十次元ガンナートライユ+ネプテューヌ   作:鞍月しめじ

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大事なのは雰囲気作りってばっちゃが言ってた気がする

 トライユが超次元に来てから三日目。イストワールの予告通りならば、今日この日がトライユの次元超越の理由が判る日になる。

 例によってイストワールの電脳世界に呼び出されたネプテューヌ達プラスベールは、得も知れぬ緊張感に呑まれそうになっていた。

 

「検索した結果、十次元の存在を確認しました。今度は『高確率』ではなく、確実ですね。トライユさんの国は、確かに存在していました。プルルートさんの居た次元は別なわたしが居ましたから、簡単に見つけられたのですが……十次元は平行世界では無いので」

 

 イストワールが話を切り出すが、その面持ちはあまり芳しいものではなかった。

 

「平行世界じゃない、ということは――完全に別世界の住人ということになるわ。そしてイストワール様が連絡を試みようにも、十次元にはプルルート様のいらっしゃる次元と違って別なイストワール様が居ない。――要するに、専用回線が敷けないのよ」

 

 アイエフが若干の説明を補足すると、トライユが問いを投げる。

 

「私は、帰れるんですか? 今、ヴァル・ヴェルデは!?」

「つ、掴まないでくださーい! ――とにかく、連絡先にすべき座標は捉えたのであとは向こうと通信出来るように、相手を検索するだけですが……」

「なーんか嫌な予感がするなーわたし。いーすん、それ三日で終わる?」

 

 ネプテューヌが問うと、イストワールはふるふるとかぶりを振った。やはり、その面持ちは宜しくない。

 

「じゃあ、三時間くらいです?」

「あ、いえ。――まことに申し上げにくいのですが、三週間です」

 

 三週間。イストワールの言葉に、空気が凍りついた。

 帰れるわけでもなく、トライユの次元を確認するのに三日。更に、トライユの国と連絡を取るのには三週間を要するだろう、と――これには、当事者であるトライユはショックのあまりにめまいを起こした。

 

「そんな……いーすんさん、なんとかならないんですか?」

「こればかりはどうにも……。十次元にもイストワールが確認できれば、わたしたちの機能で通信が可能ですが――存在は確認できません」

「確かに。イストワール様のおっしゃる通り、私の国にはそういった人工生命体は居ません。――ただ、国王様であれば或いは……」

「では、ヴァル・ヴェルデ国王様を中心に連絡先の検索にあたってみますが、三週間はみてください。早まるようであれば、改めて集まりましょう」

 

 結局、トライユの次元超越の理由は解らずじまいだった。

 しかし、まだ完全に帰れないと決まったわけではない。サバゲーの女神たるもの、いつまでもウジウジしている訳にもいかない。

 幸いにもベールがネプテューヌに話を通してくれていたお陰で、リーンボックス旅行へは滞りなく進んだ。陸路をバイクで、空を飛ぶベール=グリーンハートによる案内で行くトライユ。

 その姿を遠目で眺める幼女が一人。

 

「あれが最近各国を回ってるっていう幼女ね。幼女かどうか微妙なラインだけど、リーンボックスの女神と比べたら全然幼女だわ! 消去法幼女でも、わたしは幼年幼女の味方なんだから!」

 

 

 都市リーンボックス。いろいろとサイズの大きい懐の広い国。

 しかし、今回は観光ではない。ベールから道中聞かされたのは、新作ソフトの意見を第三者で且つ、FPSなどのミリタリーな方面に強い者から意見を聞きたいというもの。

 つまりは、これも立派な仕事。意気込んで教会へ足を踏み入れたトライユではあったが、見た目の豪華さに反するBL系ポスターやら、フィギュアやら大量のゲームソフトやら――ベールのイメージにそぐわないオタクっぷりに、すっかり肩透かしを食らう。

 

「今から準備を致しますので、どうぞ――紅茶とお茶菓子を召し上がってお待ちくださいませ」

「あ、あぁどうも……」

 

 出された紅茶の湯気をくゆらせて、トライユは静かに紅茶を一口啜った。

 ベールは準備とやらで去っていったが、案内されたのは明らかに客間だ。まさかここでゲーム開発の話をしようというのか……あまりにも不用心な気がしてならない。

 

「ガラッ! みーつけた!」

 

 案の定、侵入されている。それも幼女に。どうやって開けたのか、扉は勢い良く横にスライドしていた。

 びしり、とトライユを指差したピンクのワンピースに身を包む少女は、強気な視線でトライユを頭のてっぺんから爪先までなめ回すように眺め、納得したように頷いた。

 

「消去法だけど、あなたは幼女ね! かわいそう……銃を持たされるなんて、これは国際社会にも通用する事態だわ!」

「えっと……どちら様でしょう? 私、ここは詳しくなくて」

「わたし? なら、アブネスちゃんって呼んで! ささ、さっきの年増女神が戻ってくる前に、リーンボックスから抜け出すわよ!」

「と、年増女神って……」

 

 アブネスと名乗った幼女が消去法幼女という謎のカテゴライズを受けたトライユの手を引こうとする。しかし、トライユがアブネスから目を少し上に向けると、そこには何と目元に影を落としつつもにっこり微笑むベールの姿が。

 

「侵入者、ですわね。全くあなたもまた、懲りませんこと……」

 

 ベールがアブネスとトライユの手をぺしりと払い、アブネスの首根っこを子猫のように掴んでポイ。

 

『わたしは諦めないわよー! 必ずそこの消去法幼女を助け出すんだからー!』

「消去法にするくらいなら構わなくていいんですけどね……」

「ふむ――ああ見えて、あの方は少々悪知恵が働くのです。このまま新作ゲームの話をするのは、得策ではありませんわね。有らぬ悪評を吹いて回るかもしれない……」

 

 ベールが顎に指を当て、暫し悩む。アブネスとは、それほどまでに厄介らしい。

 トライユが困り気味に部屋へ視線を泳がせると、そこにはとある物が飾ってあった。

 

「ベールさん、提案が一つあります。かなり強引な手ですが――」

 

 トライユは壁を眺め、ベールへとある提案を出した。

 

 

 リーンボックス、夜。アブネスは言葉の通り諦めること無く、トライユを再びベールから引き離すタイミングをうかがうため国に残っていた。

 彼女に幼年幼女を置いて逃げる、という選択肢はないのである。ただし、トライユは消去法。

 

「むむぅ……。このままじゃ、幼女を救うなんて出来ないわ。なんとかしてあの女神から離さないと――ん?」

 

 街を歩くアブネスが見つけたのは、人混みの中を歩くトライユの後ろ姿だった。

 無論、それをアブネスが逃がす筈もない。すぐさま追跡を開始するが、人混みによって思うように先へ進まない。

 それでも見失うまいと追い掛けるうちに、アブネスは市街を大きく外れた森の中へ迷い込んでしまっていた。辺りは真っ暗で、当然灯りの一つもあるわけが無い。

 

「な、なんだってこんな所に来ちゃったのかしら……。でもあの消去法幼女はここに来たはず――」

 

 バサバササササ!

 

「ひゃあっ!?」

 

 鳥の羽ばたく音に、飛び上がって驚くアブネス。

 不吉にカァカァと鳴くカラス達が、アブネスの見上げる月を不気味に隠す。まるでホラーゲームの中にいるかのような恐怖を、アブネスは感じていた。アブネスはゲームなどやったことはないが。

 

「も、もう! 単なる鳥なら鳥って言いなさいよね! ビックリして損したわよ――」

 

 鳥たちに悪態をつくアブネスは、気付けば森の深くに足を踏み入れていた。鬱蒼と生い茂る木々の下には、月の灯りすら届かない。

 辺りを見回しながら歩くアブネス。その時だった。

 

 ジャキンッ!

 アブネスの後頭部辺りに、何かの違和感と人の気配。そして、奇妙なメカノイズ。

 彼女の背後で、黒い何かが微かな月明かりに煌めいた。アブネスが思わずその場で固まると、背後から声が聴こえてくる。

 

「昔、とある女が作戦行動中にコブラに噛まれた……」

 

 バサバサ! ギャアギャア!

 カラス達はより一層、騒ぎ出す。アブネスは身の危険を感じながら、逃げ出す事が出来なくなってしまっていた。

 代わりに、アブネスは背後の声へ問う。

 

「そ、その女はどうしたの……?」

 

 ガサガサガサ……。

 生い茂る木々が、より一層不気味に擦れ合い、冷たい風がアブネスの頬を打っていく。

 アブネスの問いに、声は静かに応えた。

 

「女は三日三晩……噛み付いたコブラと格闘し、そして最後には――」

「最後には……?」

 

 カラスがかぁと一つ鳴くと、声はトーンを一つ落とし返す。

 

「――コブラが死んだ」

「ヒェッ……」

 

 ばちんっ!

 アブネスの背後で、硬い金属音が鳴り響く。

 彼女は驚いた猫のように飛び上がり、その場で腰を抜かしてしまった。こうなると、アブネスも可哀想に見えてしまう。

 

「全く、こう――ゲーム参加者以外に銃口を向けるのは避けたかったのだがな」

「ですが、これはあなたの言い出した作戦でしてよ?」

「ああ、そうだったな。返すぞ、これ」

 

 アブネスの前に居たのはエルスタトリガー、そしてベール。エルスタトリガーは手に持ったレバーアクション銃をベールへ手渡し、アブネスへ視線を遣る。

 

「驚いたか? あんまり人をつけ回すから天罰が下るんだ」

「は……え? えっ? あの幼女は!?」

 

 目の前にいるエルスタトリガーこそ、アブネスが探している消去法幼女本人なのだが、見た目の変化はネプテューヌの変身並みに激しいものだ。性格も別物。到底、同一人物だとは思わないだろう。

 

「失望させたか……まあ、諦めるんだな。『セイフティ』」

 

 エルスタトリガーが唱えると、アブネスの目の前には目的のトライユが現れる。

 

「コブラに噛まれたっていう話は、私の姿の方なんですよ。だから、私は大丈夫です。もしまだ付きまとわれるようなら、我々で強硬手段に――」

「い、一旦退くだけよ! 必ずまた助けにくるんだから! おぼえてなさい!」

 

 足早に立ち去っていくアブネス。その文句はとても安っぽいものであったが、これもトライユには貴重な経験か。

 いや、消去法幼女というカテゴライズは素直に喜ぶべきものではないのだが……。

 

「はあ……思わぬ珍客のお陰で、お話が先延ばしですわ。今日は是非、リーンボックスでお休みになられてくださいな。まずは教会で、晩餐会に致しましょう!」

「そ、そうですね。少し疲れましたし……。でも、本当に弾を込める訳無いんですけどねー。そんなに恐いんでしょうか、やっぱり」

(絶対、雰囲気の方で圧倒していましたわ。間違いない……!)

 

 市街へ戻る道中、ベールはトライユの見方を少し改めることにした。

 ちなみに説明を加えると、トライユがベールから借りたレバーアクション銃は無論本物ではない。遊戯銃である。

 そして、リーンボックスでの夜は更けていく……。





 ジャキンッ!
 アブネスの後頭部辺りに、何かの違和感と人の気配。そして、奇妙なメカノイズ。
 彼女の背後で、黒い何かが微かな月明かりに煌めいた。アブネスが思わずその場で固まると、背後から声が聴こえてくる。

「昔、とある女が作戦行動中にコブラに噛まれた……」

 バサバサ! ギャアギャア!
 カラス達はより一層、騒ぎ出す。アブネスは身の危険を感じながら、逃げ出す事が出来なくなってしまっていた。
 代わりに、アブネスは背後の声へ問う。

「そ、その女はどうしたの……?」

 ガサガサガサ……。
 生い茂る木々が、より一層不気味に擦れ合い、冷たい風がアブネスの頬を打っていく。
 アブネスの問いに、声は静かに応えた。

「女は三日三晩……噛み付いたコブラと格闘し、そして最後には――」
「最後には……?」

 カラスがかぁと一つ鳴くと、声はトーンを一つ落とし返す。

「…………どうだったかな。コブラが先だったか、私が先だったか……」
「あんた、何回死ぬ気よ!?」
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