十次元ガンナートライユ+ネプテューヌ   作:鞍月しめじ

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十次元へただいま

 十次元――超次元各国の女神たちは自国を教祖に任せて、この未知の次元へ向け旅立った。イストワールの開いたゲートへゆっくりと吸い込まれ、眩い光を感じたかと思えば皆は森の中にいた。

 舗装されてはいないが、道がしっかり出来ている事を見れば国へ繋がる通路か何か――重要な道なのは一目瞭然。十次元へ無事に到着し、エルスタトリガーは女神たちへ向き直り語りかける。

 

「……こんなことになってすまないと思っているが、一先ずようこそ十次元へ。異国の友よ」

「ありがとう……って、私たちは女神化してここに来たかしら?」

 

 パープルハートは自分の姿を見回して問う。パープルハートだけでなく、他の女神や候補生達も同じように女神化している。

 

「……ここではこの姿がデフォでな。たぶん、それが作用しているのか――しかし、あの時のルウィーは敵だらけで騒がしかったが私の国は人の姿一つない……か」

 

 双眼鏡でエルスタトリガーが見つめる先に、一つ大きな街がある。辺鄙な場所ではあるが、そこだけが綺麗に開拓された近代的な街並み。おおよそは皆が想像していたものとは異なっていた。

 

「もっと密林の中にある集落みたいなのを想像してたけど、何よ案外発展してるじゃない」

「まあ、国王が頑張ってくれたからな――っと、まずは国王を助けなければ。ついてきてくれ、街には地下から入る」

 

 ブラックハートに反応しつつ右腿のマウントからファイブセブンを抜いて、構えながらエルスタトリガーは皆を率いて道から外れていった。

 街へ近付くにつれ見えてきたのは、ルウィーにあったものとはまた異なった地下道入口。名前はなく、侵入者対策の扉も腐食の進んだ木で出来ている。

 

「大臣が何を企んでいるかわからん、静かに行く」

「了解ですわ。ですが、ここから国王様の捕まっている場所へ?」

「ああ。捕縛した者は地下の牢に入れる――他に閉じ込められる場所はないから、恐らくは取り込んだ国民辺りに見張りをさせて国王を閉じ込めている筈。その牢へは、ここから直通で行ける」

「ずいぶんとザルな造りだな。大臣が知ってたら、無駄足だぜ?」

「無いな。ここの入口は国王と、私しか知らない。本来はゲームで使う国内の扉から降りていくからな」

 

 ホワイトハートの問いに応えながら、エルスタトリガーは静かに扉を開く。拳銃は先に突き出すように構え、続いて身体を滑り込ませる。

 地下道は何かの坑道だったのかと思わせるほどに狭く、灯りは申し訳程度に吊り下げられた白熱球の列。灯りはあるが、少々頭上が熱い。

 エルスタトリガーを先行に、慎重に地下道を歩いていたが敵の巡回は無いようだった。国王の監視に回っているのか、それともヴァル・ヴェルデ市街を巡回しているのかは判らない。

 

「よし、敵はいない。地下牢まで一気に進むぞ!」

 

 足場の悪い地下道でありながら、エルスタトリガーは部下であり、友人である国王を幽閉しているてあろう地下牢へ向けて走り出す。

 

 

「全員止まれ」

 

 エルスタトリガーがそう発したのは、地下道を実に三十分以上走ってからのことだった。道中『どれだけ道が長いのか』などなど、不満も噴出したがそれはそれ。

 漸く足を止めた女神たちのすぐ前方に、再び木製の扉がある。その先からは石造りの地下道というよりは、薄暗い洞窟らしい環境に変わっており目的の場所に到着したとエルスタトリガーは判断する。

 

「先に入る。待っててくれ」

「待って。国民が大臣側なら、あなたも攻撃される筈。一人で入るのは危険だわ」

「――信じてはいるつもりだが……そうだな、全員で入ろう。行くぞ」

 

 ぎぃ、と耳障りに軋みながら開いた扉。拳銃を構えたままエリア移動すると、その先には一人、ライフルを携えたヴァル・ヴェルデ王国軍兵士がいた。

 女神たちが武装を呼び出し構え、エルスタトリガーの拳銃と兵士のライフルが正対する。どちらも撃つ気になれば、容易く撃てる。

 

「エルスタ様……まさか、お戻りになられるとは」

「ああ――アイツが早く私に相談してくれれば、こうする事もなかったんだが……」

「――で、この人間はどうするのかしら? お仕置きするならぁ……あたしに任せてもらえるとありがたいんだけど……」

 

 蛇腹剣を鳴らし、いい加減に飢えたアイリスハートが語る。だが、王国軍兵士はゆっくりとライフルを床に置くと、膝をついて両手を挙げた。

 

「確かに自分は、大臣の決定には逆らえませんでした。国王を幽閉し、国王のお言葉として国を乗っ取った大臣には……。ですが、こうしてあなたが戻ってきてくださった! 大臣はこの国を、隣国と合併させ戦争を起こすつもりです。どうか、その思惑を――」

「長ったらしい口上はもう充分だ。オイ、この国の国王はどこに隠したんだ?」

 

 戦槌を地面に突き立て、ホワイトハートが兵士へ問うとその手は静かに扉へ向けられた。

 牢の扉は格子ではない。国王の姿を見ることはできないが、兵士はそれ以上何も言わず鍵を地面へ置いて再び両手をあげる。

 

「もしかして、大臣さんの思惑以上にトライユさんを支持している人はまだいるのかな……。だとしたら、勝ち目はあるかも」

 

 鍵を開け、重い鉄製の扉を開け放ったエルスタトリガーを見ながらパープルシスターは呟く。

 その次の瞬間、エルスタトリガーは牢の中から飛び出してきた少女によって通路で尻餅をつく。

 

「なんで戻ってきたのよ! エルスタ!?」

「ここは私とお前の国だ、危機とあって不在の女神などどこにいる。逆に、なぜ私を他の次元に飛ばしたのか後でゆっくり訊かせてもらうぞ、シテス」

 

 突如現れた新キャラに、女神たちの頭上には次々とクエスチョンマークが浮かんでいく。

 それを悟って、シテスと呼ばれた少女は静かに立ち上がり女神達へ正対した。

 

「私がヴァル・ヴェルデ王国国王、シテスです。皆さんがエルスタのいた次元のご友人たちですね」

「てっきり筋肉隆々の大男が出てくると思ったのだけれど、意外ね」

「よく言われます。でも、エルスタほどではありませんが力仕事は出来ますよ」

 

 暗い銀色のロングヘアを靡かせてヴァル・ヴェルデ王国国王、シテスはパープルハートへそう話す。降参した兵からベレッタ92Sピストルを受け取って扱う様は、流石十次元にある一国の王を謳うだけはある手慣れたものだった。

 比較的小柄な体躯は女神化解除時のネプテューヌくらいだろうか。それでも、彼女は次々に兵士の持っていた銃を慣れた仕種で観察していく。

 

「やっぱり実銃になってる。大臣め、隣国にウチを売って戦争する気なのね……」

「それは先ほどその兵から聞いたさ。で、大臣と国民については? 何か知ってるか」

「大臣はわからないけど、国民はエルスタ……あなたへの信仰心を封じられながら自宅待機させられてる筈」

「失礼します。大臣であれば、隣国との会談のため本日中は戻らないと仰有っておりました。数日は開くものかと」

 

 エルスタトリガーとシテスの会話に入った兵は、有益な情報をもたらした。もっともそれが嘘でない保証もないのだが、今は他に信じられる者もいないのが実状。

 しかし、それとはもう一つ別に女神たちが気になる事があった。

 

「ねえトライユ、あなた――エルスタトリガーよね?」

 

 ――呼称である。

 ブラックハートも、女神である皆も、その姿で名前を略される事はない。パープルハートが『パープル』と呼ばれるような事はない筈であり、同じ女神ならエルスタトリガーの名がなぜ略されるのか小さい事ながら知的探求心がかき回される。

 

「話してないの?」

 

 と、かるーい調子でシテスはエルスタトリガーへ問う。

 

「ああ、まだだったな。トライユの謎と共に、今話してしまおう。国に上がれば、仕事が多くなる」

 

 そう言って、エルスタトリガーは一拍置いてから語り始めた。

 

「エルスタ“トリガー”は超次元で、その――適当につけた名でな。真名はエルスタという」

「本当の意味での真名なら、ル・エルスタね。トライユっていう子が誰かは判らないけど、私がエルスタを超次元へ転送する際に依り代にさせてもらった子だと思うわ。エルスタ転送に合わせて、その子も同次元内座標移動してると思うから迷惑掛けちゃったけど」

 

 ル・エルスタ――それがエルスタトリガーの本名。そしてトライユとは全くの別人であり、それならばトライユが空から降ってくる三日前に、プラネテューヌでトライユが確認されているという話にも合点がいく。

 

「じゃあ今、超次元のトライユさんはどうなっているんですの? まさか、脱け殻の廃人じゃ――」

 

 グリーンハートの問いには、エルスタもシテスもそろってかぶりを振った。

 

「私が乗り移って、トライユを演じていた間の記憶はなくなるだろうが、トライユ自身を取り戻しているだろう。少し残酷だが……」

「そうね。だから私は、エルスタが戻ってくるなんて思わなかった。トライユちゃんの代わりに、暮らしてくれるものと」

「どっちにせよ、本物のトライユにははた迷惑な話だったってワケか。全く、自分勝手だぜ」

 

 ホワイトハートの言葉には、十次元の二人も『謝罪の言葉もない』としか返しようがなかった。謝罪はここでするものではない。するのならトライユへするべきものだ。

 そのためにも、目前の問題は早急に片付けなくてはならない。

 

「とにかくだ。大臣が数日戻らないのは好機だ。今のうちに、全国民へ放送を流せシテス。私は戻ってきた、国を乗っ取ろうとする悪とは戦わなければならない。相手が好戦的な隣国とあれば、なおさらだ」

「わかったわ。まずは城まで行きましょう。敵はいない筈よ」

 

 そうして、今度はシテスを先頭に女神たちの移動が始まる。

 今度はエルスタがいなかった分を取り返す事になる。ネプテューヌ達超次元メンバーと、十次元メンバーの最後の戦いはほんの手の届く場所にまで迫っていた。






もしかして、大臣さんの思惑以上にトライユさんを支持している人はまだいるのかな……。だとしたら、勝ち目はあるかも」

 鍵を開け、重い鉄製の扉を開け放ったエルスタトリガーを見ながらパープルシスターは呟く。
 その次の瞬間、エルスタトリガーは牢の中から飛び出してきた少女によって通路で尻餅をつく。

「なんで戻ってきたのよ! エルスタ!? ――エルスタ?」
「~~ッ! 場所を考えろッ! 洞窟だぞ! いろいろ刺さった!」
「い、いたそう……」
「あれはなかなか効きそうだわ……」
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