祝☆劇場版公開記念! ガルパンにゲート成分を混ぜて『門』の開通を100年以上早めてみた   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ~。
またしても深夜アップになってしまった作者です(^^

今回のエピソードは……うん。まんまサブタイとおりですね~(笑)
つまり、プラスチック爆弾の花火が撃ちあがり、それを祝砲代わりにいよいよ”あのお方”がご降臨のようですよ?
ついでに今まで台詞の無かったちみっ娘も。

後書き設定資料は、”うぽって”を少し掘り下げるつもりが掘りすぎて床下の「大日本帝国の小銃史(抜粋版)」っぽくなったような……




第09話 ”汚い花火と亜神です!”

 

 

 

イタリカ防衛網、”南南西32番陣地(S.S.W/32)

 

 

 

西住みほ陸軍少尉が率いる2個小隊、計8両の九八式重戦車がそこに駆けつけたとき、その陣地は乱戦の様相を呈していた。

半ば奇襲じみた迂回戦術と、対人地雷をものともせず攻めより、張り巡らされた有刺鉄線を力任せに踏み千切る怪異の巨人(ジャイアント・オーガ)の群れ……

 

破城鎚(ジャガーノート)のように鉄条網を食い破りながら巨人が開けた進撃路(あな)を通り、堤防が決壊させた濁流のごとく攻め込んでくる敵兵の群れ。

 

しかし、味方は怯んではいない。

自動小銃や軽機関銃を武器に果敢な反撃で敵兵の駆逐を試み、だからこそ乱戦があちこちで発生している。

 

砲兵隊だって歩兵に負けてはいない。

塹壕で形成された防衛線が破られれば、近距離に弱い自分達がどうなるかなんて百も承知だ。

更に後方にある重砲を除き、比較的近距離砲撃……直接照準の水平砲撃にも対処できる九四式三十七粍砲が、九〇式野砲が、九五式野砲が、九四式山砲が、九九式十糎山砲が、そして九一式十糎榴弾砲があらん限りの火を噴く!

 

だが、味方ごと敵を吹き飛ばすような苛烈な判断をできる者は少ない。

軍としてはそれで正しいのであるが、今まさにウォー・ハンマーに叩き潰されそうになっていた機関銃座の兵士達にとっては、なんの救いにもならないだろう。

 

その機銃座にすえつけられてたのは30口径(7.62mm)弾を使う武1919式機関銃。

人間相手なら十分な威力を示しただろうが、相手がジャイアント・オーガならいかにも非力だ。

しかも巨人達は防弾鎧代わりの胴金を巻いてるので、尚更に威力不足だろう。

 

「華さん!」

 

「わかってます!」

 

キューポラから上半身を乗り出したままのみほの言葉に華は同じく短く返し、

 

「優花里さん、弾種”粘着榴弾(HESH)”ですっ!」

 

「了解!」

 

英国から製造技術が届いたばかりで、まだ試作段階……実戦使用も今回が初めてで、まだ海のものとも山のものともわからない砲弾を優花里は装填する。

華も全く不安が無いわけじゃなかったが……

 

『ん? 英国人が開発した”対戦車榴弾”だよ。確か中身はヘキゾーテル(RDX)トロチル(TNT)のB配合(コンポ)プラスチック爆薬とワックスの混合物……だったかな?』

 

『ちがうちがう。発射された砲弾は敵戦車の表面にべっちゃって張り付いてから爆発するんだよ。え~と、”ホプキンソン効果”だったかな? その時の衝撃波が装甲板を伝わって内側を剥離、飛散させるの。その破片が戦車自体じゃなくて乗員にダメージを与えるみたいだよ?』

 

とみほの口から語られた説明を思い出す。

 

(……こればらいけるはず!)

 

砲弾の先端にある信管に目標が触れればすぐに爆発する榴弾(HE)はこの場合は使えない。

敵の巨人は、もうウォーハンマーを振り下ろせる間合いにいるのだ。榴弾を叩き込めば爆発に銃座にいる味方を巻き込んでしまう。

なら数発は搭載されている徹甲榴弾(AP-HE)を使う手もあるが、元々は戦車などの装甲を打ち抜いて内部で爆発して乗員を殺傷する目的の砲弾だ。

この距離で放てば逆に胴金ごと巨人を貫通してしまい、その体の後ろで爆発して十分な効果が得られないかもしれない。

 

「一意専心……撃ちますっ!」

 

”ZuVom !!”

 

 

 

***

 

 

 

華の手により放たれた粘着榴弾は寸分違わずジャイアント・オーガの胴体に命中し、

 

”ぶわっ!”

 

胴金で押しつぶされたプラスチック爆薬は残存運動エネルギーの全てをオーガに押し付け、その巨体を浮かし、さらに巨大な棍棒で殴りつけたように後方へ跳ね飛ばす……そして、

 

”Zuuooooooonnnn !!”

 

空中で爆散させる!!

至近距離での爆発と自らを護るはずの胴金の破片が鋭利な刃物となり斬り刻まれたオーガは、肉片や血の雨となり地面を汚した。

 

機銃座から上がる歓声を聞きながらも、

 

「たーまやー」

 

どこか気の抜けた声をあげる優花里に、

 

「かーぎやー……って合いの手入れるのはお約束よね?」

 

と、これは沙織。

 

「クスクス……”汚い花火”になってしまいましたね? お目汚しです」

 

そう笑む華。ぺろりと舌なめずりするその姿は大和撫子のお嬢様にしては下品で、ついでにエロかった。

 

 

 

「みんな、油断しないで! 駆逐すべき敵はまだまだいるんだから!」

 

みほは今更ながらに思い直していた。

この世界は人間だけの世界じゃないと。

文明の利器を用いても、なお簡単に倒せぬ危険な存在が跋扈する世界だと。

 

”Oder das Vorhandensein von nur werden wir mit Fusen getreten werden?(我々は、ただ踏み潰されるだけの存在か?)”

 

否っ!(Nein!) 我らは、巨人を駆逐する狩人だ!!(Es ist Jager, um den Riesen zu jagen!!)

 

「みぽりん……?」

 

唐突に飛び出したドイツ語の意味がわからず、つい目をぱちくりさせる沙織だったが、

 

「全車に告ぎます! 可能な限り迅速にジャイアント・オーガを排除してくださいっ!」

 

そして大きく息を吸い、

 

「全車、巨人を狩りつくせっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

第1小隊(アンコウ・プラトーン)第3小隊(アヒル・プラトーン)の2個小隊計8両の九八式重戦車は、忠実にみほの命に従った。

「今しか使いどころがありませんわ!」と装填を命じた徹甲榴弾で二体まとめてジャイアント・オーガを貫き、三体目の体内で爆発させて”ひでぶっ!”させるという神業の砲撃を披露するなど、九八式は思う存分に砲弾を撒き散らし、怪異扱いの巨人達を駆逐してゆく。

 

しかし、切り札である鎧巨人をみすみす潰されて大人しくしている理由は”帝国”側にはない。

ジャイアント・オーガが全滅すれば、自分達がどうなるかくらいはわかっている。

だからこそ、戦車を排除するために命知らずにも接近する歩兵たち……

具体的にどう壊せばいいかわからなかったが、あの鉄象には人が乗ってることは判っていたので、蓋をこじ開ければなんとかなるだろうと考えた。

 

「うっとうしい……」

 

そう装甲の中で呟いたのは、仲間内で一番小柄な冷泉麻子曹長だった。

車体前面に取り付けられた武1919式車載機関銃を撃ち放っていた彼女だったが、しつこくすがり付こうとする敵兵にいい加減うんざりしていた。

 

”ガッ!”

 

唐突に鈍い音が響く。

どうやら死角から近づいた敵兵が、銃眼から剣を刺し込みこじあけようとしたようだ。

幸い、最近流通し始めたばかりの防弾ガラスがはめこんであるので問題ないが……

 

”ぷちん”

 

途端に麻子の中で何かがキレる。

 

「いいだろう。そんなに挽肉になるのが望みならそうしてやる」

 

”ヴォオオム!”

 

307馬力を発生するルーツ式スーパーチャージャーで過給された空冷V型12気筒の統制型ディーゼル・エンジンが機械仕掛けの雄たけびを上げ、

 

”ぐちゃっ……”

 

前進を開始した31tの鋼鉄の塊が、雑な造りの甲冑ごと敵を踏み潰す!

 

「ちょ、麻子! なんでいきなり発進させるのよっ!?」

 

そう苦言を呈する沙織であるが麻子は涼しい顔で、

 

「銃で撃つより31tで踏み潰したほうが効率がいい場合もある。銃身加熱も馬鹿にならないからな」

 

あながち嘘ではない。

機関銃というのは連続して弾丸を発射する以上、機関部や銃身に熱がこもり易い。

熱くなれば金属は熱膨張を起こし、銃身ならば膨らんで命中精度が極端に落ちたり、下手をすれば強度が下がりすぎて破断したりもしかねない。

実際、冶金技術が低く耐熱性が悪い金属でしか銃身が作れなかった日露戦争~第一次世界大戦くらいまでの黎明期の機関銃は、大きくかさばるのが承知の上で水冷式銃身がメジャーだったのだ。

 

「……後で履帯にこびり付いた肉骨片の掃除とか、絶対に手伝わないからねっ!!」

 

「うっ……」

 

沙織のささやかな口撃が思ったよりクリティカルしたようだが……そこで助け舟を出したのが、

 

「いいですよ、麻子さん。頃合ですし、このまま蹂躙戦に移行しちゃいましょう」

 

車内通信機越しのみほだった。

 

「おー、さすが隊長。話がわかる」

 

「やだもー。なんか戦車がスプラッタっぽくなりそうじゃん……ハロウィンはもう過ぎたんだよ?」

 

なにやら戦闘終了時に予想される姿がビジュアル的にご不満な様子の沙織だが、みほはかまわず。

 

「全車に告ぐ! 敵を蹂躙せよ! 繰り返す、敵を蹂躙せよっ!!」

 

 

 

***

 

 

 

(わたしもみんなに負けてられないな……)

 

麻子は視界の悪い戦車内での操縦をものともせず、巧みな操作で敵兵を片っ端から引き潰し、華は華で戦車のスロラーム走行のようになってしまってる現状にもめげずに走行間射撃を敢行・榴弾/榴散弾/徹甲榴弾を的確に使い分け、次々に敵を黄泉の彼方に放り込んでいた。

華のオーダーに応えるべく手早く装填を繰り返す優花里に、様々な爆音が奏でられる戦場音楽に加えて絶えず揺れる車内という悪条件でも正確な無線操作で通信を途絶させない沙織……

 

この今までに無い大規模な戦場において、いつもどおりチームとしてぴたりとかみ合った仲間達に、みほは大いなる満足感と幸福感を覚えていた。

 

”DooDooDooDooDooDooM !!”

 

ゆえに砲塔上の50口径重機関銃(M2ブローニング)の操作も、ますます軽妙になるというものだ。

装甲板纏ったジャイアント・オーガは戦車砲に任せ、自分はトロルやオークといったような人間より大きく頑丈な獲物を50口径で仕留めて行く。

それよりは脆い人間やゴブリンは、弾が勿体無いので……

 

”TaTan! TaTaTan!”

 

肩からスリングで吊ったベ18式短機関銃(ベルグマンMP-18)を片手で持ち、指切り射撃(バースト・ショット)で射掛ける。

弾の威力のわりには重く、また発射速度が低いベルグマンは「こういう撃ち方でも反動で暴れないので扱い易いなー」とみほは思っていた。

 

そして背後に気配を感じてそちらに銃口を向けようとした時、

 

”ズシャアッ!!”

 

彼女の栗色の髪を、不意の突風が撫でた……

 

 

 

みほが振り返ったときその瞳に映ったのは、火薬の爆発音など無かったのに上半身が綺麗になくなったトロル”だった”残骸と……、

 

「う・ふ・ふ~♪ 今日はたぁ~くさんのご喜捨ありがとう♪」

 

まだ雰囲気に幼さの残る黒いゴスロリ少女が、頬を返り血で染めて微笑んでいた。

彼女の身長より巨大な、鮮血に濡れたハルバートと共に……

 

 

 

***

 

 

 

「”ロゥリィ・マーキュリー”様……」

 

思わずここが戦場だというのも忘れ、唖然としてしまうみほだった。

 

”TaTan!”

 

だが、無意識なのだろう。

腕だけは別の生物のように動き、その銃口は9mmパラベラム弾をせわしなく吐き出していたが。

 

(なんで? どうして? ”伯爵大佐”の愛人……じゃなかった。崇め奉ってる亜神がこんなところにいるのっ!?)

 

後にみほは語る。「この戦いで一番驚いたのは、いきなり自分の後ろにロゥリィさんが立ってたときだったよ」と……

 

「貴女、中々()るじゃなぁ~い。ウフフ♪ ここまで効率よくご喜捨できるのならぁ、き~っと貴女はいいエムロイ信徒になれるわよぉ☆」

 

「……謹んでご遠慮申し上げます」

 

”死と断罪と狂気と戦いを司る神”というのは確かに自分向きかもしれないなぁーと心の片隅でつい思ってしまったことを、みほは軽く頭を振って追い出す。

 

「ざぁ~んねん。でも、今日は諦めてあげるわぁ。何しろ……」

 

ロゥリィは妖艶に……”闇の女神”と呼びたくなりそうな微笑を浮かべ、

 

「まだまだたぁ~くさん、捧げなくちゃならない魂があるもの♪」

 

「それについては同意ですよ」

 

みほは空になった32連発のスネイル・マガジンを抜いて車内に落とす。

それをすかさず優花里はキャッチし、

 

「西住隊長!」

 

Danke(ありがとう)!」

 

キューポラからトスされた予備マガジンを今度はみほがキャッチ。

まさに阿吽の呼吸の二人であった。

それを再びリロードし、流れるような動作で愛用の拳銃(みほスペシャル)を抜いて今度は左手で握る。

右手にベルグマン短機関銃、左手にブローニング・ハイパワー……合計46発の9mm弾というのは悪くないとみほは思う。

 

「殺る気満々ねぇ~♪」

 

「ロゥリィ様も」

 

「だってワタシはこれがお仕事だもの☆」

 

「奇遇ですね? 実はわたしもお仕事なんですよ」

 

二人の少女……いや、そうと呼ぶには血腥すぎる存在は笑いあうと、

 

「じゃあ、はじめるわよぉ~」

 

「了解です!」

 

巨刃と鉛弾の二重奏が、より苛烈に戦場を彩った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





皆様、ご愛読ありがとうございました。
なんか、みほがエムロイ信徒に勧誘されるエピソードでしたが、いかがだったでしょうか?(^^

みほに続く物騒さを誇る華が何気にお気に入りです。
それにしても……ロゥリィとみほの相性の良さに書いた本人もびっくりですよ~(笑)
とある読者様が指摘してくださいましたが、ホント今にもロゥリィの眷属化しそうな?

さらに麻子も登場させられたし、これであんこうチーム、コンプリートですね~。
そして次回は戦いが新たな展開に……?

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!



***



設定資料



チ29式半自動小銃
全長:1150mm
重量:4500g
使用弾薬:7.92×57mm(8mmマウザー)
装弾数:20連発/30連発箱型弾倉(チ26式軽機関銃と共用。ただし20連発が標準)
発射方式:セミオートマチック

チ26式軽機関銃
全長:1130mm
重量:9600g
使用弾薬:7.92×57mm(8mmマウザー)
装弾数:20連発/30連発箱型弾倉(チ29式小銃と共有。ただし30連発が標準)
発射方式:フルオートマチック
発射速度:550発/分

備考
チ29式半自動小銃はチェコのチェスカー・ズブロヨフカ社製半自動小銃【ZH-29半自動小銃】の、チ26式軽機関銃はチェコ・ブルノ兵器廠製の【ブルーノZB26軽機関銃】のそれぞれの正規ライセンス生産品。
実はこの二種の銃、史実でも大日本帝国軍が大陸で主に中華民国軍より鹵獲し、使用したという記録がある。
ただし、”この世界”では鹵獲兵器などではなく正規ライセンス生産権を獲得し、大規模製造している。

そもそもこれらの銃の採用の原因は、第一次世界大戦まで遡る。
”この世界”においても日本は日英同盟/日米同盟の兼ね合いから第一次世界大戦に参戦することになる。
さて、戦勝国側にいた日本は戦時賠償請求権が生じたが、ドイツが保有していた中国山東省や赤道以北の太平洋の島々(マリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島)などの領土的割譲を含めて全てを放棄し米英に権利委譲することを決定していた。
しかし、その代わりにドイツを中心とする敗戦国側が保有し、戦勝国側が鹵獲あるいは戦中/戦後に押収した兵器を、戦勝国が研究用など必要分を引いた量……本来なら大半が屑鉄置き場(スクラップヤード)送りになるはずの兵器群の譲渡を日本は要求した。
政治経済を問わず様々な裏取引をした英米の強烈な後押しもあり、戦後の趨勢を決めるヴェルサイユ会議においても日本の提案はスムーズに採決されることになる。
ただ、英米は日本にある程度の軍拡の負担を担わせるという意図があったのか、マリアナ諸島、カロリン諸島、マーシャル諸島の南洋諸島の委任統治権だけは譲らず、後に『南洋庁』の設立に帰結する。

さて、日本が武器を欲しがったのは紛れも無く1905年(明治38年)9月5日の【日比谷『門』異変】だ。
欧米先進国に比べての軍やその基礎となる国家/社会の近代化の遅れや日露戦争の疲弊もあり、日本は日比谷公園を中心とする帝都を依然、正体不明の『門』外武装勢力に不法占拠されたままという国家としてあるまじき状態に置かれていた。

だが、当時の陸軍装備の代表格である三八式歩兵銃をはじめそもそも日本が保有する火力が、歩兵相手ならともかく翼竜や人間より遥かに強靭な怪異相手には全体的に力不足ではあった。
だが、当時の日本の国力では陸上兵器の総合的な火力増大や抜本的な近代化は抜本的に難しかった。
戦後に開示された様々な資料を見る限り、どうやら「帝都を半ば占領されてるにも関わらず、無理して第一次大戦に参加するという賭け」に出たのは英米との同盟だけではなく、最初から「威力や性能に優れた武器を一挙に入手するため」だったようだ。

とにかく日本は賭けに勝ち、大量の武器弾薬や全てではないが一部の製造設備や冶具(ジグ)まで入手する。
それらの兵器を積極的に前線に投入し、即座に奪還とまではいかなかったが戦線を支え、敵軍のそれ以上の侵攻を許さず押さえ込むことに成功した。

だが、それから数年してまた日本の装備体系の転機が訪れる。
それが関東大震災翌年、1924年(大正13年)に締結された【日米砲弾/弾薬相互間協定】だ。
野砲/榴弾砲/高射砲などの共用化はむしろ望むところだったが、問題となったのは大量の備蓄があった小銃弾だ。
ただでさえ当時は「反動が強い欧米の小銃弾に比べ、小柄な日本人向きに開発した」という触れ込みの”三八年式実包(6.5mm×50SR弾)”と、ドイツから入手した7.92×57mm(8mmマウザー)弾が混在していた。

小銃弾を使いながらも三脚に載せることが基本で弾帯給弾式の重機関銃はまだ問題なかった。
ドイツから入手したMG08系機関銃は水冷式銃身/布製弾帯を採用した古い時代の機関銃で、これを同種同類の機関銃でありながら素材や冶金技術の進歩で空冷銃身と金属連結弾帯を採用し大幅に軽量化したブローニングM1919系機関銃に置き換え、更には米国の強い勧めがあった7.62x63mm小銃弾(30-06スプリングフィールド弾)ごと置き換えるのに強い反対はなかった。
しかし、ストックが大量にある二種類の小銃弾をおいそれと破棄し、全てを30-06スプリングフィールド弾に置き換えるのは強い抵抗があった。
結局、日本はまだまだ貧乏国家だったということだろう。

そこで日本は30-06スプリングフィールド弾を「現時点では正式小銃弾として見送る」ことを決定すると同時に、特に「7.92×57mm弾を用いる歩兵用軽量自動小火器」の選定を始めることになる。
ぶっちゃけ7.92×57mm弾を使う自動小銃と軽機関銃(歩兵一人で持ち運べ射撃が可能な二脚型の軽量機関銃のこと)の開発もしくはライセンス生産権の獲得であった。
蛇足ながら軽機関銃はともかく旧来の6.5mm×50SR弾仕様の自動小銃開発計画が立ち上がらなかったのは、既に政府が「三八式歩兵銃の後継たる次世代小銃は米30-06スプリングフィールド弾を採用する」と米政府に確約したからであった。
つまり7.92×57mm弾仕様の自動小銃は三八式の後継の主力小銃ではなく、あくまで余剰生産小銃だという立ち位置だったのだろう。

まずは1926年、日本の計画を聞きつけたチェコが早速”ブルーノZB26軽機関銃”の売り込みをかけてきてその十分な命中精度と信頼性の高さで”チ26式軽機関銃”として即採用。
次いで1929年、「チ26式軽機関銃と同じ弾倉(マガジン)が使える」というセールスポイントでチェスカー・ズブロヨフカ社が”ZH-29半自動小銃”の売り込みをかけてきて、「命中精度に多少難あれど、その制圧火力は膨大なりや」という理由でこれまた”チ29式半自動小銃”として相成った。
このエピソード自体、当時の日本陸軍の火力偏重主義を……後で言う『特地』勢力の人外に対する火力不足に泣かされてきたかを物語る。

ライセンス生産においての小改良は原型が優秀なのと早期実戦投入が望まれたために最低限に留め置かれ、チ26式軽機関銃は銃身先端部に日本仕様の着剣装置(バヨネット・マウント)の追加、チ29式半自動小銃は着剣装置を日本制式銃剣仕様への変更くらいだ。
またマガジンはチ29式半自動小銃が20連発、チ26式軽機関銃が30連発の箱型マガジンをデフォにしているが、原型同様に相互互換があり共有化できる。

現在、日本本国では6.5mm×50SR弾から30-06スプリングフィールド弾への全面移行が進められていて、補給の混乱を避けるためにチ29式半自動小銃やチ26式軽機関銃のみならず7.92×57mm弾使用火器全般が怪異との戦闘が日常化する『特地』への集中配備、いわゆる『特地専用装備(トクチ・スペシャル)』となっている。

またチ29式半自動小銃は基本的に全歩兵に配されたが、チ26式軽機関銃は分隊ごとに1丁が配備され、『分隊支援機関銃』というカテゴリーの先駆け的な使われ方をしていた。









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