オバロ二次 設定適当の駄文   作:むみあ

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死の支配者と■■ 4

 

 「っ・・・! どう、して・・・な・・・ん、でっ・・・!!」

 

 ンフィーレアは俯いたまま何度目になるかわからないその言葉を繰り返す。

 

 どうして、『剣』の能力を発動させられない。

 どうして、一歩前に踏み出せない。

 どうして、この震えが止まらない。

 

 どうして、戦士長は、ガゼフ・ストロノーフはそんな自分に恨み言の一つも言わず、それどころか感謝すら述べて死地へと向かって行ったのか。

 

 

 「ンフィーレア君、済まなかった。

 我々が不甲斐ないばかりに、君に重責を負わせてしまった」

 

 違う、そんな事はない。

 

 「そして、ありがとう。 不甲斐ない我々に代わって村の者達を救ってくれて本当に感謝している」

 

 違う、僕はただ好きな娘を助けたかっただけで、あの時は村の人達の事なんてまるで頭に入ってなかった。

 

 「だからこそ次は我々がその本分を見せる時だ。 

 民を守護すると誓った我らの戦い、そうだともこれは我々が成さねばならぬ事なのだ」

 

 でも、僕なら、『剣』の力ならあいつらにだってきっと勝てるんです。

 だから僕も、僕も・・・!

 

 「いや、その気持ちだけで十分だ、十分すぎるのだ。 

 我々が間に合わなかったばかりに、君に必要以上の物を負わせてしまった。

 そうだとも、君の感じるその恐れはその重荷は我々こそが背負わねばならぬ物であったのだから」

 

 でも、僕は・・・!

 

 「君の師も、我々の甘えが気に障ったのだろう。 厳しい御仁だな」

 

 違います、お師様はそんな深慮はないんですきっと、神慮はあるのかもしれないけれど。

 兎に角、僕も・・・なんで、なんで足が動かないんだ・・・!

 

 「自分を責めないで欲しい。 その震えは人として当然の事だ。

 その気持ちを情けないなどとは決して思わないで欲しい。

 それは決して忘れてはいけないものだ。 人との命のやり取りなど、本来正しい事ではないのだから。

 何、君ならそれを正しく乗り越えられるとも・・・ただ、それが今でなかった、それだけだ」

 

 でも、アイツらは、皆を、だから僕も・・・!

 

 「いいんだ、もういいんだンフィーレア君。

 君は我々に代わって十分すぎるほどに、本来であれば必要のない分までそれを肩代わりしてくれた。

 ここからは我々の仕事だ。 いつの日かその震えを越えて正道を往く者であってくれ。

 君のような若人が後ろに続いてくれる。 

 それだけで、それこそが・・・ああ、こんなにも心強い事はない」

 

 そんな・・・いつか、なんて遅いんです。

 今、今動けないなら、そんなたらればなんて意味がないじゃないか・・・!

 

 

 「全員騎乗! 範を示すべき若人に、先んじられてそのなんたるかを見せられたのだ!

 我等も先達としてしての意地を見せよ!! 行くぞォ!!」

 

 「「「「「おおおおっ!!」」」」」

 

 くそ、くそ、くそっ! 動け、動けよ、なんで、どうして、僕の体は動かないんだ・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、向かった先で彼らは召喚された天使たちによって次々に打ち倒されていく。

 空中に投影されたその映像を見ながら、アインズは項垂れたままのンフィーレアの様子を伺う。

 

 (ふむ、まだ震えは収まっていないな。

 蟲の紋章の剣(コクルト)の使用条件に精神的な物が関係したのだろうか?

 使う、という意思だけで発動するわけではないのか。

 戦いを忌避して無意識にそれを抑制でもしているのか。

 尤も、精神的な作用であるなら俺には関係ないかもしれないが)

 

 人間のままであったならば恐らく他人事ではなかっただろう。

 アンデットとして精神が体に引きずられ、種族特性によって外部からの揺さぶりを無効化し、内側から湧き出るそれも安定化が掛かる我が身をこの時は幸運に思った。

 

 (そう考えると、精神状態異常の有用性、危険性はゲームの時とは比べ物にならないな。

 まあ、今更か。 防御効果を攻撃に転用出来ているだろうあの剣といい検証する物が多いな)

 

 そう考えている間にも一人、また一人と眼前に投影した映像の中でガゼフの部下たちが倒れていく。

 ンフィーレアにもその映像は見えなくとも音は耳に届いているのだろう。

 震えとは別に反応して体が動いている様子が見受けられる。

 

 (まあ、それでも顔を上げるのが精一杯と言った所か。

 人間の精神とは脆弱なものだ。 同族を殺すのに力量差があっても覚悟が必要とは、ね)

 

 まあ、自分もかつてはそうであったのだから、何様のつもりかと言う話でもあるが。

 そう内心で苦笑しつつ視線を映像へと戻す。

 

 (舞台もクライマックス、まさに愁嘆場と言った所かな)

 

 そこには、部下が倒れ伏しその中で満身創痍で吠える戦士の姿があった。

 

 「ぐ、が、ああぁあああっ! な、め、る、なあああああああッ!!」

 

 それでもなお立ち上がり、ガゼフ・ストロノーフは吠え続ける。

 

 「俺は王国戦士長、この国をそこに住まう民を、愛し、守護する者!

 この国を汚す貴様らなどにそう易々と膝を屈することなど、できるかあああああ!!」

 

 だが、敵の指揮官だろう男はその姿を嘲笑する。

 

 「・・・そんな夢物語を語るからこそ、お前はここで死ぬのだ、ガゼフ・ストロノーフ。

 そんな理想を夢見ながら、こんな場にのこのこと誘い出される愚直さ故に、貴様は余計な混乱と対立を煽っただけで益体なく倒れるのだ。

 残念だよ、もっとうまく立ち回れば、貴様も人類の守護者たりえたであろうに」

 

 「人類の守護者だと? 大を取って小を見捨てろだと?

  笑わせるなよ凶賊共が、そんな悟ったような賢しげな事を抜かすから、貴様らは薄汚くも卑劣な真似をこうもう平然と為せると言うのなら、そんな物は俺はいらぬ!」

 

 その嘲笑を真っ向から叩き返し、崩れかけた体を奮い立たせる。

 

 「ふん、ご立派な事だ。 この期に及んで英雄気取りか?

 こうして何も成せぬままに志半ばにして、特に価値もない村を守って死ぬ貴様が。

 もっと他に成せたことが、多くを救う事が出来たであろうに、全く持って度し難いな。

 無駄死にというのだぞ、そういうのはな」

 

 そんな姿に更なる嘲笑が浴びせられるも、ガゼフは微塵も揺らぐことなく言葉を紡ぐ。

 

 「無駄などではない。 理想は夢は受け継がれていくものだ。

 例えここで道半ばで果てようと、俺の姿を見て後に続かんとするものが必ず現れる。

 夢物語と笑いたければ笑うがいい。

 だが、この道の先に続かんとする者によっていつか必ずそこにたどり着くと俺は信じている!」

 

 ィィィィィィィン

 

 はて、なんだこの蟲の羽音のような不思議なものはと視線を動かす。

 

 「英雄気取り? 上等だ!! 英雄とは! 勇者とは! ままならないものに抗って立ち続ける者、挑み続ける者、皆が尊いと信じる理想を負って立つ者!! 

 その姿は皆が志の総算足る者! 故に、多くの衆生の中に英雄は在る!  

 俺はその一人足らんとする者! 後に続く多くの者達に、先達としてのその何たるかを示すのみ!!」

 

 その間にもガゼフの魂を絞り出すような啖呵が聞こえてくる。

 その中に紛れて鳴りやまない不思議な音に、その発生源と思しき者を視界に入れたその時。

 

 「ぁ――――っ、ぅあああああああああああああ!!」

 

 それは、ンフィーレア・バレアレは絶叫と共に飛び出して、いや、文字通り飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やれやれ・・・」

 

 呆れたような呟きが男、オウル・アマルガムの口から洩れる。

 中空に映し出される映像の中では、天使たちと戦うガゼフとンフィーレアの姿が見える。

 その姿を見ながら私は、いや俺は―――

 

 「全く、『眩しい』ねえ」

 

 自分の内心に被せる様に呟かれた言葉に思わずその発生源を見る。

 発言の主、オウル・アマルガムは目を細めてその映像を眺めている。

 

 「いや、全く、参ったねこれは。

 あのオッサンの言葉じゃあないが、先達たる身で後進にそのなんたるかを先んじられた、とでも言うのかね」

 

 自嘲するかのように呟かれる言葉に視線が吸い寄せられる。

 

 「圧倒的に強ければ覚悟なんざ不要、とか言ったが・・・じゃあそうでない場合どうすんのよって話だよな。

 どうも最近まで、あんまりにも俺より弱い奴しかいないもんで調子に乗っちまってたらしい」

 

 そうしてオウル・アマルガムは突然に語りだした。

 

 村で、聖域で生まれ育ち、『精霊』と呼ばれる強者に憧れて腕を磨いた事。

 その憧れの対象から『外』には自分などより強い者が跋扈する世界であると言われた事。

 憧れの対象のそんな言葉に反発して村一番の強者となり外へと旅立ったこと。

 しかし、転移罠で飛ばされた先には、信じられないような『弱者』しかおらず拍子抜けした事。

 そんな中で初心を忘れて知らず調子に乗った、乗っていただろう事。

 そんな折にこうしてアインズに出会った事。

 

 「全く情けねえことにブルっちまったんだわ、これがよ」

 

 そうして持てる装備の中で最も強い物を身に着けてその目の前に姿を見せた事。

 

 「まあ、そのせいで異様に警戒されちまったのが誤算っちゃ誤算だったわな」

 

 そう言って苦笑しながら未だに警戒心も露わに後ろに控えるアルベドへと視線を向けて戻す。

 

 「で、だ。 そこのねーちゃんにもビクビクしながらどうしたもんかと様子を見てたらコレだ」

 

 そう言って今度は、ンフィーレア達が映るそれに目を向ける。

 

 「持ってる(そうび)含めりゃ余裕だが、あいつ自身はあん中じゃ圧倒的な雑魚なわけだ。

 いくら勝てるとわかってても生き物としちゃ腰が引けるのも当然だし、相手が同族でそれが殺し合いだってんなら尚更だろうよ」

 

 俺とアンタらの素の実力差よりも何倍もヒデえ、と笑う。

 

 「そんなアイツが今はああだ。 それじゃあ一体俺は何だ?」

 

 笑っていた顔が、今まで見たことのない真剣な顔へと変貌する。

 その変化に控えていたアルベドが前に出ようとするのを、咄嗟に肩をつかんで押し止める。

 

 「アレは、あの馬鹿弟子(ンフィーレア)はブルってたが男を見せた。

 まあ蓋を開けりゃあ茶番の類だ、道具の力とは言えやってみればご覧の通りの有様よ。

 けどまあ、そんな事はどうでもいい話だ」

 

 結果がどうとか、今こうして戦っている二人が自分よりも強いか弱いか、そんな事ではないと言う。

 

 「気概の有無、とでも言うのかね? 勝てないかもしれない相手に向かっていく意思って言うの?

 『カッコイイじゃねえのアイツら』なあ、そう思わないかいアンタも」

 

 そういって笑いかけてくるこの男に、オウルに、

 

 「ああ、全くだ『眩しい』な」

 

 万感の想いを込めて、思わずそう返していた。

 去来するかつて自分を助けてくれた者の影、あの姉妹を助ける前にも思ったなと、日に何度思い返しているのやらと苦笑が漏れる。

 急速に心の帳が晴れるような気分と共に、目の前の男の姿がはっきり見える。

 別に外見が変わったわけでも、特殊な魔法やそれに類する物が解けたとか言うわけでもない。

 ただ、見方が変わっただけの事。

 

 (全く、装備の危険性、それ『だけ』しか見えていなかったと言う事か。

 俺もアルベドの事は言えないな・・・)

 

 別に心を許したわけではない。

 油断をするつもりもない。

 しかし、必要以上に構え過ぎていたのではないかと、そう考えながら相手を見やる。

 勘違いでないのであれば、恐らくコイツもそうなのだろうと。 

 

 

 

 

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