十次元ガンナートライユ+ネプテューヌ   作:鞍月しめじ

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同性だったんだから、別に良かったんじゃない?

 プラネテューヌ教会、深夜。ゲーマーのネプテューヌ達も寝静まった頃、トライユは一人見廻りを行っていた。

 

「特に異状は無し……と。ふう、結構広いですねぇ。教会って――私の居たところとは大違いです」

 

 ホルスターに納めていた拳銃に安全装置を掛け、見廻りを終えたトライユは大きなため息を吐いた。

 幸せが逃げるだとか言われているが、突然『次元を越える』なんて不幸に遭遇した今より不幸なことなど、死くらいなものだろう。トライユも一応は女神、信仰の力が次元を越えていると観測されている。それが彼女を守る限りは、死はあり得ないと言ってもいい。よって、逃げる幸せはない。ため息吐き放題、もう一回吐き出すドン。

 

「お疲れさまです、トライユさん」

「イストワール様。ありがとうございます」

 

 やってきたのは本で空飛ぶ史書イストワール……通称『いーすん』――因みに言語の違う信仰者からは『イスティ』と呼ばれているらしい――だった。

 

「貴方がこちらに来て、一日目が終わりましたが馴れましたか? プラネテューヌには」

「まあ、ある程度は……」

「ネプテューヌさんのお相手は大変でしょう?」

 

 呆れたように腕組みするイストワール。ネプテューヌの女神らしからぬ行動には、生真面目なイストワールも手を焼いているのだ。

 愚痴る相手も居らず、ストレスは溜まる一方。その内爆発して、次元の法則が乱れない事を祈るばかりである。

 だが、トライユはそんなイストワールの言葉に苦笑いしつつも、それを否定した。

 

「まあ、確かに大変かもしれませんけど……騒がしいことは好きですから。そういう次元に居たので」

「例えば? 私としても、十次元では何をしていたのか興味があります」

「島をドンパチ、賑やかにしたりですかねぇ……。楽しかったなぁ、ヴァル・ヴェルデ全域サバイバルゲーム」

「貴方、誰かに野蛮だって言われたことはありませんか?」

「ないです」

 

 にっこりさわやか、清々しい笑顔でイストワールへ返した。ぼんやりとした灯りを受けて、トライユの背中に背負われた軽機関銃が煌めく。とてもこわい。

 

「あ、そうでした。女神化した、とネプテューヌさんから伺っていますが……」

 

 何かを思い出したようなイストワールが手を叩き、話を切り替えた。

 

「はい……とはいっても、何だかイメージと違って――十次元に居たときは、それこそパープルハートさんみたいに変わったんですが中途半端で……」

「なるほど……。女神化の兆候はあるのに、不完全ですか。次元の影響でしょうか」

「多分、そうだと思います。十次元にいる、皆さんの気持ちは不思議とこちらにも届いていて、力は頂けていますから」

「なるほど……。その事も踏まえて、もう少し調べてみます。トライユさんもお休みになってください、明日もまた騒がしくなりますから」

「はい! お疲れ様です」

 

 イストワールと別れたトライユは見廻りの交替を申請し、用意された自室へと戻る。

 ネプテューヌが自らトライユの為に用意した部屋は、一人では持て余すほどに広く、ゲームにも困らないプラネテューヌ流スイートルームだ。

 

「あ、あれ? プルルートさん……?」

 

 そんなスイートルームで、何故か部屋の主を差し置いて眠っているのはプルルート。

 先の戦いで女神アイリスハートとして参戦し、その後『折角だから』という理由でしばらくこの次元に居ることに決まったのだ。

 部屋は別々の筈だが、どういう訳かプルルートはぬいぐるみを胸にすやすやと寝息を立てている。

 

「あのー……。ダメだ、起きないか……」

 

 流石はプラネテューヌの女神か、欲望に忠実である。プルルートもまた、トライユの声に貸す耳など無いと云わんばかりに寝返りを打って、背を向けた。

 

「か……かくなる上は――ソファ、だよね。はぁ……」

 

 ガックリと肩を落として、部屋に置かれたブランケットを掴んでソファに身を横たえたトライユ。疲れが取れる気がしない。やはりベッドで寝ようか、と一度プルルートの背中を見遣るが、寝惚けたプルルートが抱いたぬいぐるみにボディブローをくわえたのを見て、トライユは全てを諦めた。

 次元を飛び越え、モンスターを駆逐し、アイエフの元で仕事をしてラステイションまで観光に行ったかと思えば、またモンスター退治……。トライユがいくら女神と言えど、筋肉痛待った無しのハードスケジュールだった。

 明日はきっと、更に忙しくなるのだろう。少しだけ憂鬱になりながら、目を瞑る。

 

 

『……ん。トライユちゃん。起きようよ~』

「ん……。もう少しだけ……」

 

 プラネテューヌの朝。プルルートはソファで眠るトライユを揺すって起こそうとするが、疲れに疲れた彼女は一向に起きようとしない。

 何度揺すってもダメだった。というより、プルルートがベッドを占領していなければまた違ったろうに。少し理不尽な気もするが、揺する力は次第に強くなっていく。

 

「ねぇ~? なんで~……起きてくれないの~……?」

 

 目元に影を落とし、声を低めるプルルート。明らかに入ってはいけないスイッチが入った音が、どこからかしたような気がした。

 ぬいぐるみをゆっくりと振り上げ、寝転けるトライユの腹部目掛けて――一気に振り下ろす。

 

「ねぷぎゃっ!?」 

 

 明らかにキャラが違うだろ、と言わんばかりの声を上げたトライユの身体は衝撃でくの字に曲がった。

 ずごっ、と的確に腹部を捉えたプルルートのショボーンぬいぐるみ。その音は明らかにぬいぐるみのそれではない。中に金属でも突っ込んでいそうな重さだった。

 

「おはよ~、トライユちゃん」

「女神じゃなかったら間違いなく死んでましたよ、私……。流石にNGシーン行きにはしませんが」

「何のこと~?」

「い、いえ。それより、プルルートさんはどうしてここに? プルルートさん、一応別な部屋用意されてましたよね」

 

 トライユが問うと、プルルートは少し悩むような仕種を見せてから答えた。

 

「お話したかったんだけど~、トライユちゃんの帰りが遅いから~……眠っちゃった~」

 

 プルルート特有のまったりボイスにミクロン程度だがイラっとするトライユ。しかしまあ、聞いていけばクセになるもので……。

 

「じゃあ、また今日の夜に――」

「今日は~あたしもお仕事に付いていきたいな~」

「――は?」

 

 目を丸くするトライユ。本当に連れていって大丈夫か不安にもなったが、アイエフが云うに『私のスマートフォンを持っている限りは自由にしていいから、今日はギルドでクエストを受けてきて』とのこと。

 恐らく、連れていかないとまたぬいぐるみと言う名の鈍器が出るか、下手をすれば神様女王様女神様のアイリスハートが出かねない。

 

「わかりました。でも、私はここに来てから一日しか経ってませんから、簡単なクエストだけ――」

「それなら大丈夫だよ~。いざとなったらぁ、変身しちゃうから~」

「すいませんごめんなさいやめてください。本能が告げてるんです」

「えぇ~?」

 

 良く判らない懇願に、小首をかしげるプルルート。

 しかし、これでトライユのパーティにプルルートが加わった。本日の予定に、他国への出国予定もない。クエストをこなして、自らの女神化の謎も解かなければならない。

 今日もまた、超次元的に忙しい一日が始まった。





「ねぇ~? なんで~……起きてくれないの~……?」

 目元に影を落とし、声を低めるプルルート。明らかに入ってはいけないスイッチが入った音が、どこからかしたような気がした。
 ぬいぐるみをゆっくりと振り上げ、寝転けるトライユの腹部目掛けて――一気に振り下ろす。

「ネプギャァァァァァ!」 

 明らかにキャラが違うだろ、と言わんばかりの声を上げたトライユの身体は衝撃でくの字に曲がった。
 ずごっ、と的確に腹部を捉えたプルルートのショボーンぬいぐるみ。その音は明らかにぬいぐるみのそれではない。中に金属でも突っ込んでいそうな重さだった。

「おはよ~、トライユちゃん」
「女神じゃなかったら間違いなく死んでましたよ、私……。流石にNGシーン行きにはしませんが」
「って、言ったよねぇ。あれは嘘だよ~」
「ウワァァァァァァ!」
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