夜の帳が降りた闇の中、ある一つの集団が、人目のつかない、リベラらが住む町の近くの林の中、奇襲の為に、機を待っていた。
そして―
『時は満ちた...この暗闇に乗じ、『廃棄物』をこの町ごと始末すれば、貴様ら三下共の安泰は確保されるッ!』
一体の、辛うじて人型を留めている人外は、集結した、小規模ながらも隊としては充分に数がある同胞達に、大声で呼び掛けた。
それも、味方に言う言葉としては、余りにも上から目線が目立つ言い方でである。
中心として、同胞達に語りかける人外の眼光は、悪意とも言える、どす黒さを秘めていた。
どす黒さに呑まれた目は、執念、憎悪、憤怒ともとれる、色々な感情が、無茶苦茶に混ぜ合わせられた、灰の焔を猛らせている。
周りの人外達は、見た目こそ千差万別だが、『人型』の言葉を理解しているような知性は見受けられない。
どちらかというと、『人型』に、ほんの少量の魔力で操られる木偶、と言った感じだろうか。
『人型』は、悪どい笑みを浮かべてほくそ笑む。
最早この数には敵うまい、と、鷹を括って。
だが、この油断は―
「よう、お前ら...随分と数を連れてきたなぁ、暇な野郎が」
一本の木の枝に、のんびりと佇む青年に、春の世の夢の如く、吹き消された。
青年―リベラの手には、熾天使と、闇の名を冠する剣。
熾天使は暗闇の中でも眩く輝き、闇は、辺りの深い黒を、更に深く塗り潰している。
『き、貴様...廃棄物ッ!』
『人型』が、憎々しげに、リベラに叫んだ。
この人外の目には、最早油断の二文字はなく。
明確な殺意が、一目で分かる程に籠っていた。
焦りを禁じ得ない様子の『人型』を見て、ざまぁみろ、とでも言いたげに、嘲笑するリベラ。
そして彼は、木の枝を踏み台にし、人外達の群れへと突っ込みながら、口にする。
「さて...お前ら全員―」
「楽しいショータイムへ招待してやるよ」
二つの刃を煌めかせつつ、戦闘の始まりを。
リベラは白銀に輝く剣を、目の前の魔物に、寸分の狂い無く一閃した。
「ギャギ?...ギッ...」
暫く、一刀両断されたことに気付かない魔物は、軈て遅い来る痛覚に意識を奪われ、あっさりと地に伏せる。
だが、一体狩ったところで、リベラを囲む魔物達の、数の差は変わるはずもない。
手下を操っていた『人型』は、そう考えていた事だろう。
だが、慢心なぞ、この男に対しては、抱くべきではなかった。
「行くぜお前らッ!」
猛る戦意を顕すかのように、リベラが叫ぶ。
『灰は灰に!』
黒剣は、嬉々とするかのように。
『塵は塵に!』
白剣は、落ち着きながら...お互いが、リベラに合わせて叫ぶ。
「『『Assault!』』」
一人と、二本の剣の掛け声と共に、双刀に魔力を込め、強く地面を踏み込み、前方の敵の海に向かって突撃する。
そして、二つの刃を、まるでクロスを描くかのように斬撃を交差させた。
その剣の軌跡が、輝く閃刃と、漆黒の乱刃の、二重の魔力の波となり、前方の敵を、めった切りにする。
―小さな声でリベラが、「何処でこんなことを覚えたんだ...やっぱりあいつらかな...」と、悲しげに呟いていたのは、聞かなかった事にしよう。
薙がれた魔物の波は、微塵の如く切られ、固まって、前方で扇状になっていた雑魚は、刹那で斬り払われ、バラバラになった魔物達は、土へと還って行く。
『馬鹿な...馬鹿な馬鹿なぁ!』
その、操っていた連中の一部が、あっさりと滅ぼされた様子を見て、まるで悲鳴のように、『人型』は声を上げる。
だが、現実は非情である。
今の一撃だけでも、『人型』の駒の二割程は消し飛んだのだ。
しかも、大群を、一人だけの武功のみで斬り、無傷で捌くリベラの姿は、敵の『人型』からすれば、まさに゛デビルハンター゛であった。
「てめえら俺の飯の時間返せやぁ!」
リベラの怒気と八つ当たりが、たっぷりと籠った回し蹴りを諸に食らった魔物は、一際太い木に、思い切り叩き付けられた。
だが、その蹴りの隙を狙い、狡猾にも飛び掛かる数匹の魔物。
どんな神経をしていても、まずこれは避けられない、そんな最高の一手だった。
身体が、無情にも切り裂かれる。
「ギュギャァッ!?」
身体は身体でも、飛び掛かった魔物達の身体だったが。
「おい、私を使うなんて、後で覚えときやがれ」
「油断大敵なのです、リベラ様」
崩れ落ちた魔物達は見た。
眼帯を着けた、燃ゆる灼熱をもう片目に宿した黒剣を持つ少女と、銀に揺らめく髪を舞わせる白剣を持つ少女の二人が、自分達を空中で刹那で切り払い、次の瞬時には、地を悠然と踏むところを。
戦闘編は、時間の都合もいれて、2~3に分けようかなー、なんて。
アグルドみたいに武器が本体とかリスペクトした結果がこれですよ!
いやはや、やはり私自身の未熟さが目立ちますね