だが、魔物も甘い敵ではないらしい。

 

 

両手の爪を、自らを護るように交差させると、リベラの大剣による突撃を、敵ながら見事に受け止めた。

 

 

爪の隙間に剣の切っ先が入り込み、鍔迫り合いの状態となり、ギシギシと、鉄と鉄が擦れる音が響く。

 

 

 

 

軈て、このままでは千日手と思ったのか、両者は後ろに飛び退き、また、戦いの構えを取る。

 

少しの時間、事態は硬直していたが、リベラが一瞬睨みを聞かした刹那、また両者は、刃を互いの相手に、振り下ろす。

 

 

今度は、鍔迫り合いにはならず、剣と爪が、何度も何度も、打ち付けられる。

 

 

鉄を金槌で殴ったかのような、重厚な音が轟き、それと共に、暗闇を火花が、コンマ一秒の間を照らす。

 

 

だが、先に決め手を取ったのは魔物だった。

 

 

両爪の芯で、剣を力一杯打ち付けたのだ。

 

 

「おっと...」

 

 

少しだけリベラが、構えを崩し、隙が出来る。

 

 

思惑通りに行った魔物は、その隙を逃さず、リベラの腹部に爪を、突き立てた。

 

 

その魔物の失態は、勝ちを目の前にして、油断したこと。

 

もう一つ、刺さったと確信する一歩手前で、リベラが余裕の笑みを浮かべていたこと。

 

この二つだろう。

 

 

会心の一撃を放ち、黒い笑みのようなものを浮かべる、袋かぶりの魔物。

 

 

だが、魔物は、自分の爪に、『手応え』が無いのに気付いた。

 

 

奇妙な違和感に、魔物は困惑し、身を硬直させる。

 

 

 

「お前の目は節穴か?」

 

 

 

次に魔物が見たのは、自分の爪に、直立で乗った敵の姿。

 

コートの裾を揺らし、真なる勝ちを意味した笑みを浮かべた、自らの敵。

 

 

彼は、間髪いれずに、魔物の首を、いとも容易く切り落とした。

 

 

――勝ちを先に確信した者が負けると言う言葉があるらしい。

 

今回の結末は、まさにその通りであった。




とりあえず打ち合わせようとしたらこうなった。

反省も後悔もしている。
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