祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんにちわ。
時間が出来たんで珍しい時間に投稿です(^^
今回は砲銃弾を増量キャンペーンでお届けです(笑)

後書きの設定資料は、これまた珍しくキャラノーツだったりしますよ~。





第06話 ”激戦です!”

 

 

 

1939年11月、大日本帝国帝都、永田町三宅坂

 

 

 

「はぁ~」

 

自分の執務机に(うずたか)く積み上げられた決裁待ち書類の山を見ながら、その白灰髪(アッシュブロンド)を三つ編みに結った眼鏡の幼女(?)は溜息を突いた。

 

ここは大日本帝国軍関係の【国防総省】に並ぶ心臓部、いやその性質を考えれば”頭脳”ともいえる陸海空軍の頭脳をかき集めた【三軍統合参謀本部】だった。

 

正確にはその一室、樫製の扉にはめ込まれた真鍮のプレートには【予算委員会】と刻まれていた。

 

「ん~……」

 

そして彼女は爪先立ちで思い切り背伸びしながら書類の山の頂上にある書類に手を伸ばそうとするが……哀しいかな公称身長138cm(自称140cm)、

 

「……と、届かにゃい」

 

”ひょい”

 

その時、ふと伸びた手がその書類を掻っ攫い、

 

「ふむふむ。『”九九式九糎(サンキュー)高射砲”転用の戦車砲開発の一次報告と追加予算の申請』ね……なんだ。”機甲統括部(ウチ)”の稟議書じゃん」

 

と言い放ったのはいつの間にか入ってきた長身の男だった。

階級章を見る限り、なんと大日本帝国陸軍”中将”……かなりの高官である。

 

「かーえーせー!」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねて書類を取り返そうとする白銀髪の幼女のちょうど手に届かない位置に書類を翳しながら、

 

「まあ、そう慌てるな。部下の出した書類に誤りがないかチェックしてるだけなんだからよ。上司としてさ」

 

白髪頭をナデナデしながら、男はにやりと笑い、

 

「いいだろ? ”ひでみん”」

 

すると幼女はぷうっと頬を膨らませ、

 

「”ひでみん”言うな! ボクには”東条英美(とうじょう・ひでみ)”っていう立派な名前があるんだいっ!」

 

 

 

***

 

 

 

そう、白灰色髪の三つ編み幼女っぽいガネっ娘&ボクっ娘の名は【東条英美】。なんかどっかで聞いたことあるような名前もするが、多分気のせいだ。

階級はやはり軍高官で陸軍中将の階級章をつけてる三軍統合参謀本部予算委員会の予算委員長(ひっとう)サマときてる。

 

「んで、今をときめく在欧駐在武官(欧州がえり)の気鋭、陸軍が誇る【機甲総監】サマがわざわざ何の用よ?」

 

「昔なじみの顔を見るのに、何か理由が必要か?」

 

そうジロリと睨みつける英美の前の、少々歳はくってるがロマンスグレーのよく似合うダンディーな色男は、

 

「必要にきまってるでしょ! ”酒井勇次(さかい・ゆうじ)”中将! アンタはいい加減、自分の公的立場ってモンを弁えなさいよっ!!」

 

「あーあー、キコエナーイ」

 

そう言いながら、

 

”ひょい”

 

「うひゃっ!?」

 

勇次は英美の体を軽々と抱き上げ、自分はさっさと英美の椅子に座り……

 

「にゃ、にゃにお……」

 

”ちょこん”

 

有無を言わさず英美を膝の上に乗っけてしまう。

 

「うにゅう~」

 

顔を真っ赤にして縮こまる英美の小さな肢体をきゅっと抱きしめ、「実にいい仕事をした」と言いたげに満足する勇次であった。

「鬼の委員長」とか「三軍統合参謀本部(さんとう)の金庫番」とか「ヒステリック・チェーンソー(意訳:ブチ切れて相手を言葉でズッタズタ♪)」とか恐れられている英美であるが、こうなってしまえば形無しである。

 

なにやら彼女の部下である海軍と空軍出身の副委員長を筆頭に、予算委員会部屋のスタッフ一同から殺気を込めた視線でガンくれられてるような気もするが、

 

(やれやれ。英美の『予算委員会の裏アイドル』っぷりは相変わらずだねぇ~)

 

しかし、そんな些細なことは気にしない勇次である。

1932年(昭和7年)5月15日……自ら”九一式重戦車”に乗り込み、己で育て上げた「大日本帝国最初の機甲師団」を率いて、敵兵犇く日比谷公園で蹂躙戦を仕掛けたのは伊達ではないのだ。

 

「ねえ、勇次(ユージ)……本当に何の用なの? あんまり仕事の邪魔すると、来年度の予算審議に影響でちゃうよ?」

 

本当に困ったような顔をする英美になにかゾクゾクする興奮を感じ、「もっと苛めたい」という衝動をなんとか理性で押さえつけながら、勇次は英美の耳元で……

 

「”イタリカ”で会戦した。恒例の”農閑期の大攻勢”だ」

 

”はふぅ~”

 

その言葉に英美は疲れたように溜息を突いて、

 

「……また予算修正しないと」

 

「あれ? 一応、今年度の予算って防衛戦込みで編成されてるんでねーの?」

 

「だから”一応”なのよ。戦闘にかかった費用だけじゃなくて、街や周辺の穀倉地帯に被害が出たら復興予算の計上もしないとならないでしょ? 軍部が全部持つなんて冗談じゃないから、政府にも出させなきゃだし……被害の規模によって編成する臨時予算案も変わってくるのよ」

 

「結局、戦いが終わってみないと金がいくらかかるかわからねーと?」

 

英美は頷き、

 

「またしばらくは泊り込みになるかも」

 

その姿は年齢相応の疲れた雰囲気を滲ませていた。

ちなみに英美は「青春時代に【日比谷事変】があった」と語ってるので、今の年齢は……おや? 誰か来たようだ。

 

 

 

***

 

 

 

「まあでも、安心材料はあんだろ? イタリカの防衛師団司令官(てっぺん)張ってるのがディフェンスには定評のある”栗林少将(クリリン)”だし、そもそも特甲軍の(カシラ)は”石原完治大将(カン)”さんだしさ。勝ちは見えてる」

 

「あの二人がしくじるような相手だったら、『特地』は捨てたほうがいいわね。きっとそうなった時の敵は、陸海空三軍雁首揃えても太刀打ちできないだろうから」

 

何を当然なことをと言いたげな英美だったが、ふと思い出すように、

 

「……そういえばさ、イタリカと言えば”西君”の娘さんとか、”西住君”の妹さんとかいるんじゃなかったっけ?」

 

英美は自分の世代が先鞭をつけた……いや、まさに自分こそが神輿に掲げられ集められた”女性帝国軍人”というものに内心複雑な思いを持ちながら聞くが、

 

「まあな」

 

勇次は頷きながら、

 

「だが乗ってるのは【九七式中戦車(チハ)】に【九八式重戦車(ジハ)】だ。相手があれじゃあ、そうそう遅れはとらんさ」

 

「油断大敵よ? 流れ矢だって当たれば人は死ぬんだから」

 

「おいおい。どこの三国志の話だよ?」

 

しかし、英美は真面目な顔で告げる。

 

「だって、今『特地』でやってるのはそういう戦争と大差ないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***************************************

 

 

 

 

 

 

同時刻、『特地』イタリカ保護領

 

 

 

『中隊全車、近接砲撃戦よーい!』

 

中隊長である角谷杏の号令は、第6戦車中隊(かのじょたち)の戦いがいよいよ佳境に入ったことを告げていた。

 

『中隊統制射撃、解除だよー。砲撃は小隊長各自の判断で』

 

既に敵の先端は地雷原に達している。

例え地雷原を踏み越えても戦車隠蔽壕や機関銃座、歩兵が待ち構える塹壕の前には幾重にも張り巡らされた有刺鉄線の鉄条網があるのだが、その距離は既に1.5kmを割りつつあった。

こうなってしまえば、後はスピードの勝負だ。

 

「第1小隊! 残り2射まで榴弾! 以降は”榴散弾”!!」

 

『『『了解っ!』』』

 

指揮下にある3両の車長からの命令を待ち、

 

「距離1470、小隊統制射! ファイヤ!!」

 

 

 

***

 

 

 

「ちくしょうっ! どうしていきなり地面が爆発しやがるんだっ!?」

 

「きっと見えない砲弾……魔法の砲弾を使ってやがるんだっ!」

 

「違う! モグラみたいに地面の下を潜る砲弾なんだっ!!」

 

「うろたえるなっ! 爆発は小さい! 簡単に死には……」

 

”DOM !!”

”ぐちゃっ”

 

「きしょう! 隊長が木っ端微塵になっちまったぞっ!!」

 

「とにかく進めっ! 逃げれば背中から撃たれっぞっ!!」

 

”帝国”兵達は必死だった。

まだ街が見えないうちから砲爆撃に晒され、街が見えたと思ったら空爆の規模は小さくなったが砲撃の密度は増し、まるで地面が噴火したような錯覚を覚えた。

 

煙幕を張っても砲撃の激しさは代わらず、煙は驚くほどの早さで散らされてしまった。

それでも苦労して”鉄の茨”を突破してみれば、今度は見えない砲弾で足元から吹き飛ばされる。

 

(なんて日だ……)

 

その男は、呆然としていた。

まだ満足に敵の姿すら見てないのに、自分の周りには死が溢れている。

 

(こんな理不尽があっていいのか……)

 

自分はただ強制的に徴兵されただけだというのに。

その時、”センシャ”と呼ばれてるらしい鋼鉄の象が鼻先をこちらに向けた。

 

(きっと今日は、エムロイ神殿は満員御礼だろうな……)

 

それがその男の長くは無い人生における最後の思考だった。

空中で爆発すると同時にほぼ水平方向に飛散した重さ16gの重金属球を全身に浴び、遺体というより肉片や骨片となり大地へ還ったのだから……

 

 

 

***

 

 

 

「優花里さん、弾種同じく”榴散弾”! 信管調整は2秒で!」

 

「了解です!」

 

華の指示通りに榴散弾の時限信管を2秒にセットし、装填する優花里。

今は再びキューポラから半身を乗り出し、双眼鏡と裸眼で情況を観察しながら小隊に指示を出し続けるみほに代わり、射撃だけでなく砲や砲塔も同時に操作していた華は引き金に指をかけ、

 

「撃ちます!」

 

”VOM !!”

 

 

 

”榴散弾”とは?

簡単に言えば中空の弾殻の中に金属球体と炸薬を詰め、時限信管で作動させる砲弾の事だ。

そして発砲と同時に信管が作動し、設定した秒数後に炸裂。前方に内部に収めた金属球を発射するというものだ。

サイズこそ大幅に違うが、基本的にある程度の距離を飛んでから発砲する散弾みたいなものだ。

75mm砲弾の場合は16gの重金属球を80粒内蔵し、信管作動時間は0~20秒(0秒設定にすれば一応、零距離射撃が可能。そのまま砲で撃つ対人散弾として使える)というところ。

今回2秒に信管がセットされたため、1km少々飛んだところで散弾を発射したことになる。

 

「あと2~3射はいけるかな?」

 

そう呟いたのはみほだ。

 

砲塔上に設置された武2式(M2ブローニング)重機関銃、その防盾の影から顔を覗かせるようにしてみほは双眼鏡を片手に戦況を眺めていた。

 

後ろからはひっきりなしに同じ砲弾を使う”九〇式野砲”や他の軽砲の砲弾が飛来し、近場からは迫撃砲やそろそろ射程に入った重機関銃の発射音が聞こえる。

みほが武2式を撃たないのは、発砲音が邪魔をして通信がまともに出来なくなってしまうからだが、それより確認すべきは残弾だ。

定格なら1両あたりの榴散弾の搭載数は10発だから、

 

(残りはあと6発……)

 

「第1小隊、あと3射したら弾種を再び榴弾に! 主砲は可能ならば後方部隊に向けて発砲! 接近する敵兵は各機銃、擲弾筒で迎え撃って!」

 

 

 

***

 

 

 

「全隊、発砲せよっ! 繰り返す! 全隊、発砲せよっ!!」

 

まだ少数とはいえ地雷原を抜けた敵に向けて十分にひきつけたと判断し、火力支援中隊を含めこの場を守る歩兵大隊が一斉に発砲を始める!

 

今まで指切り(バースト)射を中心とした持続射撃を続けていた重機関銃に加え、射程距離が数百mの小銃までが射撃に加わっていた。

よくよく見れば一般歩兵が使う小銃も、史実から考えれば少々おかしいことに気付くだろう。

何しろ兵達が手にしてるのは、どう見てもチェコ製の【ZH-29半自動小銃】であり、よくよく見れば”分隊ごとが装備(!?)”している軽機関銃も、本国でまとまった数が配備されている”九六式軽機関銃”と思いきや……確かにシルエットはよく似ているが、ある意味九六式のオリジナルと言える【ZB-26軽機関銃】だ。

 

一応、史実でも大陸で鹵獲したZH-29半自動小銃やブルーノZB26軽機関銃を使用した例はあるが……流石にこの数はそれじゃあ説明が付かないだろう。

そもそも”この世界”の大日本帝国は、これらの銃器が歴史に登場する20年以上前に大陸から手を引いているので鹵獲できるわけがない。

 

種を明かせばこの二つ、【|チ29式半自動小銃】&【|チ26式軽機関銃】という名称で、正式に大日本帝国で小改良(弾倉の共用化など)された上にライセンス生産されてる上記のモデルだ。

その理由などを詳しく書くと長くなりすぎるので、簡単に端折ると……

 

この世界でも第一次大戦に連合国側で参戦した日本は、領土的な戦時賠償を放棄し英米に預ける代わりに、ドイツから鹵獲や押収した全ての兵器から英米が研究用などの必要数を差し引いた残り分、本来なら廃棄されるはずの武器弾薬を日本に供給するよう申し入れたのだ。

まだ帝都の一部を『門』外勢力に占領されていた日本は、当時抱えていた以上の領土を抱える余裕はなく、逆に敵に対抗するためより強力な武器を求めていたのだ。

 

英米はこれを快諾し、日本には旧ドイツ(プロイセン)製の武器が溢れた。

紆余曲折はあったが、特に大量に押収されていて品質が高いため長期保存が可能なドイツ製の弾丸(7.92×57mm小銃弾、9×19mm拳銃弾)は現在でも備蓄に余裕があり、それを使用する小銃/機関銃/機関短銃(短機関銃)/拳銃の開発や保有は自然だった。

 

もっとも補給の混乱を避けるために7.92×57mm小銃弾(8mmマウザー弾)の使用銃器は『特地専用武器(トクチ・スペシャル)』に該当とされ、本国には配備されていない。

『特地』には同じような形状/サイズの米国製【30-06スプリングフィールド弾(7.62x63mm小銃弾)】を使う”武1919式(ブローニングM1919)機関銃”系列も配備されているが、この系統の機関銃は弾丸同士を金属パーツで連結する”ベルトリンク式”という方式で使われるため、現状では容易に区別が付いている。(30-06スプリングフィールド弾を使う銃器は、ベルトリンク式給弾のブローニングM1919機関銃系列しか特地には配備されていない)

また本国では現在、主力小銃弾は日露戦争の頃から使われている【三八年式実包(6.5×50mm小銃弾)】から前出の【30-06スプリングフィールド弾】に全面的に切り替わりつつある

 

 

「うふふ……ふふふ……」

 

気が付くとみほは笑みを浮かべていた。

笑みを浮かべながら、その感触を確かめるように武2式重機関銃の銃把(グリップ)を握っていた。

 

「各車の判断で銃撃開始してください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
この作品初のまともに出てきたオリキャラはいかがだったでしょうか?(^^

なんか、西住隊長の笑みがヤバイ感じになってますが……次回は、かなり”近い”戦いになりそうです。

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



東条英美(とうじょう・ひでみ)

元ネタはもちろんいわずと知れたあの人(^^
容姿的には「髪を白灰色(アッシュブロンド)にして縦方向に寸詰まりにした恋姫†無双の”詠ちゃん”」という感じ。
実は白灰色の髪は白髪で、見た目は公称身長138cm(自称140cm)の10歳かそれ以下に見えるガネッ娘三つ編み幼女だが、髪の色だけが実際の年齢を物語るロリBB……合法ロリである。
性格は几帳面でうるさ型でついでにボクっ娘。属性の塊。

「|三軍統合本部」の予算委員会委員長……各所から上がってきた稟議書の精査と決済を行い、各種予算原案として【国防総省】に提出する部署の委員長サマ。階級は陸軍中将。
「鬼の委員長」とか「三軍統合参謀本部(さんとう)の金庫番」とか「ヒステリック・チェーンソー(意訳:ブチ切れて相手を言葉でズッタズタ♪)」とかの二つ名で恐れられているが、実は人気が高い(人徳が高いとは言ってない)。
酒井勇次中将によれば「予算委員会の裏アイドル」。
仲間内での愛称は”ひでみん”。ただし、本人未公認。

実は1905年(明治38年)9月5日のあの日、まだ”帝国陸軍簿記経理学校”に通う女学生だった英美は【日比谷事変】に巻き込まれた。
正体不明の敵と遭遇しながらも機転を利かせて避難する市民の誘導に尽力した。

問題なのはその後で、日露戦争の勝利とは言い切れない疲弊感とポーツマス条約への不満という危険因子を国民が抱え込む中、突如として起こった正体不明の敵の侵攻と一部とはいえ帝都の占領を許すという軍部の失態と政府の責任を糊塗するために国民が喜ぶ「英雄と美談」を両者は用意しなければならなかった。
その白羽の矢が立てられた一人が英美で、有体に言えば「非力で小さな体の少女にも関わらず軍人としての責務を全うし、市民を護りきった。まさに大日本帝国軍人の鑑」というふれこみだった。

しかし、彼女の波乱はまだ続く。当初、軍部は女性を戦地に立たせる気はなく、英美は事務畑一筋でそれなりの出世をしたが与えられる階級はあくまで「○○相当」という仮のもので、また同期の正規男性軍人に比べれば目立つものではなかった。
基本、先に出てきた帝国陸軍簿記経理学校は、「絶対に前線どころか戦地にでない簿記会計くらいはおにゃのこでよくね?」というとある陸軍高級将官の思い付きから始まった学校であり、基本的には卒業しても軍人扱いではなく、あくまで”軍属”扱いだったのだ。
それでも公務員としての給与も悪くなかったし、英美自身には不満は無かったのだが……

しかし、度重なる『門』外勢力との戦闘や国家の近代化による良質な労働人口の需要の増大、更には男女人口比率の変化(第一次大戦前後から徐々に4:6に近づきつつある)により軍部や政府から「残る半分以上の性を無碍にしたままでは実に勿体無い。徴兵はさすがにしないが、実戦部隊を含む軍への志願くらいは認めては良いのではないか?」という意見が噴出。
時は【職業婦人】という耳慣れない言葉が産声をあげた大正デモクラシー真っ只中、時代の気風にも後押しされ、「婦人軍志願制度」が満場一致で可決された。
そこで御旗、あるいは神輿に掲げられたのが「日比谷事件の英雄陸軍人達」の一人で、唯一の女性だった英美だった。

後はシンプルである。
英美本人は正規陸軍将校待遇となり、本人も得意分野では有能なせいもありトントン拍子に出世街道をまっしぐら。
政府も軍部も一丸となり「大日本帝国婦女子よ、英美様に続け!」というノリのキャンペーンが始まり、彼女を目標や憧憬にした婦女子志願兵を手薬煉引いて待ち構えた。
その成果もあり1939年現在、大日本帝国三軍の三割以上が女性で占められていた。
言うまでも無く出世頭は英美である。

目下気になることは、「英美様に罵られ隊」や「英美様に踏まれ隊」なる妖しげな秘密結社(ファンクラブ)がよりによって三軍統合参謀本部に存在してるという噂があり、それが事実なら大日本帝国軍の沽券に関わる由々しき事態だと思っている。












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