祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

8 / 21
皆様、こんばんわ~。
今回は、サブタイ通りにチハたんの登場です♪
もちろん、突撃大好きなあのお姉さんと一緒に(^^

ついでに設定資料も今回はチハたんづくしでお送りしますよ~。


第08話 ”九七式中戦車、登場です!”

 

 

「西住少尉! 遅ればせながら馳せ参じました!」

 

程なく計8両の【九七式中戦車】を引きつれやってきたのは、キューポラからみほと同じように半身を乗り出した長い黒髪が印象的な、大和撫子然としながらも快活さを感じさせる少女だった。

彼女の名は”西絹代(にし・きぬよ)”少尉。

元騎兵将校で、1932年のロサンゼルス・オリンピック馬術競技の金メダリストである”西竹臣(にし・たけおみ)”中佐の長女である。

父親譲りの乗馬用ロングブーツがトレードマークで、名前よろしく絹のように艶やかな黒髪はもちろんのこと長身で欧米人顔負けのすらりと伸びた手足……くびれた腰にの左側には軍刀ではなく私物と思わしき瀟洒な細工の施されたサーベルを携え、同じく右側には豪華なエングレーブ表面処理がされた銀色のワルサー社製の”PP自動拳銃”を吊るし、漂う華やかな洒落者の雰囲気が流石は”バロン西の娘”だと思わせる。

 

 

 

 

ちなみに西中佐は現在、騎兵科から戦車兵科に転身、今年の四月まで【遣イタリカ増強師団(ここ)】の戦車連隊長を勤め、中佐に出世したことを契機に師団司令部詰めになった。

栗林少将に西中佐……なぜか玉砕という単語が頭を浮かべるが、実際にはそんなわけも無い。

今のイタリカ防衛網、別名”イタリカ要塞”は敵との戦力差を考えればまさに難攻不落、「旅順要塞より陥落しにくいかもしれぬ」と評判だ。

まあ、外が硬くとも中から切崩されたら洒落にもならないので、現在は軍なら表向きは憲兵隊、裏では”中野学校出身者《統合軍諜報部》”が動き回ってるようだ。

ちなみに他にも一般警察や特務公安部から始まり、内務省から分離して昨年生まれたばかりの厚生省からは麻薬取締局員等まで姿を見せているという。

 

 

 

「西少尉、ご足労ありがとうございます」

 

先に敬礼するのはみほだった。

絹代はみほより1年先任であり、角谷杏と同期に当たる。

いわば同じ階級でも先輩後輩にあたるので、みほの態度も自然と上官に接するようになるが、

 

「そう堅くなる必要はないですよ? 西住少尉」

 

敬礼を返しながら絹代は、

 

「私の方が先任とはいえ同階級で何より同じ戦車乗り、気にすることもないでしょう」

 

からっと明るく笑う絹代にみほは少し苦笑しつつ、

 

「すみませんが後をよろしくお願いします」

 

「お任せください! 見事に突撃、祖国に仇なす敵を粉砕してみせましょう!」

 

かんらかんらと豪快に笑う絹代であるが、みほは内心冷や汗をかいてしまう。

 

「あの、西少尉……今は防衛戦の最中なので、突撃はせめて司令部から反攻命令があってからにしてくれないかなーと」

 

微妙に口調の崩れるみほだったが絹代は気にした様子も無く、

 

「おおっ!? そうだったそうだった! 耐え忍ぶのは我らの『知波単女子戦車学校』の得意技でもある。どーんと任せてください!」

 

 

 

軽い打ち合わせ終えて、九七式中戦車(チハ)の火力と絹代の性格と趣向に不安を感じながらも、みほはとにかく出発を急ぐことにしたようだ。

 

第1小隊(アンコウ・プラトーン)第3小隊(アヒル・プラトーン)全車、戦車隠蔽壕から離脱! これより行軍を開始します!」

 

今まで戦車隠蔽壕に車体を半ば埋もれさせ、固定されたトーチカと大きく変わらぬ役割を担っていた九八式重戦車が同時に過給機付き(スーパーチャージド)ディーゼル・エンジンの轟音を響かせ、巨大な車体を鳴動させながら動かし始める。

その姿はまるで「戦車としての本来の姿」で活動できることを喜んでいるようだった。

そう、戦車は分厚い装甲と強力な砲を持ち、同時に”動ける”からこそ戦車足りえるのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************************

 

 

 

 

 

第1小隊(アンコウ・プラトーン)第3小隊(アヒル・プラトーン)全車に告ぐ! 戦車隊、前進せよ(パンツァー・フォー)!!」

 

みほは、絹代が率いる2個小隊のチハがついさっきまで自分達が使っていた隠蔽壕に潜り込むのを確認してから”南南西32番陣地(S.S.W/32)”へ向かう命令を下す。

 

本来、彼女はドイツ語の低い響きが好きだった。かつては「撃て!」という命令を「フォイヤ!」と発令していた。

しかし、やがてアメリカ人、特にケイ・サンダースらと交流を深める中で、徐々にアメリカ式に変えた。

高々に叫んでいた「フォイヤ!」は、いつの頃からか「ファイヤ!」と英語発音になっていた(まあそれでも「ファイア!」とならないあたり、未だドイツ語訛の英語発音と言えるだろうが)。

 

だが、アメリカは同盟国で最友好国。また日英同盟がある以上、そう遠くない将来に英仏が宣戦布告したドイツは敵国になるだろう。

残念で少し寂しいが、それも仕方ないと思っていた。

何しろ「大洗女子戦車学校」の教本にはドイツ語は一切記載されてないのだ。

”タンク”と言えば戦車のことだとだれもがわかるが、”パンツァー・カンプフ・ワーゲン ”と言ってもきょとんとされてしまう。

 

(きっと今はそういう時代なんだ……)

 

だけど同時に「パンツァー・フォー(Panzer vor)」というコマンドだけは変えたくないと思っていた。

理由は上手く説明できないけど、みほはどうにもこの言葉がないと戦車行軍が始まらない気がしたから。

 

 

 

***

 

 

 

(出発前に武2式のベルトリンクは交換したし……)

 

先の戦いで随分と50口径(12.7mm)弾は消耗してしまったので、防盾の後ろに取り付けてあった予備の弾帯箱と交換済みだ。

 

(砲弾や車内の機銃の残弾確認もすでに済んでる。少なくともあと1回は無理せず戦える筈……燃料も問題ないし、今のところ脱落車もない)

 

行軍前に確かめた2個小隊の情況を反芻する。

むしろ心配なのは戦車の状態より隊員達の体力のような気もするが、勝ち戦の高揚感がそれを補って余りある状態にある。

それに戦闘開始からの時間経過から考えても、そこまで消耗はしてないだろう。

 

「みぽりん、中に入らないの?」

 

そうキューポラの下から心配そうに声をかけてきたのは武部沙織だった。

 

「うん。不測の事態に備えて視界は確保しておきたいから」

 

そう、みほは先の近接銃撃戦から一度も車内に潜ってはいない。

それで掠り傷一つ負ってないのだから大したものであるが……

 

「だーかーらー! その不測の事態が危ないって言ってるんだよー。流れ弾だってどっから飛んでくるか判らないんだからね! みぽりんに万が一のことがあったら……」

 

「ごめんね。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらっちゃおうかな?」

 

ぷりぷりと怒る沙織を宥めつつ、とりあえずは沙織の下降気味のご機嫌を上向きにさせるためにみほは一度、車内へと戻った。

幸い、目的地到着までにはまだ少々時間がある。

 

 

 

「う~ん……ちょっと困ったことになっちゃったかな?」

 

そう苦笑するみほに、今度は秋山優花里が問いかけた。

 

「西住隊長、どうしたんですか?」

 

するとみほは肩から下げていたイサカM37(ショットガン)をおろし、

 

散弾銃薬莢(ショットシェル)が残弾0だよ。まさかあそこまで敵が押し寄せてくるなんて計算外だった」

 

見れば革製のガンベルトに差し込んでいた20発以上はあったはずのショットシェルは綺麗になくなっていた。

そして、イサカM37のスリングを車内のフックに引っ掛けると、

 

「あと拳銃の弾倉(マガジン)も心許無いかな? 今装填してるのがラス1だし」

 

基本的にみほは薬室(チェンバー)に1発装填済みのコンバットロードという状態で自動拳銃を携行している。

利点は装填済みなので即時発砲が可能なことと、装弾数が1発増えることだろうか?

13連発マガジンなので、彼女は13+1の計14発を愛用の”武35式自動拳銃(ブローニング・ハイパワー)・みほカスタム”に叩き込んでることになる。

予備マガジンは普通2本携行するので、1本使い切ったなら少なくとも27発以上を敵に撃ちこんだ計算だ。

空になったマガジンを”空マガジン入れ☆”と女の子らしい丸っこい文字で書かれた空の50口径弾用弾帯箱(アモケース)に放り込むが、

 

「ちょっ!? みぽりん、弾使いすぎ!」

 

「あっ、じゃあ予備マガジン、カンパします! 多分、自分は拳銃使うことないと思うので」

 

ベルトにつけたマガジン・ポーチから自分のマガジン2本を差し出す優花里だが、

 

「あーもう。優花里、自分の予備マガジン2本ともあげてどうするのよ! 1本はわたしがカンパするから」

 

と優花里の地味な無茶を止める沙織に、

 

「あのー、わたくしからも1本進呈したいのですが……」

 

と遠慮がちに言い出す五十鈴華である。

武35式自動拳銃は、三軍統合の正式軍用拳銃として官給されてるため、マガジンは全員共通だ。

 

ちょっと話がずれるが、大日本帝国軍において士官(少尉以上の階級者)は軍用拳銃を私物として購入し装備することが慣例になっていた。

無論、申請すれば普通に官給されるが、基本的に私物の拳銃を腰に下げるのは士官のステータス・シンボルであり、また税金で買った官給品なので好き勝手できないという事情もあった。

みほも最初は私物で何丁か所有している拳銃を持ち込むつもりだったが、自決も含め戦地で最後の頼りになる武器だからこそ、みんなと同じ物……最低でも同じ弾丸を使う銃の方がいいと考え直した。

 

というわけで……みほはまず武35式自動拳銃の官給を受けてからすぐに買取を申請(こうすると街の銃砲店で買うより安く購入できる)、私物として登録した後に自分好みに改造(カスタム)したのだ。

 

拳銃に興味の無い諸兄にはまったく面白くない話だろうが……

基本的にはマガジン・セイフティをオミットし、フロント/リア・サイトを3ホワイト・ドットの視認性の良いフィクスド・サイトに変更。リング・ハンマーを指かかりのいいワイド・スパーハンマーに交換し、セイフティレバー&スライド・リリースレバーを手袋しても操作しやすい大型の物に変更。

トリガーをセレーション入りのマッチ・タイプにすると同時にトリガープルをかなり軽くしている。

とどめにグリップを自分の手にあわせたフルオーダー品に変更……

ちなみにこれらのパーツ、全てみほが幼い頃から贔屓にしてる西住家御用達の銃職人(ガンスミス)に特注して作ってもらったものだったりする。

 

拳銃1丁にどんだけ金かけてるんだか……「まだまだ未完成だよ」とは本人の弁。

 

「わっ、みんなありがとう♪ これで心置きなく射撃できるよ」

 

そう3本のマガジンを受け取り、残弾が半分程度になったマガジンを拳銃からぬいて挿入。残り2本をポーチにしまうみほだったが、

 

「西住隊長の使用済みマガジン~♪」

 

なにやら残弾半分のマガジンに頬擦りしてる優花里は、全力でスルーしよう。

彼女が戦闘後の火照った肢体のどこに装填するのかまでは感知しないでおく。

 

「みぽりん、散弾銃の代わりはこれで平気?」

 

そう世話好きの沙織が取り出したのは、備え付けのガンラックに置いてあった乗員脱出時の自衛用にと装備されている【ベ18式短機関銃(ベルグマンMP-18)】だ。

第一次世界大戦に参戦し、勝利者側にいた大日本帝国が戦時賠償で領土的割譲を放棄して米英に預け、変わりにドイツの鹵獲/押収兵器の譲渡を求めたことは既に書いたと思う。

その中の一つが第一次大戦で勇名を馳せた【MP-18短機関銃】だ。

ほんの10年ほど前までは第一線兵器で、自動小銃が歩兵の相棒に代わった今でもコンパクトで制圧火力が高い短機関銃を主力とする部隊やセクションはあるが、それらは今やほとんどが新型の【ベ28式(MP-28)短機関銃】に切り替わっていて、今はこうして特に『特地』配備の機甲車両に流れてくるようだ。

 

「うん、ありがとう。これで十分だよ」

 

「でも、あんまり無茶しちゃダメだからね? みぽりんはガンマンじゃなくて戦車乗りなんだから」

 

どこまでも心配性のゆかりにみほは柔らかく微笑み返した。

 

 

 

***

 

 

 

やがて戦車隊は所定のポイント、”南南西32番陣地(S.S.W/32)”へと近づくが……

 

「うっ、これはひどい……」

 

キューポラから半身を乗り出す御馴染みとなった姿勢から双眼鏡を構えるみほの視界に映ったのは、既に乱戦の様相を呈した防御陣地群だった。

 

そして、今にも接近を許した防弾鎧代わりに胴金を巻いたジャイアント・オーガの人の背丈の倍ほどもありそうなウォー・ハンマーが機関銃座に振り下ろされようとしていた。

まだ『特地』に配されて日が浅いのだろうか?

銃座に座るまだ若い日本兵は、パニックを起こしたように武1919式機関銃を無闇に乱射していた。

 

(あれじゃあ駄目!)

 

50口径ならまだしも30口径(7.62mm)弾の威力では、怪異の中でも選りすぐりの巨体でそれにみあった耐久力と強靭さをもつジャイアント・オークに急所以外では致命傷を与えられない。胴金を巻いてれば尚更だろう。

下手なところに当てれば怒らせて、余計に凶暴になるだけだ。

一瞬、みほの脳裏に『進撃の巨人』という言葉が脳裏に浮かぶ……

 

(なら、わたし達は巨人を駆逐する狩人になろう……!)

 

「華さん!」

 

「わかってます!」

 

それだけで通じるのは、素直にありがたかった。

そして対応を任された華は、

 

「優花里さん、弾種”粘着榴弾(HESH)”ですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
チハたん&西お嬢初登場でしたが、いかがだったでしょうか?

それにしても……みぽりん、君って娘はどんだけ銃が好きなんだか(^^
ついでに原作同様に心配性なさおりんLove(笑)

そして、伏線回収の粘着榴弾(HESH)がついに放たれる!
次回はさらに白熱した戦いが……?

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



九七式中戦車

主砲:九七式四七粍戦車砲(口径47mm、53.5口径長)
機銃:武2式重機関銃(12.7mm)×1(主砲同軸。スポッティングライフル兼用)
   武1919式車載機関銃(7.62mm)×2(砲塔上、車体前面)
エンジン:統制型九〇式発動機AC型(空冷V型12気筒ディーゼル、240馬力)
車体重量:18.5t
装甲厚:砲塔前面50mm(傾斜装甲),砲塔側面/後方25mm,車体前面45mm(傾斜装甲)
サスペンション:独立懸架+シーソー式連動懸架装置
最高速:42km/h
乗員:定員5名(車長が通信手を兼ねることで4名運行が可能)

備考
九五式/九八式重戦車とならぶ1930年代後半の日本の主力戦車。
実は九五式を原型とした九八式より設計は新しく、九八式とは別の意味でエポックメイキングな戦車であった。コードネームは「()戦車ハ型」の略である”チハ”。
まず第一に言えるのは大量生産を考慮し砲塔/車体共に初めてリベットを使わず全溶接構造で製造された車体で、また地面追従性が高い独立懸架を採用した最初の日本戦車であり、また拡張性や整備性を考慮され、それを設計段階から取り入れた戦車でもある。
また、被弾時の跳弾を狙う”避弾経始”の概念を取り入れた傾斜装甲が砲塔や車体の正面装甲に取り入れた最初の日本戦車だ。
以上のような特徴は以後戦時中に開発される日本戦車の指針/特徴となり、九七式の遺した大きな功績と言えるだろう。

主砲は、史実では試作に終わった【試製九七式四十七粍砲】を制式化/量産した【九七式四十七粍砲】。
史実では九七式は対戦車戦はあまり考慮されておらず、歩兵直協(歩兵の火力支援)を主任務とされたために故に砲身の短く砲弾サイズは大きくとも射程距離が短く装甲貫通性能も低い【九七式五糎七戦車砲】を初期型に採用、後にあまりの対装甲能力の低さゆえに後期型では口径は小さくなっても砲身が長く初速も速い【一式四十七粍戦車砲】を採用することになるが、戦車の爆発的進化によりこの砲をもってしても既に敵戦車の正面装甲を貫くことは難しく、日本戦車は非力な存在になってしまう。

しかし、”この世界”の九七式は大きく開発経緯が異なる。
そもそも日本は九一式重戦車の頃から『門』外勢力を駆逐あるいは蹂躙するために敵を根こそぎ吹き飛ばす大火力と敵のいかなる攻撃をも防ぐ重装甲を持つ重戦車に傾注していた。
しかし、この類の戦車はその重量ゆえに鈍足が泣き所になるのが常だった。
地上にいる最速の存在が騎馬兵である『特地』勢力なら大きな問題とはならなかったが、ふとあるときに何人もの戦車将校が気が付いたのだ。

「相手が他国の戦車だったらどうなるんだ?」

と……
第一次大戦後、戦車は世界的な自動車工学の発展(モータリゼーション)によって急速に進化してきた。
そんな情勢であるなら、「火力と装甲はあっても速度に劣る我が国の重戦車は翻弄されるのでは?」とある意味、当然過ぎる結論に辿り着いた。
鑑みると、重戦車より機動力のまさる中戦車は確かに日本にも【八九式中戦車】というものがあったが、この戦車は開発年代から考えても対戦車戦ではなく前出の歩兵直協を前提に開発されたものであり、またポーランドの”7TP戦車”に並んで世界初のディーゼルエンジン搭載戦車になるなど画期的ではあったが、下手に設計の完成度が高かったうえに発展性が考慮されておらず、対装甲用の高初速長砲身砲が装備することが不可能な設計になっていた。(この反省が九七式以降の発展性/拡張性の確保を前提とした設計に繋がる)

そのような事情があったために、九七式は日本で始めての「戦車を狩るための戦車」として開発されたのだった。
その発想は重戦車が火力と装甲、軽戦車が速度や機動性というのなら……「中戦車は敵戦車を撃破しうる火力を持たせながら装甲と機動力をバランスよくだな」という結論が、当時の陸軍戦車研究委員会より上がった。

そこで1930年代前半に「既成概念にとらわれず、敵戦車を撃破し可能なら圧倒できる砲と車体の開発を」を合言葉に全力開発が始まったのだった。

蛇足ながら史実でいう【試製九七式四十七粍砲】、この世界の【九七式四十七粍砲】は史実では後に採用される【一式四十七粍戦車砲】よりも長砲身(試製九七式四十七粍砲=53.5口径長、九七式四十七粍砲=47.8口径)であり、同じ砲弾と装薬であればより高初速を得られるだろう。

また、この砲の性能を生かすために様々な試みがなされていて、砲安定装置(ガン・スタビライザー)やドイツ式のシュトリヒ・ゲージ型照準機はまだ採用されてないものの、英国ヴィッカース式の照準機は十分に精度が高く、またそれを補うために同軸機銃に武2式重機関銃(M2ブローニング)を搭載、曳光弾(トレーサー)を用いることにより一種の”照準用試射銃(スポッティング・ライフル)”として使えるようにしている。

装甲は砲塔前面50mm/車体前面45mmと開発年代を考えれば十分に分厚く、おまけに傾斜装甲を採用していることからも対戦車戦を強く意識してることがうかがえる。
史実の九七式に比べるとより大型の砲塔や長砲身戦車砲、分厚い装甲版を使うことから5t近く重くなってしまったが、それを補うべく史実のエンジンより90馬力高出力な統制型九〇式発動機AC型を搭載することにより機動力低下を防いでいる。
プラスして、アメリカの高い工業力を導入していたために可能となった半ばユニット化した遊星歯車装置(プラネタリーギア)型クラッチ・ブレーキなどの優れた伝達装置の存在も無視できないだろう。
また、乗用車のようなステアリングを採用したのも九七式が最初だった。
実際、九七式は「初心者でも非常に運転がしやすく、壊れにくい」と評判だった。

また史実より大型エンジンを搭載し、また拡張に対する余力を持たせるために車格はオリジナルに比べて心持大きく、また砲塔もオフセットされずに車軸上の中心線にあるため、全隊の印象はむしろ”史実の一式中戦車”に近いかもしれない。

『特地』に集中配備されていた九五/九八式重戦車は国民の目に触れる機会が少なく、一式中戦車登場までは、このチハこそが一般人の思い浮かべる”日本戦車”だったという。

また別の方面で九七式を評価すべきは、その拡張性や発展性の高さから第一線をこの世界の【一式中戦車】に譲った後も対空戦車や自走砲、装甲工作車(戦車回収車)など様々なファミリー・バリエーションを生み出すプラットフォームになったことだろう。






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。