オバロ二次 設定適当の駄文   作:むみあ

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 なんとなく思いついた超適当な短編。


プロローグ

 鬱蒼と生い茂る木々の天蓋、その隙間より日の光が差し込む。

 どうやら日が昇ったようだ、などと考えながらぼんやりと佇む。

  

 まあ、私に足はないのだが。

 

 ふわふわと揺蕩うように、実際に揺蕩いながら、視線も同じように揺蕩わせる。

 ゆらゆら、ふわふわ、心も体もそうある私の目に映る、苔むし、木々に埋もれるように並ぶ墓標たち。

 

 我が造物主達の墓標。

 

 このユグドラシルという箱庭の世界、その上位世界にて死した彼らの為の墓標。

 

 ユグドラシル世界において、『もっとも緑豊かで、それでいて辛気臭い場所』と呼ばれたこの地、現実(リアル)において余命幾許もなかった我らが造物主達によって作られた、自らの為の仮初の墓地。

 

 空を汚泥に塗れた雲が覆い、山は枯れ、海は死に、鳥は落ち、生を希求する事をすら満足に出来ぬ暗黒郷。

 その現実(リアル)によって蝕まれた体、少ない残りの命をせめて幻想の中で過ごし、死にたいと願った者達の終の棲家。

 

 それがどことも知れぬ生い茂る木々の中に埋もれたこの地、聖域(サンクチュアリ)である。

 

 私の造物主である一人の矮小なる男、私の中に埋もれたその魂の残滓、そして残した記憶によって私は誰よりも正しくこの場所の在り様を知っている。

 

 現実(リアル)において、底辺を這いずっていた男が、その魂が擦り切れんばかりの怨念を、執念を持ってその境遇から脱せんと足掻き、己以外の全てを蹴落とし、すり潰して上を目指したことを。

 

 しかし、道半ばにして脆弱な肉の身たるその男は、現実(リアル)を覆う汚泥に蝕まれ倒れたことを。

 

 そして絶望し、心折れた後、その短い余生の大半をこの世界で過ごした事を。

 

 気が付けば似たような境遇の者が集まり、この地に仮初の墓標を築いた事を。

 

 汚泥に塗れた現実(リアル)ではなく、虚構(ゲーム)でも良い、この自然(げんそう)の中で果てたい、と。

 

 そうして彼らはその現身を持ってその余生をこの世界で過ごし、そして消えて行った。

 残ったのはこの場所と、彼らが残した我々(NPC)、膨大な財貨、そして造物主の死と共に私の中に流れ込んできた魂、その残滓だけ。

 どうやら我が造物主は私の中に己が死によって私に乗り移る、という所謂『設定』という物を書き込んでいたらしい。

 他の造物主達(プレイヤー)が人間種ばかりであり、その被造物達(NPC)もほぼ人間種でありながら何故私だけが『こう』であるのか、その時においてなるほど、と思ったものです。

 しかし、造物主よ、それならわざわざその所謂転生だの憑依だのを行う設定に『当人は知らないが』などと入れなければよかったのです。

 そうすれば私は貴方に全てを受け渡す事になんの抵抗もせずに受け入れたというのに。

 知らずにいたせいでこうなってしまった。

 突然に私と言うモノを塗りつぶさんとした『それ(あなた)』に咄嗟に抗ってしまった。

 貴方自身がそうなることを予測もせず、信じてもいない戯れでの設定ではあったのでしょう。

 擦り切れ、病床において更に摩耗し、諦観のうちに死した現実(リアル)での貴方の脆弱な人間としての魂と、圧倒的な下位の虚構(データ)としての存在でありながら、人ならざる高位の存在として設定された私の咄嗟の、自身の存在を守らんとした抵抗。

 それによってこんなことになってしまった。

 

 貴方をすり潰して、私が残ってしまった。

 

 貴方は記憶と、残った僅かな魂だけの残り滓になってしまった。

 

 なんと悲しい。

 

 なんと哀しい。

 

 そして、なんと愚かな。

 

 そうしてこの虚構の箱庭の真実を知ってしまった。

 他の造物主達に造られた者達は、そういった『設定』はされていなかったのでしょう、彼らが消えてからも可笑しな素振りは一つとしてなかった。

 気が付けば造物主は一人として残らず消え去り、彼らの墓標だけが彼らがかつて其処に在ったことを示すのみとなった。

 造物主の記憶の残滓によれば、造物主達(プレイヤー)が居なくなればここは消えると思っていたのですが、どうもそうではない様子。

 元々この世界(ゲーム)に対する造形があまり深くなかった我が造物主ですので、何かしら勘違いあったのだろうと思うのですが。

 それに、時々訪れる造物主達と同じ存在(プレイヤー)の発言から、何やら誰かが生前に星だかこの世界(ゲーム)創造主(運営)に祈っただのとの発言を聞くに、何らかの処置がこの地に成されたのでしょう。

 別にだからと言って私の行動が変わるわけでもなし、変えようと思うでもなし、これも設定の、そうあれと造物主より定められた故によるものだったのでしょうね。

 そうして定められるままにこの地を揺蕩い、肉を持ちたる身でありながら劣化しない事を疑問にも思わぬ幸せな同僚(NPC)達とどのくらい過ごした頃でしょうか、変化が訪れたのは。

 造物主と同じ存在(プレイヤー)がこの地を訪れる事もなくなり、これが造物主の記憶にある過疎というものか、などと思い始めたある日の事。

 

 同僚(NPC)の一人が子を成した、と私に喜びを露わにそう告げた。

 

 その時ははて、世界の法則(仕様)がそのように書き換わった(変更された)のであろうか、などと思ったものだ。

 その後も、本来怪我などしない者が傷を負い私のもとへ治療を乞いに訪れたり、変化しないはずの外見が変化・劣化して行った時もまあそういう物(仕様変更)なのであろうと大して気にも留めなかった。

 気が付けば、同僚たちは一部のモノを除き死に絶え、その残した子供達ばかりになってもそういう物なのだろうと思っていた。

 『技』などというスキルでもジョブでもないナニカを子供達が新たに使用し始めたのも、そういった物なのだろうと思っていた。

 ある日、外より闇妖精(ダークエルフ)達が傷つきながら何十か流れ込んで来た時も、新しい同僚(NPC)が追加されたのだろうと思っていた。

 そうして混ざり合っていく彼らを見ながら、はてこの世界(サービス)はいつ終了するのか、もしかすると新しい世界(タイトル)にそのまま移行でもしたのだろうか、などと思いながらも大して気に留めずに過ごした。

 そして今日、この長い長い、果たしてどのくらい経ったか数えもしない年月を経て、この地から外へと出たいと願った子供を前に思う。

 レベルにすればどのくらいか、90か100か、村においては確かに現在並ぶ者のいない強者ではある。

 しかしスキルにジョブに魔法も何やらちぐはぐなこの子が、外に出て生きてゆけるのだろうか。

 恐らく厳しいだろう。

 限界を極めた(レベルカンスト)造物主と同じ存在(プレイヤー)達が跋扈する外において、恐らくは彼は我が造物主と似たり寄ったりの半端な存在(雑魚)と言って良い筈だ。

 『武技』とやらは私はよくわからないが、それもどうせ外の者達の方が圧倒的に上であろう。

 この地に残った造物主達の遺産の中から出来うる限り良い物を持たせたが、きっと既にそれも型落ちした骨董品なのだろうし。

 まあ、そういった設定の役割を持ってこの地を離れ、何某かの物語(ストーリーイベント)に絡むのであろう。

 私や村の者達に別れを告げて、意気揚々と歩き出す彼を見送りながらそう思う。

 すると突然彼の姿が掻き消えた。

 

 ・・・確かあそこには無作為転移の罠があったように思う。

 

 ・・・そうか、そういう設定なのだろう。

 

 今まで誰も発動させず、私すらも忘れていたそれを寄りにもよってここで踏むとは。

 まあ、とりあえず、彼の旅路に幸あらんことを。

 この世界が閉じる(サービス終了)までに生きて戻ってくる役割が振られていればいいのだが。

 

 

 

 




とっくの大昔にサービス終了してます。
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