あとお気に入り登録100越えました!
このような作品を読んでいただきありがとうございます!
これからも何卒、『平凡な僕がプロデューサーになりました』をよろしくお願いします。
暗い大空が明るくなり始めていた。なぜそんな空を見ているのかというと、
「眠い………」
はい、三徹です。今までしたことない境地まで達しました。いやぁ、もう途中から苦しいことが楽しいことのように思えてきて、「あ、これ末期だな」って思ったぐらいだからね。
現在時刻は五時過ぎ。もうハードワークすぎて泣けてくるね。というか、大学生がしていい仕事じゃないね。まあ、なぜやめないのか?と問われると色んな理由がある。
一つ、給料がいい。これは絶対に捨てがたいことだ。他のバイトよりも数千円ぐらい高いのだ。おかげでお小遣いも大幅に増えている。
二つ、もはやバイトではなく就職している。これが理由になるのかは簡単だ。就活面倒い。
三つ、仕事に慣れてきた。プロデューサーを辞めて他の仕事につくのもいいのかもしれない。でも、その時にまた慣れるのに時間がかかるのは御免だ。そんな時間があるくらいなら、今の仕事のデスクワークをする方がまだマシである。
との三つの理由で僕はこの仕事を辞めずにいた。
だけど、睡眠時間は少しでも取りたいのだ。もう三日もろくに寝ていないため足がふらふらである。父さんが平然としていることを尊敬する日が、こんな形で来ようとは夢にも思ってなかった。いや、もう本当にお疲れ様です。
そうこうしているうちに、自宅へとたどり着く。おそらく、誰かが起きているだろうがそんなことは御構い無しである。気持ちはただ一つ。寝たい、それだけだ。
「ただいま〜………」
僕はやる気のない声でそう告げる。誰も起きてないのだろうか、全く物音がしない。僕はとりあえず、リビングに向かう。荷物はいつもここに置いてるからね。
そして、リビングの扉を開けると、
「遅い」
仁王立ちして黒いオーラを纏った母さんと眠そうにソファーに寝転がる花梨の姿があった。
「あ、お兄ちゃんおかえり〜」
「弘弥、今までどこで何してたか言ってくれる?ちょっとお母さん気になるなぁ」
花梨のお気楽なテンションとは裏腹に、言葉の一つ一つに怒りが感じられる母さん。
これ、正直に言っても許してもらえなくね………?
「……仕事してた」
「嘘はいいから。正直に言いなさい」
どうやら信じていらっしゃらないらしい。確認したいならば、ちひろさんに聞いてみてよ。あの人何故かプロジェクトルームで寝てたから。帰る時もいろいろアドバイスとかしてくれたから。
「いや、本当だって。普通ならこんな時間に帰ってくるわけないでしょ。夜遊びするような友達いないし」
「………本当に?」
「誓って嘘は言っておりません」
だから早く寝かせてください。そろそろ限界が近いのでございますよ。
「………ならいいけど」
どうやら母さんも渋々納得した様子。これでようやく寝れる。
「お兄ちゃん大丈夫?物凄い眠そうだけど」
「絶賛三徹中だからな。さすがに眠い」
「なら寝てきなさい。後で起こしてあげるから」
「なら、10時に起こして」
確か今日の集まりはそれぐらいからだったはずだ。
僕はそう告げて自室に向かい、ベッドへとダイブする。そこから寝付くまでに数十秒もかからず、僕の視界は暗闇へと落ちていった。
☆♪♡◇
「んぁ………?」
どこかから放たれた光が僕の顔に直撃する。それで目が覚めた。
「ふわぁ〜…………」
大きな欠伸と伸びをして起き上がる。顔に当たっていた光は、どうやら窓から差し込んだ太陽の光だったらしい。
そういえばおかしいな。確か、僕の部屋に光が差し込むのはだいたい夕方の………はず…………。
「まさか………!」
そんな悪い予感が当たりませんように、と願いを込めて時計を見るが、その願いは虚しく砕け散った。
武内さんに告げられていた時間は10時だった。それはとうに過ぎており、現在4時過ぎである。6時間も遅れる大遅刻である。
「なぁ!?遅刻じゃないか!」
残っていた眠気はすべて吹き飛び、僕は大急ぎで支度を始める。シャワーを浴び、スーツに着替え、リビングに荷物を取りに行く。ここまでで十数分。
リビングには母さんがいた。起きる時間を言っていたはずだが。
「あら、弘弥。どうしたの?そんなに急いで」
「どうしたもこうしたもあるか!起こしてくれって言っじゃないか!」
「それなんだけどねーーー」
母さんが何か言おうとするが、話が長くなりそうなのでそれを無視して告げる。
「くそっ、まず武内さんに謝らないと………!じゃあ行ってくるから!」
僕は家を飛び出した。母さんの言い訳も聞かずに。
「武内君から今日は休んでもいいっていう電話きてたんだけど……」
☆♪♡◇
346プロの近くまで来たところで、武内さんに電話をかける。
『はい。どうかしましたか?』
「あ、あの、申し訳ありません!遅れてしまって」
『ああ、そのことですか。それなら』
「もうすぐプロダクションに着きますので!」
『……………え?』
間の抜けた声が僕の耳に響く。え?とはどいうことなのか?
『冬華さんから聞いてないのですか?』
冬華とは僕の母さんの名前だ。どうして僕の母さんがそこで出てくるのだろうか?
「何をですか?」
『いえ、ここのところ毎日大変そうでしたので、今日は休んでくれても構わない、と連絡を入れたのですが、聞いてないですか?』
え?僕そんなの聞いてないよ?いつそんな話が…………。
そこでここに来る前、家であったことを思い出す。
『それなんだけどねーーー』
母さんが何か言おうとしていたことを。
…………僕の早とちり+話聞いていないせいですねはい。
「………すみません。遅れてしまったということでテンパってしまって。聞く前に家を出ました………」
『いえ、こちらも事前にそう言っておけばよかったものを当日になっていってしまったので』
武内さんが申し訳なさそうに言う。まあ、終わったことだしそれはいいのだ。問題はこれからどうするのかということである。
「あの、僕はどうすれば……」
『とりあえず、プロダクションまで来てください。エントランスに千川さんを待たせておきますので』
「了解しました」
と言って電話を切り、僕はプロダクションに向かった。
☆♪♡◇
「あ、蒼崎さん。おはようございます」
「おはようございます、ちひろさん。それで、武内さんは?」
「今、シンデレラプロジェクトのアイドルの皆さん宣材写真を撮っているところです。まだ始めたばかりですけど」
ほっと胸をなで下ろす。これで終わっていたとなると僕は今日何しに来たのかわからなくなる。
「あら?蒼崎さんじゃないですか」
すると、プロダクションの入り口の方から女の人がこちらに来る。僕はその人を知っている。だって、ここに来た当初に挨拶を済ませたからね。
「高垣さん。おはようございます」
「おはようございます。今日もお元気そうでよかったです」
「あはは………」
迷惑かけてないか心配で、内心パニクってますけどね。
「あ、そうだ。今日飲みに行きませんか?皆さんと一緒に」
「えっと皆さんとは?」
「いつも飲んでいる方々ですよ。千川さんもどうですか?」
「わー、いいんですかー?」
「ええ。私梅酒好きなんですよ。皆さんと飲む梅酒はうめー、ですからね」
その瞬間、僕とちひろさんが凍りつく。何を隠そう、目の前にいる高垣楓さんはトップアイドルなのだが、ダジャレが大好物なのだ。現場を凍りつかせるほどの。
そんなこともつゆ知らず、くすくすと笑う高垣さんは、後で連絡しますねと言って去っていく。
「………ちひろさん、一ついいですか?」
「何ですか?」
「あのダジャレってどうにかならないんですかね?」
「さぁ?私には分かりません。が、そろそろ行かないといけないというのだけは分かります」
「ですね。じゃあ行きましょうか」
そう言って、僕らは宣材写真を撮っているスタジオに向かった。
☆♪♡◇
スタジオに着くと、すでに撮影は始まっていた。まだ撮っていない人たちは準備を着々と進めている。終わってる人たちは、多分あそこで駄弁っている子達だろう。
「プロデューサーさん、連れてきましたよ」
「ありがとうございます」
武内さんはこちらに振り返る。僕を見ると何故か申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません。私のミスで」
「い、いえいえ!元はと言えば僕が話し聞かなかったせいですし!気にしないでください」
とりあえず、周りに見られるとまずいので武内さんの頭を上げさせて撮影しているところを見る。今撮っているのは島村さんだ。
僕が見た感じでそのまま感想を言うと………緊張しすぎじゃない?
「笑顔、引きつってません?」
「ですねー……」
「…………」
ちひろさんは笑顔で僕に同意し、武内さんは首をかいて困ったような表情を浮かべる。
次は渋谷さんなのだが、こちらも緊張しているのか、全然カメラ目線じゃない。
そしてもう一人。あの人が本田未央さんだろう。あの子は緊張はしていない。のだが、無駄にポーズをとりすぎている。あれでは流石に無理だろう。
三人の写真の確認をしていたカメラマンがこちらに来る。
「どうします?一旦休憩いれます?」
「………お願いします」
武内さんは渋々、と言った様子でそう言った。取り直しが多かった島村さん達三人は椅子に座って疲れたような表情を浮かべている。
「どうすれば……」
「どうしましょうかねぇ」
武内さんとカメラマンさんが悩む中、あることを閃く。
「あの、少しいいですか?」
「お?なんだ?ていうか君は?」
「二ヶ月ほど前にプロデューサーになった蒼崎です。少し提案がありまして」
「ほぉ、なんだ言ってみろ」
カメラマンさんがニヤリと笑ってそう言ってくる。僕は思いついたことをそのまま言った。すると、
「おお、それいいかもしれないね!じゃあそれで行こう!」
そう言ってカメラマンさんは撮影の準備に戻る。
僕の提案は採用、良かったらしい。
「ありがとうございます蒼崎さん」
「いえいえ。ただ思いついたことを言っただけですから」
「それにしても上手くいくんでしょうか?いつも通りの姿でいいなんて」
そう、僕が提案したのは『いつも通りの彼女達の姿を何かを使って引き出す』というものだった。
確かに、ちひろさんの言う通り、上手くいくかどうかかなんてわからない。だけど、そこにかけてみる価値はある。上手くいけば上等、失敗すればまた降り出しに戻るだけだ。最悪後日になるかもしれないが、まあそこら辺は島村さん達に任せるしかない。
そんな心配をよそに、撮影は始まった。カメラマンさんはボールを投げ渡し、自由に動いていいと言った。
で、始まったのはボールの投げ合い。
「ふふふ、私こう見えて選考理由すごいんだよ?」
「へぇー、何だったの?」
本田さんが自慢気に胸を張りながらそう言う。その理由ってなんなんだろう?僕も気になる。
「"笑顔"って言われたんだ!」
そう言いながら渋谷さんにボールを投げる。渋谷さんはふーんと素っ気なく返しボールを受け止める。
「そういえば……私、選考理由聞いてないような………」
島村さんが思い出したかのように言った。渋谷さんも確かにと頷いている。
…………そういや言ってなかったね。ってこれ後で僕に飛び火しないよね?
「今聞く?」
「え……。でも、今日来ないってプロデューサーさんが……」
「あそこにいるよ。さっき入ってきてた」
渋谷んはこちらを指差す。すると島村さんも僕の存在に気づく。どっちかというと、今は気づいて欲しくなかったかなぁ〜………。
「よし、それじゃあ今度は一人ずつ撮ってみようか!」
カメラマンさんが三人に指示する。僕はナイスタイミング!と心の中で親指を立てる。
そのまま撮影はテンポよく進み、宣材写真撮影は終わりを迎えた。
☆♪♡◇
「皆さん、お疲れ様でした」
武内さんが彼女達の前に立ってそう言った。ちひろさんはその隣でニコニコしているが。
何故笑っているのかわからない僕からしたら怖いものでしかないんだけどね。
「そして、本日よりシンデレラプロジェクト始動です。これから忙しくなるかもしれませんが、よろしくお願いします」
淡々と告げる武内さん。その言葉で彼女達は喜ぶ。
そりゃそうだ。ようやくプロジェクトが始動するのだ。嬉しいことこの上ないに違いない。
「それと、私から発表があります」
発表………?一体何のことだろうか?僕は聞いていないのだが。
「このプロジェクトは私ともうと一人、つまり二人のプロデューサーで進めていきます。私は色々と事情がありまして、皆さんとはあまり会わない可能性がでてきます。なので」
武内さんの後ろにいた僕は、武内さんが横にずれることによってみんなの前に姿を晒すことになる。
「もう一人のプロデューサー、蒼崎弘弥さんに皆さんの面倒を任せることにしました」
………前聞いた気がしますが一応言わせてください。
「聞いてませんよ!?」
「前に言ったはずなんですが……」
うん、確かに言った。だけど、今の今まで完全に忘れてた。だって、大学のレポートが………。
「では、お願いします」
………と言われましても。ってお願いですからことあるごとに頭下げないでください!断れなくなりますから!
「はぁ……仕方ないか……」
諦め気味にため息をつき、気を引き締める。
「蒼崎弘弥です。まだまだ未熟ですが、皆さんを引っ張っていけるように精進していきたいと思います。よろしくお願いします!」
どのみちこうなるんだろうから決心はしてたけどね。それに、そっちの方が楽しみなのだ。彼女達の成長を間近で見られるのだから。
『よろしくお願いします!』
皆んなの声が響く。近くにいた僕の耳にも響く。結論を言いましょう。物凄く耳が痛いです。
「そういえば」
思い出したかのように渋谷さんが手を挙げる。なんだろう。何か聞かれるようなことあったっけ?
「私と卯月の選考理由って何?」
………………………それ今聞く?
「あ、そうでした!プロデューサーさん、教えていただけませんか?」
島村さんもこちらに注目する。もちろん他の子達も僕に注目している。
とは言われたが、残念ながら、全く思いつかない。そういえば、どうしてこの子達をアイドルにしたんだっけ?
渋谷さんは『何か』を見つけるために。島村さんは…………分からない。だって書類届けただけだし。
これそのまま言ったらマズイかな?いや確定的にマズイよね?
で、僕が出した結論は、
「……………に」
『に?』
「逃げるっ!!」
逃げることである。古今東西偉い人は言いました。『困ったら逃げろ』と。それを実行したまでだ。
だって、本当のこと言うとこの子たちに何言われるかわかんないんだもん。特に新t……美波さん。
「あ、ちょっと!」
「なんで逃げるんですか!?」
突然僕が逃げ出したことに困惑する二人。まあそりゃそうでしょうね。普通ならまともな答えが返ってくるところなんだから。
だけど、残念だったね。僕はまともじゃないんだ。普通の人間だけど、困ったら目を背ける人なんだ。
「蒼崎君、ストップ」
はい、美波(悪魔)さんからお声がかかりました。普通なら止まらない、止まらないけど………ここで止まらないと僕の人生が終わっちゃう。
「………………何?」
「分かってるわよね?蒼崎君」
満面の笑みで言ってくる美波さん。お願い、そんな今まで見たことないような綺麗な笑顔見せないで。考えてることが嫌でも伝わってくるから。そんなの見ると逃げたくても逃げられなくなるから本当にやめて。
まあ結局、この後逃げられずに根掘り葉掘り言わされて一悶着あったのは別の話。
次回は酒飲み会ですかね。