東方怪獣録   作:怪獣好き

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 もしかしたら怪獣?の擬人化があります。また、モロボシダン以外がセブンに変身するのが許せない人はご注意ください


幻想のセブン

今回語られる物語は人形の物語。外の世界の英雄を模した人形と、自立人形を求める少女の物語。彼らが出会ったとき、どんな異変が起こるのだろう。 

 

 ここは魔法の森の中、そこに七色の魔法使いことアリスの家があった。その中でアリスは落ち着かない様子で部屋を歩き回っている。

 

「…遅い、遅いわね。」

 

彼女は何かを待っているようだ。周りの人形たちもそれに応じ少しそわそわしている。

 

「やっぱり私も行くべきだったかしら…ダメダメ!それじゃ実験にならないわ。」

 

どうやら何か実験をしているようだ。ぶつぶつと独り言を言っている。

 

「でも…やっぱりまだ上海にお使いは難しいかしら。」

 

 そう、彼女は上海人形にお使いを頼んだのだ。これは彼女の夢である自律人形製造のための実験であり、マスターが近くにいなくても、店への道と買ってくる物と簡単な行動を指令してのお使いという行為の中で、自立思考を基にした自立行動できるかを試したのだ。とはいえ、それを頼んですでに三時間。外は暗くなり、さすがに時間がかかりすぎである。落ち着くために紅茶を入れようとしたとき、ドアを叩く音が聞こえた。

 

「…!やっと帰ってきたわね!」

 

彼女は嬉々としてドアへ向かう。

 

「まったく、上海、遅いじゃ…」

 

 そこには確かに買い物袋を抱えた上海人形がいた。何者かしらないが男とともに。

 

 

 少し前、上海人形は森の中を自分のマスターの命令を果たすため、森の中をふわふわと飛んでいた。

 彼女の手には大根や豆腐、ネギなどが入った袋が下がっている。

 すると、森の中、ボーっと立っている男を見つけた。といっても、それだけなら無視して行くところだが、その男に話しかけられてしまった。

 

「なあ、君。すまない、が、ここ、は、どこ、だい?」

 

その男はひどくたどたどしい話し方で自分に質問してきた。だが、これに対する受け答えは命令されて

おらず、どう答えればいいかわからなかった。とりあえずマスターに指令を仰ごうと家へ連れて行くことにする。

 

「コッチコイ」

 

 そう上海人形は言って、再び帰路につき、その後ろを男が付いていった。だが、その歩みは非常にたどたどしく、ゆっくりだったためかなり時間がかかった。

しばらく森を歩くと、森が開き、一軒家が見えてきた。その扉に近づくと、上海人形は

 

「チョットマッテロ」

 

そういうと、扉をたたいた。すると、中からほっとした表情の金髪の少女が出てきた。

 

「まったく、上海、遅いじゃ…」

 

こうして二人は出会った

 

「あなた…誰?」

「私…は…ウルトラセブン、の、はず、かも、です。」

 

この出会いが二体の人形に大きな影響が出るとはこの時点では、誰も知らない。

 

 

 アリス・マーガロイドは混乱していた。時間はかかったとはいえ上海人形が無事お使いを達成できたのは喜ばしいが、無駄なものも連れてきてしまった。しかも服装からして外来人。最近は珍しくもなくなってしまったが、どうもこのウルトラセブンかもしれないと言う男、妙な感じがする。

 

「……」

「……」

 

 とりあえず招き入れ、机を挟んで座っているが、空気が重い。自分はそういうことは気にならないが、普通の人間、しかも右も左もわからない外来人なら気まずくて何か言ってくるはず。しかし何も言ってこない。それに、見た目は普通の青年だが、何か違和感を感じる。人間のような気がしないのだ。

 

「…ねえ。」

「はい。」

 

一息おいて、アリスは問う。

 

「あなたは…人間なの?」

「いいえ。わたし、は、人間、では、あり、ません。」

 

 ここまでは予想通り…とまではいかなくとも別段驚かない。最近は外から妖怪が流入しているという噂も聞く。

 だが、次の一言は予想していなかった。

 

「わたし、は、人形です。」

「…は?」

 

 人形…自分が聞き違えなければそう聞こえた。目の前の男は、自分を人形と評した。

 

「…ちょっと失礼するわね。」

 

 近づいて手を触ってみる。普通の人間に近い感触と暖かさである。

 

「あなたね、からかわないでよ。」

「からかう、なんて、してません。私、は、人形。直人君の人形です。」

 

 どういうことだろう。自分を人形と思い込む異常者か、それとも九十九神か、メランコリーのように人形が妖怪化したか。と考えていると、どうも様子がおかしい。

 

「人形…ちがう、私、は、セブン、ウルトラセブン。悪い、奴ら、を、倒す、正義、の、ヒーロー。」

 

すると、男は頭を抱え、苦しみだした。

 

「私は人形、直人君の人形。違う、私はセブン、ウルトラセブン。いや、私は…私は!」

 

そういうとぴたりと動きが止まり、自分のほうを向いた。その表情をみると、ぞっとした。

 

「わたしは、いったい何なんでしょうか。」

 

それは、まさに人形のような、能面のような表情だった。

 

 男は苦しんでいた。彼には二つの記憶がある。一つは直人少年との人形としての記憶。彼と一緒に暮らして、共に遊ぶのは人形名利に尽きた。つまり、自分は間違いなく人形だった。

 もうひとつの記憶はウルトラセブンとしての記憶。正義の味方、ウルトラセブンとして、直人少年に怪我を負わせた悪者たちを倒そうとして、邪魔する奴と戦った。それに直人少年も自分をウルトラセブンと呼んでいた。つまり自分はウルトラセブンである。

 だが、何か違う。どちらも何かが足りない。自分は人形か、セブンか。その疑問ばかりがわいてきた。

しかも、自分は少なくとも人間ではなかったのに、人間として木々の生い茂るところにいた。

一体何が起きているのか。この男には理解できなかった。

 

「…わからないわ。あなたの主人…直人君?その人に聞いたらいいじゃない。」

 

 アリスはほんの一瞬ぞっとしたが、すぐに気を取り直し質問に答えた。

 男はなるほどと思った。自分に存在意義をくれた彼なら何か知っているかもしれない。

そう思った時、やっと彼は、幻想入りした人間がだれでも抱くであろう疑問を抱いた。

 

「そうですね。ところで、ここはどこですか?」

「……」

 

とりあえず、アリスは森にごく稀に迷い込む外来人にする説明をした。

 

「幻想郷…ですか。」

「ええ、もしかしたら、あなたは人形が妖怪化したのかもしれないわね。」

「フム…外に変えることはできますか。」

「もちろん。博麗神社から帰ることはできるわ。でも…人ならともかく、妖怪が出られるかは知らないわ。」

「困った。直人君は外にいるのに。」

 

アリスは困る男を尻目に、とりあえず夕食を用意いた。

 

「まあ、考えるのはあと。今は食事にしましょう。」

「ショクジ?…ああ、直人君が毎日していましたね。でも、どうやるんですか。」

「…え?」

 

 結局食事は自分だけ済ませた。だが、その様子を好奇心いっぱいの目で見られるのは

なんだかくすぐったかった。

 食事の後は人形のメンテナンスである。今回、上海人形には長距離を飛んでもらった。

きちっと整備してやらなければ。とりあえず服を脱がし、関節を確認する。

 すると、男が真っ赤な顔をして顔をそむけた。どうやら、上海人形の裸を見てしまったらしいが、別段人形の裸など反応するようなことではない。変なやつである。

 

「とりあえず、お客用の部屋があるから、そこで寝てね。」

「寝る…ああ、あれですね。わかりました。」

 

あれって何かと疑問がわいてきたが、まあ、追求するのはめんどくさい。部屋に押し込んだ。

 

「はあ、なんだか面倒なことになったわ…」

 

 男が寝たのを確認し、ため息をつく。人形が運んできた紅茶を飲むと、何をしようか考える。

 とりあえず、竹林の薬師に見せて人間かどうかを確認しよう。ただの妄想にとりつかれた人間なら

とっとと博麗神社からお帰りいただこう。本当に人形だったらなかなか興味深いことだ。彼を研究すればなにか自立人形へ近づく道が見つけられるかもしれない。

 

「まあいいわ、上海。明日、私が起きる前に掃除しておいてね」

「ハーイ」

 

そういうとアリスも就寝する。

 

次の日、男は目を覚ました。といっても本来人形なのだから睡眠など必要ない。ただ目をつむって太陽が昇るまで待っていただけである。とりあえずは居間へ向かった。

 

「おや、」

 

そこでは、数々の人形が動いて掃除をしていた。その中央では一体の人形が指を動かしている。

 

「おはようございます。上海人形さん。」

「オハヨー」

 

どうやら上海人形が動かしているようだ。すごい働き屋さんな人形である。自分の人形としての記憶では、直人君の隣で寝ていたり、動かされたりと自ら動いている記憶がない。

 

「あなたは働き者ですね。上海人形さん。」

「ソレホドデモー」

 

上海人形からしてみれば、昨夜の命令を遂行しているだけ。別に特別なことではない。

そこで会話は途切れる。すると、妙なことに男の様子がなんだかおかしい。どうも落ち着かないようだ。

 

「その…上海人形さん。」

「?」

 

男が口を開く。

 

「何かすることはありませんか?」

「ネエヨー」

「そ、そうですか…」

 

また無言の時間が続く。なんだか、男は居心地が悪そうだ。

 

「ふぁ…おはよう。」

「あ、おはようございます。」

 

 上海人形たちがトーストとめだま焼きを焼いていると、そこにアリスが起きてきた。

中々かわいらしいパジャマである。

 

「それじゃ、朝食が済んだら、竹林に行くわよ。」

「チクリン…とは?」

「ああ…歩きながら教えるわよ…」

 

アリスはげんなりしながら椅子に座った。すでに机には朝食がきれいに並べられている。

 

「じゃ、朝ごはんにするけど、あなたはどうする?」

「はい、食事ですね。じゃあ、この茶色いのを。」

 

そういうと、トーストに手を伸ばす。そして、間違っても丁寧ではない…いや、かなり汚い食べ方をする。

 

「………とりあえず、ただのの人形よりものを知らなさそうなのはわかったわ。」

 

そして、机の上が片付いた後、アリスは着替え、男を連れて竹林へと向かう。ついでに魔理沙への見舞いも持って行く事にする。

外は少し前までの恐ろしい暖冬とは打って変わってかなり寒く、アリスはかなり厚着をしている。だが、男は別段寒そうではない。

 

「あなた…寒くはないの?」

「ええ、そういう感覚はないものですから。」

 

もう突っこむのはやめよう。とにかく、男は飛べないだろうから、歩いていくこととなった。

 

 

「単刀直入に言うわ、あれは人間ではない。」

 

竹林に住む月の頭脳こと八意永琳は男を簡単に検査した後、断言した。

 

「人間じゃない…?じゃあ、やっぱり人形の妖怪?」

「それに近いと思うわ。でも妖怪じゃないんじゃないかしら。少なくとも痛覚や血は無いようだし。」

 

 永琳は検査の中で血液を抜こうと注射器を刺したが、男は眉一つ動かさなかったし、

血は一滴もとることはできなかったらしい。

 

「まあ、詳しくはもっと解剖しないとね。」

「フム…じゃあ、まさに生きた人形ってことね。面白いじゃない。」

「ええ、面白いし興味深いわ。彼は自分のことを人形だとも思っているし、ウルトラセブンだとも思っている。その二つの間で葛藤しているの。」

「へぇ、ところで、ウルトラセブンって?」

「さあ。彼が言うには正義の味方らしいわ。」

「正義の味方……ねえ。」

 

 何というか、胡散臭い話である。トーストの食べ方も知らない奴が正義の味方と言われてもいまいとつピンとこない。

 

「まあ、考えられる可能性の1つとしては、彼はウルトラセブンという正義の味方模した人形が妖怪化、または魂を持った存在である……ってとこね。でもよかったじゃない。」

「なにがよ。」

「あなた、自律人形の研究をしているんでしょ?彼は正義の味方を模した人形が自我を持った時の貴重なサンプルじゃないかしら。」

「そうねぇ……」

 

自律人形の制作。それがアリス・マーガトロイドのライフワークである。たしかに妖怪化した人形を自立人形の1つの形のように思う者が多い。だが、そう言った存在はあくまで妖怪であり、自律人形では無い。それがアリスがメディスン・メランコリーという人形の妖怪を自律人形と認めない理由だ。

 だが、人形の妖怪が研究に全く関係ないと言えばそうではない。今回見つけた男は葛藤という興味深い事をした。もし上海人形が自律したら、彼のように自分の存在に葛藤するのだろうか。

 決めた。彼ともう少し暮らし、研究に役立ってもらおうではないか。

 そしてついでに魔理沙にも会う事にした。

 

「お、アリスじゃないか。お前も見舞いに来てくれたのか。」

「ええ。暖冬異変を解決したんだって聞いたわよ。まあ死ななくてよかったじゃない。」

「しばらくは歩けないけどな。暇でしょうがないぜ。」

「そうだと思って魔道書を持ってきたわ。」

「え、いいのか?」

 

魔理沙はアリスから魔道書を手渡される。魔道書を盗む事には慣れていても、普通にもらう事には慣れていない魔理沙は驚き半分、嬉しさ半分だった。

 

「ええ、その本はとっくの昔に読み終えているし。そんなに興味無い内容だったから。」

「ずいぶんと優しいな。変なキノコでも食ったか?」

「怪我人には優しくしないとね。そう思っただけよ。」

 

そして病室から出るアリス。その背に声が掛けられた。

「ありがとな、アリス。」

と。

 

永遠亭からの帰路の途中、アリスはふと大事な事を忘れていた事に気がついた。

 

「そう言えば、あなたの名前を決めないとね。」

「わたしの、名前?」

「そうよ。いつまでもあなたじゃなんか変だし。そうねぇ……セブンなんてどう?ウルトラセブンの人形だからセブン。」

「セブン……わたしの名はセブン。」

「そうよ。今日からよろしくね、セブン。」

「わかりました。アリスさん」

 

  セブンとアリスは帰路につく。日が傾き暗がりが広がる頃、その背を見つめる何かがいる事も知らずに。

そうしてセブンとアリスの奇妙な共同生活が始まる。まずは、セブンに徹底的に常識、マナーというものを叩き込んだ。

 

「いい、私のまねをしながら食べなさい。」

「寒い時にそんな薄着じゃあ変に思われるわ。ちゃんと厚着しなさい。逆に暑い時は脱ぎなさい……ズボンじゃないわよ!」

「ちゃんとお風呂に入る、寝る前は歯磨きをする、起きたら顔を洗う。生活の基本のきよ。ちゃんとやってね。」

 

……という風なアリスの熱血指導でセブンはすっかり人間と変わらない生活をするようになった。だが、変わった事も起きた。上海に頼んだ事をなぜか人形達に混じって手伝っているのだ。また、上海によく話しかけたりするようになった。

 変わった事をするものである。やはり元人形だけあって何か通じる事があるのかもしれない。また、話しかけられる事が上海人形にも良い影響を与えているようだ。何かとセブンと一緒にいる時間が多くなっている気がするし、何か行動がより効率的になった気がする。

これは、上海人形が自律人形に近づいた証ではないか。そう思ったアリスは上機嫌でセブンと上海を一緒に行動させてみることにした。今回もまたお使いに上海を行かせる。無論、セブンも一緒に。

 

すっかり暗くなり、二人は人里からの帰路に就く、上海とセブンは会話をしていた。セブンが初めて見た人里という場所についての感想を一方的に言っているだけのように見えるが、ちゃんと上海も受け答えしている。

そんな時だった、セブン達の前に、フードで顔を隠した黒づくめの子供が現れた。黒い風船を持って。

上海はその異常性に気づいて警戒するが、セブンのほうは何の警戒心なく挨拶する。

 

「こんばんは。」

「こんばんは。ウルトラセブン。」

「……?なぜそれを―――――」

 

それ以上は話せなかった。黒づくめの子供が持つ風船が割れ、中から黒い闇がセブンに襲いかかったのだ。

 

「グァァァァァァァァァァァ!!」

 

闇は、セブンの体を変性させ、巨大させた。セブンがいた場所には、赤と銀の巨人がいた。そう、我らのヒーロー、ウルトラセブンである。ただし、この存在はウルトラセブンであってウルトラセブンでは無い。直人少年のマイナスエネルギー、怨念が人形に憑依した存在、かつてウルトラマン80と戦った妄想ウルトラセブンなのだ。

 

「さあ、暴れろウルトラセブン。この幻想郷を破壊してしまえ!」

 

オオオオオオオオォォォォォォォォ

 

それを見ていた上海は急ぎマスターの家へと向かう。セブンの異常を知らせに。

 

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