『トライユ! 犯人は右に曲がったわ!』
プラネテューヌ市街地では、たまに街を騒がせる悪人との追跡劇が繰り広げられていた。
リーンボックスでの仕事の成果は、まだ上がっていない。イストワールもまた、ヴァル・ヴェルデへの連絡手段を検索中だ。
その間、トライユに課せられたのは広大なプラネテューヌの警備手伝い。もちろん真っ白ホワイト、笑顔の絶えない勤務シフトなのでご安心。
「了解しました!」
足を止め、姿勢を低くして路地へ滑り込むトライユ。片手にはいつか手に入れた自身のショットガンを手にしている。弾数は無限、弾薬ボックスの効果である。便利。
走りながらショットガンを構え、トリガーを迷うことなく引いた。暴徒鎮圧用のゴム弾は逃走犯の背中へ直撃し、そのままつんのめって転ぶ。
「捕まえましたよ!」
犯人逮捕プラス1。報酬は特に無し。
しかし、超次元を楽しみ始めるトライユにとってはそんなものどうでも良かった。
逃走犯を然るべき機関へ突き出し、アイエフとトライユが市街で合流する。
「だいぶ馴染んできたわね。私としても、すごく助かってるわ。仕事がすごい勢いで減っていくから、楽なのよ」
「あははは……。こういう仕事は、私の生まれがそうである以上得意分野ですから。また何かあれば、連絡してください。もう暫く市街を警備してますから!」
軍人よろしくな敬礼をアイエフへ向け、トライユは市街へ消えて行く。プラネテューヌの警備兵の一部も、そんなトライユに影響されつつあるのは秘密である。
「それにしても……うーん。少しお腹すいたなぁ」
ちらりと目を遣れば、映るのはクレープ屋台。ちょうど悪党との追跡劇で小腹も空いていたし、糖分も欲しかったところだ。
ちょうど良し、と向かっていくと背後からラグビー選手よろしくなタックルを加えられ、派手に吹き飛ぶ。
「とらいゆー!」
「へ……ふえ?」
ずこーっな姿勢のまま動けずにいるトライユの背中に感じる、心地よい程度の重さ。耳にした声も、教会で聞き覚えがあった。
「ピーシェちゃん……だったかな?」
「うん! ぴぃだよ!」
トライユがリーンボックスから帰ってきたら増えていた謎の幼女、ピーシェ。トライユも一応、教会でピーシェの名はイストワールから聞いていた。舌足らずな喋りに、その小柄な身体はいったい何処の幼稚園に通っているのか、と訊ねたくなるものだが、彼女のパワーはネプテューヌを一撃轟沈させる程である。
油断していればトライユでさえ、街中で盛大に吹き飛ばされるほどに。お前のような幼女がいるか。
「ピーシェちゃん、一人?」
「ぷるるともいっしょ!」
プルルートがいっしょだ、とピーシェは語るが肝心のプルルートは見当たらない。
まったりタイプなプルルートに、元気一杯なピーシェではまるっきり逆だ。恐らくプルルートがもたもたとしているうちに、はぐれてしまったのだろう。
とはいえ、プラネテューヌは広い。あまり動き回ると余計に合流できない可能性もある。トライユは半ば仕方なく、ピーシェにクレープを買って渡す。
「おいしー!」
やんちゃそうな印象を与える八重歯を見せながら、ピーシェはクレープを嬉しそうに頬張る。
対するトライユは、そろそろ腰の痛みが限界だった。
「あははは、良かったね。ところで、プルルートさんは?」
「うーん……まいご?」
悲報。プルルート、迷子に迷子扱いされる。
しかし、やはりどん詰まりらしい。ピーシェをこのまま教会に届けても良いのだが、プルルートが探し続けた挙げ句に女神化して暴れても困る。彼女の心は爆弾のように危なっかしいのである。
「ピーシェちゃん、いっしょにプルルートさん探そっか?」
「うん! ぷるるとさがして、とらいゆと三人であそぶ!」
「あ……遊べるかな――」
この先の苦行を考えると、自身のヒットポイントを不安視せざるを得ないトライユだった。
◇
幸いトライユは軽武装。加えてピーシェは体躯が小さく、肩車も簡単だった。
わいわいと騒ぐピーシェを支えるのは大変だったが、それが逆に良かったのかプルルートを発見。
「ふえ~……。ぴーしぇちゃん~、置いてっちゃダメだよぅ~……」
「あぅ、ごめんなさい……」
「ほ、ホントにお互い迷子さんだったんだー……。スゴい偶然だわー」
迷子に迷子扱いされた迷子、プルルートが弱々しく叱るとピーシェはちゃんと反省したようで、謝罪の言葉を口にする。素直な子供は好かれるのでプラス点だろうか。
一方のトライユは完全に置いてきぼり。遠い目で何処かへ呟いていた。と、思っていればプルルートは何かを思い出したかのように声を上げる。
「あ~! そうだったぁ。いーすんに~これを渡すようにおねがいされてたんだぁ~。トライユちゃん~、はい~」
プルルートが差し出したのは、いびつとも言える形状をした深紅の自動拳銃。武器は既に間に合っているのだが、どうも事情が異なるらしい。
トライユが拳銃を受けとると、プルルートは続けた。
「なんかね~、前にあたし達が行った島に落ちてたんだって~。よくわからないし、危ないかもしれないってしまってたらしいんだけど~……。トライユちゃんならわかるかな~って」
「拳銃が落ちてるって、いつからここはそんな物騒に……。うーん、マウザーみたいだけど違うし――可動部は動く、作りからしてオモチャじゃない……? よくわかりませんね」
スライドを引いたり、撃鉄を起こしたりと試してみるが異状はない。形が少しおかしく、不気味な深紅の自動拳銃というだけ。ただし、弾はもちろん入っていない。
しかし、使えないとわかってしまうと返していいのかどうか分からなくなってしまう。トライユが唸っているとプルルートは追い討ちを掛けるように言い放つ。
「それはぁ、あげる~っていーすんがいってたよ~」
「危険物処理係ですか私は……。まあ、拳銃一挺くらいいいですけど」
「むー! ぴぃもあそびたい! あそぼあそぼー! ぷるるとととらいゆばっかりずるい!」
とうとう蚊帳の外になっていたピーシェが大噴火。全員KOされる前に止めなくてはもれなくデッドエンド。
「じゃあ、プルルートさんも付き合ってくださいね?」
「うん~! みんなでおでかけおでかけ~」
「おでかけ!」
仕事終わりのトライユ。プルルート達と共に、彼女は公園へと向かっていった。
その時トライユの持つ自動拳銃が微かにシェアエナジーを帯びたが、気付くものはいない。
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迷子に迷子扱いされた迷子、プルルートが弱々しく叱るとピーシェはちゃんと反省したようで、謝罪の言葉を口にする。素直な子供は好かれるのでプラス点だろうか。
一方のトライユは完全に置いてきぼり。遠い目で何処かへ呟いていた。と、思っていればプルルートは何かを思い出したかのように声を上げる。
「あ~! そうだったぁ。いーすんに~これを渡すようにおねがいされてたんだぁ~。トライユちゃん~、はい~」
差し出されたのはねぷぎゃーぬいぐるみ。例の顔がトライユを睨む。
「あ、あれ? この展開見たことある!」