美波と明久の出会いのきっかけとなる話。
短編小説と名のとおり、本当に短いです。
「うん、・・・分かった。それじゃ楽しんでくるのよ?それじゃ。あ、あとあまり家の人に迷惑かけちゃダメよ?それじゃあね、Piッ」
「一人・・・・か」
ウチは誰もいなくなった公園でブランコに乗っていた。今日は葉月は友だちの家にお泊まりでいないし、お父さんもお母さんも仕事で今日は帰って来られないらしい。夕飯を一人で食べるのなんていつぶりだろう。日本に来てはや2年、両親の仕事が忙しくなり、夕飯はいつも葉月と二人だった。それどころか葉月はすぐに馴染めたこの日本という国に、ウチは馴染めなかった。いや馴染もうとしてなかった。そのせいでお昼はいつも一人だった。一人で食べる食事の味の寂しさは、何年経ってもなれることはないと思う。ウチは嫌だった。この寂しい食事が、馴染もうとしない自分自身が。そんな地獄から救ってくれた一人の男子がいた。
ー一年前、ドイツから来たばかりのウチは、日本語をうまく話せずクラスから浮いていた。
だからウチは昼食をとるのがいつも一人だった。
ワイワイガヤガヤ
周りが騒がしくなってきた、多方みんなお昼だから誰と食べようとかの話をしているのでしょうね。
ウチが周りに「黙リナサイ、豚ドモ」と言ってから、誰もウチに近寄ってこない。それは至極当然のことだけれどやっぱり寂しい。お父さんに自分がなんて言ったか教えてもらったとき、本当に自分は最低なことをした、そう反省した。しかしそれを伝える手立てがなかった。一生懸命日本語の勉強もした、けれど謝ることができなかった。きっと言語云々の問題ではないのでしょうね、ウチは意地っ張りだから。なんで素直になれないんだろう。
「ねえ、雄二。屋上でお昼食べようよ」
「おっ、いいな。ムッツリーニと秀吉も誘おうか」
「そうだね。そうしよ!」
「それはいいけど、お前また塩と水だけじゃないだろうな?」
「失礼な!ちゃんと砂糖も食べてるよ」
「それは食べてるというのか・・・?」
そんな会話が向こうから聞こえてきた。あれは吉井と坂本・・・だっけ?二人が仲良さそうに話している、何言ってるかは大体聞き取れた。だって、吉井と話せるようにと、日本語の勉強をしたんだから。といっても、あいつの日本語は日本人にも聞き取れないんだけど・・・。
吉井はいつも友達に囲まれて楽しそうだな・・・。いつも笑顔で、いつも明るくて、ちょっとどころか想像を絶するほどのバカだけど、そんなところにウチは惹かれて。ってなんてこと考えてるんだろう。
「外に出て一人で食べよう」
ウチは手作りの弁当に舌鼓を打ちながら、吉井のことを考えていた。きっと吉井にはウチの悩みなんて縁のないものなんだろう。一人の食事の寂しさなんて。
「うっ、塩っぱい。あぁ~、また失敗しちゃった」
「だから~であるからして」
ウチは放課後の日本語特別授業を受けていた。必死に必死に勉強した。そんな中先生が次の単語を発した。
「友達は『Freund』という意味です。」
と・・・もだち。そうか、ウチは吉井と友達になりたかったんだ。友達になって、何気ない話をして、くだらない話で笑い合って、そして一緒にお昼を食べて・・・。あれ?変だな、なんで涙が出てくるの?どうして涙が止まらないの?
「ちょっト・・・・トイレ・・・行ってき・・マス」
ウチはすぐにその場を去った。10分ぐらい立つと涙は自然と止まった。
時計を見ると、授業が終わる時間になっていたので先生に一言いって帰ることにした。
「お帰りなさいです!お姉ちゃん!」
家に着くなり、葉月が飛びついてきた。
「うん。ただいま。すぐに夕飯作るからね?」
今日も両親は帰ってこない。泣いてる姿なんて葉月に見せられない。お姉ちゃんなんだから。
すぐに夕飯の支度を済ませて・・・。なんてことはできない。まだ料理は上手にはできないから。
どうにか見た目は良くなってきている。あとは味ね。
「いっただっきま~す」
パク
「どう?」
「うん!美味しいですッ!」
「そう?」
「あう~。こっちのはちょっと塩っぱいです」
「え?ほんと?どれどれ」
「塩っぱ!」
まだまだみたい・・・
「ごめんね?お姉ちゃん料理下手で」
「そんなことないです!」
「え?」
「お姉ちゃんはすごく頑張ってるです。葉月はいつも見てるから知ってるです。いつも葉月のために自分のことも後回しにしてくれるし、お料理だって頑張ってるし、日本語のお勉強だって夜遅くまでやってるの知ってるです!お友達作りだってお姉ちゃん頑張ってるです!」
ーーーーッ!
葉月が頬を膨らませてウチに言ってくる。思わず涙が溢れそうになった。葉月はウチのことこんなに良く思ってくれてる。
「ありがとね?お姉ちゃん頑張るよ」
ウチは葉月の頭良優しく撫でてあげる。
「うにゅ~」
葉月が気持ちよさそうに目を細める。
明日ちゃんと日本語でウチから吉井に「友達になってください」と言おう。
ありがとね葉月。
キーンコーンカーンコーン
とうとう言えないままお昼休みになってしまった。なんでウチは意地っ張りなのに意気地がないんだろう。また外で一人でお弁当を食べようと立ったら目の前に吉井が立っていた。
「よ、吉井?」
「あのさ島田さん」
「な、何?」
「Würden Sie mit mir Freundschaft schließen?」
涙が溢れだした。懐かしい響きと温かい言葉。そうドイツ語だった。この言葉はドイツ語で「友達になってくれませんか?」きっとウチと同じくらい、いやそれ以上な労力が必要だったはず。それを考えると涙が止まらなかった。
「ん?あ。ごめん僕悪いことした!?」
「・・・はい」
「ゑ?」
「ウチと、友達になってください」
「うん!」
嬉しい。葉月、ウチにも友達が出来たよ。
「それじゃ、一緒にお昼ご飯食べよ?」
「え?」
「雄二とかムッツ・・・もとい康太とか秀吉もいるけどいいよね?」
「いや、それは構わないけど」
「どうかした?」
「ウチ何かが行っていいの?」
「何言ってんの?島田さん」
「?」
「一人で食べるより、みんなで食べるほうがきっと美味しいよ」
「・・・。うん!」
(みんなで食べるほうが美味しいよ、か)
自然と顔がほころぶ。
「み、美波ぃ・・・・」
「ア、アキー!?」
まるでゾンビのようなアキがそこにいた。
「ど、どうしたの?」
「いや、食費がやばくて、ちょっと・・・ね?」
「食費って、お母さんは?」
「あれ?美波は知らなかったっけ?両親は海外出張でいないんだ」
「だからご飯はいつも一人なんだ」
ああ・・・・・そうかそういうことか
アキは一人のご飯の味を知ってたんだ。だから・・・
『みんなで食べるほうがきっと美味しいよ』
「あの・・・アキ?よかったらウチがご飯作ってあげようか?」
「いいのー!?美波のおごりになっちゃうけどいいのー!?」
「う、うん」
「そのかわり今日は、魔法の隠し味使わせていただきますっ!」
「それならみんなも呼んじゃえ!」
「ちょっと、いきなり話を大きくしないでよー!」
アキはバカだ
大丈夫に決まってるじゃない
だってそれは
「島田ー、差し入れだぞー」
「え?買い出し雄二だったの?」
アキがウチに教えてくれた、魔法の隠し味なんだから・・・
こんな駄作を見ていただいてありがとうございました。